最強問題児の妹も異世界から来るそうですよ?―しっかり者だけど兄好き(ブラコン)!? 作:問題児愛
今回は蛇神戦まで!
「うにゃぁぁぁぁ!お兄ちゃんはやーい!」
「ヤハハハ!俺の本気はまだまだこんなもんじゃないけどな」
十六夜と亜夜の逆廻兄妹は現在〝世界の果て〟へデート中である。
十六夜が亜夜をお姫さま抱っこしながら森林を駆けているだけなのでデート言えるかどうかは知らないが。
妹が満足しているからデートと読んでもよしとしよう。
それにしても彼女の兄は第三宇宙速度で本気じゃないというのだからデタラメにも程がある。
「まだ速く走れるんですか!?」
「おう。本気出してみるか?」
「うん!お願いお兄ちゃん!」
「よし。んじゃ振り落とされないようにしっかりと掴まっとけ」
「了解!」
亜夜は落ちないように十六夜の制服を強く握りしめて備える。
それを確認した十六夜は、更に速度を増した。
第三宇宙速度が生易しいとも思える程の俊足で森林を駆け回る。
「うっにゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?」
「ヤッハハハハハハハハハハ!!!」
そしてあっという間に森林を抜けると、大河の岸辺に出る。
十六夜は足を止めて大河に流れる大滝を眺めて呟く。
「へえ!こいつは
大滝を見てはしゃぐ十六夜は、亜夜の顔を覗き込んで―――固まった。
何故固まったかというと、
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥うにゃぁぁぁぁ‥‥‥」
亜夜が猫のような声を発しながら目を回していたからである。
まあ、
何故十六夜がこれ程の速度を出せたかというと―――亜夜のギフトの影響である。
これについては追々説明するとして、
「‥‥‥‥‥」
十六夜は何を思ったのか、亜夜のスカートに手を伸ばし、
「ふむふむ、白か。相変わらず清潔感のある
遠慮無用に捲ってスカートの中身を確認する。
それに気づいた亜夜は、
「ふにゃぁぁぁぁ!?」
赤面しながらすぐさまスカートの裾を押さえて十六夜を睨む。涙目で。
「お兄ちゃん!」
「何だ?」
「勝手に見ちゃ駄目って言ったはずです!見たいなら私に許可とってからにしてください!」
「‥‥‥許可とれたらいいのかよ」
苦笑いを浮かべながらつっこむ十六夜。
それに亜夜はもじもじしながら口元に手を持っていき、
「勿論‥‥‥お、お兄ちゃんだから‥‥いいんですよ?他の男子には是が非でも見せるつもりはありませんから」
「!?‥‥‥お、おう」
恥じらいながら言う。
そして不覚にもまた一瞬ときめいた十六夜は、若干頬を赤らめてぎこちない返事をする。
本当は妹を抱きしめてよしよししたいところだが、まだ理性が勝っている兄であった。
『―――イチャついてるところ悪いんだが。此処は我の
「あん?」
「うにゃ?」
十六夜と亜夜が同時に振り返ると其処には―――
「‥‥‥へえ?随分とデカいヘビだな」
「おっきい!」
身の丈三〇尺強ほどある巨躯の白い大蛇が鎌首を起こして大河から姿を現した。
それを見た逆廻兄妹は驚嘆の声を上げる。
それに満足してか、クックと喉を鳴らして笑う白い大蛇―――蛇神。
『フフ。我は蛇神だからな。巨躯なのは当然のこと』
「ふぅん?じゃあオマエ―――
『何?』
「!?お兄ちゃんもしかして‥‥‥!?」
十六夜の言葉に嫌な予感がして咄嗟に叫ぶ亜夜。
