「ひぐらしのなく頃に」の短編小説。というかパロディ。▼ある日、謎のゲーム機「GAME BOY」を拾ってきた梨花。それを起動させると、オヤシロモンスターという奇妙なモンスターたちを戦わせるゲームが始まった。梨花はゲームをクリアできるのか?▼名前から推測可能なようにポケモンのパロディになります。それも初代。わかる人には多分楽しめるんじゃないかと思います。

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皆様初めまして。十宮恵士郎(とみや けいしろう)と申します。
以前他の場所で主に二次創作を投稿しておりました。
その経験を活かして、ここでやっていきたいと思っております。
どうぞよろしくお願いいたします。

ここでの初投稿になるこの作品は、既に潰れた某二次創作掲示板に以前投稿した作品になります。いわば再投稿です。
当時ですら既に過去のものになっていた初代ポケモンのパロディですが、果たして今の読者には通じるのでしょうか(汗)
ともあれこのしょーもないパロディを暇つぶし、気晴らしに活用していただければ幸いです。


オヤシロモンスター

「むにゃむにゃ……もう食べられませんの……」

 沙都子の寝言が静かにこだまする、夜の古手家。

 その外に面した二階の窓では、今日も古手梨花が、寝間着姿のまま外を眺めています。

 でも……今日は、少し様子が変ですよ?

 

 

「みぃ……?」

 

 

 いつもの達観したような、冷淡な表情ではなく、怪訝で不思議そうな表情で、手に持った白っぽい箱型の何かをいじくる梨花。

 ……そう、今日の彼女の夜のお供はワインではなく、彼女が家に帰ってくる途中で拾った、不思議な白い箱だったのです。

 その箱は、平べったく、広い面の方には何かが映りそうな大きな画面と、丸いボタン、長いボタンがそれぞれ二つずつ。

 一体何に使うのは、梨花にもわかりません。

 さっきから、これは一体何に使えるのかと考え、あちこちをいじくりまわしているというのに、箱は何の反応も示しません。

 もちろん沙都子や羽入にも相談してみましたが、彼女らにもこれが何やらさっぱりの様子。

 羽入はこれに興味を持ち、しばらく前までそこでじっと梨花の様子を見ていましたが、途中で飽きて眠ってしまいました。

 私もそろそろ諦めて……眠ろうか?

 梨花がそんなことを考えて、箱の端の方をすっ、となぞった時。

 

 

 ぴこーーーん♪

 

 

 さっきまでうんともすんとも言わなかった箱が、陽気な音を立てました。

「……みぃっ!!?」

 驚いて身を起こす梨花。よーく見ると、さっきまで何も映っていなかった画面に何かが映っています。まるで、テレビのように。

 

 

 GAME BOY

 

 

 画面には、そう書かれてありました。

「げーむ……ぼーい……?」

 詩人・Frederica Bernkastelとして長い間詩を書き綴ってきた梨花には、その単語を読むことができました。

 しかし、意味はわかりません。

 梨花の困惑をよそに、また音と共に画面が切り替わり、そして。

 

 

 だだだん だだだん だだだん だだだん

 だだだん だだだん だーーーだん♪ だーーーだん♪

 

 

 リズム感のよい効果音と共に画面に映し出されたのは……何と、小此木と決闘する赤坂でした。

「……赤坂?」

 画面を凝視する梨花。小此木と赤坂は、互いにステップを踏みながら睨み合っています。

 が、やがて痺れをきらしたのか、赤坂が構えをとったのを見て、小此木が赤坂に飛びかかります。

 小此木の攻撃が赤坂に当たるまさにその瞬間、画面がまた切り替わり……

 

 

 

 

 だだだだ だん♪だん♪ だだだん だん だん だだだだだだ

 たーららーー たらーーらららー♪

 

 

 

 

『オヤシロモンスター』

 

 

 

 

 切り替わった画面には、そう書いてありました。

「…………なに……これ…………?」

 事態が飲み込めないまま、しばらく呆然として画面を眺める梨花。

 しかし、百年生きた魔女としての経験を持つ彼女は、以前魅音がどこで聞いてきたのか

「ゲーム&ウオッチ」という携帯できるゲーム機の情報を仕入れて話をしていたのを思い出しました。

「……そうか。なるほど、これもそれと同じように、持ち運んで遊べるゲームということね」

 そうやって納得すると同時に、梨花は、この「ゲームボーイ」と言うらしい機械に興味を持ち始めました。

 もう既に深夜ですが、夜更かしには慣れています。もう少し遊んでいても、まだまだ大丈夫でしょう。

 くるくると切り替わる画面の下には「PRESS START」という文字が点滅しています。日本語に訳すと「STARTを押せ」。

「STARTを押せ……これで、いいのかしら?」

 その文字の指示通りに、STARTと書かれた長いボタンを押す梨花。

 ……と。突然画面がものすごい光を放ち始めました!!

