Stand up!リリカルプリキュア   作:電動ガン

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恐怖蔓延!妖怪のあり方!

「それでは会議を始める。」

 

クロノ君がディスプレイの前に立って会議の開始を告げた。私も一層背筋が伸びる。

 

「でははやて部長、現在追跡中のスパイダーについて報告を。」

 

「はい。」

 

はやてちゃんが映像を出すとそこには今日私が逃がしてしまった三本腕のウラメシーナ。

 

「レストラン事件以降現れた蜘蛛タイプのウラメシーナ・・・スパイダーについてですが、現在目立った被害の報告は無く、明確な目的を持って活動していたこれまでのウラメシーナとは違い目的が不明。討伐に出た高町一等空尉からも逃亡を繰り返しています。」

 

「わかった。マクリル特別三等空尉、デイライトシステムについて報告を。」

 

「はいリル。マクリルはこの階級とかよくわからないからマクリルの言葉で言わせてもらうリル。」

 

「大丈夫だ。」

 

「デイライトシステムについては・・・まず使う側に負担を掛けすぎているリル。もともとこの世界には無いものであるし、マクリルもここまで光の力を調べたのは始めてリル。」

 

「負担・・・どれほどのものなんだ?」

 

「このままデイライトシステムを使い続ければ・・・そうリルね・・・常夜の住人に滅ぼされる前に間違いなく自滅するリル。それだけ闇の力を使い続けてきた人間にとって光の力は劇薬リル。」

 

「・・・現在使用している高町一等空尉への影響は?」

 

「レイジングハートが抑えているから安心リル。ただこれじゃあレイジングハートが焼き切れちゃうリル!」

 

「うそ・・・!」

 

「・・・わかった。現在の進行状況は?」

 

「ぶっちゃけマクリルがわかったことが増えただけで、魔導士側が光の力について何かわかったとは思えないリル。プリキュアに頼るのが一番・・・リル。」

 

プリキュアの名前を出したら会議室の皆が様々な表情をしている。実際に見た者は苦い顔を、見たこと無い者はいぶかしむ顔を、なんのことかわからぬ者は・・・黙ったままだ。

 

「・・・わかった、ありがとうマクリル特尉。」

 

「あんまり役にたてなくて申し訳ないリル・・・」

 

「大丈夫だ・・・やつらについてわかっただけでも充分すぎるくらいなんだ。次、ランスター執務補佐官。」

 

「はい。」

 

ティアナがたくさんのディスプレイを開く。そういえばティアナは都市伝説や噂について調べていたけど・・・

 

「都市伝説や、噂なんですが・・・はっきり言うと異常です。とてもじゃないですが私一人では追い切れません。」

 

「それはどういう意味だ?」

 

「レストラン事件以後、数が増えているんです。影響力も尋常ではありません。棒が倒れてもそれが超常現象に結びつけてしまうくらい市民の心に影を落としています。」

 

「なるほどリル。」

 

「マクリル特尉?なにか。」

 

「常夜の住人は人間に恐怖されることで力を増すリル。以前は物理的に制圧するやり方だったけど方法を切り替えたリルね・・・」

 

「どういうことだ?」

 

「制圧する方法だと楽に恐怖させることが出来るけど返り討ちにされたら恐怖は打ち消されるリル。ハイリスクハイリターンの方法だったリル。それを時間がかかるけど確実な方法へ、噂を流し、じわじわと人々に恐怖を植え付ける・・・噂だと例え噂が廃れても恐怖は残るリル。上手いリル・・・」

 

「恐怖・・・ほんとに、規格外な連中だな・・・ありがとうマクリル特尉。ランスター執務補佐官、続けてくれ。」

 

「はい。噂の内容についてですが夜な夜な誰もいないところから声が聞こえる、夜中に顔が無い女に出会うとどこかに連れ去られる、夕方の海に一人でいると牛の化け物に食べられる・・・これらはまだ話だけで実害はありません。そして・・・」

 

「・・・なんだ。」

 

「・・・最近原因不明の熱病が流行っているのはご存じですか?」

 

「ああ・・・管理外世界から持ち込まれた疫病ではないかと言われているが・・・発病してるのが小さな男の子ばかりだということでつながりがわからないと。」

 

