とりあえず明日終業式。あとはわかるな?
「コンパクトフルオープン!境界回廊最大展開!」
「魔法少女プリズマイリヤ!推参!!」
ーーーーーーーリリーーーー。
「悪いやつらと愚鈍な男は許さない!ルビー、行くよ!」
『OKマイマスター!魔力集積路二次開放!』
ーーーーリリリッーーーーー。
「一撃必殺!」
ーーーリリリリリッーーーー!
「カレイドストラーーへぶっ!?」
ーージリリリッーーーーー!
「あんたはわたしの………奴隷よッ!!」
「ひぃぃぃぃぃっ!?」
ジリリリリリリリリリリリッ…………!
目覚まし時計のアラームが今年一番であろう悪夢をかき消しながら鼓膜を震わせる。
開くことを拒否する瞼を、鉄の気合と鋼の意志でねじ伏せて強制開放。
そして寝起き開口一番、わたしは毒々しく呟いた。
「ーーーー今世紀稀に見る最悪の目覚め」
とりあえず未だうるさい騒音を打ち鳴らす置き時計を止める。
ふと今しがた眠りこけていたベットの傍をみると、そこには器用に鼻ちょうちんを出して寝ているどうみてもおもちゃにしか見えないステッキがあった。
…………まだ全然信じられないなぁ、こんなステッキが憧れの魔法少女になるキーアイテムなんて。
こんな誰かに言ったら間違いなく頭のおかしい子扱いされるであろうその言葉も、この時ばかりは本当である。
思わずため息が出た。まだ昨日の疲れが抜けきっていないのだろう、体の節々にダルさが垣間見られる。
さてなんで先ほどの夢を見るような結果になったのだろうか、すこし思い返してみよう。現実逃避の意味も兼ねて。
★☆★
色々ありすぎてショート寸前の頭を抱えながら、セラの問答を潜り抜けてパタン、と自室のドアを閉めた。
色んなぬいぐるみや、可愛らしいインテリアで統一した部屋は、わたしの自信作のひとつだ。
「どう?うまくごまかせた?」
声をかけてきた方に視線をずらすと、そこにはベットに腰掛けて寛いでいる黒髪の女性がいた。
ツーサイドアップ腰までの黒髪と、水晶のように透き通っている蒼の瞳。スラッとした長い足を強調する黒のニーソックスはミニスカートと合わさってよく映えている。
そして持ち合わせの端正な顔立ちは黙っていればそれだけで道端の男性は振り返るだろう。そう、黙っていれば。
「まぁ、なんとか…………言われた通り誰かの悪戯だろうってことにしたけど…」
「まぁそれが妥当か。けどあんたも災難ね、そんな奴に捕まっちゃうなんて」
女性は少々苛立ちの混じった声音でそう言ってわたしの後ろに目を向けた。
そこには、円環の中に星を象ったモノを埋め込み、縁に羽をつけてフヨフヨと浮遊している謎の物体が異様な雰囲気を放っていた。
「ほんとだよ………。空から降ってきたステッキに頭突きされたら魔法少女になってた、なんて………友達に言ったら頭おかしい人と思われちゃう」
『いやー手荒な契約で申し訳ないです。でも此方も凛さんに見つかったら早々にマスター権を戻されちゃうんで早めに他のマスターと契約しておきたかったんですよねー』
そう、聞いて驚くことなかれ。
わたしの後ろに浮遊するこの物体こそ、10代前半の少女が憧れてやまない魔法少女になるためのステッキなのだ!そう、プリキュ◯とかまどかマ◯カとかそういう類のもの。
…………といって信じてくれる人がどれほどいるだろうか。少なくともわたしの友達は誰一人信用しないと思う。
けど悲しきかな、現実なのだこれは。
事の発端は今日の夜中。
待ちに待ったアニメのBlu-rayディスクが届いたのでリズと一緒に一気見したあと、お風呂に入ったところまで時は遡る。
一気見でほんのりと赤く充血した目を擦りながら湯船に入っていた時のことだ。
ふと視界の端に光が見えたような気がしたので窓を開けて見てみると、夜空に赤と青の光がチカチカと点滅しているのが見てとれた。
怪訝に思って目を細めてみるも、先ほどまでテレビの光で慣らされてしまった眼球は遠くの光を捉えることを拒否してしまう。
さてどうしたものかと考えを巡らせたところ、浴場の電球を切って此方を暗くしてしまえばいいのだという結論に行き着いたので早速実行。
電源を落とした後、もう一度空を見上げてるともう既に夜空にはあの不思議な光は消えていて。
代わりにどうみても此方に向かってくる流れ星があった。
そしてその星に瞬く間に頭突きをかまされてしまい、気絶はしなかったものの額には赤いアザができ上がってしまった。
頭が割れそうなくらいの痛みに蹲っていると、突然真横からコミカルな声が聞こえたのだ。
『初めまして!わたしは愛と正義のマジカルステッキ、マジカルルビーちゃんです!』
鈍痛を堪えながら其方を見ると、そこには宙に浮く如何にも対象年齢10歳以下といったようなおもちゃチックなステッキが。
しかもどこから鳴らしているのかパンパカパーン、なんてどこかのRPGで聞いたファンファーレBGMを垂れ流す始末。
はっきりと言おう。
………………とても、うさんくさいです……。
しかもその不審物は、
『貴女は次なる魔法少女候補に選ばれました!
