気合いでの連続投稿・・・・明日ヤバいなぁ・・・・
「これが《聖大樹の聖堂》」
そう呟いたフワの目の前には神秘的な光景があった。
木々が生茂る森の中で、その周囲だけは一つの存在しかなかった。
上にある第九層の天井を貫いて第十層にまで届いているのではないか、そう思ってしまう程の巨大な木がそびえ立っていた。
車よりも大きく太い根が地に張り巡らされ、巨木に近づけば近づくほど壁の様に行動範囲を失くし、まるで巨木の中へと誘われている様な錯覚を受ける。
その巨木の根元に入口があり、真っ暗なその中は一度中へと足を踏み入れれば二度と出て来れないのではと思わせるモノだった。
「はい、ここが森エルフだけでなく、ダークエルフまでもが自分達の国の名前を頭に付け、所有権を主張すると同時に犯す事の出来ない聖域なのです」
モノ珍しそうに周囲を気にしているフワへと、メリュジートが説明をした。
「へー、なかなか面白いな。ここが聖域・・か」
一通り周囲を見回したフワが笑みを浮かべると根元にある入口へと歩を進めた。
「この中に大いなる力が・・・・」
入口の前に立ったメリュジートが期待を抑えきれずに呟いた。
「・・・・はっ、それじゃ行こうか」
フワも堪え切れず小さく笑い、聖堂の中へと足を踏み入れた。
▽
「コレが私とエルミアさんの関係を証明するモノです」
沈黙したエレンミアが机の中から手紙の束を取り出した。
自分とエルミアとの間の手紙で1つ1つに緻密で威厳のある印も押されていて本物である事が疑いようがなかった。
「エルミアさん自身が知らないと言ったという事は、おそらくフォールンエルフの《幻墜の秘薬》を飲まされているのでしょう」
「幻墜の秘薬?」
キリトが繰り返す様に呟いた言葉にエレンミアは静かに頷いた。
「飲ませた者の判断を逆転させ、心身の衰弱と暗示に掛かり易くさせる効果があります」
「そんな・・・・」
キリトは実際に会った時に見たエルミアのHPバーには状態異常を示すアイコンは無かった事を思い出していた。
「森エルフの中に裏切り者が出たと言ってましたね。おそらく少しずつ薬を投与して慣らしていたのでしょう」
そんなバカな・・・・キリトはそう思いながらも疑問に思っていた事を口に出した。
「エレンミア女王陛下、森エルフには王族が《聖大樹の聖堂》で祈れば一族を救う力が手に入るという伝承があると言ってました。ダークエルフにも似た様な伝承がありますか?」
既にキリトの中で答えが出ていたが、聞かずには居られなかった。
「そのような伝承はダークエルフにも、そして森エルフにもないでしょう__」
出ていた答えとはいえ、キリトは身体が固まってしまった__が、エレンミアの話はまだ終わっていなかった。
「__しかし、力を得るという点では似ている伝承があります」
その時、キズメルが気が付いたのか息を飲んだ。
「フォールンエルフになった伝承です。裏切り者の彼らは刃が通らぬ強靭な身体を得る為に封印を解こうとして聖大樹から加護を得られなくなった話が___」
「っ___」
キリト達は素直に忘れていたのだ。
仕方がなかったのかもしれない。伝承として聞いただけの情報と、実際に潜入した際に直接フォールンエルフから得た情報。
どちらの情報が記憶に残り易く優先度が高いかなど聞くまでの無い事だった。
「人族の魔法の消去なんてついでだったんだ。刃の通らぬ強靭な身体という力が目的__」
「女王陛下、お言葉ですが事態は一刻を争います。今すぐ森エルフの王城攻めを中止して《聖大樹の聖堂》へ軍の派遣を」
我に返ったキズメルが焦りながらエレンミアへと提案したが、エレンミアは首を横に振った。
「王城を攻めている部隊から連絡がありました。優勢ではあるが激しい抵抗にあっていると。おそらくダークエルフの部隊を釘付けにする為に大部隊を配置しているのでしょう。今ここで《聖大樹の聖堂》へ向かう為に撤退をしようものなら背後から大打撃を受けるでしょう」
その言葉にキリト達は口を開く事が出来なくなってしまった。
そして理解した。事態は敵側の思い通りに此方にとっては最悪の事態へと転がっている事に。
「ですが、森エルフの王城に大部隊を配置しているという事は《聖大樹の聖堂》にいる敵の数も少ない筈です。____我が騎士キズメルよ」
「はっ」
エレンミアの威厳溢れる声にキズメルは反射的に気を引き締めて直立した。
「貴女に密命を与えます___貴女なら既に私が言わんとしている事がお分かりでしょう。それでも、私の命を聞いてくれますか?」
キズメルは何も言わずに片膝を着けて頭を垂れた。
「・・・・ありがとう。我が騎士キズメルよ、今すぐ《聖大樹の聖堂》へと向かいフォールンエルフの企みを阻止せよ」
