たすけてお母さん!あたしのほんとの気持ち!
地球の永友町に返されてからもう一ヶ月が経つ。ミッドチルダはどれほど時差があるのかはわからないから向こうがどれだけたったのかはわからない。
「芳子~ばんごはんよぉ~」
「はーい今行くー」
なのはさんとマクリル以外のみんなにはどうして地球に帰ったか本当の理由は教えないという約束だ。たぶん別な嘘の理由を言っているはずだけどそれでも心配をかける理由になるのはあたしでも想像出来る。
「今日のご飯なに?」
「芳子の好きな焼きそばとお好み焼きよぉ。もちろんかつおぶしたっぷり。」
「ありがとうお母さん。」
地球で魔法に関わるのはダメだと教えられた。魔法に関わっている人に会うのもダメだとも。エイミィさん達にも翠屋に行くのもダメだろう。今のあたしは誰かの役に立つ力を持っているのにそれを奮うことは許されない。
「・・・。」
「芳子・・・?そろそろ元気出して?」
「あたしは元気だよお母さん。」
リリカルコミューンも大きなキズが残ったままでうんともすんとも言わない。プリキュアに変身出来た時にはそこにあるだけで輝いて見えたのに今はくすんで見える。・・・どうして、あたしは戦えないのだろう。確かに無茶をしすぎたのはわかる。でもそうする必要があった筈だ。黙っていたのも申し訳なく思っている。黙っている必要なんてなかったし、ちゃんと相談すれば無茶をする必要もなかったのでは・・・とも思った。
「芳子・・・」
「・・・。」
そういえば・・・前にヴィヴィオが言ってたっけ。戦うっていろんな人の想いが重なり合うからすごく大変だって、覚悟が無いと潰されちゃうって。あたしは・・・覚悟、出来てたのかな。マクリルの話を聞いてあたしがやらなきゃってやる気にはなったけど覚悟が出来てたかどうかは・・・わからない。
「芳子!」
「あ痛っ!?お母さん!?」
「芳子?せっかくご飯食べてる時にそんな怖い顔しないの!帰ってきてからずーっとよ?ミッドで美味しい物食べて・・・ママのご飯美味しくなくなっちゃった・・・?」
「そ、そんなことないよ!お母さんのご飯美味しいよ!」
「じゃあ怖い顔しないの!ね?それとも向こうで・・・何かあった?」
「・・・なにもないよ。」
この人はあたしのお母さん、結目頼子。ふんわりしているけど・・・すごくいいお母さん。消防士だったお父さんがいなくなってから家族を支えるためにずーっとお仕事に行ってるけどあたしが帰ってきてるからかあたしとなるべく一緒にいるようにしてくれてる。
「・・・ごちそうさまでした!」
「・・・芳子?紅茶飲む?ママね、新しい銘柄の紅茶見つけてきたのよ~」
「飲む!」
帰ってきた時こそ落ち込んでお母さんにはすごく心配かけた。でももう立ち直ってこうして生活している。学校の方も・・・なんとかなっている。
「はい、どうぞ?」
「ありがとうお母さん。」
お母さんは天然っていう性格なんだろう。でも勘の鋭さは一級品。きっと・・・あたしが怪我をして帰ってきたっていうのが嘘だってわかってる。
「おいしい~!これどこのやつ?」
「これはねぇ駅の向こう側のね・・・」
あたしはどうしたらいいんだろう。プリキュアの力で戦うのか、戦っていいのか・・・覚悟は・・・あるのか。小さい頃から一度言ったことは絶対に途中で止めないで何でもやってきた・・・だからあたしは自分を覚悟を決めるのが早い人間だと思ってた・・・でも違ったみたい。あたしはただ諦めの悪い子なだけだったんだ。そういう意味ではあたしはお母さんより、お父さん似なのかもしれない。お父さんはお母さんと付き合う為になんども告白してきたってお母さん言ってたし、仕事も、昔あった謎の植物事件で逃げ遅れた人を絶対助け出すってビルの中に残ってそのままビルの下敷きになっちゃったし・・・つくづくあたしってお父さんに似てるんだなぁ
「ねぇ芳子?」
「なぁにお母さん。」
「・・・怪我をして帰ってきたんじゃないんでしょう?」
「・・・!」
ああ・・・早速お母さんに先手を打たれてしまった。
「・・・。」
「ママね、芳子が心配なのよ?今まで見たことない顔してるんだもの・・・お父さんが火事のニュース見てる時の顔にそっくり。」
「そう、なんだ・・・」
「ママはリンディさんや桃子さんみたいにしっかりしたママじゃないけど・・・他のママよりはもっともーっと子供のこと見てるのよ?この一ヶ月・・・芳子のこと見ていたけど・・・なのはさんの話は方便なんだなぁって・・・すぐわかったわ。」
「・・・。」
