東方狂宴録   作:赤城@54100

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少し日が空きましたが、無事更新。
大丈夫です、失踪はしません、多分。


第十九話『紅魔郷第二幕・おてんば氷精とのQ&A』

 ———紅魔郷Stage2【湖上の氷精 チルノ】

 

 

 

 ルーミアと別れてからどのくらいだっただろうか。俺は相変わらず歩きながらゆっくりと紅魔館を目指していた。徐々に濃くなる霧に、近付いているというのを感じながら確実に一歩ずつ。道に関しては、まぁ決していいものではないが辛うじて道と呼べるものはあるのでそこを歩く。

 てくてくと、ゆったりのんびりと。どういうわけかワラキアも黙っており、実にゆったりである……ん?

 

「ふむ、湖……か」

 

 いったん足を止め、目の前に広がる湖を見渡す。霧がかかっているためそんなに遠くまでは見えないが……それでも結構な大きさということは分かる。

 どうするかな……面倒だけど外回りか 、疲れるけど飛んで突っ切るかの二択……。後者だと何かしら危険が迫ったときに対処できないからなぁ、やっぱり歩いて湖を迂回するルートにしておこう。

 なんか歩いてばかりだが、安全であることが大切だし、仕方な……い……。

 

「……………………」

「ちょっと」

 

 ……少しばかり早くはないだろうか、まだ語りを始めたばかりだぞ……?

 まぁ、仕方ない、腹を括って相手しよう。

 

「おや、なにかね」

 

 言いながら声のするほうを向く。そこには背の小さな……青い髪の毛、青い服に身を包んだ少女……言わずとも分かるだろう。

 東方作品においてかなりの知名度を誇るキャラ、チルノがそこに居た。勝気そうな目つき、腕組みをしている姿からは自信が溢れていた。

 どうしたものかなぁ、チルノは結構好戦的な性格だったと記憶してるし、ルーミアのように簡単にはいかないだろう。蛙の代わりに氷漬け、なんてされたら流石に生き残れる気がしない、ワラキアなら何か対策練れそうだが。

 ……うーむ、拙いな、何かにつけてワラキアに頼ろうとしてる自分がいる。これじゃ自分自身では何も出来ない奴になってしまう。今のところ事実だし、余計になんとかしないと……。

 

「あんた誰よ?」

「なに、通りすがりの一介の死徒、だよ」

 

 分割思考の一つをチルノとの会話のために回し、残りで別の思考をする、こういうとき分割思考(コレ)は便利だ。とはいっても、俺が出来るのは 3つまでの地味なものだし、それでも疲労が酷いから多用はできないのだが。

 

「しとぉ? そんなの聞いたことないわね、あたいや大ちゃんとかに近い気もするけど……かーなーり遠い気もするし……」

 

 いやまぁ、確かにワラキア……タタリは情報であると同時に現象でもあるわけだから…自然の象徴とも言える妖精とは……思いの外近いといえば近いか?

 とりあえず、これについては別の思考に任せておくとして…うんうんと唸りながら考えるチルノを見ていると、意外と話せるものだと驚く。考えてみれば、あくまで妖精は小さな子供レベルというだけで思考できないわけじゃない、話自体は出来るものなわけだ、理解できるかは別にして。

 これは色々な先入観とかは取っ払って考えたほうがいいかもな……精々、ちょっとした前知識があるくらいに留めておこう。下手に持ってる知識だけで考えて死亡、なんてなったら笑えん、というか最悪だ。

 ……いかん、ちょいちょい思考が逸れる、今は真面目に対策を練るとしよう 。話せるとはいっても好戦的だというのに変わりは無いわけだし、いつ突拍子も無いことを言い出すか分かったものじゃない。

 いきなり弾幕を叩き込まれてもマントが自動展開してる障壁があるから耐えられるとはいえ、食らいすぎるとどうなるか分からん、至近距離だし。

 

「……まぁいっか、あんたが何者かなんて考えても意味無いわね、どうせ氷漬けにするんだし」

 

 いや、え、そんないきなり……!?

