最強問題児の妹も異世界から来るそうですよ?―しっかり者だけど兄好き(ブラコン)!? 作:問題児愛
眠ったままの亜夜にメイド服を着せた飛鳥達五人は〝サウザンドアイズ〟の支店に来たのだが、
「お帰り下さい」
「まだ何も言ってないでしょう?」
女性店員に門前払いを受けてしまっていた。
飛鳥は口を尖らせて抗議した。
「そこそこ常連客なんだし、もう少し愛想良くしてくれてもいいと思うのだけれど」
「常連客というのは店にお金を落としていくお客様の事で、あなた達のような換金しかしない者は取引相手と言うのです」
「あら、それもそうね。じゃあお邪魔します」
納得し、侵入しようとする飛鳥達。
だが、それをさせまいと女性店員が立ち塞がり、十六夜達に叫ぶ。
「だからうちの店は!〝ノーネーム〟御断りです!オーナーが居るときならともかく今は」
「やっふぉおおおおおおお!漸く来おったか小僧どもおおおおおおお!」
突如、白夜叉が嬉しそうな声を上げ、空の彼方から降ってきた。
ズドォン!と荒々しく着地し、地響きと土煙を舞い上がらせて登場した。
十六夜はお姫様抱っこしている亜夜に土煙がいかないように払いながら、呆れたように女性店員に言う。
「ぶっ飛んで現れなきゃ気が済まねえのか、此処のオーナーは」
「………。そういう貴方も御自分の妹と戯れなければ気が済まないんですね」
「あん?そりゃ大事な妹に何かあっては困るからな」
ヤハハ、と笑いながら亜夜の頭を撫でる十六夜。ハァ、と溜め息を吐く女性店員。
土煙で咳き込む飛鳥の代わりに、耀が招待状を白夜叉に見せた。
「招待、ありがと。だけで私達じゃ北側への行き方が分からなくて………」
「よいよい、全部分かっておるから先ずは店に入れ。条件次第で路銀は私が支払ってやる。………秘密裏に話しておきたい事もあるしな」
「へえ?それって面白い事か?」
「さて、どうかの。まあおんしら次第だな。―――ところで小僧」
「なんだ?」
「おんしの妹は熟睡中かの?」
眠っている亜夜を指差して問う白夜叉。十六夜は首を横に振って否定した。
「いんや。久々に亜夜の不幸体質が不運を呼び込み気絶中だ」
「ほう、気絶中か………そうかそうか」
白夜叉は一瞬ニヤリと笑って踵を返し、暖簾をくぐった。
飛鳥と耀は嬉々としてジンを引き摺りながら店に入っていき、十六夜だけは白夜叉の表情に不思議に思ったが、これ以上深くは考えずに暖簾をくぐった。
《長いので割愛》
「ちょっと待って。その話、まだ長くなる?」
「ん?そうだな。短くともあと一時間程度はかかるかの?」
「それまずいかも。………黒ウサギ達に追いつかれる」
耀の発言にハッと気がつく十六夜とジン。それと対照的に飛鳥が邪悪な笑みを浮かべて言う。
「そんな急ぐ必要はないわよ。黒ウサギに来たら『O・SHI・O・KI』してあげるって書いておいたから暫く気絶してるはずだわ」
「「(お嬢様・飛鳥)ナイス!」」
「………はぁ、」
飛鳥に親指を立ててグッジョブ!する十六夜と耀。ジンは深い溜め息を吐いた。呵々と哄笑を上げる白夜叉。
だが、急に十六夜はフッと笑みを消して真剣な顔で白夜叉に訊ねた。
「時間が出来たから聞いておきたいんだが白夜叉」
「なにかな?」
「あのクソ悪魔―――サタンの野郎に何か動きはねえか?」
「サタン?―――ああ、あやつのことならここ一月ほど動きどころか目撃者もおらんよ」
白夜叉の返答に十六夜はホッと安堵した。だが、またいつか亜夜を狙ってサタンが目の前に姿を現すかもしれない。油断大敵である。
「それよりも小僧」
「なんだ?」
「私は未だにおんしの妹と戯れたことがない!だから、」
「断る」
即答である。白夜叉は拗ねたように唇を尖らせて言う。
「なぜなのだぁ………その小娘は寝ておる時くらいにしか戯れるチャンスが皆無だというのにぃ」
「んなこと知るか!アンタに大事な妹を渡したら何されるか分かったもんじゃない!」
「「十六夜(君)は亜夜(さん)のお母さんなの!?」」
まるで亜夜を我が子のように抱きしめ庇う十六夜。そんな彼に飛鳥と耀がつっこんだ。
白夜叉は「ぐぬぬ!」と十六夜を恨めしそうに睨みつけ―――ふと妙案が浮かびニヤリと笑う。
「―――ふん!小僧がその小娘を私に渡してくれないというのなら路銀は支払ってやらん!」
「なん………だと!?」
「「それは非常に困る!」」
飛鳥と耀は十六夜が一瞬固まったその隙に亜夜を奪取。
「―――あっ、しまっ………!」
