最強問題児の妹も異世界から来るそうですよ?―しっかり者だけど兄好き(ブラコン)!?   作:問題児愛

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今回はコミュニティに残った魔王の爪跡の部分です。


第六話 魔王の爪跡と不穏な影

「この中が我々のコミュニティでございます。ですがもう少し歩く必要がありますのでご容赦ください。この近くにはまだ戦いの名残がありますので‥‥‥」

「戦いの名残が?噂の魔王って奴との戦いだな」

「は、はい」

 

 十六夜の言葉に頷く黒ウサギ。

 そして黒ウサギは門の扉に手をかけ、ゆっくりと開けた。

 すると、乾いた風と共に凄惨な光景が亜夜達の目に飛び込んできた。

 

「なっ、これは‥‥‥!?」

 

 その光景に亜夜と飛鳥と耀は息を呑み、十六夜はスッと目を細める。

 

「‥‥‥おい、黒ウサギ。魔王のギフトゲームがあったのは―――今から()()()()()()()?」

「僅か三年前でございます」

「ハッ、そりゃ面白いな。いやマジで面白いぞ。この()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

 十六夜の言うように、三年前に起きたモノとは思えない崩壊現象の成れの果てが広がっていたのである。

 美しく整備されていたはずの白地の街路は砂に埋もれ、木造の建築物は軒並み腐って倒れ落ちている。

 要所で使われていた鉄筋や針金は錆に蝕まれて折れ曲がり、街路樹は石碑のように薄白く枯れて放置されていた。

 三年前まで人が住み賑わっていたとは思えない有り様に、亜夜達は息を呑んで散策する。

 

「‥‥‥断言するぜ。どんな力がぶつかっても、こんな壊れ方は有り得ない。この木造の崩れ方なんて、膨大な、そう。軽く百年超える程の時間をかけて自然崩壊したようにしか思えない」

「とてもじゃないけど人が住めるような環境ではありませんね。土地は死に絶え、吹く風も生気がまるで感じられません」

「ベランダのテーブルにティーセットがそのまま出ているわ。これじゃあまるで、生活していた人間がふっと消えた見たいじゃない」

「‥‥‥生き物の気配も全くない。整備されなくなった人家なのに獣が寄ってこないなんて」

「〝月の兎〟がいるコミュニティの話は、白夜叉様から伺ってはいたが、まさか此処まで酷い有り様だったとは思いもしなかったぞ」

 

 十六夜・亜夜・飛鳥・耀・白雪姫の順に感想を述べていく。

 それにジンは無言で唇を噛みしめ、黒ウサギは廃墟から目を逸らして朽ちた街路を進む。

 

「‥‥‥魔王とのゲームはそれほどの未知の戦いだったのでございます。彼らがこの土地を取り上げなかったのは魔王としての力の誇示と、一種の見せしめでしょう。彼らは力を持つ人間が現れると遊び心でゲームを挑み、二度と逆らえないよう屈服させます。僅かに残った仲間達もみんな心を折られ‥‥‥コミュニティから、箱庭から去って行きました」

 

 黒ウサギは感情を殺した瞳で風化した街を進み、その後ろに飛鳥、耀、白雪姫、ジンと複雑な表情で続く。

 だが十六夜だけは、瞳を爛々と輝かせ、不敵に笑って呟く。

 

「魔王―――か。ハッ、いいぜいいぜいいなオイ。想像以上に面白そうじゃねえか‥‥‥!」

 

 一方、亜夜はそんな十六夜の背を見てボソリと呟いた。

 

「―――ごめんなさい、お兄ちゃん。このギフトを―――――使()()()()()

 

 誰にも聞こえないような小さな声で呟いた亜夜は、その場でしゃがんで地に触れる。

 

「―――復元(レストア)モード開始。お願い!()()姿()()()()()()!」

 

 途端、亜夜の紫の瞳は、エメラルドのような綺麗な(みどり)色に変わる。

 そして次の瞬間。

 

「え?」

 

 黒ウサギ達が異変に気がついてバッと背後に振り返ると、

 

「嘘‥‥‥」

 

 亜夜を中心に広がる翠色の波紋が触れた部分が見る見るうちに、三年前の魔王襲来前の姿を取り戻していく。

 朽ちた建築物が、街路樹が、白地の街路が、元の姿を取り戻していく。

 それを目の当たりにした黒ウサギ達は、信じられないものを見ているような表情をしていた。

 

「こ、これが亜夜さんのギフトの力ですか!?」

「触れるだけで修繕できる力‥‥‥」

「たしか〝復元(レストア)〟と言っていたわね。それってつまり」

()()()()()()()ギフト、か」

「す、凄い!あれだけ凄惨な光景だった街並みが、元に戻って―――!」

「‥‥‥‥‥」

 

 黒ウサギ・耀・飛鳥・白雪姫・ジンの順に驚嘆の声を上げた。

 だが、十六夜だけは―――怒りに満ちた表情で亜夜を睨み、

 

「―――馬鹿が!そのギフトを使用すれば、()()()()()()()()()()()()()()!」

「え?十六夜さん!?」

 

 黒ウサギが問うよりも早く亜夜の元へ駆ける十六夜。

 だがその前に、

 

「―――――うっ!?」

「!?亜夜!」

 

 急に苦しみだして胸を押さえた亜夜は、その場に倒れ伏してしまった。

 それを見た黒ウサギ達も急いで亜夜の下へ駆け寄る。

 逸早く駆け寄っていた十六夜が亜夜の身体を抱き上げる。

 それに気がついた亜夜は、朦朧とした意識の中、十六夜に手を伸ばす。

 

「お、にぃ‥‥‥ちゃ、ん」

「喋るな。―――――チッ、やっぱりか。呪いの進行が早まってやがる‥‥‥!」

 

 十六夜は伸ばしてきた亜夜の手を掴む。

 亜夜の額に手をやると、手が焼けるような熱さを感じ取った。

 

「熱ッ!?クソが、とんでもねえ熱を出してんじゃねえかよ‥‥‥」

「十六夜さん!?亜夜さんの容体は―――!?」

 

 黒ウサギが近寄り、亜夜の額に触れようと手を伸ばし、

 

「馬鹿!触んじゃねえ、火傷するぞ」

「え?や、火傷ですか!?」

 

 黒ウサギが驚きの声を上げると、十六夜が血相を変えて言う。

 

「それより黒ウサギ!屋敷までの案内を頼む!早く妹を安静にさせてやりたい」

「!!わ、分かったのです!‥‥‥こちらなのですついてきてください!」

 

 黒ウサギが言うと、十六夜は頷いてぐったりとしている亜夜を抱きかかえたまま屋敷へと向かった。

 それを飛鳥達は無言で無事を祈ることしか出来なかった。

 

 

 

 

 同刻。箱庭2105380外門前。

 そこには、黒い影が一つあった。

 その男の姿は、黒いフードを被っていて顔はよく見えない。

 

「‥‥‥久しぶりに帰ってきたな、箱庭(ここ)に」

 

 黒いフードの男はそう呟いた後、口元に三日月を浮かべて嗤う。

 

 

「嗚呼、楽しみだぜ()()。今度こそ貴様ら兄妹を―――――()()()()()()()()()()‥‥‥!!」

 

 

 フードの下から紅い双眸が覗き、不敵に嗤った男は―――――夜の闇に溶けるように消えたのだった。

 




謎の刺客の正体については後に判明させるつもりです。

亜夜にかけられた呪いが発動してしまう条件の一つは、
『ギフトの使用限度を超える』
ことです。
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