「あら……そう、もう“これ”が始まるほどの月日が流れたのね」
一年の時を経て、再び訪れた春のある日に、それは起きた。
自宅の窓枠から外を見る私の目に映ったのは、山や世界を彩る四季折々の花たち。本来春に咲くようなものではない花も咲き乱れ、その風景は美しいというほかない。
外に出てみれば妖精達の騒ぎ声が聞こえ、幽霊達がこの太陽の畑にまで溢れ返っている。この現象は、60年前にも起きた。
かつて聞いた閻魔の説明では、60年に1度の間隔で外の世界で発生する幽霊の増加で三途の川の案内人である死神の仕事の許容量を超える数の幽霊が幻想郷に出現したため、溢れかえった幽霊が花に憑依し、花が咲き乱れる現象が発生した。また妖精は自然そのものであるため、不自然な花に大騒ぎしているというものだったかしら。
つまり、これは異変ではなく自然現象。犯人も何もないのだ。花が好きな私にとっては、一種のお祭りみたいなもの……ならば、私がやることはただひとつ。
「さあ、今回はどんな花が見られるかしら?」
楽しい楽しい……花見の始まり。
襲い掛かってくる妖精を半殺しにしながら人里へとやってきた私は、目当ての妖怪を探す。その人物とは、当然氷狐。一人で見るよりも複数で見るほうがきっと楽しいと思ったからだ。
さて、いつもなら八百屋のあたりにいるはず……と視線を八百屋に向けるとあっさりと目当ての妖怪を見つけた。白黒と巫女もいて、なぜか巫女に抱き付かれているけれど。
「氷狐! 怪我はない!? 誰にも襲われてない!?」
「うー?」
「むしろ霊夢に襲われてるように見える気がするぜ」
「それは同感ね」
「う? ゆーか!」
「こんにちは氷狐」
何気なく白黒に賛同すると、氷狐がパアッと花が咲くような笑顔を見せてくれた。今日は花がいっぱいの一日ね。
しかし、なぜか巫女と白黒が私を見た瞬間に氷狐を抱き上げて私から距離を取った。いきなりのことに唖然としたけれど、普通に考えてこれは失礼ではないかしら。なぜか巫女は私を睨んでいるし。
「出たわね、この異変の犯人!!」
「異変……?」
「とぼけても無駄よ! あんたがこの幽霊やら花やらの異変の犯人だってことはわかってるんだから!」
ああなるほど、巫女はこの自然現象を異変だと判断し、私がその犯人だと思っているのか。確かに以前この現象を経験していない存在なら、普通は異変だと思ってしまうでしょう。実際、私も60年前は閻魔に聞くまで異変だと思っていたんだし。
巫女は私が犯人だと疑っている様子……白黒も八角形のものを手にして臨戦態勢に入っているし、戦う気は満々のようだ。唯一氷狐だけが、状況をよく分かっていないようでキョトンとしている。
「残念だけど、これは私がやったことじゃないわ」
「嘘つけ! 花を咲かせることが出来るなんてあんた以外いないじゃない!」
「いや、氷狐もやろうと思えば出来る気がするぜ」
「う?」
「あんたは黙ってなさい」
確かに、幻想郷で花を咲かせる、操れる妖怪は私以外には知らない。でも今の白黒の言い方だと、氷狐も花を咲かせることが出来る、もしくは出来うる能力を持っているように聞こえる。
もしかして、氷狐が花たちに好かれるのはその能力のおかげだろうか。自然に好かれる程度の能力とか……中々素敵な能力ね。
「とにかく! あんたを退治してこの異変を解決させてもらうわよ!」
「それは無理ね」
「彼女の言うとおりですよ、今代の博霊の巫女」
「なんでよ……って今の声は誰?」
突然聞こえた私たち以外の声に、巫女が怪訝そうな顔をする。白黒と氷狐も声に聞き覚えはないようで、キョロキョロとしていた。
私には聞き覚えがあったので、声の主が誰かはすぐに分かった……が、姿が見えない。
「どこを見てるんですか。私はここですよ」
「どこよ」
「声は聞こえど姿は見えずだぜ」
私もキョロキョロと巫女たちと同じように周りを見渡してみるけれど、知る姿を見ることは出来ない。