「……!? …………きゃ……っ……」

 予想外の事態に驚く梨花。しかし彼女が驚きから立ち直る間もなく、

ゲーム機から発せられる光は彼女の視界を埋め尽くし、そして……

 

 

 

 

 ちゃーん ちゃららーん ちゃらっちゃらーーん♪

 ちゃーん ちゃららーん ちゃらっららーーん♪

 

 

 いつの間にか、ゲーム機の発する陽気な音声のこだまする、何もない空間に彼女は立っていました。

 そして、彼女の前に、一つの人影が姿を表します。

 

 

「オヤシロモンスターのせかいへ ようこそ!」

 

 

 そんなことを言うその人影は、入江診療所の所長、入江京介とそっくりでした。

「…………入江?」

 そう問いかける梨花に対し、入江にそっくりな人影は聞こえているのかいないのか、さっきと同じ単調なトーンで言います。

 

 

「わたしのなまえは イリエ。

 みんなからは ロリペドけんきゅうしゃ として きらわれています。」

 

 

 そんなことを、初対面の相手に向かって言うんじゃない。

 心の中で突っ込みを入れる梨花。しかし入江は、先程の発言を悪びれる風もなく、そのままの調子で続けます。

 

 

「このせかいには……オヤシロモンスター 

 りゃくしてヤシロンとよばれるどうぶつたちが いたるところにすんでいます!」

 

 

 略すにしても、もっとまともな略し方はなかったのか?

 心の中で突っ込みを入れる梨花。しかし入江は、先程の発言を撤回する風もなく、そのままの調子で続けます。

 

 

「ひとは かれらをメイドにしたり メイドにしたり メイドにしたり

 そして…………

 わたしは そんなヤシロンの けんきゅうをしている というわけです!」

 

 

 完全にお前の趣味じゃないか!?

 心の中で突っ込みを入れる梨花。しかし入江は(以下略)

 

 

「さて……そろそろ

 あなたのなまえを おしえてもらいましょうか。」

 

 

 無駄なおしゃべりにも飽きたのか、入江がそんなことを言い出しました。

どうやら、この人影は入江に見えても、入江本人とは違うようです。

 ……どう答えたものか。悩む梨花の前に、選択肢が浮かびあがりました。

 

 

 →リカ

  フルデリカ

  フレデリカ

  ベルン

  つるぺた

 

 

(実名以外、ろくな選択肢がないじゃないの……! ていうか何よ「つるぺた」って……!!)

 貧困な選択肢に怒りを覚える梨花。しかし彼女も精神は大人、こんな些事でいちいち騒いだりはしません。

(「リカ」でいいか……一番わかりやすいしね)

 そう考えた彼女は、目の前の選択肢の中の「リカ」に触れました。

途端に目の前の選択肢はすっと消え、再び入江が話し始めました。

 

 

「そして このこが あなたのライバル。

 ゆうじんのおまごさんで えーと なまえはなんでしたっけ?」

 

 

 紹介する相手の名前ぐらい覚えておけ! どれだけ脳みそザルなのよ!?

 そんなことを考える彼女の前に、また、選択肢。

 

 

 →みよこ

  みよ

  たかのみよ

  ラムダ

  むねパッド

 

 

 どこかで見たことのある名前だと思ったら、目の前に立つその“ライバル”の少女は鷹野三四にそっくりでした。

どうやら少女時代の鷹野を模して作られているようです。

 もはや意味がわからない最後のを無視して、4つの選択肢を凝視する梨花。

多少の違いはあるものの、どれも本人を指す名称に変わりはありません。

「じゃあ……“みよこ”でいいわ」

 また、選択肢の名前に触れる梨花。選択肢と、目の前に立つ勝ち気そうな少女が消え、入江が喋りはじめました。

「さあ じゅんびはいいですか?

