子狐幻想記   作:d.c.2隊長

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今回も捏造設定のオンパレードです。及び、諏訪子様ファンの方には嫌悪感を抱かせてしまう表現が恐らく含まれています。この手のことが苦手、不快感を抱く可能性のある方は回れ右をした方がいいと思います。

警告はしましたよ? それでは、どうぞ。


射命丸 文 結

 氷狐の誘拐と妖怪の山の頂上に現れた神社、この2つの事件が終結してから数日後の今日、お祝いとしてこの博麗神社にて宴会が開かれていた。前回は参加できなかった分、今回はしっかり楽しもうと思います。

 

 宴会に参加している面子は博麗の巫女に魔理沙、人形遣い、冥界に住むという亡霊に半人半霊、賢者御一行、伊吹 萃香様、紅魔館一向、迷いの竹林に住んでいるという蓬莱人2人と兎の耳を生やした少女、椛の友達だという白い髪の蓬莱人、里の守護者、私と椛、風見 幽香……そして、新参者であり、事件を起こした犯人の守矢神社の一行という豪華で胃が痛くなるような面子が参加していました。

 

 あの事件の後、守矢神社は天魔様との“穏便”な交渉の結果、山の頂上に居を構える許可を得られたそうです。天魔様が許可を出したのなら、その部下である私達は従うしかないです。ただ、しばらく天魔様が物凄く落ち込んでいたお姿を晒していたのが気にはなりましたが……いえ、薮蛇はつつきたくないので忘れましょう。

 

 因みに、なぜ私が伊吹 萃香様と彼女に対して様付けなのかと言うと……まだ鬼が地上にいたころ、妖怪の山の頂点が鬼であり、私たち天狗は天魔様を含めて鬼の部下だったからです。いやあ、鬼の皆さまにはお世話になりました。いろんな意味で。

 

 「い、以前はすみま」

 

 「あ”?」

 

 「ひう!」

 

 「いや、霊夢……早苗は謝ろうとしてんだから聞いてやれよ」

 

 「あ”!?」

 

 「すみません。調子こいてすみません。だから睨まないで……ていうかなんで私睨まれてんの?」

 

 尚、巫女の怒りは早苗さんに対してのみ収まっていません。解決した次の日にはああやって謝りに来ていたようですが……聞いての通り、巫女は全く聞く耳を持たず威圧し、その威圧に早苗さんは耐えられず萎縮してしまい、謝ることが出来ずにいるようです。魔理沙は自ら藪の中の蛇に会いにいっているので知りません。背中に庇われている早苗さんの魔理沙を見る目が熱っぽいとか知りません。ついでに言うと、他の魔法使いや半人半霊、ウサミミ少女が早苗さんを羨ましそうに見ているとかも知りません。

 

 「れーむ」

 

 「なあに? 氷狐」

 

 「あーうー、め!」

 

 ああ、そういえば最近になって私は氷狐の言葉がある程度理解出来るようになりました。なので、今彼が何を言ったのかも分かります。

 

 彼は今、こう言いました。“ずっとおこっちゃダメ!”と。激しく同意します。宴会の場でずっとあのように怒りを振りまかれては美味しいお酒も不味くなってしまいます。他の方は我関せずという姿勢ですが……私もそういう姿勢で居たかったです。

 

 「……」

 

 「……」

 

 「……氷狐が言うんじゃ仕方ないわね。いいわ、いつまで経っても怒りっぱなしってのも疲れるし……許してあげるわよ」

 

 「あ、ありがとうございます!」

 

 「よかったな早苗」

 

 どうやらようやく早苗さんはお母さんに許してもらえた様子。これであの事件についてはもう全てわだかまりがなくなったと言っても良いでしょう。幸い、守矢のお三方は他の幻想郷の住人とは良い関係を築けているようですし。

 

 早苗さんは魔理沙や私、他の魔法使いや半人半霊、ウサミミ少女と友人関係ですし、八坂の神は賢者の式神や亡霊、萃香様等と一緒に飲み比べをしていますし、諏訪子様は……。

 

 「氷狐ー! 遊ぶよー!」

 

 「うー!」

 

 「やっと来たわね氷狐。子分は親分の傍にいないとダメでしょ!」

 

 「はいはい……素直に寂しいと言えばいいのに」

 

 「バカだから無理だよメディスン」

 