「はっ」
静かに、だが澄んだ声でキズメルは応えた。
いくら敵の数が少ないとはいえ、キズメルが単騎で向かえばソコは死地でしかない。
それが分かっていながらもキズメルの声に迷いは無く応え、部屋から出て行こうとした。
「・・・・付いて行くから・・・・」
アスナの小さくも力のある声はキズメルの足を止めるのに十分過ぎた。
「その言葉だけで十分だ。今までこんな私に協力してくれた事を感謝する」
そう言って再び歩を進めたキズメルの前にキリトが立ち塞いだ。
「これはキズメルだけの問題じゃな___前置きは無しにしよう。俺達は誰が何と言おうとも絶対に付いて行く。たとえ死んでしまってもだ」
揺るぐ事の無いキリトの目にキズメルは揺らいでしまった。
「キズメル、とても良い友を得ましたね。__その信ずる友と一緒に必ず生きて帰って来なさい__これは厳命です、何よりも優先しなさい」
ありがとう、小さな声で言いながらキズメルはエレンミアの言葉に答える事無くキリト達と一緒に走り出した。
▽
フワは飛びかかって半分腐り落ちた鉤爪を付きたてようとした《リビングデッド・ラーンリザード》の短い両手を短剣を一閃して切り落とした。
アンデット系なのか突き立てる鉤爪が無くなった事など気にもせずにフワの首めがけて少し長い首を伸ばして喰らい付こうとした。
フワは短剣を右逆手に持ち直しながら後ろに下がり、喰らい付こうとした顎を左手で下からかち上げ露わになった首へと右逆手の短剣を首の中程まで食い込ませた。
それすらお構いなくフワの顔に喰らい付こうとした瞬間、短剣を差し込まれた所から首を引き千切られた。
「邪魔」
左手で引き千切った首がポリゴンになる前にもう一体へと投げつけると怯んだ様に首を引っ込めた。
「ッシャッ!」
しかし、本当に怯んだのではなく顔を突き出す為に首を引っ込めただけで、突き出すと同時に開いた口から舌が鞭のようにしなりながらフワへと迫った。
迫った舌を躱し伸びきった瞬間に左手で掴んで振り回した。
背後から跳びかかっていた一体に打ち当てて吹き飛ばし、一度振り回し勢いを付けて、もう一度叩きつけて頭を砕いた。
叩きつけた瞬間、腐っていた所為で舌が根元から千切れた。
「ったく、脆過ぎンだよなぁ。そのくせ変に死なないから気持ち悪いったらないし」
フワは千切れてポリゴンへと変わった舌を見ながら呆れていると舌を根元から千切られた個体が口を開いて喰らい付こうと飛びかかった。
飛びかかった個体の頭を短剣で上から突き刺し地面に叩きつけると同時に縫い付けた。
「だから邪魔だって」
頭を踏んで動かない様にし、中心に突き刺さった短剣で尾まで一気に捌いた。
捌かれた中身は既にポリゴンで、一気に砕け散った。
「・・・・第九層の敵は獣かトレント系だったろ。なんでアンデット系に変わるんだよ。しかも爬虫類系に」
敵が居なくなった事を確認したメリュジートとエルミアがフワへと近づくとフワはウンザリしながらメリュジートに問いかけた。
「わ、私も初めて入ったので分からないです」
メリュジートは答えたが、エルミアが焦点の合わない目をしていて答えなかった。
「・・・・どうした、気味が悪くて調子まで悪くなったか?」
聖大樹の根が複雑に絡まり合って出来た洞窟は聖域と言うにはあまりに向いていない。
「いつものだから、まだ大丈夫。救う力を得ればこんな体調など吹き飛ばしてくれるさ」
エルミアは気丈に振舞って笑った。
「・・・・そうかもな、そんな姫さんに朗報だ。やけに作りの良い扉を見つけた。おそらくその先に全てがあるんだろう」
「ありましたか!?早く行きましょう!!」
期待に満ちた足取りでメリュジートは先に進みだした。
弱ったエルミアを置いて。
「ほら、もうすぐだ。自分の足で歩けるだろう?」
もちろんだ、エルミアはフワの言葉に答えながら足を踏み出した。
▽
木々の間を三つの影がすり抜ける様に、しかし凄まじいスピードで駆け抜けていく。
既に日は傾き視界も悪く小さな枝や葉は見えづらく何度も身体を当たり引っ掻きながらもスピードを緩めることなく駆けて行く。
「キズメル!《聖大樹の聖堂》まで後どのくらいあるんだ!?」
影の一つであるキリトが先頭を走るキズメルに問いかけた。
「もうすぐだ!この森を抜けた所にある!」
キズメルは振り返る事無く告げながら走る。
分かったと言いながらキリトは思い出して悔んでいた。
しかし、悔みながらも何かが頭の隅に引っ掛かりを感じていた。
『何だ、俺は何かを忘れている様な気がする。本当に忘れているのか?まだ考え付いていないのか__』
「森を抜けるぞ!」