「最近の噂のひとつに病気を振りまく大きな蜘蛛が町に潜んでいる、というのがあります。歳を取って進化した蜘蛛が狩りの標的を人間に変えていつも狙っている・・・私はもしかしてと思って昨日聴取に伺ったんですが全員意識混濁の重症で・・・聴取は出来ないと思ったんですが・・・これを。」

 

ティアナがひとつのディスプレイを拡大するとそこには病院のベッドでうなされる子供と子供の手を握る母親が映し出された。

 

『うぅー・・・ううーん・・・・』

 

『レオ!レオ!!大丈夫よ!お母さんがそばにいるわ・・・!』

 

『こわいよ・・・こわいよぉ・・・』

 

『大丈夫よこわくない!お母さんがすばにいるからこわくないわ!』

 

『クモが・・・クモがくる・・・クモがくる・・・!』

 

『蜘蛛?お母様、この子は毒蜘蛛に・・・?』

 

『いいえ、違います、執務官さん・・・噛まれた跡はありませんし・・・』

 

『そうですか・・・管理外世界から害虫などが運び込まれたとも思ったんですが・・・』

 

『いやだぁ・・・たべないでぇ・・・たすけてぇ・・・』

 

『レオ!レオ!!』

 

『うわぁ!!』

 

『!?』

 

「なんだ・・・?」

 

「これが恐らくひとつの噂が本当になった始めての事例です。」

 

画面の中の子供が急に起き上がり、母親とも撮影しているティアナでもない窓の方向をうつろな目で見つめている。

 

『ギャアアアーーーーーーーー!!!!!』

 

『ッ!?なに!?』

 

『いやだあああああああああああ!!!!!来ないでぇぇぇぇぇ!!!!!』

 

映像にガサガサと謎のノイズが入り始めて映像が乱れ始める。そして一瞬だが窓の外に腕が何本もある謎の影が映り込んでいた。

 

『ウーーーーーラーーーーー・・・・・』

 

『レオ!レオ!!!どうしたの!!!誰か!誰かぁ!!!』

 

『クロスミラージュ!索敵!!』

 

『ギャアアアアアアアアアーーーーーー・・・・・』

 

慌ただしかった映像が子供が黙ってしまうことで不穏な静寂を取り戻す。子供に繋がれていた計器が甲高い音を鳴らし続けている。

 

『クロスミラージュ!』

 

『《Failure 》』

 

『チッ・・・お母様!レオ君は・・・!?』

 

『レオ・・・レオ・・・目を開けてぇ・・・』

 

子供は血の気がなくベッドに倒れ込んだままぴくりとも動かない。

 

『うそ・・・』

 

『どうしましたか!』

 

『こどもが・・・うちの子がぁ・・・急に苦しみだして・・・』

 

『ッ!?執務官さん申し訳ありませんが今日は・・・』

 

『わかりました・・・』

 

そしてそこで映像は終わった。会議室に集まった面々は硬直したまま動かない。

 

「この映像の子供・・・レオ・ブガッティ君はこの後死亡が確認されました・・・」

 

「くっ・・・!」

 

「なんてこと・・・」

 

「ここの映像に映り込んでいる謎の影・・・私は現場では目視していません。サーチ結果も不発です。この影がいったい何なのか今調査中で・・・」

 

「スパイダーだよ・・・」

 

「・・・高町一等空尉?」

 

「間違いない・・・映像の影はスパイダーです。」

 

「なのは・・・落ち着くリル・・・」

 

「落ち着いていられないよ!!!遅かった!間に合わなかった!!あんな小さな子が苦しんでたのに・・・!私はもたもた逃げられてばかり・・・!」

 

「ふぐぅぅぅ苦しいリルゥゥゥ」

 

思わず立ち上がってマクリルに掴みかかってしまった。自分であいつらに

 

「高町一等空尉、座りなさい。」

 

「ッ・・・はい。失礼しました。」

 

「ランスター執務補佐官・・・それで関係は?」

 

「はい・・・もしスパイダーならばマクリル特尉の情報であった成長が遅いというのが・・・これからは早くなるのではないかと。」

 