 という会話をしながら鬼ごっこを始める子供たち……因みに鬼は氷狐です。とまあ、あのように子供に混じって遊んでいます。神とはいえ見た目は子供、全く違和感がないです。周りの存在も微笑ましいモノを見るような暖かい目で子供たちを見て……いえ、1人だけ一緒に遊びたそうにしていますね。

 

 あれは確か、紅魔館の当主、レミリア・スカーレットでしたね。圧倒的な“かりすま”とやらで周辺の妖怪や妖精を手懐け、自身の力も幻想郷の最強の一角に位置すると聞いています……が、見る限りは素直になれない子供ですね。当主という肩書きがそうさせているのかもしれませんが。その隣にいる従者がなぜか肩を震わせていますが、気にしないことにします。

 

 他の人妖たちは……巫女と賢者と……確か、永琳と名乗っていましたっけ? それと里の守護者……この4人は、なにやら物凄い真剣な表情、尚且つ小声で話をしています。一体どんな話をしているのか気になりますが、私の本能が聞くなとガンガン叫んでいますので今回は従うことにしましょう。

 

 風見 幽香は椛と、椛の友達だという妹紅という方、更にその方の友達だという輝夜という随分と美しい方と一緒に、彼女が咲かせた様々な花を見ながら団子を食べています。本当に仲が良いようですね。時折みたらし! やら3色! やらが聞こえるのは無視する方向で。ていうかまだ決着付いていないんですかその団子談義。他の2人があきれた顔をしてますよ。

 

 魔理沙は先ほど言った面子に囲まれて楽しそうにお酒やら料理やらを口にしています。周りの存在が互いを睨み合っているのはツッコミを入れるべきでしょうか。

 

 「お、早苗のから揚げ美味そうだな。もーらい」

 

 「あ……」

 

 「うん、美味い!」

 

 「あの、それ……私の手作りなんですが……」

 

 「マジで? 早苗って料理上手いんだな」

 

 「いえ、そんな……えへへ」

 

 ((((新参者があぁぁぁ……))))

 

 魔理沙と早苗さん以外の方の体から出る瘴気というか怒気というか、そんな感じのものが凄いです。4人よれば巫女に匹敵する勢いですね。それに気づかないのか、それとも意図して無視しているのか、魔理沙は凄いと思います。早苗は勝ち誇った顔をしていますが。それが更に4人の神経を逆撫でしているのは言うまでもありませんね。

 

 ……あれ? ひょっとして私だけ一人ぼっちですか? 椛は風見 幽香たちと食べてますし、魔理沙も早苗さんたちと一緒ですし、巫女も氷狐も……。うわ、私寂しい妖怪ですね。他の知り合いといえば、妖怪の山に住む天狗か河童くらい。その2人はこの宴会に来ていませんし、今から呼んでも……多分来ないでしょうね。引きこもりと人見知りですし。

 

 むう、これでは折角久しぶりに宴会に参加できたというのに楽しくありません。とは言っても椛のところに行く勇気はありませんし、魔理沙の所に行くとあの怒気が私にまで降りかかってきそうですし、巫女のところは本能が拒否していますし、萃香様のところに行くなんてもっての外。鬼怖い。子供たちの中に入るのもちょっと……。

 

 「ちょっと良いですか?」

 

 「はい?」

 

 もうレミリアさんのところに行ってみようかと思っていた私に声をかけてきたのは、紅魔館御一行の中に居た門番でした。予想外、というか参加していたことを忘れていた相手に話しかけられ、キョトンとしてしまった私は悪くないと思います。

 

 さて、私はなぜこの方に声をかけられたのでしょうか。何か粗相をした、というわけでもなさそうですし……とそこまで考えたところでこの方が持つ2つの杯と徳利が目に入った。その私の視線に気づいたのだろう、目の前の方は見せ付けるようにそれらを少し高く持ち上げた。

 

 「一緒に飲みませんか?」

 

 「……喜んで」

 

 

 

 やっぱり、宴会とは楽しいものですね。こうして他の方々のやりとりを肴に、ほとんど知らない相手と飲むのもいいものです。とは言っても、流石にお互いに自己紹介くらいはしましたが。

 

 この方は紅 美鈴という名前だそうで、私の記憶通り紅魔館の門番をしている方でした。私に声をかけた理由は、守矢神社の一件で山に戻る途中の飛んでいた私を見かけたからだそうです……って飛んでる私を見かけたとかどんな視力と動体視力をしてるんですか。結構な距離と速度があったハズなんですけど。

 

 「文さんは新聞というモノを書いているんですよね? どういったものなんですか?」

 