「「はい、白夜叉様」」
「うむ。ありがとうおんしら!ふふ、これで交渉成立だ!おんしらを北側へ連れていってやろうッ!」
上機嫌の白夜叉は亜夜を膝の上に乗せ自分に凭れかからせると、両手を前に出して柏手を打つ。
「―――ふむ。これでよし。御望み通り、北側に着いたぞ」
「「「「―――………は?」」」」
素っ頓狂な声を上げる飛鳥達。まあ、ものの一瞬で北側に到着は馬鹿げている。
だが、そんなことはどうでもいいと飛鳥と耀は期待を胸に店外へ走り出した。その後をジンが慌てて追いかける。
一方、十六夜はユラリと立ち上がり、白夜叉を憤怒の瞳で睨みつけた。
「亜夜を返してもらうぞ駄神!」
「カッ、誰が返すか!これからこの小娘は私の着せ替え人形になるのだからなッ!!」
「!?」
十六夜の動きはピタリと止まった。白夜叉は亜夜を抱き抱えて後ろに下がる。
しかし十六夜は怒るどころかニヤリと笑って一言。
「よし、俺も乗っかるぜ」
「なぬ?」
「乗っかるって言ったんだよ。………しっかし、アンタも馬鹿だなあ。俺が亜夜にお願いすりゃ一発OK貰えるってのによ」
「!!」
そう。逆廻亜夜は
白夜叉はその事をすっかり忘れていたことに頭を掻いて苦笑いした。
「………いやはや、忘れておったのう………小僧から奪い取らずに最初からそうすれば良かったわい」
「ヤハハ。ま、そういうことだ。―――つうわけで起きろ亜夜」
そう言って十六夜は亜夜の頭を軽く小突く。すると、「うにゃ………」と言って目を覚ました。
「………あれ?お兄ちゃん?」
「よう。随分と眠っていたが大事はないか?」
「う、うん。特に問題は―――」
「うむ。おはようだの、亜夜ちゃん」
ドキリと心臓を跳ねさせる亜夜。そう言えばなんでお兄ちゃんと向かい合わせなんだろう?それに今の声って―――!
恐る恐る後ろを確認すると、ニヤニヤ笑う白夜叉がすぐそこにいた。しかも、よく見たら彼女に抱き抱えられていた。
「ふにゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!?なんで私、白夜叉ちゃんに抱き抱えられているんですか!?」
「ん?ふふ、なんでかのう?亜夜ちゃん♪」
「うにゃ!?」
不意に白夜叉の腕に力が籠る。まるで亜夜を逃がさないように。
嫌な予感がして亜夜は十六夜に助けを求めようと視線を向ける。
その視線に気がついた十六夜はニヤリと笑って、
「ああ。今から亜夜はお兄ちゃんの着せ替え人形になってもらうぜ」
「ふぇ!?ききき、着せ替え人形ですか!?」
「おう。お兄ちゃんの命令なんだし勿論―――
「う、うにゃぁぁぁ………お兄ちゃんが圧力をかけてくるよー!」
ヤハハと笑いながら詰め寄る十六夜。冷や汗をダラダラ流す亜夜。これはもうお願いではなく強制である。
だが、亜夜はモジモジしながら恥ずかしそうに十六夜を見上げて言う。
「お、お兄ちゃんがどうしてもっていうなら―――私はお兄ちゃんの為に着せ替え人形になっても……いいよ?」
「よし!許可は貰ったぜ白夜叉。だが我が妹は病弱だからな。露出は少な目ので頼む」
「うむ!分かったぞ!」
白夜叉は嬉々として洋服を用意し始める。園児服、ナース服、ゴスロリ服、魔法少女服などなどを漁っては取り出す。
十六夜はニヤニヤとそれらの服を見つめて、亜夜に何が一番似合うか考察する。
亜夜は『やっぱり断っておけばよかった』と後悔するのだった。
《数分後》
「「―――うん!これでよし」」
「う、うにゃぁぁぁ………」
ペタンと座っている亜夜を満足そうに見つめる十六夜と白夜叉。
涙目の亜夜の格好は―――
「うぅ、どうして中学生の私が
そう。亜夜の格好はナースでもなければゴスロリでもなく、はたまた魔法少女でもない。
黄色い帽子に、水色の園児服に赤いスカート。そしてネームプレートには『さかまき あや』と書いてあり、左胸の服に安全ピンでしっかり止めてあった。完全無欠の幼稚園児である。
ただ、亜夜の身長が園児より高めなので違和感があるが。
十六夜と白夜叉は亜夜に親指を立てて、
「「超グッジョブ!」」
と大絶賛であった。それに亜夜はガクリ、と頭を項垂れたのだった。
予告編
十六夜と亜夜の北側デート!?
メイド兎(黒ウサギ)と飛鳥の追いかけっこ!
耀とレティシアは〝造物主達の決闘〟へ出場!
そして、十六夜と亜夜の前にサタンの刺客○○○が………
二巻が完結するまでこちらのSSを進めるつもりです。