「その前に一つ聞いてもいいか?」
フワの言葉を聞いたポンチョを着た男は肩で笑った。
「Ah、いいぜ。何を聞きたいんだ?」
「その《オリジン》?って何だ?俺の事を指してるよな」
フワはキョトンとした顔で自分を指差しながら質問した。
ポンチョを着た男は少し呆然としてから吹き出したように笑い声をあげた。
「この状況でそんな事を聞かれるとは思わなかったぜ!」
周りに居た連中も大笑いしていた。
「本気ですかぁ?本気でそんな事を聞いているんですかぁ!?」
鎖頭巾を被った奴が笑いながらフワへと問いかける。
「ヘッド、こんな奴が本当に《オリジン》なんですか?」
仮面を付けた奴が笑いながらポンチョの男へと問いかける。
「この状況でこんな事聞くなんて、ビビり過ぎて頭が可笑しくなったとしか思えないんですけどぉ!」
大笑いで更に顔を醜く歪めた女は見ていられないモノになった。
「教えてくれるのか、教えてくれないのか、どっちかにしてくれねえか?」
四人のバカ笑いを聞き流したフワはあきれ顔でポンチョの男へと問いかけた。
「いやいや失礼したな、まさか自分の事なのに俺達に聞いてくるとは思わなかったんでな」
「俺の事?」
その言葉にフワは覚えが無いのか、眉を顰めた。
「Ah、《Origin》ってのはアンタの二つ名みたいなモンだ。なんでも第一層のボス攻略戦で1人殺し、しかもその後で決闘したプレイヤーも殺そうとしたんだろ?それで他のプレイヤーがアンタを初めての犯罪者という事で《Origin》って呼んでるんだよ」
ポンチョの男の言葉にフワは手を合わせて納得のポーズを取った。
「なるほど、そう言えばそんな事もあった気がする」
フワの反応にポンチョの男だけが小さく笑っていた。
「How、人を殺してその反応とはCOOLな奴だな・・・・気に入らねえ・・・・」
最後の言葉は小さくて周りの奴等にも聞こえなかった。
が、歪めた口の端をフワは見逃さなかった。
「その顔、自分よりも劣った人間が大層な事を言ってんじゃねえよ、って顔してる。人種差別者なのか?」
その言葉にポンチョの男は固まってしまった。
「大方、親が原因だろうな。父親がクズなのか、母親がクズなのか・・・・いや、これは両方クズの方だな」
フワは逆に見下した笑みを浮かべた。
「それでいてファザコンかマザコンか、これはマザコンの方か」
「・・・・・・・・」
自分達の頭が黙り空気が張り詰めて行くのを理解した周りの奴等も黙ってしまった。
「それで、提案とやらは何だ?と言いながらだが、別に言わなくてもいいぞ。予想は付いてるから」
それでもフワの口は閉じなかった。
「どうせ俺達の仲間にならないか?とでも言う気だったんだろ、奥に行った二人に騙されてるから俺達に付かないか?って所か」
全員が黙った中、ポンチョの男は静かに口を開いた。
「殺せ」
鎖頭巾が一番早く反応して片手用直剣を右手に構えながらフワとの間合いを詰めた。
「やっぱアンタ大馬鹿野郎ですねぇ!!ヘッドを怒らせるとか一番やっちゃいけない事なのにさぁ!!」
鎖頭巾は笑いながら右手に握った直剣を振りかざしながらフワへと斬りかかった。
「あっそう」
フワは慌てることなく右手で引き抜いた短剣を直剣に合わせて弾いた。
「お前は対象外なのか?」
挑発とも取れる言葉を放ったフワだが、鎖頭巾は笑みを浮かべたままだった。
「ヘッドのは次元が違うンすよぉ、今から楽しみで仕方がないっすからぁっ!」
言い終わりより少し早く鎖頭巾が斬ると突きを合わせた様な攻撃をフワへと放った。
突いた後で薙いで来る攻撃をフワは短剣で弾いているとフワに対して左側に回った仮面を付けた奴が刃が短い短剣、ナイフと呼ばれるモノを構えた。
「動くなよお!!」
仮面の奴が投擲のソードスキルを発動させるとナイフの刀身が光り、フワへと迫った。
フワは少し強く鎖頭巾の直剣を弾くと身体を後ろへと逸らしながらナイフを躱してバク転で鎖頭巾との距離を取った。
「ほらそこおっ!!」
女が笑みを浮かべながらフワへと細剣ソードスキル放った。
___細剣ソードスキル《ホーネスト》___
敵との間合いを詰めながら発動し、システムアシストにより速度の上昇と攻撃後も止まらずに敵との間合いを取るソードスキル。