 「よくぞ聞いてくれました! こちらが私の書いている文々。新聞です」

 

 どこからともなく新聞を取り出して美鈴さんに渡す私。いつでもどこでも誰にでも新聞の購読を勧誘できるように持ち歩いているのは当然です。美鈴さんは私の手から新聞を受け取り、開いて中に目を通し始めました。

 

 こうして自分の書いた新聞を見ている人を見るのが、私は飛ぶ瞬間の次に好きだったりする。それが楽しげなモノだったらもっといのだけれど、生憎とその顔を見たことはない。

 

 人間も、妖怪も、私の新聞を見て浮かべるのは苦笑いか嘲笑。面白くないと、こんなものかと口には出さなくとも伝わるそれは、私に酷く悔しい思いを抱かせた。

 

 取材も撮影も執筆も勧誘も仕事、というよりも半ば趣味で行っていること。だからやっている間は楽しいし、書いたものを見てもらいたいし、面白いという言葉も欲しい。けれども、その言葉は得られない。

 

 ……ああそうだ。私は、私が書いた新聞を読んでもらって……その人の笑顔が見たいんだ。びっくりさせたいとか、意趣返しをしたいとか、そんなことではないんだ。

 

 ただ、面白いと思って欲しい。いつの間にか、私はそんな純粋な想いを忘れて、面白ければ誇張とか何してもいいなんてことを思っていた。それで反応が芳しくなければ不貞腐れて、仲間内でひそひそとバカにされて、見返してやるなんて思って……本当に、私は今まで何をしていたのやら。

 

 そう考えると、今更になって美鈴さんの反応が怖くなりました。表情を伺う限り、文面に集中しているようで無表情なので感情は読めませんが……この表情は今まで何度も見てきたもの。次に浮かぶのは苦笑か、それとも嘲笑か……。

 

 やがて美鈴さんは読んでいた新聞をたたみ……。

 

 「いやー、思わず見入ってしまいました。文さんの新聞は面白いですね」

 

 苦笑いでも嘲笑でもなく、彼女は笑ってそう言って下さいました。その言葉をお世辞と取ってしまった私は、相当心が荒んでしまっているのでしょう。

 

 美鈴さんに渡した新聞は今回の事件とは何の関係もない、氷狐と寺小屋の子供たちが遊んでいる様子の写真と簡単な遊びの内容、甘味処の新作のお菓子とその写真、及び私が食べた感想などといった日常風景。そこにびっくりするようなすくーぷはないし、見ようと思えばいつでも見られそうなものばかり。

 

 今までの私の新聞に比べれば、そんなに面白い内容だとは思わない。確かに書いている時は楽しかったし、新聞として形にはした。これを人里の人たちに読んでもらおうともしたけれど、その前にあの事件が起きてしまったので今の今まで忘れていたのは内緒です。

 

 「面白かった……ですか?」

 

 「はい。私は普段、門の前から動かないのでこういう人里の日常風景とか気になっていたんですよ。それにこの甘味……美味しそうですよね。かすていら……でしたっけ? 食べに行きたいなあ……」

 

 そうか、私はよく見かけることでも、美鈴さんは門番だからあまり人里には来れないから見れないんですね。それなら、面白いと感じるのも分かります……そっか。私と美鈴さんは“違う”。感性が違うのは当然のこと。

 

 今までの私は、自分が面白いことは他の存在も面白いと思うに違いないと考えていましたが……それ自体が間違い。感性や思いは千差万別、違うのが当然。でしたら、私が書くべき記事の内容は私が面白い、ではなく万人が面白いと思えるような記事。

 

 試しに、暫く人里のちょっとしたことや妖怪の山の風景、雲の流れで天気の予測でもしてそれを記事にしてみましょうか。私としては少し物足りないですが、記事を書くこと自体は楽しいですし……もしもこうすることで面白いと言ってもらえるなら……笑顔を見ることが出来るなら。

 

 「文さん」

 

 「なんですか?」

 

 「また、読ませてもらっても良いですか? 出来れば、門のところにいる私の元にまで持ってきて欲しいんですが……」

 

 「……いいですよ。そうなると、美鈴さんは文々。新聞の最初の購読者になりますね。書きあがり次第、お届にあがりますよ」

 

 「ありがとうございます♪」

 

 それはきっと……凄く幸せなことだと想うから。

 

 

 

 

 

 

 「うー!」

 

 「甘い、甘いわ氷狐! 子分が親分に勝とうなんて野いちごを凍らせて食べるくらい甘いわ!」

 