さぁを手に取ってください!力を合わせて(わたしにとっての)悪を倒すのです!!』
そう平気で宣った。
もうこれはうさんくさいとかいうレベルじゃない、最早詐欺レベルだ。
というかこんな科学がバリバリ発達した現代社会に魔法少女なんて存在するはずないだろう。
アニメの見過ぎで少し思考がおかしくなってしまったのだろう。
魔法少女になりたいか?と聞かれて一概にNOとは言えないが、こんなに胡散臭い話に乗るはずもない。ここは早急におかえりいただこう。
ほんの少し湧いた魔法少女への興味を鉄の意志でねじ伏せて、マジカルルビーと名乗るステッキと話をつけようと口を開こうとした瞬間。
『楽しいですよー魔法少女!羽エフェクトで空を飛んだり!必殺ビームで敵を殲滅したり!
恋の魔法でラブラブになったり!』
全身を電撃が走り抜けるような衝撃が私を襲った。
『あっ!今反応しましたね!?いるんですね意中の殿方!どの人です!?』
わたしの違和感を目ざとく察知して、ここぞとばかりに人の弱みを突いてくるルビー。
「い、いない!いないもん!好きな人なんていないもん!!」
言えるわけがない。こんな見るからに口が軽そうなステッキに言えるわけがなかった。
頬が自然と赤くなる。
きっと長風呂の所為だと思考を切り捨てて、擦り寄ってくるルビーを押し返す。
だがステッキは止まらない。
わたしの好きなものは人の恥ずかしい恋話です!と言わんばかりにズイズイ、と此方に攻め寄ってくる。
『ムキになるのがまた怪しいですねー!相手は誰ですか?ベタベタにクラスメイトの男子とか!?』
「ち、違うってば!ってかなんでわたしステッキに攻められてるわけ!?なにこの状況!!」
脳が、顔が、体が火照る。
脳裏に浮かび上がるのは、よく見知った白髪の人だった。
わたしが、この銀髪を誇れるキッカケになった人。
わたしを見るたびに辛そうな顔を浮かべて、まるで壊れ物を扱うかのように接したあの人。
でも、わたしが泣いているときはいつも助けてくれた。彼方は気づいてはいないと思っているようだが、ハタから見るとバレバレなのだ。
そう、あの人はいつだって不器用で、鈍感で、朴念仁で。
けど、誰よりもお人好しで、優しくて、いつもわたしのことを気にかけてくれた。
『大丈夫。君のその髪は親から貰ったものだろう?なら誇れ、絶対に嫌いになんかなっちゃダメだ』
『それは君が、彼らの娘だという証だろう?なら大事にするといい、周りの声なんか気にしないことだ』
『切嗣もアイリスフィールも、セラもリズも君のことが大好きなんだから』
『勿論、オレも含めてな』
カァッ、と顔が熱くなる。きっと今のわたしの顔はリンゴみたいに赤くなっているだろう。
その様子を見たルビーは、さらにニヤニヤと鼻息を荒げながら此方の地雷を踏みぬいた。
『あー!乙女の顔になってますねー!これはいますね、好きな人。それもだいぶ近くにいる人と見ました!』
この推理力は一体なんなのだろうか。しかも強ち当たっているというのがまた腹立たしい。
もうこれ以上喋っているとこっちが持たないと思い、話を切り上げようとステッキの柄を掴み、
「いないって言ってるでしょ!もういいから出てってよこのバカーーーーーーーーッッッ!!!!!」
空いている窓から外に投げ捨てようとした。
そう、投げようとしたのだ。
だが実際には投げられず、何故か逆に体の力がスーッと抜けていく感じがした。
『うふふふふー、想定以上にチョロかったですねー』
貴女みたいな人はああいう事で煽ると絶対乗ってくると思ってました、と言ってルビーは言葉を続ける。
『血液によるマスター認証。
接触による仕様の契約。
そして起動のキーとなる乙女のラヴパワー!!
全て滞りなる頂戴しました!』
「な、なにそれー!?ってから血液ってどこからとったの!?」
『さっき頭突きした時にチョチョイっと』
額に意識を向けると、確かに少し血が滲んでいた。
というかこのステッキ手癖悪ッ!?
