シュラアート・オンライン   作:メガネザル

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始まりの日

 

周囲には興奮した4匹のイノシシ《フレンジーボア》が1人のプレイヤーを囲んで何度も突進を繰り返していた。

 

『この状態を確かアクティブって言うんだっけ』

 

ビギナーなら確実に死ぬ状況でフワは考え事をしながら四方からの突進を避け続ける。

 

デスゲームになり、フワのように満足に動けるプレイヤーがビギナーβテスター問わず何人いるだろうか。

 

そして、突進方向を巧みに操り同志討ちを誘い、4匹全てのHPを赤くさせるプレイヤーが

 

『さてと、この身体の調子も分かってきたし・・・・「殺すか」

 

最後だけ声に出したフワはフレンジーボアの突進を必要最低限の動きだけで避けると同時に下腹に蹴りを叩き込んだ。

 

既に赤くなっていたフレンジーボアのHPはゼロになってポリゴンになって砕け散り、ポリゴンを掻き分けるように突進した2匹も蹴りを叩き込まれポリゴンとなって砕け散った。

 

最後の一体だけ残したフワは右逆手に短剣を持って構えた。

 

「初動のモーションを感知して・・・・こうか!」

 

短剣ソードスキル《エッジ》短剣の刀身が紫色の光が包み、一拍すると紫色の閃光を残してフレンジーボアとの間合いを詰めて斬り付けた。

 

当然、フレンジーボアは砕け散り。フワの前にリザルト画面が表示された。

 

「今のがソードスキルか、モンスター相手には有効かもしれないが対人で使えるのか?」

 

フワは初めての戦闘に勝利したにも関わらず喜ぶ事もなく身体の調子とソードスキルの考察を始めた。

 

「スキルの1つに《軽業》を入れたら少しだけ動きやすくなったけど・・・・」

 

まだ動きずらいのかフワは首を傾げながら考察を続けるが分からないままだった。

 

「そう言えば上手い人はソードスキルにブーストを掛けられるって言ってたな」

 

フワはアルゴに教えて貰った情報を思い出しながら次の村へと向かっていった。

 

その後、フレンジーボアを相手に何十回もソードスキルの練習をしているとレベルが上がった。

 

「えーと、レベルアップ時のボーナスポイントをステータス値を振り分ける・・と」

 

フワはステータス値を筋力6と敏捷4に振り分けた。

 

「イノシシの次はオオカミか・・・・」

 

オオカミ《フラジールウルフ》が3匹フワに跳びかかった。

 

左方向から跳びかかったフラジーウルフを左肘で叩き落とし、右斜め前からのを右拳を下から腹に突き刺して浮かせ、上から跳びかかったのを右足の前蹴りで更に上に弾き返した。

 

フラジーウルフの鳴き声を聞きながらフワは右拳を下から突き刺し浮かせたフラジーウルフの前足を右手で掴んで投げ、左肘で叩き落としたフラジーウルフへと叩きつけた。

 

重なり合った2匹を足で踏みつけて右手の短剣を2匹とも地面に縫い付けるように突き刺し、左足で突き刺した短剣の柄を踏み込んで固定した。

 

蹴りあげられHPが3分の2程になったフラジーウルフを見てフワが首を傾げていると喉元目掛けて同じように跳びかかった。

 

フワは先程と同じように右拳を突き、浮かせたフラジーウルフを右手で掴んで左足を柄から退かすと同時に短剣めがけて叩きつけた。

 

その一撃で3匹のフラジーウルフは仲良くHPがゼロになり砕け散った。

 

『さっきのイノシシを蹴った時には4分の1しか減らなかったのに今回は3分の1・・・・オオカミの方が体力が低いのか?』

 

「・・・・あれ?」

 

フワは考察に一段落ついて短剣を拾う為に辺りを見回すが短剣が見当たらない事に気付いた。

 

「まさか、さっきのアレで武器耐久値がゼロになったのか?」

 

自分のステータス画面を開いて確認すると装備していた短剣の欄が消えていた。

 

「・・・・早く次の村に向かおう」

 

___午後6時25分___

 

 

あの後フワは《ホルンカ》という村に着くまでに5回戦闘を行った__武器無しで。フワは5回で済んで良かったと考えているが何処か間違っている気がする。

 

「とりあえず、新しい短剣が要るし武器屋を__」

 

辺りを見回すフワの視界に茶革のハーフコートを着た少年が入った。

 