 「むしろ冷たくない? ていうか美味しいの? それ」

 

 「クランベリーソースとどっちが甘いかな」

 

 ああ、楽しいな。こうして子供に混じって遊ぶのは、本当に何千年振りになるのかな。

 

 人間の子供じゃないのは少し残念だけど、それは今は過ぎた願い。人里という場所には学校……寺小屋があるみたいだし、今度そこに行って、あわよくば子供たちと遊んでみようかな。

 

 因みに、今は鬼ごっこの真っ最中。鬼は氷狐だけど、もう少しのところで逃れられてしまうので未だに鬼が変わることはない。氷の羽が生えている女の子……チルノは親分だ子分だと言っているけれど、どういうことだろう?

 

 外の世界で言うゴスロリ風の服を来た女の子はメディスンというらしい。人形の妖怪らしく、氷狐の友達らしい。それを聞いて安心した私は、心境的には氷狐のお母さん。

 

 日傘を差した枯れ枝に宝石が付いているような羽の女の子はフランというらしい。こっそりと彼女に聞いた話では、氷狐を自分好みに育て上げようとしているとか。私も参加したいと言うと、フランは快く了承してくれた。

 

 もうこんなにわたしにも友達が出来た。それはとても嬉しいことで……とても幸せなこと。何よりも……。

 

 「……ぐすっ」

 

 「あ、やば」

 

 「もう! チルノがやりすぎるから……」

 

 「あ、あたいだけのせいじゃないでしょ!?」

 

 「自分が悪いって意識はあるんだね」

 

 そんなことを考えていると、不意に氷狐の目に涙が溜まり始めた。その姿がどうにも遠い思い出の中の彼と重なって……わたしは彼のすぐ近くまで行って足を止めた。

 

 そうすると、氷狐はわたしに走り寄ってきて……勢い良く抱きついてきた。その行動も、この暖かさも、全てがわたしの思い出と変わりのないもので。

 

 「うー……!」

 

 「ふふ、捕まっちゃった」

 

 こうしてまた彼と触れ合えるということが、どうしようもなく幸せなことだって想った。

 

 さて、捕まっちゃったからには次はわたしが鬼の役。わたしが捕まった後は、いつも逃げ切れるか切れないかの力で氷狐と遊んでいたけれど……幸いにも、今回は生きのいい子供たちがいる。少しくらい本気をだしても大丈夫かな。

 

 「さあて、次はわたしが鬼だよ。逃げないと捕まえるよ!」

 

 「ふん! 蛙の神様なんかにあたいが捕まるもんか!」

 

 「神様を挑発すんなこのバカ!!」

 

 「氷狐ー、チルノとメディスンがバカやってる今のうちに逃げるよ」

 

 「うー♪」

 

 ふふふ、今のは少しだけカチンときたかな。そういえばチルノは蛙を凍らせて遊んでいると聞いたし、ちょっとお仕置きが必要みたいだね。因みに、蛙云々の情報提供は文だよ。

 

 そうと決まれば即行動。かつて鬼ごっこで、いつの間にか一緒に遊んでいることから“謎の子鬼”と呼ばれたわたしの実力……見せ付けてあげようかな。

 

 

 

 「なんで氷狐がわたしの大切な人なのか?」

 

 「はい」

 

 宴会の同日の夜、早苗がそんなことを聞いてきた。確かに、ちゃんと説明したことはなかったかな。

 

 彼と出会ったのは、まだわたしが守矢ではなく“洩矢”の神として奉られていた頃。最初は妖怪が村の中に入ってきたことに対して警戒していたし、危険なら滅しようとも考えたっけ。

 

 だけど、彼は驚くことに村人から愛されていた。危険どころか無害な妖怪だった。これは面白い、こんな妖怪は見たことがない。そう思って、気まぐれに会ってみようと思って行動したのが最初の出会い。

 

 神であるわたしと対峙しても、彼は怯えるどころかキョトンとして首を傾げていたっけ。その仕草が見た目相応に可愛らしくて……思えば、この時からわたしは氷狐という妖怪に対して警戒心をなくし、好意的に思い始めたのかもしれない。

 

 いつの頃からか、わたしは村人と仲良くする氷狐が羨ましく思った。神として存在するわたしの姿は幼い。その為、こんな見た目では信仰してもらえなくなるかもしれないという恐怖から人前には決して出ないようにしていた。それが功を制してか、それとも祟り神である故にか、信仰は薄れることはなく、わたしは諏訪の神であり続けた。祟られたくないという恐怖心で、人の心を縛って。