その後もここだどこだと繰り返すものの、やはり姿は見えない。でもよく見てみれば巫女たちの口元がニヤついていることが分かる……私も同じだとは思うけど。
「全く……声は聞こえるんですね? なら、声のするところに集まってください。集まりましたね? では……みーさーげてーごらん」
「「「……わあ!?」」」
「うー♪」
「うそつき!! 途中からニヤついていたのを知ってますよ!! それからそこの妖怪、あなたの身長で私が見えないとかありえないでしょう! しかも目合いましたよ!? それから風見 幽香!! あなたは私の姿形も声も知ってるでしょう!! 私にわざとぶつかったのも知ってますよ!!」
言われたとおりに一箇所に集まって下を見てみれば、そこにいたのは私よりも濃い緑色の髪をした少女の姿。背は氷狐よりも少し高いくらいで、棒を片手に私たちに怒る姿は非常に微笑ましい。
が、この少女こそ幻想郷古参にして死者を裁く閻魔大王、“四季映姫・ヤマザナドゥ《しきえいき》”その人。“白黒はっきりつける程度の能力”を持ち、その決定は絶対に覆ることはないらしい。
本来は説教が長く、閻魔の名に恥じず真面目で厳格な人物なのだけれど……60年前に出会ってから弄ると楽しいことに気づいて以来、こうして会った時は遊んでいる。因みに、ヤマザナドゥというのは役職の名前らしい。
「全く、この私がこのような使い古されたボケをする羽目になるなんて……」
「お約束はどの年代にも笑いを与えるものだぜ?」
「私は笑点の方が好みです。全く、あなたは普段は頭を使っているのにその知識や頭脳を生かすことはあまりない。その魔法の知識、知らないことを知る貪欲さは褒めるところではありますが、その知識を得る手段が盗んだものというのはいただけません。いいですか? 知識は何も自分の力だけで得るものではないのです。幸いにもこの世界には魔法使いはあなたの他に2人はいるのですから、たまに勉強会などを開けばいいでしょう。わざわざ借りると称して本を盗む必要はないのです。なのにあなたは欲しかった本があれば盗み、読みたかった本があれば盗み、見たことのない本があれば盗み……死んだときに困るのはあなたなのですよ? 善行を積まねばあなたは死後に必ず後悔します。そんなあなたに出来る善行は……」
ああ、始まってしまった。閻魔大王四季映姫による、賢者も裸足で逃げ出す説教が。
彼女の説教はとても長い。しかも白黒はっきりつける程度の能力のせいか、一度始まったら相手が逃げ出すことはできない。現に白黒は逃げ出すどころか自然と正座している始末だ。
因みに、閻魔はたまに地獄から幻想郷にやってきてその住人に説教をすることもあるらしい。私もされたことはあるけれど、そのときは“楽しむために相手を嬲るのはいけない”で始まり、なぜか“その胸を少しでも分けて欲しいです”で終わったわね。
「霊夢、助けてくれ」
「無理」
「余所見に私語とは随分と余裕ですね。もう少し説教の時間を増やしましょう。それから巫女もこの場にいなさい。あなたにも言いたいことがあります」
「嫌よ。私は早くこの異変を解決して氷狐とのんびりしたいのよ」
「全く……あなたは少々自分の勘に頼りがちのきらいがありますね。いいですか? あなたはこの幻想郷の巫女、博霊の巫女なのです。博霊の巫女の仕事は博霊大結界の維持と幻想郷の平和を守ることにあります。今までのあなたはともかく、今のあなたはそこの妖怪を中心に考えるようになっています。これでは人外と人間のバランスが崩れてしまう恐れがあります。僅かな時間とはいえ神社から離れる時間も増え、その妖怪とともにいる時間が増えています。それでは他の妖怪に示しがつきません。大体、そこの妖怪の能力は危険すぎる。幻想郷にとって退治すべき妖怪は……」
不意に、巫女が閻魔に向けて弾幕を放った。いきなりのことに唖然とする白黒と氷狐……そして私。
