子狐幻想記   作:d.c.2隊長

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タイトルで分かるとは思いますが、今回は映姫サマのお話です。ご希望にありました、映姫サマと氷狐(というか霊夢)の関係はどうなるのか。

尚、本作の映姫サマは幼女体型系です。風見 幽香 転で確認できるとは思いますが、念のため。


閻魔奮闘記

 「……そうですか。わかりました」

 

 「ええ。それでは、私はこれで」

 

 そう言ってこの場から姿を消したのは八雲 紫。そして、彼女と話していたのは四季映姫・ヤマザナドゥである。なぜ紫がこの場……映姫の、閻魔の部屋にいたのか。それは、幻想郷の地獄を管理している映姫に今回起きた異変を伝えるためである。

 

 今回起きた異変……博麗 霊夢と紫だけが認識している異変を、2人は“無想異変”と名付けた。想いが無くした異変……名前の通りである。無論、その詳細も閻魔である映姫は紫より伝えられた。

 

 その時の映姫の表情は、蒼白という他なかったことだろう。知らず知らずの内に己という存在が世界から消えていたのだ。その恐怖は計り知れないものがあることだろう。しかし、それも一瞬。氷狐が能力を失ったと聞いてすぐに表情は蒼白から安堵のものへと変わった。

 

 幻想郷のことを考え、彼の能力のことで悩んでいたのは紫だけではない。映姫だってその1人であり、悩んでいた時間なら紫よりも多いのだ。が、その悩みは消えた。もう映姫が霊夢に彼を滅するように依頼することもないし、殺害などという計画を考える必要もない。

 

 そう、映姫は悩みが消えた瞬間から氷狐を狙う必要がなくなった。つまり、これで他の存在と同じように氷狐と接することができる。

 

 「……わけがないでしょう……」

 

 ぐったりと、映姫は机の上にうなだれた。

 

 映姫が彼と最初に出会ったのは、彼女がまだ物言わぬ地蔵の時。彼の能力によって動ける体を授かり、時を経て閻魔大王となり、幻想郷の地獄を管理するようになって彼の存在を再び知り、紫よりも早くその能力と危険性に気付き、霊夢が彼と出会う前からどうやって彼を亡き者とするかを心苦しさを感じながらも考えてきた映姫。

 

 能力を消す、なんてことを考えずに最悪の方法ばかり考えていた映姫が、どのような表情をして彼の前に姿を現せるというのか。彼と接触したことはあるが、ほんの少しだけ。彼の記憶に残ってるかも怪しい。いや、十中八九残っていないだろう。

 

 一番の問題は、霊夢。一度は彼女に彼を殺せと言った身……そのせいか、今では映姫を見る度に攻撃をしてくる始末。しかし、それを怖がってはいけない。別に怖がってなどいないが。

 

 「彼が本当に無害になった以上、私が彼を狙う必要はない。次に私が取る行動はただ一つ!」

 

 一方的に知っているだけの関係を捨て去り、相思相愛……ではなく顔見知り、友人くらいに彼と仲良くなること。それが、今の映姫の願いであった。

 

 「絶対に仲良くなってみせます!!」

 

 「映姫サマー、書類を持ってきまし……おお、なぜかはわからないけど映姫サマが燃えてる……」

 

 

 

 

 

 

 というわけで今回のお話は、閻魔大王が一匹の妖怪と仲良くなるために奮闘するお話である。

 

 

 

 

 

 

 氷狐と仲良くなると意気込んでみた映姫だが、現実的に考えてそれは難しいことは自覚している。その最たる理由として、霊夢の存在が挙げられる。

 

 先に挙げたように、霊夢は映姫に対して敵意を抱いていることは確実。以前に討伐依頼を出してブチ切れられ、神と人間の差など関係ないとばかりに閻魔を下した。それ以降は正にゴキブリを見つけた主婦のごとく、閻魔を見つけては攻撃してくる始末だ。

 

 そんな彼女と、氷狐はよく行動を共にしている。つまり、彼と仲良くなることはおろか、接触することすら不可能に近い。難しいではなく不可能に近い。閻魔だって命は惜しいのだ。

 

 「どうするべきか……」

 

 「何がですか? 映姫サマ。あ、もしかして例の存在のことですか?」

 