キリトの思考はキズメルの声によって中断した。
そして目の前の光景に息を飲んだ。
息を飲んだのはキリトだけでなく、アスナも圧倒されて呆然としていた。
「ここが《聖大樹の聖堂》だ。悪いが紹介してる暇は無い、早く中へ踏み込むぞ」
キズメルが呆然とする二人を置いて先に歩を進めた時、キリトの索敵に何かが映った。
「キズメル!!」
キリトが叫ぶのが早かったか、それとも聖大樹の大きな根から飛び出した影がキズメルに襲いかかるのが先だったか。
どちらにせよキズメルは赤いマントを着た影に一撃を喰らい吹き飛ばされた。
「どうやら貴様らが我等の悲願の最後の抵抗者という訳だな」
映し出されたHPバーとその上の名称を表すカーソル。
《N,lzahh:Fallen Elven General》
直訳するとフォールンエルフの将軍ノルツァー、金属と革の複合鎧を身に着け深紅のマントと額から生える二本の角が特徴的なエルフ。キリトとアスナはこのエルフを知っていた。
カーソルの色は黒に近い赤色。第五層で見た時よりも赤色に近づいており、レベル差は縮まっているが圧倒的に向こうが強者である。
「くっ、何で将軍がこんな所に一人で居るんだ?」
キリトは焦りながらも戦闘態勢に入りノルツァーへと問いかけた。
「計画通りとはいえ、こちらも手が一杯一杯なのでな。最小限でありながらも最大戦力が最重要地に向かうのはおかしい事ではないだろう?」
「・・・・なるほど、確かに理にかなっているな」
吹き飛ばされたキズメルが息を荒げながら立ち上がった。
「時間稼ぎも此処までで良いだろう。悪いが我らが悲願の為に此処で死んでもらう!」
ノルツァーは細身の両手剣を握り構えを取った。
「もう少しの所なのに・・!」
アスナの堪え切れない悔しさが言葉の端々に滲んでいる。
「いいのか?今アンタ等が騙している男が全て引っくり返すかもしれないぜ」
キリトはノルツァーを揺さぶる為に言ったのだが、その言葉が引っ掛かっている何かを強く揺さぶった。
「心配ない、既に報告は受けている。人族の始末など人族に任せるのが一番だと思わないか?」
ノルツァーはそう言って顔が裂ける様な笑みを浮かべた。
「まさか・・・・手を組んだっていう人族__犯罪者集団か!?」
ノルツァーは笑みを浮かべたままソードスキルのモーションを取った。
▽
「この部屋の番人みたいな立ち位置らしいけど大した事ないな」
フワはそう言いながらポリゴン破片となって砕け散っていく《リビングデッド・リザードマン》を眺めていた。
腐った身体だが、リミッターが外れた様な常識外の腕力に怯む事無く襲いかかる執拗さに貪欲に肉へ喰らい付く飢え、決して弱い訳ではない相手だったのだ。
それでもフワはつまらなさそうに呟いた。
「・・・・もういいだろ、出て来いよ。聖堂に入った時からずっと付けてたろ」
フワが振り返って部屋の入口を見るとプレイヤーが4人入口の陰から姿を現した。
全員が隠蔽値の上昇の為か黒いフードを頭から被っていたが部屋に入ると脱いだが、長身の男だけがポンチョを着たままだった。
「へえ、物の見事に全員緑色か。腹の色は真っ赤に染まっていそうだがな」
4人のカーソルの色を見てフワは見透かしたように笑った。
「How!まさか一目見ただけで気付かれるとは思わなかったぜ、さすが《Origin》って所だな」
ポンチョを着た男が外人の様な反応をした。
「自分達に見ただけで分かる悪の箔が付いたんじゃないっすか」
細い鎖を編み込んだフードを被ったプレイヤーが笑いながら言った。
「バーカ、こんな怪しい4人組が現れたら誰だって疑うっつーの」
目の所だけを隠す仮面を付けた男が笑いながら否定した。
「でもでもぉ!ヘッドには既にオーラっていうか箔みたいなモンがあるくない?」
真っ黒の髪に素朴そうな顔をした女は顔を歪めて媚びた様な不快な声を出している。
「・・・・メリュジート、姫さん連れて先に力とやらを得て来い。ここは俺が何とかしてやるから」
フワは横にいたメリュジートに告げるとメリュジートは少し迷ってからエルミアを連れて奥の部屋へと向かって行った。
「ありがとうございます!力を得たらすぐに助けに来ます!」
そう言いながら奥の部屋に行き、扉を閉めた。
「助けに・・ねぇ・・・・」
フワは誰にも聞こえない声で呟いた。
「?どうした?掛かって来ないのか?」
動かない4人を見てフワは不思議そうに首を傾げた。
「その前にアンタに提案があるんだが、話を聞いてみないか?」
ポンチョを着た男がそう告げた。
4人中1人だけオリキャラです。
そして1人が半分オリキャラです。
描写が少な過ぎるのが原因なんです。