巫女が強いというのは聞いているけれど、まさか閻魔に向かって攻撃をするような無謀な人間とは思わなかった。
閻魔といえば、言わば“神”。人間と神とでは言い表せない“差”が存在する。これは妖怪にも当てはまることだ。その閻魔に、巫女は攻撃した。それは、従者が主に逆らうことに等しい。
「……なんのつもりですか?」
「いきなり出てきて氷狐を退治しろですって? つまりなに? あんたは氷狐を殺せっての?」
無傷で出てきた閻魔に、巫女は俯きながら問いかける。その声に宿る感情は……怒り。
対する閻魔に怒りの感情は見えない。まるで巫女が攻撃するということを分かっていたかのような表情で、俯く巫女を見ている。そんな閻魔の問いかけに対する答えは……。
「それが、幻想郷の安全と安穏に繋がります」
「ふざけるなああああ!!」
「……氷狐、私と少し散歩しましょうか」
「うー?」
空へと上がった二人を見上げながら、私は氷狐を抱き上げる。閻魔の長い説教が嫌だったのか、今まで耳をたたんでいた氷狐に先の問答は聞こえていないだろう。それでいい……子供に殺生を聞かせてはいけない。
氷狐には、巫女がいきなり攻撃して怒ったように見えただろう。あのような姿を見るのは初めてなのか、少しびっくりしているようだ。それは白黒も同じみたいだけど。
私がすることは、あの巫女の姿をこれ以上氷狐に見せないことと……ここから離れること。
私は巫女と閻魔の飛んで行った方角を見つめる白黒をそのままに、氷狐を抱き上げたままこの場から飛び去った。
「霊符「夢想封印」!!」
巫女がスペルカードを発動し、私に七つの誘導弾が飛んでくる。ちゃんとスペルカードルールを守っている辺り、理性がなくなったわけではないらしい。
相手を狙う誘導弾ではあるけれど、絶対に命中するわけではない。巫女から飛んでくる札に気を付けつつ弾をよけ続ければ……そうしている内にスペルカードの制限時間がきて誘導弾は消えてしまった。
「スペルカードブレイク……まだ続けますか?」
「当たり前よ!!」
悔しがる様子もなく、あくまでも私を落とすべく巫女は弾幕を飛ばし続ける。私が弾幕を放たないのは、余裕があるからではない。巫女の怒りの気迫が反撃という手段を取らせてくれないのだ。
それほどまでに、巫女はあの妖怪に入れ込んでいる……巫女だけではない。八雲 紫とその式神達、氷精、霧雨 魔理沙、伊吹 萃香、フランドール・スカーレット、八意 永琳、上白沢 慧音、藤原 妹紅、犬走 椛……そして、風見 幽香。
これだけの力のある存在から好かれ、自らも好き、人里の住人からも愛されている存在……妖怪とはいえ、それだけなら別に問題はない。問題は、やはり能力。
オモイの形次第では破壊の力になりうるその能力は、とても軽視できるものではない。しかし、罪を犯していない者を裁くことも、直接殺めることも、閻魔の私はできない。八雲 紫がどうにかすることを願ったが、あれでは無理だろう。
ならば、私じゃなければいいのだ。
「っ!! 氷狐!!」
不意に、巫女が妖怪の山の反対方向にある“無名の丘”の方角を向いた。つまり、巫女の勘がそこにあの妖怪いる、もしくは向かっていると告げているということ。
丁度いい。あの場所には鈴蘭の花が咲いている……元々あの場所はまだ名付け前の名無しの幼子を鈴蘭の毒気で安楽死させて間引きに来る場所……故に“無名の丘”。そして、そこには毒を扱う妖怪がいる。
「さっさと落ちなさい!! 氷狐のところに行けないでしょうが!!」
「すみませんが、もう少しここに居てもらう理由ができました」
巫女の放つ弾幕を避けながら、今度は私も弾幕を放つ。
罪なき子狐が、せめて花に包まれて逝くようにと願って。
「これが鈴蘭よ。きれいでしょう?」
「うー♪」
私たちがやってきたのは無名の丘という場所。目の前には、真っ白な鈴のような形をした花たちが綺麗に咲いている。鈴蘭の名前は、見た目が鈴のような形をしていることからきているらしい。