少年もフワに気が付いたのか2人の視線が合わさった。

 

「えーと、武器屋の場所を教えてくれないか?」

 

フワは近づきながら少年に話しかけた。

 

「え?あ、アンタ・・・・ビギナーなのか?」

 

少年はフワの質問に驚きながらも逆に質問を返した。

 

「一応そうだけど、ある情報屋から基本的な事を教えて貰ったから此処まで死なずに来れただけ」

 

「そ、そうなんだ。こんなに早く誰かが来るとは思わなくて・・・・少なくともβテスターだろうと思ってたから・・・・」

 

少年は驚きながらも罪悪感を滲ませた顔で何かを思い出していた。

 

「それで、武器屋の場所と・・・・出来れば金や経験値を稼げるクエストを教えてくれると助かるんだけど」

 

「わ、悪い。とりあえず武器屋まで案内しようか?その途中で俺が知ってるクエストを教えるから」

 

正気に戻った少年の親切な提案にフワは喜んで乗った。

 

「ありがとう、俺のプレイヤー名はフワって言うんだ」

 

そう言ってフワは右手を差し出した。

 

「え?あっ!俺はキリトだ。お礼とか気にしなくていいから」

 

キリトは差し出されたフワの手を取って握手をした後、2人で武器屋へと向かって歩き出した。

 

「__えっ!?此処に来る途中で武器が無くなった!?」

 

武器がない状態のフワに驚いたキリトが大きな声を出した。

 

「まあ、何度も戦闘してたし・・・・なによりも武器の耐久値を忘れて無茶な使い方した俺が悪い」

 

フワの言葉を聞いてキリトが顔の前で手を振った。

 

「いやいや!そんな事に驚いたんじゃなくて!よく死なずに此処まで辿り着いたな!」

 

「いやはや運が良かったよ。武器が壊れた後は殆ど戦ってないし、迷わずに此処まで来れたし」

 

武器を持ってない状態で5回という数字をキリトが聞いたなら再び大きな声で驚くだろうがフワは本当に運が良かったと考えている。

 

「そ、そうか。何はともあれフワが死ななかった事が嬉しいよ俺は」

 

「・・・・良い奴だなキリトは」

 

そんなこと無いと言い張るキリトだったが此処ではフワの言うことが正しかった。

 

武器屋で初期装備の《スモールダガー》より強い《ブロンズダガー》を買おうとしたフワにホルンカ周辺に出る植物モンスターが放つ腐蝕液が耐久値を削り、元の耐久値が《スモールダガー》より低いからお薦めしないとキッチリ教え、フワは《スモールダガー》を2本と回復ポーションや解毒ポーションを買って店を出た。

 

「なあ、ホントにいいのか?このクエは短剣使いには旨味が少ないと思うんだけど・・・・」

 

《森の秘薬》というクエストを受けたキリトとフワはクエスト受注場所である民家を出て夜の森へと歩を進めていた。

 

「元からこの辺でレベル上げするつもりだったし、レベル上げのついでにクエストをやる、報酬の片手剣は売ればそれなりの金になる、旨い事だらけだと考えているんだけど」

 

「た、確かに・・・・それじゃ知ってるかもしれないが確認の為に今から戦う《リトルぺネント》について話すから」

 

助かるとフワは言ってキリトからリトルペネントの攻撃方法や弱点、そして特性を教えて貰って一緒に夜の森へと足を踏み入れた。

 

『なるほど、確かに戦い慣れてるな。特に経験からくる見切りが上手い、確実に避けてから攻撃を当てている』

 

キリトがまずは俺が戦うから敵の動きとか見て参考にしてくれと言っていたがフワの視線はキリトしか捉えてなかった。

 

壺のような胴体の下に根が蠢いており左右に長く先が鋭い触手を持つリトルペネントはキリトに攻撃をかすらせる事すらさせず、攻撃後の出来た隙をソードスキルを叩き込まれて砕け散った。

 

「凄いな、戦い慣れてるから動きに迷いが無い」

 

「いや、それ程でもないよ。次はフワがやってくれないか?」

 

もちろんとフワは言って次のリトルペネントを探し出して対峙した。

 

「さてと・・・・」

 

新しく買った《スモールダガー》を右手に構えるとリトルペネントは右の触手を突き出した。

 

少し離れた間合いで突き出された触手を紙一重で避けながらリトルペネントとの間合いを詰め短剣のソードスキル《ピアース》を発動させ弱点の胴体と茎の境目に突き刺した。

 