フワが短剣でレイピアの切っ先を弾くと攻撃は外れたが、動きは止まらずにフワとの間合いを空けた。
しかし、少し間合いを空けると動きが止まると同時に技後硬直が始まる。
その技後硬直をフワは追わず、一拍遅れて迫った鎖頭巾のソードスキルの対応をした。
___片手直剣ソードスキル《ストライク》___
森エルフの将軍が放った《ヴォ―パル・ストライク》の下位互換だが、それでもブーストを掛けた《ストライク》は《ヴォーパル・ストライク》に迫るモノがあった。
同じようなモノを受けた事があるフワは胸に向けられた切っ先を同じように短剣で逸らした。
鎖頭巾も同じようにフワから少し間合いが離れた所で技後硬直になった。
が、フワはまた追わずにそこから右に飛び退くとナイフが通過した。
「くそっ!また外した!」
そんな言葉を無視しながらフワは短剣を掲げると頭上からポンチョの男が大型のダガーを叩きつけた。
ダガーを短剣で受け止めると、ポンチョの男は力を抜いて短剣からダガーを引き抜き着地と同時に滑る様にダガーを操ってフワへと斬りかかった。
左から右へと振られるダガーを弾くと次は上から下へとダガーが振られる、二度とも同じように弾くと同時に両者揃って後ろに跳ぶと、間を女が《ホーネスト》で駆け抜けた。
「ほらほらぁ!どんどん行きますよぉ!!」
鎖頭巾は少し間合いが開いている中で声を出しながら、右手の直剣をフワへと投げつけた。
投擲スキルで投げてはいない為、切っ先がフワに向いている訳ではない。
それでもフワは短剣で弾き飛ばした。
「シャッハアアアア!!」
間合いを詰めながら《クイックチェンジ》で右手に新たな武器、片手斧を握りソードスキルを放った。
___片手斧ソードスキル《クリーブ・クリーブス》___
踏み込みながら左から右へ横薙ぎ、その勢いのまま踏み込んだ左足を軸に一回転して左から右への横薙ぎから返す刃で左から右へ薙ぐ三連撃のソードスキル。
フワは短剣で最初の横薙ぎを弾くと鎖頭巾が身体を一回転している間に後ろへと跳び範囲外へと逃れた。
その足が着地する前に眼前に迫ったナイフを短剣で弾き着地すると一拍遅れて大型のダガーが頬を掠めた。
頬が少しだけ掠ったのか血の様にポリゴンが少しだけ傷口から零れていた。
「くっくっく・・・・」
ソレを見てポンチョの男が笑っていた。
▽
ノルツァーの攻撃を防いだキリトは吹き飛ばされ少しHPが削られる。
「くそっ、ソードスキルでもないのに弾く事も受け切る事も出来ないなんて・・・・!」
キリトは呟きながらも急いで立ち上がりノルツァーへと向かう。
「くっ!?」
盾を装備しているキズメルですらノルツァーの攻撃を受ける度に体勢を崩し何度も受けられなかった。
「ハァッ!!」
ノルツァーの横合いからアスナが気合いの声と共に《リニアー》を繰り出すが、ノルツァーは先程の重い攻撃とは裏腹に軽やかに身を翻して避けた。
翻した身が着地すると同時に技後硬直で動けないアスナにノルツァーはソードスキルを発動させた。
___両手剣ソードスキル《アバランシュ》___
相手との間合いを詰めながら袈裟掛けに斬り付ける単純なソードスキルだが、システムアシストにより大きく重量もある両手剣を持っているとは思えないほどの速さで斬り付ける。
「やらせるかァッ!!」
キリトはアスナのフォローの為に《ソニックリープ》を使ってノルツァーの《アバランシュ》を止めようとした。
「甘いっ!」
ノルツァーの言葉通り、両手剣ソードスキルの中で上位に位置する《アバランシュ》に初期で覚える下位の《ソニックリープ》が対抗できる訳がなかった。
キリトの《ソニックリープ》はアッサリと弾かれて《アバランシュ》の勢いは緩む事無くアスナへと襲いかかった。
それでもアスナは技後硬直が解けると同時に自身の武器《シルバニック・レイピア》を身体を守る様に掲げた。
確かに《シルバニック・レイピア》は強化値の十五回完璧に成功している業物だが、ノルツァーの《アバランシュ》を受け切るのにはレイピアという武器自体の相性が悪かった。
「きゃあああああッ!?」
アスナの《シルバニック・レイピア》は一瞬拮抗した後、アスナが吹き飛ぶと同時に真っ二つに折れポリゴンとなって砕けた。