 「小町……ええ、その存在のことです」

 

 先ほど書類を届けにきた映姫の部下、小野塚 小町の言う例の存在とは当然氷狐のこと。以前に小町にこの存在をどうするかという話をして以来、ずっと最も良い方法を考えててきた。もちろん二人でだ。

 

 そういえば、彼女にはまだ異変の事を話していなかったかと思い至った映姫は、彼女につい先ほど紫から聞いた話をする。その話を聞いた小町の顔には、笑顔が浮かんでいた。

 

 「良かったじゃないですか映姫サマ。これでもう悩まなくて済みますね」

 

 「確かにそのことで悩む必要はなくなりましたが……代わりに別のことで悩みができてしまいましたよ」

 

 「……苦労してますね、映姫サマ」

 

 「その苦労の一部にあなたのサボり癖があることを気づいていますか? そう、あなたは普段からサボることが多すぎる」

 

 「(あ、説教が始まる……これは阻止しなければ!)あー、映姫サマ!? その新しい悩みってなんですか!?」

 

 「……まあいいでしょう。その悩みとはですね……」

 

 その後、新しい悩みがその存在と仲良くなりたいと言う以前に比べて遥かに可愛らしい悩みであることに思わず表情を緩めてしまった小町が映姫に恥ずかしそうに説教をされたのは言うまでも無いことだろう。

 

 

 

 

 

 

 映姫が紫の話を聞いてから4日ほど経った。現在彼女がいるのは人里の門の前。彼女は氷狐と仲良くなるべく、仕事を可能な限り終わらせて今日この日を含めた2日間だけ休暇をもぎ取ってきたのだ。帰った時には書類の山が迎えてくれることは間違いない。

 

 彼女は門の前で一人、グッと両手に力をこめて決意を新たにする。必ずこの2日以内で彼と仲良くなってみせると。その様子を見た門番から微笑ましいものを見ているような視線を向けられていることなど気づかないくらい真剣に。

 

 そしてその気持ちのまま人里の中へと足を踏み入れた映姫は……。

 

 「何しにきたのよ閻魔……」

 

 「……なんで巫女がここに?」

 

 「勘よ」

 

 「答えになっていませんが、よくわかりました」

 

 あらためて自分がどれほど無謀なことに挑もうとしているのかを悟った。

 

 

 

 幸いというべきか、映姫は現れた霊夢に攻撃されることもなく人里の中に入ることができた。但し、霊夢の監視付きで。無論、監視の理由は氷狐に近づかないようにするためだろう。

 

 こうなってしまっては、彼女が氷狐と接触することは難しい……とは考えず、寧ろ好都合だと映姫は考えた。その理由として、霊夢が氷狐と非常に仲がいいことが挙げられる。

 

 霊夢が人里に来る理由が氷狐と会うためなのは周知の事実であり、映姫も当然知っている。今の時間帯が朝方であることもあり、こうして霊夢が見計らったように映姫の前に現れたのは何も彼女が来ることだけを予期したものではないだろう。つまり、こうして霊夢と一緒にいれば彼と出会えると、映姫は確信していた。

 

 「れーむ!」

 

 「氷狐、おはよう」

 

 「うー♪」

 

 かくしてその確信は大当たりだった。自分たちが歩いてきた門の方角から彼は現れ、振り向いた霊夢に飛びつくようにして抱きついた。その様子を羨ましく思いながらも、映姫は彼と再び出会えたことに内心で歓喜した。

 

 映姫が彼を直接見たのは、彼が毒に倒れて永遠亭にいた際にこっそりと見舞いに行った時が最後。元気に動き回っている氷狐の楽しそうな表情を見て、知っていたとは言え報告と直接見るのとでは安堵の度合いがまるで違う。

 

 抱擁を交わす二人を見ていた映姫だが、なぜか霊夢が気になった。今までの霊夢は、どこか母親のような目で彼を見ていたと映姫は記憶している。が、今の霊夢が氷狐に向ける眼差しは恋慕のそれ。何か間違っているような気がした映姫だが、馬に蹴られたくはない……もとい、巫女の霊弾を受けたくはないので思うだけにとどめた。

 

