最強問題児の妹も異世界から来るそうですよ?―しっかり者だけど兄好き(ブラコン)!? 作:問題児愛
「は?」と魔術師の少女の発言を聞いて固まる飛鳥と黒ウサギ。まああって早々『死んでください☆』などと言われれば無理もない反応だろう。
魔術師の少女は小首を傾げた。
「………お姉さん達は私の
「―――え、ええ。当然でしょう!私も黒ウサギも死にたくないわ!」
「そうです!飛鳥さんの言う通りなのですよ!―――って死にたいわけないじゃないですかッ!!」
魔術師の少女の誘いを全力で断る二人。魔術師の少女は「ぶー!」と唇を尖らせた。
「つまんなーい!サタン様はお姉さん達のこと結構高く評価してるのに」
「「………ッ!!?」」
〝サタン〟と聞いて臨戦態勢を取る二人。飛鳥は魔術師の少女を睨みつけて問う。
「サタンですって!?貴女あの外道の知り合いなの!?」
「んー?サタン様の同胞だけど?私はみんなからは〝アシュ〟って呼ばれてるんだあ♪」
食いついてくれたのが嬉しかったのか、アシュと名乗った少女は機嫌良く返した。
アシュがサタンの同士だと知り、黒ウサギは飛鳥に目配せしながら言う。
「あ、飛鳥さん!彼女は危険です!サタンの仲間だというなら早急に倒しませんと十六夜さんと亜夜さんが狙われる可能性があります!!」
「!!そ、それもそうね!十六夜君と亜夜さんを狙っているあの外道悪魔の仲間だものね。ここで倒して白夜叉に突き出せば」
と、飛鳥の言葉はここで遮られた。アシュの愉快そうな笑い声によって。
「あッははははは!え?もしかしてお姉さん達が私を倒せるとでも思ってるの?それはちょっと思い上がり過ぎじゃない?」
「なんですって?」
「それにお姉さん達が心配している彼らなら、私やサタン様の仲間達が今ごろ襲撃してるよ?」
「なっ………!」
アシュの言葉に絶句する二人。彼女以外にもサタンの同士がいるとしたら―――早急に目の前の彼女を打倒し救援に向かわなければまずい。
いくら十六夜でも亜夜を守りながら魔王クラスの悪魔を二人以上相手にするのは困難なはずだから。
黒ウサギは飛鳥と顔を見合わせ頷き合うと、右手を天に掲げて唱える。
「〝
すると次の瞬間、黒ウサギの頭上から光り輝く剣が―――聖剣エクスカリバーが形成され彼女の掲げた右手に収まる。
「飛鳥さん!」
その聖剣を飛鳥に手渡す。飛鳥はそれを受け取り構えた。
「ふふ、ありがとう!黒ウサギ」
聖剣エクスカリバーとは、アーサー王伝説に登場する、アーサー王が持つとされる剣。魔法の力が宿るとされ、ブリテン島の正当な統治者の象徴されることもある。
同じくアーサー王伝説に登場し、アーサーの血筋を証明する石に刺さった剣と同じものとされることがあるが、別物とされることもある。
エクスキャリバー、エスカリボール、エクスカリボール、カリバーン、キャリバーン、コールブランド、カリブルヌス、カレトヴルッフ、カレドヴールッハなど様々な異称があるが、これらは英語、フランス語、ラテン語、ウェールズ語の発音の違いや写本の表記の揺れで生じたものであり、全て同じ剣を指す言葉である。
エクスカリバーは、アーサー王伝説の初期から登場している。
飛鳥がアシュに聖剣の切っ先を向けると、アシュは「へー」と愉しそうに笑う。
「ホントに聖剣扱えちゃうだ!これはちょっと楽しめそうかも」
「あら、お楽しみはこれからよ―――!」