『さぁ、最後の仕上げといきましょうか。貴女のお名前を教えてくださいまし』
「えっ………う、あ……」
言うものかと必死に抵抗するが、まるで自分の意思とは乖離しているかのように口はわたしの名前を発っしようとする。
きっとルビーが接触している手から強制力みたいなものをかけているのだろう、抗おうとするがとても抗えそうにない。
「イ、イリヤ……」
あぁ…もう自分は魔法少女になるしかないんだな、と頭の中で諦めると呆れるほどすんなり口から自分の名前が出た。
「イリヤスフィール・フォン・アインツベルン!!!」
ーーーーーーーこれが、この厄介ごとの始まりだった。
このあと魔法少女となったわたしは、ルビーを捕らえようとした人に出会った。
それがこのベットに座り、如何にも不機嫌そうな顔でこちらをみる彼女だった。
「えっと、それであのー………」
「あぁそうね、あんたにはいろいろ説明しなきゃ」
額に青筋を浮かべながらルビーにアイアンクローを決めているのを中断して、黒髪の彼女はさてどこから話したものかと髪をかきあげる。
それにしてもすごい握力だなぁ……ルビーがひしゃげてる。
「まず、わたしの名前は遠坂凛。魔術師よ。まぁ………あんた風にいうと魔法使いってことになるわね」
実際には違うんだけど、と付け加える凛さん。
まほーつかい………?ってことは。
「魔法少女ってこと?」
「全然違う!!」
脳天にチョップを叩き込まれた。とても、痛い。
というか魔法を使えて女の子なら魔法少女って言わないの?言わないか。
「ま、一般人に理解しろって言う方が無茶かな。これでも一応ロンドンの"時計塔"じゃ今期の主席候補なんだけどね」
「えーと、時計塔っていうのは?」
「分かりやすく言うと、魔術を研究する大学みたいなところね。表向きは留学って扱いで去年からそこに通ってたわけ」
へー、この歳で結構すごいんだなー凛さんって。
でもそうすると一つわからないことがある。
「それじゃなんで日本に帰ってきたの?」
「そう、ここからが本題ね」
凛さんはどこからか取り出したメガネをかけると、話の核心についての説明を始めた。
というか何故メガネ…?
「結論から言うとね。わたしたちはある特殊な力を持ったカードを回収するためにこの町に来たのよ、時計塔からの要請を受けてね」
言い切ると凛さんは懐から一枚のカードを取り出した。
わたしは差し出されたそれを恐る恐る手に取り、マジマジと見てみる。
中世風の絵で描かれた男性が、弓に矢をつがえていて下部には英語で"Archer"と書かれていた。
「……
「そういうカードじゃない!どうにもあんたは思考に偏りがあるわね……」
裏返してみるも、そこには魔法陣に見える幾何学的な紋様が描かれているだけでとてもオモチャとは思えない。
どちらかというとカードゲームではなくタロットカードを彷彿させるモノだった。
「それはオモチャのカードじゃない、極めて高度な魔術理論で編み上げられた特別な力を持つカードなのよ。悪用すればそれこそ街一つを容易に滅せるくらいのね。
そんな危険物が、この冬木の町には眠っているのよ」
凛さんの言葉はかなり真剣味を帯びていたが、生憎とわたしにはそんな危険だという実感は沸かなかった。
こんなちっぽけなカードが街一つを消し炭にできるなんて信じられないけど、凛さんが言うんならきっと本当なんだろうと無理やり納得する。
「うーん、つまり……凛さんは町に仕掛けられた爆弾を秘密裏に解体していく闇の爆弾処理班みたいな人なんだね!?」
「やけに斬新な比喩だけど大体合ってるのが悔しいわね」
こんな子で大丈夫なのかしら、とボヤきながら説明を続ける。
「ま、そんな感じでその爆弾を処理するのに生身は少しばかりキツイから特別に貸し出されたのがーーーー」
一旦言葉を区切って、凛さんは宙空に浮いていたルビーの羽を掴んで手元に引き寄せた。
「このバカステッキってわけね」
『最高位の魔術礼装をバカステッキ呼ばわりとは失礼な人ですねー。そんなんだから反逆されるんですよーだ、わたしにだって(扱いやすい)マスターを選ぶ権利があります!』
ルビーは凛さんの横暴な物言いに反発するも虚しく、再びアイアンクローを決められ黙らされてしまう。
「…本当ならわたしも無関係な人間を巻き込みたくなんかないんだけどね。でもコイツはわたしの言うことなんか聞きゃしない」
そういって融通の利かないオモチャに呆れたようにルビーを私の方に放り投げて言葉を続ける。
「ってことで解放されたかったらそのバカを説得することね」
「……………出会って間もないけどそれがすごく困難な道のりだってことはわかるよ」
例えば金ぴか英雄王が慢心しなかったり、ランサーが自害しなかったりするレベルだきっと。確信。
「でしょうね。だからせめてその説得が済むまでの間は、わたしの代わりに戦ってもらうことになるから、覚悟しておくように!」
「はぁ、たたかって……………へ?」
一瞬我が耳を疑った。
え?この人は今なんて言った?