 不意に、氷狐の視線が映姫へと向けられた。その視線に込められている“この人は誰だろう”という思いに、やはり自分のことを覚えていないのかと当然に、同時に落胆しつつも小さく手を振ってみる。すると彼は笑顔で振り返してくれた。それだけで、彼女の心になんともいえない嬉しさが広がっていく。

 

 「……」

 

 「……手を振っただけじゃないですか」

 

 同時に、巫女からぶつけられる嫉妬の視線に映姫は内心冷や汗をかいた。未だに無邪気に手を振ってくれている氷狐に手を振り替えしつつ、顔は霊夢から背けられる。閻魔だって命は惜しい。

 

 しかしずっとこうしてはいられない、と映姫は少しだけ身を屈めて氷狐に視線を合わせる。映姫は彼を知っている……が、彼は映姫を知らない。ならば、やることは1つ。

 

 「私は四季映姫・ヤマザナドゥ。映姫、が名前です」

 

 「えーき?」

 

 「はい、えーきです。あなたの名前はなんですか?」

 

 「ひー♪」

 

 「氷狐……良い名前ですね」

 

 まずは、自己紹介から。

 

 

 

 今更氷狐と仲良くなることは無謀だと考えていた映姫だが、思ったよりも簡単かもしれないと思い始めていた。いきなりの霊夢との邂逅は流石に焦ったものの暴力的に拒絶されることもなく、氷狐と出会えて自己紹介をするに至った。この時点で、映姫の目的は半分ほど達成できている。

 

 一方的に知っている関係から知り合いというレベルにまで引き上げることはできた。ならば、後はもっと仲良くなって友人、もしくはそれ以上の関係となるだけ。

 

 (いや、それ以上の関係ってなんですか)

 

 と自分で自分にツッコミを入れつつ、映姫は目の前を歩く二人を見る。手を繋いで歩く霊夢と氷狐の姿は、互いの身長差もあってか姉弟のように見える。霊夢をよく知るものなら、親子のようだと比喩するかもしれない。しかし、先の霊夢の氷狐に向ける眼差しを見た映姫にはそれらとはまた別の関係に見えた。

 

 それは恋人……ではなく片思いの男女。それもどちらかが鈍感だとかお互いに思い合っているのに気づいていないなどというものではなく、片方が恋し、もう片方はその対象に入っていないというような切ないもの。そういった関係を幻視した映姫は霊夢を応援したくなる衝動に駆られるが、同時に疎ましくも思った。当然、なぜそう思ったのかは理解できない。

 

 (というかですね、私の目的は彼と仲良くなること……)

 

 ふと、本当にそうなのか? と心が首を傾げた。いや、仲良くなりたいのは本音であることは確かなのだ。が、それだけだったか? という疑問が映姫の心に浮かんだ。

 

 足を止め、彼女は疑問について考える。彼……氷狐と仲良くなる。具体的にはお互いを名前で呼び合えるくらいにはなることを目標に。それは既に達成できているものと考えて差し支えないだろう。

 

 しかし、未だに彼女は彼と仲良くなることを望んでいる。これ以上仲良くなるということは、親友となりたいのだろうか、それとも男女の関係になりたいのか、彼女には分からない。だが、なんとなくそれは違うと思った。

 

 仲良くなること以外の理由で、彼に近づきたいと思っている。しかし、その理由が思い浮かばない。しばらくその理由を立ち止まったまま考えていた映姫だったが……。

 

 「……あれ? 2人はどこに……?」

 

 霊夢と氷狐に置いていかれたのは、まあ当然のことだろう。

 

 

 

 2人がどこへ行ったのか、映姫には大体の予想はついていた。今までの行動から察するに、2人は甘味処、或いは博麗神社に行っている可能性が高いと考える。その考えの下に甘味処へと足を進める映姫であったが、そこに2人の姿はなかった。なれば、2人は神社のほうにいるのだろう。

 

 ならば急ぐ必要はないと、映姫は甘味処で一服することにした。この場所で彼がよく食べている団子を口にするのもいいかと考えたからだ。勿論食べたら神社に向かうつもりなのでお土産用の団子も注文しておく。

 

 「はむ……うん、ここの味は変わりませんね」

 