 ゆめときぼうと あと もえ の オヤシロモンスターのせかいへ

 レッツ ゴー!」

 入江のその言葉と共に、また視界が真っ白な光に包まれ、そして……

 

 

 

 

 たららら らららら らん♪ ららん♪

 ららららん ららららん らららん♪

 

 

 どこか郷愁を感じさせる音楽と共に、梨花の視界が開けました。

 周りを見渡す梨花。どうやら、昔の自分の家……古手家の本宅のようです。

 これは「ゲーム」の世界なのか、それとも過去の世界なのか?

 それを確かめようと、彼女は居間の方へ出ていきました。

 居間では、今は亡き彼女の母親が、何やら家事をしていました。

しかし……何を聞いても、同じような答えしか返してきません。

(やはり……ここは「ゲーム」の世界のようね。現実と似ているようでいて……どこか、違う)

 そう考えた彼女は、ゲームを進めるために、今後の行動指針を立てることにしました。

(これはゲームの世界……なら、ゲームを進行させるための鍵がどこかにあるはず。

 さっきの入江……確か「オヤシロモンスター」がどうとか言ってたわね。多分……それが、このゲームの鍵。

 それに出会うか倒すかすることで、きっとこのゲームは進んでいくのね)

 そう考えた梨花は、家を出ると、真っ先に近くの草むら目がけて走っていきました。

“モンスター”と言うからには、村の中には出ないだろう、そう考えての行動でした。

 果たして、その選択は正解だったようです。彼女が草むらに飛びこむや否や、村の方から入江が走って来ました。

 

 

「おーーい リカさーーーん! まってくださーーーい!!」

 

 

 そんなことを言いながら走ってきた入江は、草むらに足を突っ込んでいる梨花の手を掴んで、

無理やり草むらから引っ張り出します。

 

 

「あぶないところでした……くさむらでは やせいのヤシロンがとびだします。

 ……はぁはぁ。

 ヤシロンをもたないなら はいってはいけませんよ。

 ……はぁはぁ。

 ちょっと ついてきてください。

 ……はぁはぁ。」

 

 やけに息の荒い入江が気持ち悪いので、梨花は一旦手を振りほどいてから彼についていきました。

 「ロリペドけんきゅうしゃ」の名は伊達ではないようです。

 入江について歩くこと十数秒。梨花は入江のものらしい研究所の中へと連れてこられました。

そしてそこには、ライバル役の少女……みよこが立っていました。

 

「おそいわよ しょちょう。まちくたびれちゃったわ!」

「みよこさん またせてしまってごめんなさい。」

「あやまったって ゆるしてやらないんだから! えいっ!」

「あはんっ! どうか、どうかおゆるしをっ!!」

 

 みよこに殴られて、気持ち良さそうに悶える入江。梨花は、本気でこのゲームの中身が心配になってきました。

 梨花のそんな不安を感じ取ったのかそうでないのか、入江はすぐにMな状態から立ち直ると、

梨花に近くのテーブルを指し示しました。

……テーブルの上に、何か石のようなものが3つほど乗っています。

 

「リカさん。そこに3つのカケラがあるでしょう? それは“フラグメント”と言って 中にヤシロンを入れておくためのものです。

 さて、そこにある3びきのヤシロン……どれか1つ、あなたにさしあげましょう。」

「あっ! ずるい、しょちょう! わたしにも1ぴきちょうだいよ!」

「あうっ! けとばさないで! そしてふまないで! せめて……せめてメイドふくをきてから……ああっ!!」

 

 みよこにいじめられて興奮する入江は無視して、梨花は3つのカケラをじっくりと眺め始めました。

 恐らく、これがこのゲームにおける最初の鍵。

この中の一匹をもらって、その力を借りることでこの狭い村から出ることが可能になるのです。

……ならば、その選択は慎重にしなければいけません。

 梨花は、一番左にあるカケラに手を伸ばしました。中を覗き込むと……何と、そこにいたのは圭一でした。

 

 

 モエーーーッ!!

 

 

「おや、リカさん。“あかのほのお”ケイイチにするのですか?」

「…………」

 何と、圭一はこの世界ではモンスター扱いのようです。

 圭一ならば頼りになる。梨花はそう思いましたが、

他の2匹を見るまでは判断はできない、とも思い、一旦ケイイチのカケラを元に戻しました。

 今度は、一番右にあるカケラを手に取ります。

中を覗き込むと……予想通りというか何と言うか、そこにいたのはレナでした。

 

 

 ウソダッ!!

