最強問題児の妹も異世界から来るそうですよ?―しっかり者だけど兄好き(ブラコン)!? 作:問題児愛
「―――あら?漸く来たのね十六夜君………!?」
「どうしたの?飛鳥―――!?」
「………飛鳥さんに耀さん?一体どうし―――!?」
高台から美麗なガラスの街並みを眺めていた飛鳥と耀とジンは、十六夜達の気配を察して振り返り―――固まった。
十六夜と亜夜が手を繋いでいる光景はよく見ることなので問題はない。………問題なのは亜夜の格好なのだ。
そう。その格好というのは、
「「「なんで園児服なんか着てるの亜夜(さん)!?」」」
「う、うにゃぁぁぁ………お兄ちゃんと白夜叉ちゃんに着せられたんですよぅ」
―――着せ替え人形と化していた亜夜は、
メイド服も大概だが園児服の方が断然恥ずかしい格好なのだ。後悔と羞恥に涙目で飛鳥達を見つめる亜夜。
十六夜と白夜叉がニヤニヤと園児っ娘・亜夜を見ていると、飛鳥と耀も親指を立てて―――
「「いい!超グッジョブ!」」
「へ?」
「ごめん亜夜さん………凄く似合ってます―――!」
「ふにゃ!?ジンまで………!?」
まさかのジンにまで絶賛されてしまった。亜夜は誰も助けてくれないのだと悟り、涙目のままガクリと項垂れた。
十六夜はヤハハと笑いながら亜夜の頭を軽くポンと叩いて言う。
「似合ってるんだから気を落とすなって妹よ」
「それが余計に私の心を深々と抉ってるんですよお兄ちゃん!」
「そか。なら気分転換に北側デートといくか?」
「で、デート!?」
〝デート〟と聞くや否や、亜夜はガバッと立ち上がり瞳をキラキラ輝かせながら十六夜を見上げる。
それに十六夜はニヤリと笑って一言。
「ああ。ただし条件は―――
「―――………え?」
「え?じゃないぜ駄妹。メイド服姿の亜夜とデートも面白そうだが、俺は
固まる亜夜に笑って説明する十六夜。〝気に入っちまった〟とはつまり、〝好み〟ということだ。
亜夜は十六夜の気持ちを汲み取ると、うんと頷いて返した。
「分かりました。お兄ちゃんが好みな方でいいですよ。………私はお兄ちゃんに喜んで頂けるなら本望です!」
「よし!んじゃ決まりだな。北側デート開始といくぞ亜夜」
「う、うん!」
亜夜は十六夜と笑みを交わし合うと、彼にお姫様抱っこされて今にもこの場を離れようとしていた―――その時。
「漸く見つけたのですよ、お馬鹿様方ああああああああああ!!!」
ズドォオオオン!!と、大絶叫と共に爆撃のような着地を見せるメイドっ娘・黒ウサギ。
髪の色は淡い緋色に変わっており、憤怒の瞳で亜夜達を貫く。
黒ウサギの登場に焦り始める亜夜・十六夜・耀。だが、飛鳥だけは黒ウサギを睨み返して物騒に笑う。
「―――ウフフフ、待ってたわよ黒ウサギ?」
「へ?あ、飛鳥さん!?そ、その!お仕置きは駄目なのですよ………!」
「あら?私達に〝
「ひっ………!」
ニコリと笑う飛鳥。だが、その裏側はきっと邪悪に満ちているのだろう。それを感づいた黒ウサギは怯えて一歩下がる。
それを追うように一歩踏み込んだ飛鳥は―――
「フフフ、悪い子には『O・SHI・O・KI』しないと、ねえ!」
タン!と跳躍した飛鳥はとても少女とは思えない軽やかな動きで屋根から屋根へと跳び移り、あっという間に黒ウサギの目の前に到着。
黒ウサギは「へ?」と驚き、飛鳥はニコリと笑って、
「―――覚悟はいいかしら?黒・ウ・サ・ギ………!!」
「~~~~~!!?よくないのですよおおおおおおお!!!」
青ざめた黒ウサギは脱兎の如く逃走。それを見た飛鳥はニヤリと笑って呟いた。
「追いかけっこね、いいわ。サクッと貴女を捕まえて『O・SHI・O・KI』タイムといくわよ!」
飛鳥は嬉々として逃走する黒ウサギの背を追うのだった。
その光景を亜夜達は唖然と見ていると、もう二人のメイドが到着した。
「見つけたぞ主殿達!」
「観念して我々に捕まるんだな!」
すると、その声に五感が鋭い耀が反応し、レティシアを見つけるや否や旋風を巻き起こして飛翔。
そして―――
「レティシア!」
「ん?―――うわっ!よ、耀?」
「捕獲~♪」
耀は漆黒の翼を広げて飛翔していたレティシアに飛びつき捕獲した。
レティシアは一瞬驚いたが、すぐに苦笑いして「私が捕獲する側なんだが」と呟いた。
耀はそんなことはどうでもいいとばかりにレティシアに頬擦りする。
やれやれ、とレティシアは耀の頭を撫でた。
一方、逆廻兄妹は白雪姫と睨み合いっこしていた。
「ふふ、我が主と妹君。悪いようにはしないから大人しく捕まってくれるとありがたい」
「ヤハハ、断る!これから我が妹と北側デートをするんでな!」
「な、北側デートだと!?」
衝撃を受ける白雪姫。十六夜はその隙を逃さず亜夜をお姫様抱っこしたまま高台から飛び降り、ヤハハハハハ!と豪快に笑いながら逃走。
白雪姫はハッと気がつき追おうとするが、彼女の走力では追いつけないと悟り追走を断念した―――わけではなく、
「チッ、ジン殿!」
「え?―――うわっ!?し、白雪姫さん………!?」
「ええい、喋るな!舌を噛むぞ」