「だから、わたしの代わりに爆弾を処理してもらうの。まぁわたしの
凛さんはあたかも当たり前のように言って、用があるからと去っていった。
そして残されたわたしといえば……。
「………………うそだドコドコドーン」
脳がショートしていた。
★☆★
時刻は午後3時。
丁度6時限目の授業が終わり、放課後を知らせる涼やかなチャイムの音が学校中に響き渡る。
そんな中、イリヤは昇降口に通じる廊下を駆け足で進んでいた。
人目が少なくなったと同時に、彼女の白銀の髪に潜んでいたステッキがピョコッ、と顔を出す。
『よーやく放課後ですか。カバンの中は退屈でしたよー』
羽を上下に動かして不満を訴えるルビー。
授業中イリヤのカバンの中を漁って、恥ずかしいモノはないかと探っていた者の言うセリフではないと思うがそれについては主人に一切言う気はないらしい。
「待たせてごめんねルビー。早く帰って魔法の練習しよ!」
そんなルビーの蛮行もいざ知らず。イリヤは待ってましたとばかりに帰路を急ぐ。
『おーやる気ですね、イリヤさん!』
正直、ルビーとしてもイリヤがその気になってくれるのは嬉しい。
前マスターの傍若無人うっかり赤ゴリラよりも、愛らしくて扱いやすく弄りやすいこちらのマスターの方が自身の都合もいいからだ。
純粋に、ロリっ子魔法少女というのもルビー的にポイントが高いらしく気分は右肩上がりだった。
「うん!せっかくだから楽しもうと思ってさ」
何事もポジティブにいかなくちゃね、と続けて下駄箱を開けて靴を履き変えようとすると、靴とは別に何か違うものが入っていた。
その下駄箱の主であるイリヤは、とんと見覚えのないものに首を傾げてそれを拾う。
そして手に取ったモノをマジマジと見てみると、それはどうみても手紙だった。
封筒には入れられておらず、裸のまま。薄ピンクの紙には何か言い知れない雰囲気が漂っている。
「手紙………だね」
その時、ルビーの乙女センサーが勢いよく反応した。
『おおっ!もしやこれは………!?』
甘酸っぱい恋の匂い。愛と青春が入り乱れる若気の至り。
女子の下駄箱。遠慮がちに靴の上にひっそりと置かれた手紙。
これから導き出されるものは、最早一つしかないだろう。
『アレですね!ラヴレターですよ!ラヴレター!今時こんなピュアなことする子がいるんですねー!
さぁさぁ早く中身を!』
ルビーの様子でこの手紙の中身を察したのか、イリヤは頬を赤らめてルビーを制す。
「お、おおお落ちついてルビー!ここは冷静にいくべきよ、冷静に……冷静に…………」
呼吸が速くなり、心臓が早鐘を打つ。
逸る気持ちを抑えて折りたたまれた手紙をゆっくりと開いていく。
そこで脳裏を過ぎったのは、白髪の男の人。
「ーーーーーーーッ!!」
ブンブンと頭を左右に振ってその幻像をかき消す。
あの人がこんなことするはずがない。けどもしこれがーーーー。
それを考えた瞬間、動悸が乱れて自然と速くなる。
ドクンドクンと、心臓が最早過労働で逆に止まりそうなくらいポンプアップが激しくなる。
熱に浮かされた気持ちを必死に抑え、震える手で手紙をめくった。
そこにはーーーーーーッッッ!!!
『今夜0時、高等部の校庭まで来るべし。来なかったら
遠坂凛』
「……………………」
『……………………』
えっ、え…………えーーーーーーーーー………………。
互い無言。静寂が辺りを制する。
なんてことはない、ラブレターと思っていた手紙はなんと脅迫状でした。
先ほどまでマグマのようにうずいていた心臓は、途端冷却水で冷やされたように平常を取り戻していた。
こうして、イリヤの魔法少女生活1日目の夜が幕を開ける。
次回!ライダー戦!乞うご期待!!!!
アーチャーの弓矢が火を噴くぜ!!!
p.s.
ポッ拳ついに始まりましたね、とりあえずルカリオサーの姫としてはルカリオ一択で始めています。
というかカスタム要素プレミアム登録しなきゃ使えないとか舐めてんのか任天堂ォ!!!
とりあえずルカリオのいいコンボがあったら教えてくださいなんでもry
黒猫のウィズ極めたい。