 

 

「おや、リカさん。“あおのほのお”レナにするのですか?」

「…………」

 レナの実力も、圭一に勝るとも劣らず高いのは確か。

しかし、梨花はあまりレナとは相性がよくないと感じていました。

レナにするよりかは、圭一にした方が良いかもしれません。

 しかし、決める前にまずは最後のを確かめないといけません。梨花は真ん中のカケラを手に取り、覗きこみました。

 

 

 くけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけ!!

 

 

「……………………」

「おや、リカさん。“みどりのこいぐるい”シオンにするのですか?」

 相性は最悪だと、梨花は直感しました。……残るは圭一とレナ。それなら、圭一の方が随分とやりやすそうです。

 梨花は、改めて圭一のカケラを手に取り、入江に向かって頷きました。

 

 リカは イリエから ケイイチを もらった!

 

 そんな文章が表示されます。

「じゃあ わたしは これ!」

 続いてみよこがテーブルに歩み寄りました。迷うことなく一番右のカケラを選び、入江に示します。

 

 みよこは イリエから レナを もらった!

 

 梨花の時と同じような文章が表示されました。

 その後、入江の長ったらしい状況説明を聞いて研究所を出ようとすると、後ろからみよこが挑戦的な口調で言いました。

「まちなさいよ リカ。

せっかくヤシロンをてにいれたんだから たたかわせてみましょうよ?」

「…………」

 梨花はみよこの誘いに乗るつもりなどこれっぽっちもありませんでしたが……

よく考えれば、これはヤシロンを使った戦い方を知ることができるいいチャンス。

梨花はあえてみよこの挑戦を受けました。

 けたたましい音楽が鳴り響き、周囲の風景が戦闘用らしいものに切り替わっていきます。

 

 

 みよこが しょうぶを しかけてきた!

 みよこは レナを くりだした!

 

 

 そんな文章が表示され、みよこの手の中のカケラからレナが「ウソダッ!!」という鳴き声と共に飛び出してきます。

 それに引き続いて、梨花が何もしていないのにも関わらず、梨花のカケラの中からケイイチが飛び出して来ました。

 

 

 ゆけっ! ケイイチ!

 

 モエーーーッ!!

 

 

 どうやら、この辺りの流れはゲームでは自動で行われるようです。

 さて、相手のモンスターと自分のモンスターが出てきたところで、どうするべきか。

 梨花は、目の前に浮かんだ選択肢から「たたかう」を選んで、ケイイチの使える能力を見てみました。

 

 

 ―――――――――

  →きんぞくバット

  なきごと

 

 

 ―――――――――

 

 

「…………」

 はやくも圭一を選んだことを後悔する梨花。圭一はろくな技を持っていませんでした。

 それでも、これしか選択肢がないのならやるしかありません。梨花は圭一に「きんぞくバット」を命令しました。

 

 

 ふぉん……ぐしゃあっ!! ふぉん……ぐしゃあっ!!

 

 

 何だかものすごい音を立てて、圭一のきんぞくバットとレナの拳がぶつかり合います。

圭一の攻撃が終わる度にまた選択肢が出ましたが「なきごと」なんて使ったところで

大した効果もなさそうなので、命令は変わらずきんぞくバットです。

 

 

 ふぉん……ぐしゃあっ!!

 どぱっ!!

 

 レナは たおれた!

 みよことの しょうぶに かった!

 リカは しょうきんとして 34円 てにいれた!

 

 

 そして圭一のとどめの一撃によって、崩れおちるレナ。

何だかとっても不安な気分になる効果音とは裏腹に、勝利のBGMはとても能天気です。

(……まあ、いいか)

 それを意に介することなく、研究所を後にする梨花。背後では、みよこが地団太踏んで悔しがっていました。

 

 

 