だが十六夜は彼女を右手で制す。
「まあいいじゃねえか。ちょっくらアイツと
「‥‥‥そうですか。でもお兄ちゃん」
「ん?」
「あの白蛇ちゃんを―――
「分かってるって。‥‥‥んじゃ行ってくる」
「うん。行ってらっしゃい」
「おう」
十六夜は亜夜を降ろすと、嬉々として笑い、蛇神を見上げる。
それに気づいた蛇神は、ニヤリと笑って彼に問う。
『フン、貴様。先程は面白いことを抜かしてくれたな?〝オマエは強いのか?〟と』
「ああ」
『答えはYESだ。蛇神を名乗って弱いわけなかろうが!』
「‥‥ハハ、そりゃ失礼。そんじゃまあ―――」
十六夜は獰猛に笑って宣言した。
「俺を試せるかどうか―――――
『!!‥‥‥フン。ならば来い人間!返り討ちにしてくれる!』
「ハッ、そんじゃ遠慮なく―――」
決闘が成立した瞬間。十六夜は大地を砕く勢いで跳躍。
蛇神の腹部に到達すると、
「行かせてもらうぜ!」
『グガッ!?』
空中で身体を捻って回し蹴りを打ち込んだ。
腹部を蹴られた蛇神は、背後の断崖絶壁に叩きつけられ苦悶の声を上げる。
「うにゃぁぁぁぁ‥‥‥相変わらずお兄ちゃんの一撃は強烈ですね‥‥」
それを見ていた亜夜は、兄の異常に失笑する。
一方、大河の岩場に着地した十六夜を睨みつけた蛇神は、
『やってくれたな小僧ォォォ!!』
怒りのスイッチが入ったらしく一本の特大な竜巻く水柱を生み出して、十六夜に向けて放つ。
「カッ、
それをあっさり躱してみせた十六夜は、再び跳躍し今度は蛇神の顎にアッパーを叩き込んだ。
『―――ガッ!?』
強烈な一撃に脳を揺らした蛇神は再度苦悶の声を上げ、大河に倒れ落ちた。
十六夜は再度大河の岩場に着地して蛇神の様子を窺う。
『‥‥‥‥‥』
「コイツはもうダメだな。もう少し骨のあるヤツだと期待していたが―――残念だ」
「‥‥‥お兄ちゃんが異常過ぎるんです!」
十六夜の呟きに亜夜は怒りながら駆け寄る。
何故怒っているのかというと、
「悪い悪い。―――って我が妹も
「ホントですよ!誰のせいでこうなったんですかね!?」
「ヤハハ!誰のせいだろうな?」
「お兄ちゃんでしょ!?」
亜夜は『馬鹿馬鹿!』と十六夜の胸板をポカポカ殴るが―――まあ全くといっていい程効いていないのである。
そんなやり取りをしていると、
「たしかこの辺りのはず‥‥‥」
「ん?‥‥‥おい、亜夜」
「うにゃ?何?お兄ちゃん」
「‥‥アレって黒ウサギ、だよな?」
「‥‥‥人違いじゃないですか?」
「人違いじゃありません!黒ウサギです!」
緋色の髪を靡かせている赤ウサギ―――ではなく、黒ウサギの登場だった。
そして安定の弄られてウサ耳を逆立てて怒る黒ウサギ。
「もう一体何処までデートしに行ってるんですか!?」
「〝世界の果て〟までデートしに来てるんですよ、っと。まあそんなに怒らなくてもいいじゃねえか。なあ?我が妹」
「そうですよ。あまりカリカリしていますと、いつか『つるっぱげウサギ』になっちゃいますよ?」
「わあ!それは大変でございますね♪―――ってなるわけないのですよお馬鹿様!!」
うがー!と両腕を上げながらウサ耳を逆立てて怒る黒ウサギ。
それにケラケラと笑う十六夜は、黒ウサギの脚を見て呟く。
「それにしても―――いい脚だな」
「そ、それはどういう意味で言ってるのですか!?」
「ん?ああ、そりゃ勿論―――エ」
「言わせないのですよ、こんのお馬鹿様ぁぁぁぁ!!」
スパァアン!!