見た目の美しさとは裏腹に有毒……なのだけれど、妖怪である私たちにはこの程度の毒は効かない。まあずっと浴びていたら気分は悪くなるでしょうけど。
氷狐も喜んでいるようだし……もう少し近くで見てみようかしら。そう思って鈴蘭の花畑に降り立ってみると、少女のような声が聞こえた。
「スーさんに近づかないでよ!」
「う?」
突然聞こえた声と現れた小さな影。その正体は、真っ赤なゴスロリ服を着た腹話術用の人形程度の大きさの妖怪。
見たところ、妖力自体はそれほどでもないみたいだけれど……この妖怪は鈴蘭の花達に好かれているようね。いや、どちらかと言えば、我が子に注ぐような愛情を向けられている。
「スーさん……というのはこの鈴蘭のことかしら?」
「そうよ! スーさんは私の命の恩人……何のつもりで近づいたのよ!?」
なぜこの妖怪はこんなにも喧嘩腰なのかしら。それに、この鈴蘭達が命の恩人というのも分からない。分かっているのは、この妖怪は鈴蘭の花達を大切にしているということ。
それだけで私の戦意はなくなるのだけれど、このまま一方的に怒鳴られっ放しというのは気に入らない。
「何のつもりも何も、私たちはこの花達を近くで見ようと降りただけで何もするつもりはないわよ」
「あんたみたいな強い妖怪がそんな理由で来るもんか!」
「……勝手なこと言ってくれるじゃない。何様のつもりなのかしら?」
「ひっ!」
軽く妖力と殺気を込めて睨んでみると、妖怪は分かりやすいくらい縮み上がった。怖いもの知らず、というわけではないみたい。
だからと言って、私より弱いやつに私の行動をとやかく言われる筋合いはないわ。花と氷狐がいるから、攻撃はしないけれど。
「大体あなたは誰なのよ。名を名乗りなさい」
「め、メディスン・メランコリー……つい最近妖怪化した人形の妖怪」
「そう。私は風見 幽香」
「ひー」
私の名前を聞いて、妖怪……メディスンの震えが増した。私のことは知っているようね……もうこの反応にも慣れてしまったけれど。
氷狐も自己紹介をしたようだけど、相変わらず何を言っているのかは分からない。それはメディスンも同じ……。
「氷狐って言うんだ」
「うー」
分かっているようだった……ちょっと負けた気分。そこからはメディスンの妖怪化した経緯を話してもらった。
メディスンは先ほど自分で言った通り人形の妖怪。なぜここにいるのかと言えば、人形の時に人間にこの場所で捨てられたからなんだとか。妖怪化した原因は鈴蘭が持つ毒。この毒を長年浴び続けた末に、人形はメディスン・メランコリーとして妖怪化した。
そんな会話をした後には、氷狐とメディスンはすっかり仲良くなっていた。
「てややー!」
「うー!」
「とりゃりゃー!」
「あーうー!」
何をしているのかと聞かれれば、私は鬼ごっこと答える。メディスンが鬼で氷狐が逃げる役。
ただ、メディスンが捕まえようとする時になぜか掛け声とともに飛び掛かり、氷狐に避けられるという滑稽な状況になっているけれど。鈴蘭をつぶさないようにしているのは流石といったところかしら。
どちらもとても楽しそうに笑っている……先の話の続きになるけれど、メディスンは人間という存在に対して復讐を誓っているらしい。人形にも意志があり、人間の玩具ではないのだと。だが鈴蘭の毒によって妖怪化した彼女は、長時間鈴蘭の毒を浴びずにいると動けなくなってしまうらしい。そのせいで、この無名の丘から離れることが出来ずにいる。
さっき彼女はスーさんがいるから大丈夫と言っていたけれど……その表情には寂しさの色が見えた。そして、似ていると思った……花がいるから独りでも平気だと言っていた頃の私に。
どれだけ大切なものがあっても、どれだけ人や他の存在が嫌いでも……独りとは寂しいもの。大妖怪と言われる私ですら寂しいと感じてしまうのだ。孤独からくる寒さに体が震えてしまうのだ。やっぱり寂しいと、他の人の声が聞きたいと泣きそうになってしまうのだ。