弱点をソードスキルで攻撃されたリトルペネントはHPが半分以上減り、ノックバックで行動が止まった。それはフワのソードスキル後の硬直を十分に補った。

 

ノックバックから回復したリトルペネントは腐蝕液を吐こうと行動が止まった瞬間、フワは短剣を右逆手に持ち直してソードスキルの《エッジ》を発動させ、出来るだけブーストを掛ける事を意識しながら間合いを詰めて弱点を斬り裂いた。

 

それでリトルペネントのHPはゼロになって砕け散り、フワは驚いた顔をしているキリトの元に向かった。

 

「つ、強いんだな。フワが本当にビギナーか疑ってしまう程だ」

 

「戦闘に慣れてるだけ、正真正銘ビギナーだよ。VR初体験がデスゲームのな」

 

そう言って笑みを浮かべたフワをキリトは気丈に振る舞っているように見えたのか申し訳なさそうに目を伏せた。

 

「そ、そうか・・・・すまない」

 

「なんで謝るんだ?別に気にするような事でもないだろ」

 

この2人のズレとも言うべきモノにキリトは気付いていなかった。

 

2時間後、リトルペネントを狩った数が百を超えた所でフワが溜め息を吐いた。

 

「まだ一体も出ないとか確率低すぎ・・・・」

 

「βテスト時で1%位だったけど、正式サービスでは更に低くなってるかも・・・・」

 

βテストで事前に情報を知っていたキリトでさえ少し疲労が見える。

 

2人のレベルも一つずつ上がり、フワが3キリトが2になっていた。

 

「はあ、そろそろ再開する?」

 

フワは動く為に一息入れてキリトに提案した。

 

「ああ、俺は大丈夫だけどフワは大丈夫なのか?」

 

「大丈夫じゃなかったら言わないって・・・・まあ、その前に___そこに居るの分かってるからコソコソしないで出て来い」

 

フワが視線を横に移して声を掛けると木々の間から小さな木の盾と片手剣を装備した少年が出て来た。

 

「ご、ごめん。声を掛けるタイミングを計ってて・・・・」

 

「あそ、それで何か用か?」

 

キリトは驚いていた。申し訳なさそうにする少年に対して余りに素っ気ない態度を取るフワの声色が異常に冷めていた事に。

 

「《森の秘薬》ってクエストの途中だよね。僕も一緒に狩りをしてもいいかな?」

 

「それは俺じゃなくてキリトに聞いてくれ」

 

フワがキリトに目をやった。

 

「え、俺は別に構わないけど・・・・」

 

「だとよ、良かったな」

 

フワは素っ気ない態度のまま、次のリトルペネントへと襲い掛かった。

 

「僕はコペル。ありがとう、入れてくれて」

 

「キリトだ、別に気にしなくていいから」

 

名前を教え合い、コペルが戦っているフワに聞こえないような声でキリトに話しかけた。

 

「あの人は一体・・・・?」

 

「名前はフワ、一応ビキナー」

 

その言葉を聞いてコペルの目が見開いた。

 

「び、ビキナー?下手な冗談は止めてくれよ。あの戦い振りでビキナーなんて・・・・」

 

コペルの視線の先には3対1でも危なげなく一つずつ倒しているフワの姿があった。

 

「でも、本人がビキナーだって・・・・」

 

キリト自身もフワがビキナーとは思えないと考えていた。

 

「・・・・気を付けた方がいいかも」

 

「な、何を?」

 

キリトは何かが分かっていたが聞き返さずにはいられなかった。

 

「彼がビキナーだと嘘を吐いている理由だよ」

 

キリトは息苦しさを感じながらも否定を口にした。

 

「そ、そんな嘘を吐くメリットがないぞ」

 

「・・・・例えば、無知の振りをして《実付き》を攻撃して自分だけは逃げたり・・・・」

 

リトルペネントを使ったMPK《モンスター・プレイヤー・キラー》を想像したキリトは更に息苦しさを感じた。

 

「何をしてるんだ?早くしないと終わらないぞ」

 

更に2体増え、計5体になったリトルペネントを狩りながらもフワはダメージを負っているようには見えず、キリトは不安が現実のモノになる嫌な予感がしていた。

 

「これは厄介だな、どうするキリト?」

 

フワがそう呟くのも無理はなかった。

 

左右に別れてはいるが左に5体のリトルペネント、右に4体のリトルペネントが付かず離れずの距離でいるからだ。

 