「・・・言いづらいなら、別にいいのよ?ママはちょっと頼りないから・・・相談されても答えをあげられないかもしれない。それでもママは芳子のママだから・・・相談して欲しいな?」
「・・・。」
ずるいよ、お母さんは・・・
「おか・・・ママ・・・あのね・・・」
「ふふ、お母さんじゃなくてママなのね。なぁに?」
「あたしね・・・ミッドチルダで、あたしを頼ってくれて、あたしにしか出来ないことがあったの。なのはさんたちには・・・それをナイショにしちゃって・・・でもそれを一生懸命やってたんだけど・・・すっごく大変でボロボロになっちゃった・・・」
「うん。」
「ボロボロになったあたしを見て、頼ってくれた人も、なのはさんもあたしにやらせられないって・・・それで地球に帰されちゃった・・・」
「そう、だったの・・・」
「しかもね、あたしがボロボロになって一生懸命やってたことは、間違ってたみたいで、あたしどうすればいいかわかんなくなっちゃって・・・ママ、あたしどうしたらいいの・・・?」
「芳子は・・・まだそのことを続けたいの?魔導士になる目標より?」
「今は・・・今はそう。あたしにしか出来ないことはちゃんと解決してなくて・・・なのはさん達が頑張ってるの・・・魔導士になりたいっていう夢は、ミッドチルダにいってわかったんだけど・・・すごく難しくて・・・才能ないみたいで・・・あたし・・・あたし・・・!ままぁ・・・どうしよう・・・どうしたらいいのぉ!ままぁ!!うわあああぁぁぁん!!!」
「・・・芳子はパパに似てるとおもってたけど、ママに似てたのね。ママの観察眼もまだまだね・・・」
「いまも、いまもなのはさんが、ヴィヴィオがっ・・・あぶないめにあってるのに!ひっぐ、あたし、なんにもできないよ!せっかく、あたしを、たよってくれたのに!っぐ!うえ・・・あたしなんのやくにも・・・ひっぐ・・・たてなかった・・・うぅ・・・うええぇぇん!」
「芳子・・・」
ママがやさしくあたしを抱きしめてくれる。あったかくて、やわらかくてそれがまたあたしの涙腺を刺激する。
「くやしいよ・・・くやしいよぉ・・・!ままぁ・・・!うわああぁぁぁ!」
「自分で決めたことを曲げられない気持ち、逃げたくない気持ち、ママも分かるから。ママもそうだったから・・・」
「あたし、悪い子だった!ひっぐ・・・何にも、覚悟を決められない、ただの諦めの悪い、わがままな子だったの・・・ごめんなさい!ごめんなさい・・・ままぁ・・・」
「いいのよ、今は悪い子でも。悪い子でもママの娘だもの。絶対に守ってあげるし、ずーっと芳子の味方だから、悪い事をしたときはママが止めてあげるから・・・ママが良い子にしてあげる。最初から良い子なんていないわ。みんな変わってく、変わっていかなきゃ、いけないの。」
「うええ・・・ごめんなさい・・・えっぐ・・・ごめんなさい・・・」
「・・・あらら、眠っちゃうの?・・・おやすみ、芳子、今は休む時よ。心も、体も。」
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「なのは!向こうリル!邪悪な気配を感じるリル!」
「向こうね!わかった!」
《なのはちゃん!反応キャッチできたで!マクリル君様々や!》
「それほどでもないリル。」
「いた!マクリル!お願い!!」
「ウラッ!?ウラメッシャーーーー!!!」
「わかったリル!ふぉぉぉ!!!」
『counter boost』
「レイジングハート!実戦は始めてだけど頑張って!」
『OK. system change mode daylight』
「なのは!いつでもいけるリル!!」
「今日こそ仕留める!!デイライトシューター!!」
「ウラァァァァ!!!!ギ・・・ア・・・」
「効いてる!」
「成功リル!」
「レイジングハート!」
『sorry・・・overheat.』
「嘘!?」
「ウラララララ・・・オノレ・・・オノレ・・・」
「ッ!?喋った・・・!」
「かなり成長してるリル・・・早くしないと・・・」
「ウラーメシヤー・・・」
「!!消える!・・・また逃げられた・・・」
「・・・申し訳ないリル・・・」
「マクリルのせいじゃないよ。」
『sorry master・・・』
「レイジングハートも・・・でも早くしないと・・・とりあえず戻ろう。」
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「いやーいけるとおもっとったんやけど・・・」
「ごめんはやてちゃん・・・」