だから……私は……。
「氷狐!?」
慌てたようなメディスンの声にハッとなり、声がした方を向く。そこには、横たわる氷狐と必死に体を揺するメディスンの姿があった。
私は急いで立ち上がり、二人の元へ跳ぶ。数秒で辿り着き、そこで見たのは……苦しそうにしながら体を震わせている氷狐。
「いったい何があったの?」
「わ、わかんない。急に倒れて、いきなり苦しみだして……わ、私の能力のせいかな」
「あなたの能力は?」
「毒を扱う程度の能力……だけど! 氷狐にも幽香にも使ってない! 今日は一度だって使ってない!」
そんなことは分かっている。もし故意的に使ったなら、こんなに慌てはしないだろう。状況が状況だからと言ってメディスンを疑うようなことはしない。
問題は、どうして氷狐が苦しんでいるか。彼女の能力ではないし、今までの経緯を思い返してみてもこんなに苦しむようなことになる理由は見当たらない。ならば、なぜ……。
-見た目の美しさとは裏腹に有毒……-
ハッとして、氷狐の周りを見る。視界に入るのは鈴蘭の花、花、花。
私たちは、いつからここにいた? 私たちが来たのは昼前くらいのはず……空はもう茜色に染まっている。楽しい時間が過ぎるのは早いとは言うけれど、夕方になっているとは気づかなかった。
だけど私たちは妖怪……鈴蘭の毒程度ではこんなことには……いや、メディスンという妖怪と共に過ごしているこの花達の毒は本当に“普通の鈴蘭の毒”と同じ強さなのか? 二人から離れて風上にいた私と人形という無機物の妖怪であるメディスンはまだしも、鈴蘭の花畑の中を走り回った氷狐は……。
「……今はそんなことを考えている場合じゃないわね」
「その通りよ」
声がした方を向けば、そこにいたのは閻魔と戦っていたはずの巫女の姿。ボロボロの姿を見る限り、辛勝と言ったところかしらね。
巫女は素早く私たちの元まで降りてきて、氷狐の体を抱き上げる。その姿を見て、メディスンが慌てたように声を上げた。
「あ、あんたは誰!? 氷狐をどうするの!?」
「今はそんなこと言ってる場合じゃないのよ。氷狐は医者に連れて行くわ。幸いにもあの医者は氷狐を溺愛してるし、死に物狂いで直してくれるわよ」
「じゃあ私も行く!! 毒が原因なら、私の能力が役立つわよ!!」
通せんぼをするように巫女の前に浮くメディスンに、巫女は冷たい視線を向ける。その目が、はっきりと“邪魔をするな”と告げていた。
その視線に竦むことなく、メディスンは力強く自分は役立つと告げた。本当なら人間である巫女に話しかけることも、この場所に入られることも嫌でしょうに……。
「……あんたは氷狐の何?」
「友達!!」
「……そう。なら行くわよ。あんたは?」
メディスンの答えにどことなく嬉しそうな巫女。そんな彼女が目を向けたのは……私。
言いたいことは分かっている。私はどうするのか。そして、私は氷狐のなんなのか。それに返す答えは一つ。
「ここに連れてきた私の責任だもの、道中の障害は排除してあげるわ……それに、友達は助け合うものなのでしょう?」
最初に私に笑顔を向けてくれた愛しい友人。私に友人というものを作るきっかけとなってくれた、愛らしい妖怪。
その妖怪に立ちはだかる壁も、立ちふさがる者も……全部私がどうにでもしてあげましょう。
私は大妖怪、フラワーマスターの風見 幽香なのだから。
「……分かったわ。それじゃあ行くわよ!」
「ええ!」
「うん!」
想いは一つ。氷狐を助ける……ただそれだけ。
愛しい友人を、誰も亡くしたいなんて思わないから。
だから今は……氷狐が助かることだけを願った。
今回は本当に難産でした。かなり強引なところもあると自覚していますが、楽しんでいただけるように書いたつもりです。
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