 

 なのに、恐怖されるはずの存在である妖怪の氷狐は村人と仲良くしているのだ。彼に対して怒りを覚えたのは、これが最初で最後だった。

 

 そんなわたしを、氷狐は手を引いて外へと連れ出した。抵抗してもなぜか力は使えなかったし、普段からは信じられないような腕力を発揮していたからそのまま付いていくしかなかったっけ……今考えれば、完全に能力を使っているよね。

 

 結果、人前に姿を現したことのないわたしは氷狐の友達の人間として村人と触れあい、時に子供たちと遊び、時におじいちゃんおばあちゃんとほのぼのしたりしていた。神らしくないとは思うけど、とても楽しくて……幸せだったなあ。

 

 「それが切欠と言えば切欠かな……わたしに知らなかった世界を教えてくれた……わたしが彼を大好きになったのは」

 

 「そんなことが……」

 

 まあわたしが神だってことはその後にやってきた神奈子との戦い……諏訪大戦で村人にはばれちゃったし、氷狐も居なくなってしまったんだけど……最初はわたしの国と信仰を奪いに来た神奈子とも、今はこうして一つ屋根の下で同じ釜の飯を食べてるんだから月日ってのは凄いよねえ。

 

 「さ、もういいでしょ。いい子は寝る時間だよ」

 

 「もう、諏訪子様も神奈子様も私を子ども扱いするんですから」

 

 「事実、早苗は子供でしょ?」

 

 かつてわたしは、早苗の先祖である女性との間で神力を使って子を宿した。つまり、早苗とわたしは本当に血がつながっていることになる。早苗はこのことを知らないけれどね。そしてもう1つ、早苗にも、神奈子にすら内緒にしていることがある。

 

 早苗の能力は“奇跡を起こす程度の能力”。酷く曖昧だけど、奇跡的なことなら“ほぼなんでも出来る”能力。いくら早苗が現人神とはいえ体のベースは人間のもの……ヒトには行き過ぎた能力だ。

 

 だけど、この能力を得ることが出来たのはある意味で必然。だって早苗の体にはわたしの他にもう1つ……かなり薄まってしまったけれど、人外の血が流れているのだから。

 

 1度だけ……たった1度だけ、わたしは“彼”の精を彼が寝ている間に中に受けたことがある。勿論彼は知らないし、了承も得てはいないけれど……理由は……わたしだって、神とはいえ女の子だし。その精を神力で体内に蓄えておき、子を宿すときに少しだけ混ぜた。反省も後悔もしていない。

 

 「早く寝ないと明日起きれないよ。明日は巫女と仲良くなるために遊びに行くんでしょ?」

 

 「そうでした! それではおやすみなさい、諏訪子様」

 

 「うん、おやすみ」

 

 自分の部屋に向かったのであろう早苗の背中を見送り、わたしはどこに住んでいるかも知らない氷狐の顔を思い浮かべながら夜空を見上げる。排気ガスなどで淀んでしまっている外の世界とは全く違う星の輝きに、昔を思い浮かべてついつい口元が緩んでしまう。

 

 この空の下に、彼はいるのだ。いつでも会える。いつでも触れ合える。声を聞ける。話が出来る。一緒に遊べる。同じ時を過ごす事が出来る。今日遊んだだけでは全然足りない。もっともっと、話したいこともやりたいこともしたいことも沢山、沢山あるんだ。

 

 「おやすみ、氷狐」

 

 今ここにわたしがいることが……君と繋がっているという確かな奇跡。

 

 

 

 

 

 

 「おはようございます美鈴さん。早速持ってきましたよ」

 

 「わあ、ありがとうございます文さん。早速読んでも?」

 

 「どうぞどうぞ。あ、それから……これ、一緒に食べませんか?」

 

 「それはかすていら!? いいんですか?」

 

 「ええ、私と美鈴さんはその……ゆ、友人ですから」

 

 「……あ、ありがとうございます」

 

 (美鈴にも春が来たのね……)




という訳で、今回で風神録は終了、及び射命丸 文編は終了となります。いかがでしたでしょうか?

後半の諏訪子様の氷狐と云々の話は割りと最初に考えていた話であったりします。批評覚悟で書きました。ぎりぎり15禁ではないはず……いや、アウトか。

今回のお話で書く予定の原作異変は全て終了しました。次回はオリジナル異変編となります。最後は誰のお話になるのか? お楽しみに^^
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