最強問題児の妹も異世界から来るそうですよ?―しっかり者だけど兄好き(ブラコン)!? 作:問題児愛
プロローグ
―――箱庭2105380外門居住区画・〝ノーネーム〟本拠。地下三階の書庫。
時は進んで一ヵ月後。昨夜遅くまで書籍漁りをしていた逆廻十六夜とジンは、山積みの本の中で眠りこけていた。ふと眼を覚ました十六夜は、首をもたげて呟く。
「………ん……御チビ、起きてるか?」
「………くー………」
「寝てるか………まあ、俺のペースに合わせて本を―――ん?」
最後まで言い終わる前に、第三者の寝息が聞こえて下を見る十六夜。
「……………」
「すー………すー………むにゃ、」
十六夜にはりつきながら可愛らしい寝顔の―――だが、涎を垂らしながら眠る彼の義妹・逆廻亜夜がいた。
それを見た十六夜は、苦笑いを浮かべて一言。
「………お前はコアラか……」
「すやー、すやー」
「てか人の服に涎を垂らすな、駄妹」
ズビシッ!
気持ち良さそうに眠る無防備な亜夜の頭に手刀を繰り出す十六夜。
「うにゃっ!?」
突如、脳天に激痛が走り、短い悲鳴(?)と共に飛び起きる亜夜。
頭を押さえながら涙目になる亜夜は、顔を上げて十六夜を睨んだ。
「むー!人が気持ち良く寝ていたのに手刀とか酷いよお兄ちゃん!」
「人の服に涎を垂らしながら寝る亜夜が悪い。だらしがない妹だな、お兄ちゃんはそんな子に育てた覚えはない!」
「へ?………あ、ごめんなさいお兄ちゃん」
逆に怒られて落ち込む亜夜。十六夜はヤハハと笑って亜夜の頭を撫でながら言う。
「―――分かればよし。今度やらかしたら全身擽りの刑だからな?」
「う、うにゃぁぁぁぁ………気をつける……」
両手をわきわき動かす十六夜に、怯えながら頷く亜夜。擽りの刑が最も嫌いな『O・SHI・O・KI』のようだ。
そんな逆廻兄妹の下に、飛鳥達が慌ただしく階段を下りてきた。
「十六夜君!亜夜さん!何処にいるの!?」
「あん?」
「うにゃ?」
十六夜と亜夜は同じタイミングで振り向くと―――シャイニングウィザードで強襲を仕掛けてきた、飛鳥の姿があった。
「起きなさい!」
「いや、起きてるぜお嬢様?」
「―――お兄ちゃん危ないッ!!」
「「え?」」
十六夜と飛鳥が驚く中、亜夜は十六夜を庇うように立ち塞がり、
ゴッ!
飛鳥のシャイニングウィザードは亜夜のおでこを見事強襲。
亜夜は五回転して吹き飛び、
ガンッ!
本棚に後頭部を強く打ち付けて倒れ落ち、
バサバサバサッ!
本棚がぐらつき、そこに収納されていた分厚い本が大量に亜夜の上に降ってきて生き埋めになってしまった。
「……………」
飛鳥は不幸の三連コンボを目の当たりにして呆け、十六夜は血相を変えて本の山を蹴散らし、亜夜を抱き上げた。
「―――亜夜ッ!!」
「……………ふにゅぅ」
だが時既に遅く、亜夜は目を回して気絶してしまった。
それに十六夜は、亜夜の頭を優しく撫でた後、飛鳥を睨んで言う。
「―――おい、お嬢様。亜夜が呪いのせいで病弱なのは知ってるよな?」
「え?………ええ、知ってるわよ」
「病弱に加えて不幸体質だからシャイニングウィザードはやめとけ。亜夜の場合だと命に関わる。―――御チビならまだしも」
「分かったわ。次からはジン君に仕掛けることにするわ」
「仕掛けないでください!―――って僕ならってどういう意味ですか十六夜さん!?僕だって飛鳥さんのシャイニングウィザードを頭に受けたら命に関わりますからね!?」
先程の騒動で眼を覚ましたジンが飛鳥と十六夜に怒る。
十六夜は無言で分厚い本を拾うと、
「五月蝿いぜ御チビ」
ジン目掛けて投擲。
スコーンッ!