 幻想郷の住人という中において、映姫は紫ほどではないにしろ最古参とも言うべき存在だ。その幼い見た目もあってか甘いものが好きである彼女も、この甘味処は古くから懇意にしている。そのため、氷狐が同じ店の団子が好きだと知って、少し嬉しかったことを、彼女はいまでもよく覚えていた。

 

 美味しい美味しいと団子を食べていると、不意に人間の親子の姿が目に入った。人里なのだから親子がいるのは当然なのだが、なぜか映姫はその光景から目を離せずにいた。

 

 青年と呼んで差し支えない男性と、美人寄りの容姿であろう女性、そしてその間にいるのは彼等の息子と思わしき少年。見た目だけならば、氷狐と同じくらいだろうか。楽しそうに手を繋ぎ、自分の前を横切っていく親子の姿を見て、映姫は羨望の眼差しを向けている自分に気づいた。

 

 「……親子……ですか」

 

 人間であれば、恐らくは自然と家族、親子という形となる。しかし、人外は一概にそうとは言えない。

 

 子を産み、卵を生む妖獣は例外。この存在は元々獣や虫と言った存在が妖怪化した存在。己の種族反映の為に繁殖しようとする本能がある。妖怪化してからはその本能が薄れるようだが、それは半ば不老長寿となるからであろう。

 

 そして恐れなどの思いから直接生まれた妖怪はそう言った形……番(つがい)や夫婦と呼ばれる形に収まることは少ない。無論恋愛を行う妖怪はいるし、子を宿すことも産むこともできる。それは閻魔と呼ばれる映姫とて変わらない。

 

 しかし、妖怪は自身が不老長寿である故に、そう言った本能は殆どない。つまり、家族というコミュニティを作る意義がないのだ。八雲家などの例外もあるが。

 

 元々が地蔵である映姫には、当然ながら親、家族と言った関わりは一切ない。強いて言うならば、その地蔵の製作者だろう。しかし後になってから自我を持ち始めた彼女に、その存在についての記憶などあるはずもない。天涯孤独と言ってしまえば、そうなるだろう。

 

 「……ああ、居たじゃないですか。私にも父と呼べる存在が」

 

 今までの考えを否定するかのように、ストン、とある考えが映姫の心の中に嵌った。同時に、彼女は氷狐と仲良くなるという目的の他の目的……否、本来の目的を思い出した。そうとなれば即行動。行くか行かないか、などという選択は一瞬の時間があれば決まる。

 

 白黒はっきりつける程度の能力……優柔不断という言葉など、彼女の辞書には存在しないのだ。

 

 

 

 

 

 

 映姫の予想通り、氷狐は博麗神社、その生活スペースの縁側にいた。霊夢の姿がないのが気にはなったものの、これ幸いと映姫は氷狐に近づいていく。その足音に気づいたのか、氷狐が彼女の方に顔を向けた。

 

 浮かぶ表情は、笑み。純粋に、彼は映姫がこの場に現れたことを歓迎している。それだけで、映姫の顔にも笑みが生まれた。

 

 「えーき!」

 

 「はい、えーきです。置いていくなんて酷いですよ」

 

 「あーうー……」

 

 映姫が苦笑しながらそう言ってみると、彼はしゅん、と狐耳と顔を俯かせた。その姿がとても微笑ましく、彼女の苦笑はすぐに微笑へと変わる。

 

 改めて想う。彼を亡き者にしようと心苦しく思う日々が終わりを告げてよかったと。それを成した霊夢には感謝しても仕切れないとも思う。何よりも、今こうしている瞬間が、時間が愛おしかった。仕事の都合上長く彼と居ることは叶わないだろうが、少なくともこうして姿をさらして言葉を交わすことは出来る。

 

 「……お願いを1つ聞いてくれるなら、許してあげますよ」

 

 「うー?」

 

 映姫は彼が何を言っているのかは分からない。しかし、少なくとも彼がお願いという言葉に対して興味を抱いたことは分かった。その際に彼が首を傾げていたものだから、彼女は思わずクスリと笑ってしまう。

 

 そうして彼女が氷狐に対してしたお願いと言うのは……。

 

 

 

 「うーうー♪」

 

 「えへへ……」

 

