「へへ・・・またたんまりと獲物が取れたぜ。」
ミッドチルダの路地裏で佇む男が一人。この男、スリの常連で逮捕歴もある男だ。その男が今日奪った分の勘定をしていると影が刺した。
「あん・・・?誰だ・・・?」
男が振り向くとそこには異世界の服、着物が身を包む女が一人。そしてその女の顔は・・・
「な、なに!!?」
顔は無かった。あるべき目と鼻と口が無い。紛れも無くバケモノであった。男は恐慌状態に陥り尻餅を突く。
「いいねぇ・・・悪感情・・・悪意・・・それに満たされている・・・」
「はひっ・・・ひぇ・・・」
「その力あたし達に貸しておくれよぉ。」
女の首がみるみる伸びていき男の眼前に迫る。男は恐怖から言葉を無くし、失神寸前であった。
「はひぇ・・・!???!!」
「ひひひ・・・お行きウラメシーナ・・・!」
男の顔にすっぽりと木の面が被せられ、男は路地裏の奥へと消えていった・・・
・・・・・・
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
「あのーなのはさん。」
「なぁにヨシコちゃん。」
「あたしってこんなに簡単に釈放されて良かったんですか?」
「釈放って・・・ヨシコちゃんは重要参考人だからお話しが終わったら解放されるんだよ?」
あたしは今、なのはさんのお家にいる。ココアをいつものカップで貰いのんびりと過ごしているがどうにも居心地が悪い。ヴィヴィオはまだ学校から帰って来ていないらしい。
「はぁそうなんですか。」
「一応プリキュアだってことは内緒にしてあるから正々堂々と協力依頼は出来ないけど・・・頼むね?」
「はい!それはもちろん!あたしが戦います!」
「ふふっ・・・お願いね。私達じゃウラメシーナに歯が立たないから・・・」
「はい・・・そういえばマクリルはどうしたんですか?」
「マクリルは特別三等空尉として管理局に出てもらってるよ。妖怪達に対抗する力の開発に携わってもらってる。」
「そんなこと出来たんですか!?」
「うん・・・なんとか形にはなったけど問題が山積みでね?」
「そうなんですか・・・その話、あたしが聞いていいんですか?」
「まぁプリキュアだし・・・大丈夫かな。」
そうなんだ・・・と感心していると。玄関を開く音が聞こえた。ヴィヴィオが帰って来たのかな?ただいまーと声がしてなのはさんが玄関に向かう。するとちょっと騒がしくなり始めた。
「・・・?どうしたんだろう・・・?」
「ねぇママこの子飼っちゃダメ?行くとこないんだって!」
「ダメです!元いたところに返してらっしゃい!」
「そんなぁ〜」
「なのはさんどうかしたんですか?」
「あ!ヨシコ!?」
「ヴィヴィオ久しぶり・・・て!」
「ヨシコ!見つかって良かったカル!」
「しろかね!」
「喋った・・・!」
「ヨシコの知り合いなの?」
「うん。」
ヴィヴィオは胸にしろかねを抱えて帰ってきた。しろかねは涙目で離すよう訴えており、ヴィヴィオはゆっくりしろかねを降ろす。しろかねはそのまま走ってあたしにひっついてきた。
「寂しかったカルゥ!芳子は連れてかれちゃうしどうしたもんかと思ってたカルゥ・・・」
「よしよし。ごめんねー」
「ヨシコちゃん、この子が言ってたしろかね?」
「はい、そうです。この子の力で転移してきました。」
「へーそうなんだ・・・よろしくね。しろかね。わたしはなのは。」
「カルゥ・・・危うく愛玩動物になる所だったカル。」
「あはは・・・ごめんねーしろかね。」
「ヴィヴィオももういいカル。こうして芳子にまた会えたし・・・」
「あはは・・・」
しろかねを捜索する手間が省けたし。なのはさんとのお話しを進めよう。あたし達はリビングに戻りヴィヴィオは着替えに部屋へと行った。
「さて・・・しろかね。貴方にもお願いしたいことがあるの。」
「なにカル?」
「常夜の住人・・・妖怪に対して対抗する為に力を貸して欲しいの。」
「カルゥ・・・しろかねも妖怪だけど良いカル?」
「えっ!!??」