十六夜が投げた本の角がジンの頭にクリティカルヒット。
ジンは後ろに吹き飛び失神。それに耀の後ろにいたリリがあわてふためきながらジンに駆け寄る。
一方で耀は、亜夜について小首を傾げながら問う。
「………十六夜。亜夜の不幸体質って、何?」
「ん?ああ、そうだな。昔、亜夜を車椅子に乗せて外に散歩しに行ったことがあって」
「………車椅子?」
「ああ………。それで亜夜を外に連れ出した途端―――植木鉢が亜夜の目の前に落下してきた」
「「え?植木鉢!?」」
亜夜の頭上に植木鉢が落ちかけた、と聞いて驚愕の声を上げて顔を青ざめる飛鳥と耀。
普通は人の頭に植木鉢は落ちてこないもの。何某かの悪意を感じる話である。
そして十六夜はこんなのは序ノ口だと、話を続ける。
「植木鉢なんか可愛いもんだ。酷い時は亜夜が軽トラックに撥ねかけられたり、竜巻に呑まれかけたりしたんだからな………亜夜がな」
「……………ッ!」
驚愕を通り越して絶句する飛鳥達。不幸体質の度が越えていたからだ。
だが、十六夜達は知らない。亜夜のその不幸体質は―――
「―――ま、亜夜に降りかかる不幸は全部、俺がぶっ飛ばしたから問題なかったけどな」
「「流石、頼れるシスコンッ!!」」
「ヤハハ。お前らも後でぶっ飛ばしてやろうか?」
「「遠慮する(わ)」」
十六夜の素敵提案をキッパリと断る飛鳥と耀。
十六夜はチッ、と舌打ちした後、飛鳥に問いかけた。
「………それで?可愛い妹との戯れ合いを邪魔した相応のプレゼンはなんだ?」
「いいからコレを読みなさいシスコン。絶対に喜ぶから」
「シスコンじゃねえ。やっぱお嬢様、後で覚えとけよ?」
「断るって言ったはずよ?」
再び飛鳥に断られ舌打ちした十六夜は、不機嫌顔で飛鳥から受け取った招待状に目を通す。
「双女神の封蝋………白夜叉からか?あー何々?北と東の〝
「そう。よく分からないけど、きっと凄いお祭りだわ。シスコンもワクワクするでしょう?」
「オイ、ふざけんなよ百合お嬢様。こんなクソくだらないことで可愛い妹との戯れ合い中にも拘らず俺は側頭部をシャイニングウィザードで襲われかけ、妹が気絶させられたのか!?しかもなんだよこの祭典のラインナップは!?『北側の鬼種や精霊達が作り出した美術工芸品の展覧会及び批評会に加え、様々な〝主催者〟がギフトゲームを開催。メインは〝階層支配者〟が主催する大祭を予定しております』だと!?クソが、少し面白そうじゃねえか行ってみようかなオイ♪」
「ノリノリね。―――って誰が百合お嬢様よ!?」
「ヤハハ。さっきの仕返しだ百合お嬢様?」
軽薄な笑みで挑発する十六夜をキッと睨む飛鳥。
十六夜は亜夜の格好を見てふと呟く。
「………その前に妹の
「あら、駄目よ。亜夜さんの着替えなら私達でするもの。
「あ?んだとゴラ!」
「………というわけだから亜夜は没収」
十六夜が飛鳥に気が向いてる隙に亜夜を奪取する耀。それに十六夜は激怒した。
「あ、春日部テメェ!返しやがれッ!!」
「ムキになるところが余計にシスコン疑惑を駆り立てるのよ十六夜君?」
「あ?」
「シスコン扱いされたくなかったら私達に譲るべき」
それを言われてしまえば、引き下がるしかない。十六夜は舌打ちと共に飛鳥と耀を睨んで言った。
「………わかったよ。ただし、妹に手を出せばどうなるか―――