飛鳥は突き出していた聖剣を一旦下ろして屋根上を駆けてアシュに肉薄する。そして彼女に向けて聖剣を振るうが、
「わあお!思っていたより速いね」
あっさりと避けられてしまった。だが飛鳥はそんなことは気にせず連続で斬りかかる。
アシュはそれらを躍るように避けていき、飛鳥の額に小さな指を触れさせた―――瞬間。
「―――ッ!?」
飛鳥の体は容易く後方に吹き飛ばされた。
「飛鳥さん!」
吹き飛ばされた飛鳥を黒ウサギが受け止めた。黒ウサギは飛鳥をその場に下ろすと、飛鳥は黒ウサギのウサ耳を優しく撫でてお礼を言う。
「ありがとう黒ウサギ。助かったわ」
「いえいえ。飛鳥さんの恋人として当然のことをしたまでですから!」
黒ウサギと飛鳥は笑みを交わし合う。一方、アシュはニヤニヤと笑っていた。
「へー、お姉さん達恋人同士だったんだ!じゃあなおさら―――両方手に入れないとね♪」
「何?」
アシュの言葉に視線を彼女に戻す二人。するとアシュは両手を広げて狂喜な笑みを見せた。
「おいで―――私の可愛い
アシュがそう告げた瞬間、彼女の周りにはどこからともなく異形な何かが現れて
飛鳥達はそれを見てゾッとした。よく見たらそれらは異形な何かではなく―――死に絶えた『人間』の亡骸だったからだ。
死体はまるでゾンビのように蠢き、飛鳥達へ襲いかかる。
「黒ウサギ!貴女は下がって!」
「は、はいな」
黒ウサギは飛鳥に言われた通りに後ろへ下がる。飛鳥は聖剣を前に構えて〝威光〟を告げた。
「聖剣エクスカリバーよ、最大出力をもって―――
その言葉に従うように聖剣の輝きは増し、迫り来る死体達にめがけて光の奔流を解き放った。
その特大の光線とも云える光の奔流は死体達を一体も残さずに呑み込み、死霊は全て浄化され天へと召されていく。
黒ウサギはその光景を見入るように眺めていると、不意に飛鳥の背後に魔術師の少女アシュの姿を発見して悲鳴を上げる。
「あ、飛鳥さん!危ない―――!」
「―――え?」
黒ウサギの声にハッとして振り返る飛鳥。するとそこには―――狂喜な笑みを浮かべているアシュの姿があった。
「あはぁ♪油断は禁物だよ?お姉さん!」
「―――ッ」
飛鳥は避けようとしたが、それよりも速くアシュの小さな手は飛鳥の胸を貫こうとした。その時、
「―――呵ッ!させんぞ小娘ッ!!」
「………ッ!!!?」
上空から突如現れた白髪の着物風の服を着た幼い少女白夜叉の怒号と共に放たれた鋭い蹴りがアシュを襲撃し、アシュは幾つもの建築物を破壊しながら吹っ飛んでいった。
白夜叉の登場に驚きの声を上げた黒ウサギ。
「し、白夜叉様!?どうして此処へ!?」
「嫌な予感がしてな。来てみたら見事的中………危ないところだったの、おんし」
「え、ええ。助かったわ白夜叉」
九死に一生を得た飛鳥は白夜叉に頭を下げてお礼をした。白夜叉は「うむ」と頷いて、
「では、助けた褒美におんしのその年齢にしては発育のいい胸を生揉みさせてく―――ゴバァ!」
白夜叉の発言の途中に黒ウサギが顔を真っ赤にさせながら、ズドパァアアアン!!とハリセンを白夜叉の頭に奔らせた。
「何を言うんですかこの駄神様!!それに飛鳥さんは私のモノなのです!何人足りともそんな真似はさせませんっ!!!」
「ぐ、それは残念だのう………では黒ウサギの豊満なその胸を生揉―――グボハァ!?」
標的を黒ウサギに変更した白夜叉だったが、飛鳥から聖剣の強烈な峰打ちを受けて悶えた。