「そうだ。なのはさん。あたしが帰った時の事なんですけど・・・」
「なに?何かあったの?」
「はい・・・それが・・・」
あたしはなのはさんにひのこさん達の事を話した。妖怪達にも派閥があり、ミッドチルダの事件は過激派が起こしていること。次元世界に散った妖怪がいることを。
「ふぅん・・・なるほど。じゃあしろかね達は穏健派ってことなんだね。」
「はい・・・私は滅んでしまったマクリルのいたメグメルだけじゃなく、妖怪達のいた世界も救いたい。そう思っています。」
「そうなんだ・・・偉いねヨシコちゃんは・・・」
「いえ・・・」
「私達は妖怪を退治することしか考えてなかった。酷い目にもあったのにヨシコちゃんは妖怪も救うことを考えてたんだね。」
「妖精の女王様にも言われました・・・救済のプリキュアとして、頑張りたいと思います。」
「ふふっ・・・すごいね!」
「あぁ〜でも具体的な方法とかは〜まだ何も解ってないんですけんどね〜・・・」
「まぁそうだよね・・・世界を救う方法なんてそんな簡単にはわからないよ。」
「そうですよね・・・」
「まぁとりあえず。ご飯の準備しよっか?」
「はい!お手伝いします!」
「ふふ・・・よろしくね?」
・・・・・・
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
「もし・・・そこなお嬢さん・・・」
「はい・・・?」
ここは人通りのない道・・・辺りは夕闇で薄暗い・・・そこを通っていた一人の女学生が不意に声をかけられていた。声をかけた男の背格好は背が高く、帽子を目深く被っている為表情が窺い知れない。女学生は得体の知れない寒気を感じるが応答していた。
「な、なんでしょう・・・」
「人を探しているんだ・・・ちょうど背丈は私くらいで・・・顔は・・・」
男が顔に手をかけると木の面を取り外し女学生へと顔を曝け出す。
「こぉぉぉんな顔をしてる人だよぉぉぉ!!!」
男の顔は目、口、鼻が無く、モゴモゴと波打っている顔だった。女学生はあまりの出来事に声を失い尻餅を突いてしまう。
「ばぁぁぁぁぁああああ!!!!」
顔の無い顔が女学生へと近づき、女学生の顔が恐怖に染まる。堪らず叫び声をあげてしまった。
「きゃああああああああ!!!!」
「いひひひひふひひひはぁーっはっはっはっは!!!!」
男はぴょんぴょんと飛び跳ねながら夕闇に消えていく。女学生は失神していた・・・
・・・・・・
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・・・
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芳子がミッドチルダに帰ってきてから翌日。未確認生物対策部には重苦しい空気が流れていた。
「以上が通り魔事件の詳細です。」
「うむ。ありがとうティアナ。」
未確認生物対策部の会議室に沈黙が包み込む。
「これは・・・判断がつかへんな・・・ただの変質者なのか・・・妖怪の仕業なのか・・・」
「もう変質者の事案として学校などの施設に通知がいっています。集団登校、下校をさせるとの返事ももらっていますが・・・」
「マクリル特尉からは何かあるか?」
「リルゥ・・・一瞬過ぎて邪悪な気配があるかどうか判断付かないリル。」
「わかった・・・ありがとう。」
「あの・・・」
「なのはちゃん?どうしたんや?」
「あの、報告漏れというか・・・来てからこの会議だったから報告出来なかったというか・・・」
「うん・・・?はっきりせぇへんな珍しい。」
「あのね・・・味方の妖怪と出会ったの。」
会議室はなのはの一言で一気に喧騒に包まれた。
「味方!?味方の妖怪言うたかなのはちゃん!!」
「とうとう人外へと足を踏み入れたか!」
「なのはどういうことリル!?」
「ま、待って!一気に話しかけられても答えられないよ!」
「静粛に!!!」
はやてが一喝し会議室に静寂が戻る。そしてはやてはなのはをしっかり見定め言葉を紡いだ。