 ……こうして、梨花の旅が始まりました。

 旅は当然、一筋縄ではいきませんでした。

 何と、冒険の途中で出会う“タタリーダー”と呼ばれる8人の実力者のヤシロン使いを倒さねばならず、

なおかつ、行く先々で梨花の邪魔をする悪の組織“ヤマイヌ団”と戦わなければいけないというのです。

 これらの敵を打ち破るために、梨花は仲間を集めました。

 “うらやまのもり”に出現するヤシロン随一のかわいらしさと評判のサトコを捕まえ、

 行商人に騙されて買った弱小ルーキー・アカサカを、実戦で大活躍できるレベルにまで育て上げ、

 すぐに「ジホウ」で喉を掻き毟って死んでしまうので捕まえるのが困難なトミタケを苦戦の末捕獲し、

 大きな樽腹で町と町を繋ぐ通路を塞ぎながら眠っていたオオイシを叩き起こして捕まえ、

 ヤシロンを好きなだけ捕獲できる“オキノミヤゾーン”でカサイを手に入れました。

 そうして8人のリーダーを撃破し、ヤマイヌ団も倒して……

リカは、とうとうヤシロン使いの頂点に立つ者が集まるというオヤシロリーグ本部へとやって来ました。

 オヤシロリーグの四人の実力者、四天王を倒し、リーグ本部最後の部屋へとやって来た梨花を待っていたのは……予想通り、みよこでした。

 

 

「くすくす……リカ。あなたも きたのね。うれしいわ。

 ライバルの あなたが よわいと はりあいが ないものね。

 ……わたしは いま! オヤシロリーグの ちょうてんに いる!

 このいみが わかるかしら?

 …………わかったわ。おしえてあげる。

 このわたしが! せかいでいちばん!

 つよいってことなのよッ!」

 

 

 そうして、最後の戦いが幕を開けました。

 みよこの使うレナやヒバリ13は確かに強敵でした。

 しかし、梨花の手によって十分に育て上げられたケイイチにサトコ、アカサカ、オオイシにカサイの敵ではありません。

 最後にケイイチの一撃をくらって、レナは倒れます。梨花の勝利でした。

 

 

「なぜ……なぜ まけてしまったの……

 わたしの そだてかた…… まちがってなんか いないはずなのに。」

 

 

 悔しげに俯き、呟くみよこ。

 敵とはいえ、その姿はひどく悲しく見えました。

 そこへ、一人の年配の男性が駆けてきました。

 

 

「……おじいちゃん!!」

 

 

 何とその人は、みよこのおじいちゃんでした。てっきり入江が来るものだと思っていた梨花は、とても意外でした。

 ……耳を澄ますと、部屋の向こうの方で「ぐげげげげげ!」という鳴き声と入江の悲鳴が聞こえてくる気がしましたが、あえてそれはスルーしました。

 

 

「みよこ……ざんねんだよ。

 おまえが してんのうに かったと きいて ここにきたのに

 ついたときには おまえは まけていた。」

「…………。」

 

 

 大好きなおじいちゃんから現実を突きつけられて、さらに表情を暗くするみよこ。

 しかし、おじいちゃんはそれを責めるでもなく、諭すように言いました。

 

 

「みよこ…… おまえが なぜ まけたのか わかるかい?

 …… おまえが ヤシロンたちへの しんらいと あいじょうを わすれていたからだよ。

 しんらいしあえば じぶんのちからと なかまのちからは なんばいにもつよくなる。

 だけど…… なかまをしんじないで ひとりで たたかったら。

 ほんとうの じぶんの ちからさえ はっきすることができないんだ。」

「………… おじいちゃん。」

「こんかいは ざんねんだった。……でも これでおわりじゃない。

 また ひをあらためて たたかえばいい。そして そのときに じぶんの まちがいを ただせばいい。

 だから いまは やすみなさい。ごくろうだったね…… みよこ。」

「…… おじいちゃん!!」

 

 

 優しいおじいちゃんの言葉に、思わず泣き出してしまうみよこ。

 そんなみよこを、おじいちゃんが優しく抱きしめようとした、

 その時でした。

 

 

「そのしょうぶ まったーーーーーー!!!」

 

 

 感動的な雰囲気が丸ごと吹き飛ぶような大音量の声が、梨花たちの背後からしました。

 梨花が何事か、と振り向くと……そこには、梨花がさっき倒してきたはずの四天王最後の一人、鬼使いのミオンが立っていました。

赤いマントをひるがえして、誇らしげです。

 

 

「くっくっく…… リカちゃん! さっきは かるく たおされちゃったけどね! 

 わたしの ほんとの じつりょくは こんなもんじゃないよ!!

 こんどこそ まけない! リカちゃん! あんたに さいせんを もうしこむ!!

 …………って、あれ? ひょっとして…… もう チャンピオンせん おわっちゃった?」

 

 

 辺りを見渡して、うろたえるミオン。

そんなミオンを、梨花も、みよこも。温和な性格のはずのみよこのおじいちゃんさえも、苛立ちのこもった目線で睨みつけます。

 ……とりあえず、この場は自分が片付けるのが適任だろう。そう思った梨花は、前に出て、その辺りに転がっていたモップを拾い上げて構え、

それを思い切りミオンに叩きつけました。

 

 

「空気読め、なのですーーー!!!」

(・3・)「あっるぇ~~~~???」

 

 

 

 

 

「…………か、……りか……」

「う……あれ、沙都子? どうしたの? 