「そ、そういう問題じゃ―――うわああああああああ!!?」
近くにいたジンを脇に抱えると、高台から飛び降り追走を開始した。ジンの絶叫を残しながら。
次から次へと起こる出来事に白夜叉はふむ、と頷いて、
「………
そう呟いて白夜叉はレティシアと耀に目を向けた。
その視線に気がついたレティシア達は翼を畳んで白夜叉の下へ降り立った。
「………何か用か白夜叉?」
「ああ。ちょいと気になることがあっての」
「気になること?」
白夜叉の発言に小首を傾げて聞く耀。うむ、と頷いて白夜叉は言う。
「………おんし達は―――
「―――は?」
「………え?」
キョトンとするレティシアと耀。まあ、いきなり付き合っているのか?など聞かれればそうなるだろう。
やがて、その意味を察したレティシアは両手を前に出して振り否定した。
「あ、いや!私達はそういう関係ではない」
「む?そうか。てっきりデキているものだと私は思っておったからな!」
呵々と哄笑を上げる白夜叉。疑問符を浮かべる耀。苦笑を零すレティシア。
二人を見た白夜叉は―――ふと妙案が思いつきニヤリと笑った。
「そうだ。おんしらの仲を深めるのに丁度いいギフトゲームがあるのだが………参加してみないか?」
「………それはどんなの?」
耀が問うと白夜叉はチラシを着物の袖から取り出して見せた。
『ギフトゲーム名〝造物主達の決闘〟』
「………?創作系のギフト?」
「うむ。人造・霊造・神造・星造を問わず、製作者が存在するギフトのことだ。北では、過酷な環境に耐え忍ぶ為に恒久的に使える創作系のギフトが重宝されており、その技術や美術を競い合う為のゲームがしばしば行われるのだ。おんしの父から譲り受けたギフト―――〝
「え?レティシアも出れるの!?」
「え?―――ああ。とはいっても使用出来るのはランスくらいだろうがな」
少し自嘲気味に笑うレティシア。神格と数多くの武具を失った為、耀の足を引っ張ってしまわないかと思ったからだろう。
耀はそれを察してレティシアの手を握って励ました。
「大丈夫。レティシアは弱くない。それに出れるなら私はレティシアと共闘したいな」
「………本当に私なんかでいいのか?聖剣を扱える飛鳥の方が適任だと思うんだが」
「……そうかもしれないけど、私はレティシアと出たいの!………駄目?」
「!?」
まるで小動物のように瞳を潤ませて懇願する耀。それにレティシアは不覚にも『可愛い』と思ってしまった。
困ったようにほんのり赤くなった頬を掻いたレティシアは、してやられたと苦笑いで返した。
「………そんな顔で頼まれては断れないじゃないか。―――ああ。私でよければお手伝いさせてもらうよ」
「ホント!?ありがとうレティシア!」
レティシアが参戦する意思を見せ、それに耀はとても嬉しそうな顔で抱きついた。やれやれと耀の頭を撫でるレティシア。
一方、白夜叉は『あのレティシアをときめかせるとは………中々やりおる』と心の中で呟いていた。
そして、耀とレティシアは〝造物主達の決闘〟に出場することになったのだった。
一方、逆廻兄妹は絶賛〝北側デート〟を楽しんでいた。
白雪姫の追っ手を撒いた十六夜は、走るのを止めて亜夜を下ろし赤窓の歩廊を散歩する。
「うわあ!全てが真っ赤ですね、お兄ちゃん!」
「そうだな。東側とはまた別の神秘的な光景を醸し出してるな」
「うん!………あ!あそこにクレープ屋がありますよ!」
「ん?ホントだな。―――よし!あっちにベンチあるからクレープ買って食うか!」
「うん!」
十六夜の提案に元気よく返事する亜夜。二人はクレープを買ってベンチに腰かけると、早速齧りついた。
「うにゃあ~………美味しい♪」
「ヤハハ、そいつはよかった」
美味しそうにクレープに齧りつく亜夜を嬉しそうに見る十六夜。
だが、ふと亜夜の顔に何かついているのを発見してプッ、と噴き出した。
「プッ―――ヤッハハハハハ!」
「へ?急に笑い出してどうしたんですかお兄ちゃん?」
「ん?いや、だって相変わらず亜夜は食べるの下手だなと思ってだな!」
「………?」
十六夜の笑いのツボが分からず小首を傾げる亜夜。それに気がついた十六夜は、クックッと喉を鳴らしながら笑って言った。
「口の周りにつくのは分かるが―――鼻っ頭にチョコクリームをつけてるときたもんだからな!」
「!?」
亜夜はハッと手鏡を取り出して自分の顔を確認する。十六夜の言う通り、鼻っ頭にチョコクリームがついていた。
「ふにゃぁぁぁぁぁ!?」
悲鳴(?)を上げた亜夜は、顔を真っ赤にして勢いよく立ち上がる。
は?と亜夜の行動に驚く十六夜。そんな彼に背を向け両手で真っ赤な顔を隠してその場にしゃがみこんだ。
この行動は所謂〝恥ずかしいから私を見ないで!〟というものだろう。
それを察した十六夜はニヤリと笑って亜夜の肩に触れようとした―――その時。
「―――――
「!?」
ハッと少女の声に振り返る十六夜。
するとそこには、黒いフードを深く被った顔がよく見えない少女がいた。
そして、その少女はしゃがみこんだ亜夜に歩み寄りこう告げた。
「お迎えに上がりましたよ―――――