 考えた直後とか色々怖すぎる、考え読まれてる……わけじゃないよな? というか、このままじゃ戦闘だ、なんとか回避しないと……!

 

「まぁ待ちたまえ、氷漬けなどよりもっと楽しい遊びでもしないかね?」

「氷漬けにするより楽しい遊び? なによそれ、弾幕ごっこでもするの ?」

 

 あー……遊び、という認識ではあるのか、危険だけど。妖精なら死んでも再生できるから有り…なのかな? よく分からんが。

 しかしそれじゃ俺が危険だ、満足に空を飛べないのに弾幕ごっこなんて自ら地雷踏みます宣言してるようなものだし、おぉやばいやばい。冗談ではなく、やばい。

 

「いやいや、それでもないよ。というか君は最強なのだろう?」

「そうよ、あたいは最強! 左に出るものはいない最強よ!!」

 

 左か、惜しい。などと突っ込んでる場合でもない。

 今はえっへん、とでも言い出しかねないぐらいに胸を張っているチルノ、この際だからなんとかこれを利用して……。

 

「つまり、だ。最強の君に私が挑んでも勝てない。これでは些か不公平ではないかね?」

「んー…ふこーへい…そうね、最強なあたい相手じゃあんたが可哀想よね」

 

 頷き、人に最強と言われたからか嬉しそうに言う。予想以上に効果があるようだ……流石に自分が情けない気もするが、リスクを考えたら仕方ないこと。前に倒した妖怪の類に比べれば大したことは無いだろうが、それはそれ、戦わずに済むならそれが一番だ。

 ……うん、まぁ、言い訳だよ。しかし考えても見てほしい、勝ったとしても図にしてみればワラキアがチルノを倒したように見える。人に見られると少しばかり酷い光景ではなかろうか?

 というか正直俺の良心が潰れて死にます、見た目少女なわけだから罪悪感がハンパないです。

 そういう理由から、俺は戦闘を避けれるなら避けるようにしている。良心と言っても、自分勝手の塊のようなものだが……そこばかりは見逃してほしい、人間の性というやつだ。

 

「でも、それなら何をして遊ぶのよ?」

「そうだね、最強の君と互角に渡り合うなら……ふむ、なぞなぞ勝負なんてどうだろう?」

「なぞなぞ……舐めたら駄目よ、あたいは頭の良さも最強だから!!」

 

 ドヤッ、といった表情でこちらを見てくるチルノ。本人は至って大真面目のようだが、これが危険回避の手段としては妥当なところだろう。

 出典は求聞史紀、この世界でいうところの幻想郷縁起だし多少は役立つだろう、完璧ではないけど。

 

「では私から出題する、それに君が答え、正解なら君の勝ちだ」

「いいわよ、さぁきなさい!!」

 

 先ほどと変わらない自信満々の表情のままこちらを見てくる。

 さて、問題だがどうすべきか……なぞなぞなのだから簡単でいいかな、まずは勝ってもらったほうが機嫌よくなるだろうし。

 というわけで、有名なコレでいくかな。

 

「では問題だ。パンはパンでも食べられないパンは、なんだね?」

「パンはパンでも……ちょっと私を甘く見すぎじゃない? そのぐらい簡単よ!」

「ふむ、そうかね。では答えは?」

「答えは……大ちゃんのくれたパンよ!!」

 

 …………えっと……?