と十六夜の金髪頭にハリセンを奔らせる黒ウサギ。
それにムスッと不貞腐れながら十六夜の制服を引っ張る亜夜。
「‥‥‥お兄ちゃん」
「何だ?」
「私の脚は―――どうです、か?」
「「は?」」
十六夜と黒ウサギが亜夜を見て―――固まった。
それもそのはず、亜夜は黒ウサギに張り合うようにスカートを捲り上げて白のニーハイとスカートの裾の間から見える―――
それに黒ウサギが赤面していると、
「ヤハハ、亜夜の脚は―――白くて綺麗だから余り
「うにゃっ!?」
十六夜がちょっぴり怒りながら亜夜に凸ピンを食らわす。
それに短い悲鳴を上げ、涙目で赤くなったオデコを押さえる亜夜。
一方、黒ウサギは十六夜の発言に、
『十六夜さんってもしかして―――
と驚愕の事実に驚くも、
『でもあれだけ兄を思う可愛らしい妹さんがいれば‥‥‥無理もないのです』
と結論付け、うんうん頷くのだった。
それはそうと、
「お二人が無事で良かったデス。水神のゲームに挑んでしまわれたのかとヒヤヒヤしていたのですよ」
「ん?」
「うにゃ?」
黒ウサギの言葉に首を傾げる十六夜と亜夜。
予想外の反応に『え?』となった黒ウサギは、問おうと口を開いた―――その時。
『―――まだだ!まだ我は戦えるぞ小僧ォォォ!!』
「へ?じ、蛇神!?―――って、何で激怒してるんですか!?」
蛇神が鎌首を起こして大河から姿を現した。
大変ご立腹の蛇神を見て、黒ウサギが驚きの声を上げる。
すると、それに蛇神が息を荒くして答える。
『〝月の兎〟か。‥‥‥我は其処の小僧に〝試してやる〟と言われてな。それを聞いて頭に血が上って挑んだはいいものの、全く歯が立たなくて、そんな弱い我自身に怒り心頭というわけだ』
「は、はあ‥‥‥」
蛇神からまさかのカミングアウトに溜め息を吐く黒ウサギ。
それに十六夜が目を細めて笑う。
「‥‥‥へえ?俺の攻撃を二度受けてもまだ立ち上がれんのか」
『フッ。この程度で倒れていては蛇神としての威厳が丸潰れだからな』
「あっそ」
蛇神に素っ気なく返す十六夜だが、その顔は喜悦の笑みを浮かべており、
「‥‥‥よし。決めた」
『‥‥‥‥‥?』
蛇神に獰猛な笑顔で告げる。
「アンタの本気を見せてみろ。それを俺が―――――
とんでもないことを宣言した十六夜を、黒ウサギは唖然として見つめ。
亜夜は
『相変わらずですね、お兄ちゃん』
と失笑。
そしてそれに瞳を丸くして驚いた蛇神は―――高らかに笑って返す。
『フッハッハッハ!いいだろう。我が本気の一撃を見事凌ぎ切れれば小僧、貴様に―――
「へえ?そいつはいい!―――来いよ。白ヘビ!」
『白ヘビではない!蛇神だ!』
十六夜の挑発に一瞬イラッときた蛇神だったが、すぐに冷静さを取り戻し、
『ハァアアア!!!』
十本の特大な竜巻く水柱を生み出してそれらを束ねると―――一本の極大な竜巻く水柱が完成する。
そしてそれを十六夜に向けて放つ。
極大な水龍の如き竜巻く水柱を見た十六夜は、
「―――ハッ!しゃらくせえ!!」
「『は?』」
「‥‥‥やっぱり殴っちゃうんですね」
素っ頓狂な声を上げる黒ウサギと蛇神。
十六夜の相変わらずの行為に苦笑する亜夜。
そして極大の竜巻く水柱は霧散して―――
「うにゃぁぁぁぁ!?」
「あっ、」
「『え?』」
いなかった。
何故か新たに発生した一本の特大な竜巻く水柱が亜夜に直進してきたのだ。
それに気づいた亜夜は悲鳴を上げて逃げ惑うが、
「っ!危ない!」
彼女よりも速く動くソレは間近に迫っていた。
黒ウサギが叫ぶが、間に合わない。
亜夜は逃げるのを諦めて振り返ると―――十六夜が笑っていた。
そして彼は目で、
『亜夜もギフトの力を見せてやれ』
と訴えかけてきた。
それに亜夜は溜め息を吐くと、
「‥‥‥分かりましたよ、お兄ちゃん」
迫る一本の特大な竜巻く水柱を見て―――紫の瞳を
「―――――
彼女を呑み込もうとした特大な竜巻く水柱に触れて―――跡形もなく
それを見た黒ウサギと蛇神は、
「『は?』」
再度素っ頓狂な声を上げる。
だが十六夜だけは愉しそうにケラケラと笑っていたのだった。
『消去』―――あらゆるものを消失させるギフト。
欠点―――〝触れなければ〟消失不可。
『消去』のギフト使用時の瞳の色は真紅。