「あら、黒ウサギは私のモノよ!誰にも譲る気ないわっ!!」
「ぐぬぬ………二人の愛情は固くて隙が全くないのぅ」
苦笑を零す白夜叉。警戒を怠らずに白夜叉を睨みつける。そんな他愛もない会話をしていると、先程白夜叉の蹴りで吹き飛ばされていたアシュが戻ってきていた。
「相変わらず敵には容赦ないねー、白夜王サマ?」
「ハッ、悪魔に―――魔王アスタロトに手加減など無用だ!」
アシュではなく魔王アスタロトと呼ばれた少女はムッとした顔で白夜叉を睨んだ。
アスタロトとは、ヨーロッパの伝承に伝わる悪魔の一柱。種々の魔術や悪魔学の文献において高位の悪魔として扱われる。
グリモワールの魔術書にもアスタロトの名がしばしば見られる。
アスタロトはギリシャ語では
他にも40の悪魔の軍団を率いる強壮な大公爵であり、グリモワール『大奥義書』では皇帝ルシファー、君主ベルゼビュートに並ぶ地獄の支配者の一人として扱っている。
サルガタナス、ネビロスという配下の大悪魔と共にアメリカに住まうとされる。
そして白夜叉の指す〝魔王アスタロト〟とは、カバラにおける第4の
アスタロトは蒼い髪の毛先をクルクルと弄りながら喋る。
「ねえ白夜王サマ、邪魔しないでくれる?あとちょっとでそのお姉さんは私の
「ふん、小娘。私の同士に手を出したのだ。無事に帰れると思うなよ?」
白夜叉は飛鳥と黒ウサギを背に庇うと、アスタロトに向けて凄まじい殺気を放つ。
だが無感動な瞳は全く動じず、白夜叉に攻撃しようとした―――その時、
『そうだなあ。白夜王が相手じゃ分が
「「「!?」」」
どこからか聞こえる男の声に三人は警戒した。ただ一人、アスタロトだけはコクリと頷いて返す。
「わかった。本当は皆私の
「「!!」」
〝今日は〟ということは、明日も襲う気満々のアスタロトである。飛鳥と黒ウサギが身構えていると、白夜叉が「呵ッ!」と睨み返した。
「来るものなら来てみろ!この私が相手になってやろうかッ!!」
『ほう?そいつは面
「何?」
意味深な言葉を告げた男の声に白夜叉は怪訝な顔を見せる。
ゲラゲラと下品な笑い声が聞こえると、アスタロトの足元に影が蠢き、アスタロトはその影の中へ体を沈めていく。
白夜叉はハッと気がついてアスタロトに殴りかかろうとしたが、空振りに終わった。
『それじゃあな、白夜王。明日を楽しみにしてるぜ』
その言葉を最後に悪魔二人の気配は途絶えた。白夜叉は険しい表情でアスタロトのいた場所を見つめる。
「(声の主は恐らくあやつだろうな。しかしあの言い分………私を封印する術を持っておるのか?だとしたら要警戒せんといかんのう)」
「白夜叉様?どうかなさいましたか?」
「ん?ああいや、何でもない」
「そう。なら急ぎましょう黒ウサギ!十六夜君と亜夜さんの下へ」
「はい、飛鳥さん!」
黒ウサギと飛鳥は十六夜達の下へ急いで向かう。白夜叉はその背を見つめながら呟いた。
「魔王サタンに魔王アスタロト、か。彼奴らはまた動き出すというのか………かつて魔王ルシファーが率いていた、11の魔王が集結した箱庭上層のコミュニティ―――
王道の聖剣エクスカリバーの登場でした。
魔法の力が宿る剣だから魔剣と称してもいいような気がするのは私だけでしょうか?
神聖なる剣だから魔剣の名は相応しくないとかかな………
次回は十六夜が悪魔二人と奮闘する予定です。