 きずぐすりならさっきつけてあげたから、もう体力は問題ないはずよ?」

「……何をわけのわからないことを言っていますの。

 さっさと目を覚まして、学校に行く準備をなさいませ。羽入さんはもう着替え終わっていましてよ?」

「…………え?」

 がばっ、と跳ね起きる梨花。

周りを見渡すと、そこはゲーム世界の古手家本宅でもオヤシロリーグ本部の部屋でもなく、梨花たちが暮らす雛見沢の現在の古手家でした。

 ゲームをしているうちに、眠ってしまったのか。

 そう思って、梨花はくだんの「ゲームボーイ」を探します。しかし、古手家のどこを探しても、そんな物はどこにも見つかりませんでした。

 最初はムキになって、着替えながらも家のあちこちを調べていた梨花でしたが……

次第にさっきまで見ていたものが、本当に現実なのかどうかわからなくなってきました。

(あれはもしかして、ただの…………夢?)

 

 

 

 

「……なるほど。そんな不思議な世界を、梨花は見てきたというのですか」

 いろいろ悩んだ結果、梨花は今まで見てきたことを、羽入に伝えてみることにしました。

別に部活メンバーの誰でも良かったのですが、羽入はこういうことに関しては一番真剣に話を聞いてくれるだろうと思ったのです。

「うん……あれが本当に、不思議な機械から溢れだした世界なのか、それとも単なる私の夢だったのかはわからないけど、ね」

「あの機械に関しては、僕も昨日見ていますです。それだけは梨花の妄想か何かとは違うと思いますですよ」

 前を走る沙都子について行きながら、話を続ける梨花と羽入。

お互いいろいろと意見を出し合ってみましたが、結局梨花が見たものの正体はわからずじまいでした。

 あくまであの謎の機械の正体が気になってしょうがない梨花に、けれど、羽入はこう言いました。

 

 

「……でも、それは楽しい世界でしたね。良かったですね、梨花?」

 

 

「…………え?」

 自分が見てきたものについては、何もかもがでたらめでおかしな世界、という認識でしかなかった梨花にとって、

羽入の「楽しい」という感想は予想外なものでした。

何を言っているのか、といった表情で羽入を睨みます。

 ……けれど。あの世界のことを頭に思い起こすと、確かに羽入の言ったことも間違ってはいないかな、と思えました。

 戦いはあるけれど、惨劇はない世界。

 ヤマイヌたちとの戦いは、殺し合いなどではなくルールに基づいた競技で。

 暴走する鷹野も、おじいちゃんが諭して止めてくれる。

 ……そんな素敵な条件が揃った世界なら。それは確かに「楽しい世界」と言ってもいいのではないか。梨花にはそう思えました。

「……ううん。そうね、確かに楽しかったわ。

 縁があったら、また行ってみたいものね」

 そう言って、梨花は微笑みを浮かべるのでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

<後日談>

 

 

―1996年 雛見沢―

 

 

「はう~~! サトコちゃんかぁいいよ~!! おもちかえりぃ~~!!!」

「おおいレナ、こっちのバージョンじゃトミタが出ないんだよ。お前の方のトミタ、俺のオカムラと交換してくれねえか?」

 

 

 

 

「……まさかの大ヒット、ですね……」

「ええ……最初に思いついた時は単に暇潰しのつもりだったから、ここまで流行るとは思わなかったわ……」

 

 あの夜に見た謎のゲーム機「ゲームボーイ」が某ゲーム会社から発売されたのを知った梨花は、

あの時に見た世界の内容をゲームのシナリオとして知り合いのゲーム会社の社員に売り込んだのです。

当初はその社員も、梨花本人さえも売れるとは思っていなかったそのゲーム「オヤシロモンスター」は、発売後しばらくして飛ぶように売れ始め、

今や日本のゲーム史に残る大ヒットとなろうとしています。

 それ自体は梨花にとって喜ぶべきことなのですが……ここで、深刻な疑問が一つ。

 

 

(……何で雛見沢の誰も、名称を疑問に思わないのかしら…………?)

 

 

 

<終わり>

 


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