「しかも左には花付きと実付きが一体ずつ・・・・俺とコペルが実付きの実を割らないように花付きの一団と戦うからフワは4体の方を頼んでもいいか?」

 

片方から襲うと下手をすると背後を突かれるかもしれないからキリトの提案は間違っていなかった。

 

だが、左の4体を3人でなら背後を突かれる前に倒し切る事も不可能じゃなかったが、キリトはフワに実付きの相手をさせる事が不安になったのだ。

 

「・・・・分かった。ただ、最初に実を手に入れるのはキリトだ。アンタもソレでいいな」

 

フワの言葉にもちろんとコペル頷き、二手に別れた。

 

「僕が実付きを引き付けるからキリトは花付きを頼む!」

 

コペルが盾を構えて実付きのタゲを取ったのを見てキリトは花付きへと向かった。

 

「セイヤァッ!」

 

リトルペネントが5体から3体に減り、キリトは気合いを入れた片手直剣の《ホリゾンタル》で花付きを弱点を斬り付けてポリゴンの欠片へと変えた。

 

「よし!花付きを倒したぞ!今すぐ実付きを後ろから___」

 

キリトが言い切る前に何かが破裂する音が響いた。

 

「なんで___」

 

音の正体はコペルが実を割った音。リトルペネントの実は言わばトラップ、割れた実の匂いに誘われて大量のリトルペネントがポップする。

 

コペルが言ったMPKをコペル自身が行ったのだ。キリトが何かを言う前に隠匿のスキルを使ってコペルの姿が消えた。

 

『そうか、そういう事だったのか・・・・』

 

キリトは全てを理解した。最初にコペルに気が付いたフワは俺よりもレベルが高かったから索敵でコペルの隠蔽を見破ったんだ。

 

でも、それだけじゃ疑いを口に出せずに素っ気ない態度を取っていた。コペルがぼろを出すと思って___

 

その時、キリトに雷が落ちたようにハッとした。

 

「ふ・・わ・・・・フワアアアアッ!!」

 

それは絶叫と呼ぶに相応しいモノだった。

 

カーソルにリトルペネントを表す赤い点が数え切れないほど表示されていてフワを表す点が埋もれていた。

 

「アアアアアアアアアッ!!!」

 

リトルペネントの群れを突っ切ろうと絶叫を上げながら突っ込んだ。

 

『俺のせいで!俺のせいでっ!俺のせいでぇぇぇ!!』

 

キリトは正気でいられなかった。自分のせいで人が死ぬ___いや、自分が殺したにも等しい状況に__

 

四方を囲まれている事にも気付かずに前に進むキリトの目の前に並んでいたリトルペネント達が横に吹き飛んだ。

 

「生きてるよ!キリトも半分死にかけてるけど無事だな!」

 

こんな状況なのにフワは嬉しそうに愉しそうに笑っていた。

 

「ふ、フワ・・・・」

 

フワの姿を見て呆けているキリトの横をフワが駆け抜けて、キリトの背後に忍び寄っていたリトルペネントを攻撃した。

 

「どうした?半分死にかけると怖くて動けなくなったか?」

 

フワの挑発的な言葉にキリトは正気に戻った。

 

「たかがHPが半分になっただけだ!こんな事で怖じけづくか!」

 

「なら、早いとこ終わらせようか!」

 

フワが《エッジ》でリトルペネントのツタを斬り落とし

 

「ああ!」

 

キリトが《ホリゾンタル》でリトルペネントの弱点を斬り付けて倒した。

 

「ところで、さっきはどうやってリトルペネントを吹き飛ばしたんだ?」

 

「別に難しい事じゃない」

 

フワはそう言って短剣を腰に仕舞い、突き出されたツタを避けてから両手で掴んだ。

 

「キリト!伏せろ!」

 

「な、なるほど・・・・」

 

キリトが感心しながら伏せると頭上をリトルペネントが通り過ぎた。

 

「うおりゃああ!いっけえっ!」

 

ツタを掴んだフワはジャイアントスイングのようにリトルペネントを振り回してから他のリトルペネント目掛けて投げた。

 

先程と同じように何体かのリトルペネントが吹き飛んだ。

 

「こんな方法があるとは、ゲーマーじゃ思い付きもしないだろうな」

 

こんな自由な方法を思い付く時点でゲームをやった事がない証拠だ。

 

「ごめん、疑ってた」

 