「早くなる・・・?」

 

「それはウラメシーナに成長が促進される時期があるって事リル?」

 

「はい。恐らく原因不明熱病はスパイダーの仕業で患者はスパイダーの餌・・・でないいか。私はそう推理します。」

 

「・・・。」

 

「各々、今回の報告で調査や対策の方向が変わるかもしれない。未曾有の危機という状況一時も油断出来ないが・・・ちょうど来週からヴォルケンリッターも異動してくる。なんとか協力して被害を未然防止に努めよ。以上だ。」

 

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「なのは、お疲れ様リル。」

 

「マクリルも・・・ごめんね、また私熱くなっちゃって・・・」

 

「仕方がないリル。これからは陸士隊とクラウディアの武装隊がパトロールに回ってくれる筈リル。なのははヴィヴィオとフェイトの様子でも見に行ったらどうリル?」

 

「そうだね・・・ねぇマクリル。武装隊がパトロールなんてしたらいかにもクラナガンで何か起きてますよって捉えられないかな?それでまた恐怖を植え付けたりしちゃわないかな?」

 

「恐怖は、簡単に拭えるものじゃないリル。それこそプリキュアにも、リル。」

 

「そっか・・・でもパトロールをしないわけにもいかないし・・・こんな、特殊な戦い方をするなんて始めてだからもうどうしたらいいのか・・・」

 

「・・・なのは、ひとつ勘違いをしているようだから言っておくリル。」

 

「なに?」

 

「恐怖は、払拭するものじゃなくて立ち向かうものリル。なのは、なのははそうやって戦ってきたんじゃないリル?だからヨシコにあそこまで言えたんじゃないリル?」

 

「・・・ありがとうマクリル。」

 

「今のマクリルはなのはのパートナーリル。当然リル。だから絞めるのは勘弁してほしいリル。妖精も死ぬリル。」

 

「努力するね。」

 

「その答えは聞きたくなかったリル!なのは!なのはーっ!」

 

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「うーん・・・むぐ・・・あれ?」

 

あたしは確か・・・ごはん食べて・・・紅茶飲んで・・・そうだ、マ、お母さんにとお話して・・・そのまま疲れて寝ちゃったのか・・・でもなんかすこしすっきりした!

 

「喉渇いたなぁ・・・」

 

時間を見たら深夜2時。お母さんも寝てるだろうし・・・静かにお水を飲みに行こう。

 

「そーっと・・・そーっと・・・」

 

そういえばあたしのお気に入りのコップ、ミッドのなのはさんの家に置いてきたまんまだ・・・なんてこった。おばあちゃんに買ってもらった大事なコップ・・・あーあ・・・

 

「まぁいいかぁ・・・なのはさんに連絡しちゃえ。・・・んん?」

 

おかしい・・・廊下に明かりが漏れている。リビングの電気が付けっぱなしだ。お母さん起きてるのかな・・・?

 

「・・・ちゃ・・・しい・・・あた・・・・」

 

「・・・の・・・・ならば・・・たのし・・・」

 

「へへ・・・にんげ・・・の・・・おいし・・・」

 

「ま・・・ゆっく・・・おき・・・しまう・・・だろ・・・」

 

・・・たくさんの声がする。こんな時間にお客さんなわけないし・・・ずっと家にいた?それはない。今日はあたしも一日家にいたんだ。お客さんがいたらわかる。あたしは部屋に戻り壊れてしまったリリカルコミューンを握りしめる。

 

「見に行こう・・・!」

 

リビングのドアの前に来ると静かにドアを少しだけ開ける。

 

「うそ・・・でしょ・・・!?」

 

リビングにいたのは・・・一つ目が付いた傘のオバケ、提灯のオバケ、そして長い黒髪とキレイな着物を着た女性・・・しかし焔が揺らいでいてその危険さを物語っている。その膝にはしっぽがいくつもある小さな狐が眠っている。

 

「は・・・え・・・なんで・・・常夜の・・・住人・・・!?」

 

ふととすんと背中に何かが当たった。

 

「芳子ぉ?どぉしたのぉ?」

 

振り向いたらお母さん。その時はいつもの優しい笑顔が、これ以上なく不気味に見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく

 

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