 見た目相応の笑顔を浮かべる映姫が氷狐にしたお願いは、頭を撫でてほしいという可愛らしいもの。当然、氷狐は断るどころか嬉しそうに彼女の頭を撫でている。その理由は、彼女の目的に関係している。

 

 そして頭を撫でられながら、映姫は目的を口にした。

 

 「氷狐……突然こんな事を言われたら困惑するかと思いますが……ありがとうございます」

 

 「う?」

 

 「あなたは覚えていないかもしれませんが、物言わぬ地蔵だった私に寒さを感じる肌を、果実を甘いと感じる口を、こうして動ける体をくれました。あなたは、私の恩人なのです」

 

 映姫の言葉に、氷狐は彼女の予想通り首を傾げた。彼が2000万もの間八意 永琳のことを覚えていたのは、彼女を愛していたが故。ただの地蔵に出会った切欠までは覚えていないだろうという予想は、悲しいかな正解だった。それを少し寂しく思うが、それは今の幸福に比べれば微々たる物。

 

 映姫の本来の目的……それは、彼へと感謝の言葉を届けること。彼が居なければ、今こうして自分が存在していたという保証はどこにもないから。

 

 「だから……ありがとうございます」

 

 心からの、ずっと言いたかった感謝の気持ちを言葉に出す。何度でも言いたいが、それでは彼を困らせてしまう。もっと言いたい言葉があるが、それは彼を困らせてしまう。

 

 だから、口から出すのはありがとうの感謝だけ。もう1つは、心の中に。

 

 「……あーうー♪」

 

 この笑顔を見られただけで満足だからと、映姫はもう1つの言葉を飲み込んだ。

 

 

 

 

 

 その日の夜、映姫は彼岸の先にある自宅へと帰ってきていた。今は休暇中であるため、のんびりとベッドの上で体を横にしている。

 

 あれから見計らったように戻ってきた霊夢は映姫を少々睨みながらも追い出すことはせず、仲良く(?)3人で映姫のお土産である団子を頬張っていた。その後はのんびりとお昼寝をし、夕方になれば共に紫と共に神社から去っていく氷狐を見送った。

 

 さて、自分も帰ろうというときに、霊夢は映姫に予想外なことを言ってきたのだ。その事を思い出したのか、彼女の頬が楽しそうに緩む。

 

 「“あんたにも紫にも負けない”……ふふっ。安心してください巫女。少なくとも、私にその気はありません」

 

 霊夢に聞こえないことが分かっているにも関わらず、映姫は1人呟く。その頭に浮かぶのは、1匹の子狐の妖怪。

 

 自分が彼に向ける想いは、恋慕のそれではないと映姫は確信している。とは言っても、友人に向けるものとも違うが。ならば、それはどういった思いなのか。

 

 地蔵に肉体を与えた……その行動を見れば、見るものが見れば、思うものが思えば、それは神の所業ともいえる。崇拝、信仰という考えに至る可能性もあったが、映姫が思うそれは違う。

 

 映姫は、氷狐によって作り出された。それは言い換えれば、生み出されたということでもある。昼間に見た親子、それに向ける羨望の視線。その意味をはっきりと理解した彼女が彼に思ったことは1つ。

 

 「休日は後1日……巫女に勘違いさせておくのも面白そうですし、明日も会いに行きましょう。また、頭を撫でてくれるでしょうか……いえ、きっと笑顔でしてくれますね。そうですよね……?」

 

 

 

 ーお父さん……ー

 

 その想いは、血のつながった子が父を慕うものと同じもの。

 

 

 

 

 

 

 「はっ!」

 

 「ど、どうしたの? 早苗」

 

 「なぜか、私も言わなければいけないことがある……気がします」

 

 「……? 何を?」

 

 「お父さん、もしくはおじいちゃん、或いはご先祖様と」

 

 (この子は一体何を感じたんだろう……)




と言うわけで後日談番外偏第1話でした。サブタイトル仕事しろ、と感じた方は感想まで←

ご希望に沿うことが出来たかどうかはわかりませんが、楽しんでいただけたら幸いです。

まだまだリクエストは募集しております。作品に対する質問も幾つか頂いていますので、1話分できそうなら番外編、或いは何らかの形でお答えしていきたいと思います。マジでラジオ形式採用するか……?

それでは感想、評価、批評をお待ちしております^^
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