「「変態でシスコンな貴方とは違うから問題ない(わ)」」
「やっぱお前ら後でまとめてぶっ飛ばすか」
「「だが断るッ!!」」
青筋を額に浮かべながら告げる十六夜。それを拒否する飛鳥と耀。
一方で肝を冷やしながら見ていたリリが、血相を変えて呼び止める。
「ま、ままま、待ってください!北側に行くとしてもせめて黒ウサギに相談してから………ほ、ほら!ジン君も起きて!皆さんが北側に行っちゃうよ!?」
「……北………北側!?」
失神していたジンは飛び起き、話半分の情報で問い詰める。
「ちょ、ちょっと待ってください皆さん!北側に行くって、本気ですか!?」
「ああ、そうだが?」
「何処にそんな蓄えがあるというのですか!?此処から境界壁までどれだけの距離があると思っているんです!?リリも、大祭の事は皆さんには秘密にと―――」
「「「秘密?」」」
重なる三人の疑問符。しまった、という顔をするジンだが、時既に遅かった。振り返ると、邪悪な笑みと怒りのオーラを放つ耀・飛鳥・十六夜の三大問題児。
「………そっか。こんな面白そうなお祭りを秘密にされてたんだ、私達。ぐすん」
「コミュニティを盛り上げようと毎日毎日頑張ってるのに、とっても残念だわ。ぐすん」
「ここらで一つ、黒ウサギ達に痛い目を見てもらうのも大事かもしれないな。ぐすん」
泣き真似をするその裏側で、ニコォリと物騒に笑う問題児達。
隠す気の無い悪意を前にして、ダラダラ冷や汗を流すジンとリリ。
そしてジン=ラッセルは問答無用で拉致され―――
「………その前に亜夜さんの着替えを済ませましょう」
「そうだね。まずはそれが先だね」
「亜夜の着替えを終えたら白夜叉に会いに行くぞ。招待状を送り付けてきたんだ。何か祭りについて知ってそうだからな。上手くいけば北側へ連れてってもらえるかもしれないしな」
十六夜の言葉に頷いた飛鳥と耀は、その方針に決めたのだった。
「く、黒ウサギのお姉ちゃぁぁぁぁん!た、大変ーーーー!」
「リリ!?どうしたのですか!?」
「じ、実は飛鳥様が十六夜様と亜夜様と耀様を連れて………あ、こ、これ、手紙!」
リリが黒ウサギに手紙を渡した。
『愛する黒ウサギへ。
北側の4000000外門と東側の3999999外門で開催する祭典に参加してきます。
貴女も後から必ず来ること。あ、あとレティシアと白雪姫もね。
私達に祭りの事を意図的に黙っていた罰として、今日中に私達を捕まえられなかった場合
あと、黒ウサギ。来たら私が【
P/S ジン君は道案内に連れて行きます』
「な、―――……何を言っちゃってんですかあの問題児様方ああああ―――――!!!」
黒ウサギの絶叫が響き渡る中、レティシアが手紙を覗き見て、ふふっ、と笑う。
「………〝愛する〟か。飛鳥に愛されて幸せものだな、黒ウサギは」
「へ?―――――あぅ、飛鳥さん………っ!」
絶叫が一転して、ウサ耳まで朱に染め恥ずかしそうに照れる黒ウサギ。
だが、違う意味で追い打ちをかけるように、白雪姫が手紙を覗き見て、ほくそ笑んだ。
「〝O・SHI・O・KI〟付きみたいだな。往くも地獄、往かぬも地獄とはまさにこの事をいうんだな」
「………飛鳥さんに〝O・SHI・O・KI〟っ!?――――――――――ふきゅぅ」
バタリ。
黒ウサギは顔を真っ赤にすると、髪も淡い緋色に染め上げ目を回しながら倒れ落ち、暫くの間気絶したのだった。