「アスナアアアアッ!?」
吹き飛ばされたアスナはキリトの叫びに__
「_________」
___応えなかった。
しかし、ポリゴンになって砕ける訳でもなく。吹き飛ばされて時の衝撃で気絶しただけだった。
「大丈夫だキリト!気絶しているだけだ!」
取り乱したキリトを冷静にさせる為にキズメルが叫んだ。
「アスナを守る為にも、今は目の前の敵を倒す事だけを考えるんだ!」
「ああ、分かった!」
その言葉にキリトは気絶したアスナから目を逸らしてノルツァーを睨み付けた。
「あと二人、我等の悲願までもう少しだ!」
《アバランシュ》の技後硬直が解けると両手剣の切っ先をキリトとキズメルへと向けた。
「・・・・キリト、私に考えがある。付き合ってくれるか?」
「もちろん、勝機があるなら何だってするさ」
キリトの言葉を聞いてキズメルは左手の盾を手放して直剣を両手で握った。
「攻撃は最大の防御だ。攻撃を受けるのではなく避け、攻めて攻めまくる!」
「了解!!」
言い終わると同時にキリトは左からキズメルは右からノルツァーに襲い掛かった。
「ぬうぅっ!?」
仲間の1人を戦闘不能に追いやった筈なのに怯える事無く、激しい攻めにノルツァーは戸惑いながらも対応しようとした。
「「ハアアアアアアアッ!!」」
キリトとキズメルの咆哮が重なり、激しく苛烈にノルツァーを攻め立てた。
ノルツァーも両手剣を振るうが、キリトとキズメルは二人とも直剣を両手で握っており簡単に弾き飛ばす事が出来なかった。
「ハアァッ!!」
横薙ぎに振るわれた両手剣を二人とも身体を地面に着くほど下げて躱してキズメルが上体を上げながら構えなおしているノルツァーに一撃を加えた。
「ウオオオッ!!」
続く様にキリトは低い姿勢のままソードスキルを発動させた。
___片手直剣ソードスキル《ホリゾンタル・スクエア》___
右から左へと刃が走り、返す刃で左から右へと刃が走る。
キズメルに体勢を崩されたノルツァーはなす術なく胸を二回斬り付けられた。
勢いを殺す事なく一回転して左から右へ、最後に両手で柄を握り直して右から左へと渾身の一撃を放った。
確かに最後の一撃まで入りHPが半分になりながらも、ノルツァーは下がらなかった。
「見事な一撃だった。だが、これで終わりだ!」
ノルツァーは腰を落として両手剣を左腰に構えた。
キリトには見覚えがあった。
唯一プレイヤーが死んだ第一層のボス《イルファング・ザ・コボルドロード》そのボスが取った構えと似ていたからだ。
「まだだァッ!」
キズメルがキリトのフォローの為にソードスキルをノルツァーへと放った。
「ッカアッ!!」
ノルツァーは気合いと共に左腰に構えた両手剣ソードスキルを振るった。
___両手剣ソードスキル《ブラスト》___
前方180°に広がる両手剣ソードスキルに多い範囲技だが、裂帛の気合と共に放たれたソレは次元が違っていた。
キズメルの放ったソードスキルをアッサリと飲み込んで両手剣がキズメルを打ち、キリトも巻き込むようにして吹き飛ばした。
「ぐっ・・・・くそっ!大丈夫かキズメル!?」
一瞬意識が飛んだキリトは一つ前にキズメルを挟んだ事でダメージが軽減されていたが、キズメルはソードスキルを挟んだとはいえ、まともに喰らいHPバーが真っ赤になっていた。
「また、俺の所為で・・・・」
___仲間が死に向かっている___
「・・・・死なせたくない・・・・死なせ・・たく・・・・ないんだああああああああっ!!」
その瞬間、キリトの中で何かが弾けた。
それはブチ切れた時の音かもしれなかった。
「仲間を死なせてたまるかあッ!!」
力が欲しい、キリトは頭にその言葉しか浮かばなかった。
『守る為に!目の前のアイツを倒す為に!力が欲しい!!』
全力でノルツァーとの間合いを詰めながらキリトは必死で思い出していた。
___あの時の事を___
フワに連れられてだったが、至った事がある__あの時の戦いを__
「_____________」
『もっと早く!時間すらも置いていく程に!早く速く・・・・迅く!!』
何かを叫びながらキリトはあの時の感覚へと足を踏み入れた。
遂に出せた。
修羅の門ならではの迅く(はやく)って言葉を