「何が?どうでもいいから早く狩らないか?数だけ多いせいで気持ち悪いったらないんだけど」

 

キリトは同意しながらフワと一緒に次のリトルペネントへと向かった。

 

全てのリトルペネントを倒すまで1時間弱、キリトの体感では2時間もしくは30分と、時間感覚が曖昧になっていた。

 

視界に映る全てがスローモーションに見える中、剣と身体が一体化し、更に更にと加速していく思考と動き。

 

そして、自分に遅れる事なく___いや、自分に合わせながら徐々に速度を上げて更に高みへと導いてくれるフワの存在。

 

命が懸かっている状況な筈なのに、今まで生きてきた中で一番充実しているのを実感していた。

 

だから、目標という名の欲が生まれた。この戦闘が終われば終わる感覚を__再び味わう__そんな狂人めいた欲が。

 

「これで終わり。まさか花付きが2体も出るとは思わなかった」

 

そんなフワの言葉が聞こえてキリトの高ぶっていた気分が沈んだ。

 

「俺のせいで危ない目に会わせて「謝らなくていいぞ」

 

キリトが謝罪を口にする前にフワは言葉を被せた。

 

「相談してからだけど実付きは割るつもりだったんだ。俺とキリトなら捌けると思ってたし」

 

「実付きのトラップを知っていたのか!?」

 

キリトの言葉にフワは呆れながら答えた。

 

「キリト、お前が俺にリトルペネントの特性について教えたんだろ・・・・」

 

「あっ・・・・そういえば教えてた・・」

 

今更ながら思い出した事にキリトは一気に疲れがのしかかって来た。

 

「・・・・視界が無いリトルペネントに隠蔽は無意味。そして30分程前に聞こえてきたポリゴンのの爆散音から考えると___」

 

その続きを言う必要は無い。キリトも既に分かっている事だった。が__

 

「__既に死んでるか__」

 

フワは何の感慨もなく言い切った。

 

あまりに呆気なくフワは言い放ち、キリトは頭が真っ白になった。

 

「りと__きり__ぉい__キリト!」

 

フワが怪訝そうな顔をしながらキリトの名を呼びながら顔を覗き込んでいた。

 

「本当に死にかけたせいで気分が悪くなったのか?それなら先にクエストクリアしてくればいい」

 

キリトは意識がハッキリしないままフワに連れられて村の近くへと来ていた中、フワの言葉に驚きながら答えた。

 

「そ、その言い方だとフワはまだ戦うつもりなのか?」

 

「まあな、もうすぐでレベルが上がりそうなんだよ。それにキリトの武器は限界だろ?俺はもう一本あるから続けるよ」

 

キリトは自分の握った《スモールソード》が消耗している事に気付いた。

 

「そ、そうだな。すぐに替えて来るから少しの間待っててくれ」

 

キリトもレベル上げの続きをするつもり__という訳ではなく、ただ一人になるのが怖かっただけ。

 

デスゲームが始まったばかりで、騙されて殺されかけたとはいえ言葉を交わした人が一人死んでしまった。こんな狂ってしまった世界で一人になってしまう事が。

 

「・・・・もう、今日は休んだ方がいい。生き死にの世界になったばかりで精神的な疲れが分かっていない。そんな状態だと死ぬだけだ」

 

キリトは頭では理解しながらも否定を口にした。

 

「その言い方だとフワは生き死にの世界に慣れてるみたいな言い方じゃないか」

 

「ああ、慣れてる。だから経験者としての助言だ。別に意地悪で言ってる訳じゃない。まだキリトが死ぬには早過ぎると思っているからだ」

 

その言葉にキリトは否定を口に出せず、静かにフワにフレンド登録の申請を出した。

 

「そういえば、フレンドがあったな。アルゴさんともフレンド登録しておけば良かった」

 

フワは聞き覚えのある名前を口に出しながらフレンド登録をしてくれた。

 

「・・・・フワもあんまり無茶し過ぎるなよ」

 

キリトは既に疲れを感じ始めているのか反応が鈍いまま村へと戻って行った。

 

「もう一つ経験者としての助言だ。戦うって事は怖いって事だ。そして、そこから逃げないって事だ」

 

キリトは意識が朦朧としている中でもフワの言葉が頭に響いた。

 

「逃げてもいい。だが、恐怖から逃げたまま戦うな」

 

そして月明かりが照らす中、フワは貰った情報通り《ラージペネント》がいる森へと足を伸ばした。

 

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