「いやいやしゃーない。もともと光の力っちゅーもんがよくわかっとらんからなぁ。それをほぼ実験無しで実戦投入しとるから無茶されたら逆に困るで。」
「ごめんリル・・・マクリルが技術者だったらもうちょっと有効な方法を見つけられたかもしれないリル・・・」
「それこそ言ってもしゃーないやろ。課題は見つかったけど今回で使用は可能だってことがわかっただけでも充分やで。マクリル君のデイライトシステムがなかったら打つ手無しやからな。」
マクリルがきたことでウラメシーナに有効な光の力の使用が可能になった。現代のミッドチルダの技術では観測不可能だった光の力をマクリルからもたらされた観測方法で認識、マクリルとデバイスで観測し続け、魔力を光の力に置き換えて魔法を使用するデイライトシステムが完成した。ただ闇の力である魔力とは相性がとことん悪いらしく闇の力を運用する魔導士にもデバイスにも大きな負荷がかかる。もともと人間には認識出来ない力だけあって非常に難航しているが、プリキュアがいなくても闇の力の眷属たちに打撃を与えられる兆しが見えてきていた。しかし問題点はそれらだけで終わらなかった。急ごしらえのものなのでレイジングハートにしか搭載されておらず外付けでデイライトシステムの光の力を観測する大型観測機が装備されていて攻撃方法が限られる。マクリルが近くにいないと光の力を観測出来ない。等々・・・数えだしたらきりがない。
「あ、せやマクリル君。マリーさんが呼んどったで。あとレイジングハートのことも見といてくれへんか?」
「わかったリル。」
「なのはちゃんも休んどいてな。来週にはヴォルケンリッターを集結させられるわ。」
「わかった。ヴィータちゃん達がくると頼もしいね。」
「ベルカ式の頑丈なデバイスの方がデイライトシステムの負荷にも耐えられると素人並にも考えとるしな。そいじゃ、もう少しでクロノ君も帰って来るし30分後に対策会議するで。」
「うん。じゃあまた後で。」
この未確認生物対策部も大分稼働し始めてきている。もはや三度の襲撃を受けたからか重い腰を上はやっと上げたようだった。人員も増え、部隊ごとの武力所持制限の枠を越えた戦力を割り振られている。クロノ君率いる巡洋艦も正式に割り振られた。しかしJS事件で大分浄化されたといってもまだまだ管理局は膿を出し切れていない。そしてウラメシーナについてもあのレストラン事件の後からわかったことがいくつかある。ウラメシーナは一体しか出現出来ないこと・・・これは憶測でしかないがレストラン事件の後結構経ったが出現したウラメシーナは今日逃がしたやつ以外に出現していない。そして二つ目、原因は不明だがウラメシーナの成長が遅いこと。フェイトちゃんが変身したウラメシーナが異常な成長速度だとマクリルは言っていたけど・・・
「(プリキュアが・・・ヨシコちゃんがいない今、私達でなんとかしないと。)」
「・・・なのは、難しい顔してるリル。」
「え、あ、ごめんマクリル。」
「・・・ヨシコと同じようなことになるのはもうゴメンリル。」
「うん・・・ありがとうマクリル。ヨシコちゃんなにしてるかなぁ・・・」
「ゆっくり休めていれればいいけどリル。力尽くで元の世界に追い返したみたいなものだから・・・悪い事をしたリル・・・」
「・・・ヨシコちゃんは戦いの覚悟がなかった。昔の私と同じ。あれじゃあもっと辛い目にあうし・・・それにいつか取り返しのつかない失敗をしてしまう。」
「・・・なのは、なのはも辛くなったら言うリル。マクリルのパートナーはほんとはプリキュアだけど今はなのはリル。」
「伝説の戦士じゃないなら魔法少女ってとこかな?・・・そんな歳じゃないか。」
「マクリルはいいと思うリル。」
「いやぁ・・・やめとこうかな・・・はははは~」
「やろうリル。魔法少女とマスコットは定番リル。その方がかっこいいリル。」
「え、ちょ、ちょっと待ってマクリル!本気なの!?」
「本気も本気リル!マリーのところに行く前にちょっとはやてに・・・」
「ま、マクリル!ダメ!だめぇ!!!!」
「むぐ・・・!?なのは、苦しいリルッ・・・!」
「ダメダメダメ!そんな恥ずかしいこと絶対しないんだから!!!」
「魔法少女の何が恥ずかしいリル~!ぐえええ魔法少女はヒーローじゃないのかリル~!!ちょ、ま、なのは苦し、たすけ、助けてヨシコーッ!!!」
・・・
「うーん・・・むにゃむにゃ・・・へっぷし!・・・むにゃ・・・ぐぅ・・・」
「あらあらあら寒いのかしら・・・毛布もう一枚かけましょうね~」
「ううん・・・マクリルゥ・・・」
つづく
№4 オオグモウラメシーナ