 

「それは、どういうことかね?」

「だって大ちゃんがくれたパンよ? もったいなくて簡単には食べれないじゃない」

 

 あぁそういう意味で……って色々間違ってるな、本当に色々間違ってる。

 しかし、この「これは正解ね、流石あたい、ビバあたい」みたいな表情でいるチルノに不正解というのも中々厳しいものが……。

 ………………うん、仕方ない。

 

「ふむ、正解だ」

「やっぱりね! 流石あたい、ビバあたい!!」

 

 言うのかよ、いやまぁなんか似合ってるけども。

 

「いやはや、君はとても物知りだね。知識でも素晴らしいものを持っている」

「だから言ったじゃない、あたいは頭脳も最強なのよ!」

 

 どや顔で言ってくるチルノ、なんというか微笑ましいものがあるな。なんというのだろうか、こういうあほの子の相手はとても楽しい、和める。

 ……ふむ、おだてるついでに、少し情報を聞き出してみるかな。

 

「あぁそうだ、物知りな君に聞きたいのだが」

「なに?」

「この紅い霧の……いや、そうだね、この辺りに紅い館があると思うのだが……知らないかね?」

「あかいやかた?」

 

 俺の質問にむー、と唸りながら考え出す。数秒すると、思い出したのか手を打ちながら笑みを浮かべた。

 

「やかたって、大きい家のことでしょう? それならあたい見たよ!」

「ほう、そうかね。いや実は、私はそこに行きたいのだが……迷ってしまってね。道程を教えてほしいのだが……」

「任せて、あんた良い奴っぽいからあたい直々に案内してあげる!」

「いいのかね?」

「任せなさいっ!」

 

 無い胸を張り、ついでに握りこぶしを作ってその胸を叩いた。アピールのつもりなのだろう、可愛らしいものだ。

 笑顔のまま前を向き、歩き出すチルノ。一先ずはついていくことにしよう。

 

 

 

…………………………

……………

………

 

 

 

 チルノについていき、数分経った。道中は自己紹介を互いにし、中々良好な空気ではあったのだが……ここで突然、チルノが歩くのを止める。

 

「……うーん……」

「どうかしたのかね?」

「いや、なんだか分からないんだけど……」

 

 首を傾げ、チルノ自身もよく分かっていない様子で呟いた。

 

「なんか、こう、ここから先に行ったら良くないことが起きそうな……よく分かんない」

 

 語るチルノの声からは困惑が感じ取れる。本当に分からないのだろう。

 だが俺には分かる、紅魔館という場所に行くことを本能的に避けようとしているのだろう。むしろ子供であるが故に危機を察知しやすいのかもしれない、首を傾げてはいるが。

 まぁ、それは仕方ない。それならばここから先は一人で進むことにしよう。

 

「そうか、ではここからは一人で行くよ。道案内、感謝する」

「え……大丈夫?」

「うむ、ここまで来たおかげで道を思い出したからね」

 

 まぁ、本当は思い出したんじゃなくて紅い霧が濃くなってきたのと、妙な感覚が強くなってきただけなんだが。

 これだけ感覚が強ければ方向も分かりやすいし、大丈夫だな。

 

「ありがとう、チルノ。今度会った時にお礼でもするよ」

「……いらないわ、途中までしか出来なかったし」

「しかし、助かったのは事実なのだがね」

「……なら、何か楽しい遊びを教えてくれたら嬉しいな……今度会った時に」

 

 にっこりとほほ笑みながら言ってくるチルノ、やはりこの先は危ないのだと、より強く理解したのだろう。

 嬉しいのだが、言い方が少し……なぁ……まるで死亡フラグじゃないか……。いや死ぬつもりは毛頭無いけど、怖いし。

 

「では……道案内、改めて感謝する。また会おうチルノ」

「うん、またね! ………………えっと、ズェピア!」

 

 …………うん、やっぱり頭は緩いんだね……名前忘れるの早すぎる……。

 約束を次会う時まで覚えているか不安になったが、まぁ、大丈夫だろうきっと。

 

 

 

 

 

「あいつ……まさか幼女趣味とか、そういうんじゃないよな……? これから向かうところには強い力を感じるってのに、なんでああも……」

 

 甚だしい不愉快な勘違いをされていることに、そして付けてきている気配にはまったく気付かずに俺は視界に捉えた紅魔館へ急いだ。




※彼はロリコンではありません。多分。
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