「して?なのはちゃん味方の妖怪とはどういうことや?」
「えっと・・・あのね?」
なのはは芳子から聞かされた妖怪の話を話した。会議室の面々は呆気に取られた顔をしていたが徐々に冷静さを取り戻して行く。そしてなのはは最後の言葉を話す。
「それで・・・妖怪のしろかねって子と仲良くなったの。今はヨシコちゃんと一緒に家にいるよ。」
「さよか・・・どうするクロノ君。」
「第97管理外世界には僕が行こう。芳子の母親とも面識がある。僕が行っても現れてくれるかどうかはわからないが・・・」
「わかった・・・なのはちゃん。ヨシコと一緒に来てもらえるよう頼めんかな?」
「わかった。連絡するね。」
「ありがとう。」
「・・・。」
「マクリル特尉?どうかしたか?」
「常夜の住人側にも事情があったなんて知らなかったリル・・・」
「まぁ・・・世界が滅ぼされとるし、踏ん切りはつかへんやろけどな・・・?」
「わかってるリル。今は管理局の特尉リル私情は挟まないリル。」
「ん・・・ありがとうな」
「はやてちゃん。連絡付いたよすぐに向かってくれるって。」
「ん。わかった。さて妖怪さんと御対面やで!気合い入れなアカンな!」
・・・・・・
・・・・・
・・・・
・・・
・・
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あたしはなのはさんに呼び出され未確認生物対策部へとレールウェイを乗り継ぎ向かっていた
「しろかね・・・なんの用事で呼ばれたんだろうね・・・」
「カルゥ・・・悪いようにはしないってなのはは言ってたカルゥ。」
「しろかねをやっつけるって話じゃ無いと良いけど・・・」
「怖いこと言わないで欲しいカル!」
「多分なのはさんの報告から呼ばれたんだよね・・・大丈夫だと良いけど・・・」
レールウェイが対策部の最寄駅に到着して降りる。しろかねを抱っこしながらだけど特に怪しまれている様子は無い。使い魔だと思われているんだろうか・・・
「ふぅ・・・遠かったなぁ。」
しばらく歩くと対策部の本舎が見えてきた。あたしは受け付けでIDを見せ、中に案内される。待合室で少し待たされると迎えのはやてさんがやってきた。
「おおー芳子。昨日ぶりやなぁ。それで?その子が妖怪の子?」
「あ、はいそうです。」
「九尾の狐のしろかねカル〜」
「ほうほう九尾の狐とは大物やな・・・」
「まだ子供だから大したことは出来ないカル」
「そかそか。それじゃあまあ行こっか?」
はやてさんに案内され本舎の中を巡る。あたしは何度も来ることになるだろうからとのことだった。そして会議室に案内された。
「戻ったで〜」
「し、失礼しまーす。」
会議室にはなのはさん、クロノさん、マクリル、オレンジ髪の知らない人がいた。
「貴方がヨシコ?初めましてになるわね。私はティアナ・ランスター。フェイトさんの執務官補佐をやってるの。」
「よろしくお願いしますティアナさん!」
「元気でいいわね。それと・・・」
「あ、皆さん紹介します。しろかねです。」
「カル〜よろしくカル。」
「マクリルも久しぶり!」
「ヨシコ・・・もうなんともないリル?」
「うん!元気一杯だよ!」
「良かったリル・・・」
なのはさんの横に座り、クロノさんが取り仕切り始める。あたしが聞いたのは変質者通り魔事件の事だった。
「この通り人を失神するまで脅かして逃げていったところまで解っている。しろかねには妖怪側からこれがウラメシーナによるものなのかただの変質者なのか見解を聞きたい。」
「カルゥ・・・」
「しろかね、思ったことをそのまま言えば良いんだよ。」
「カルゥ・・・やってることは基本的な妖怪のやってることカル。」
「ほう・・・」
「逢魔時に現れて、脅かして、立ち去る。妖怪らしいカル。でもこれだけじゃウラメシーナかどうかはわからないカル〜」
「そうか・・・ありがとうしろかね。」
「どういたしましてカル。」
「対策を取ろうにもどこに現れるのかさえわからん・・・捜査は難航だな・・・」
「とりあえず大きな怪我人が出てないのが幸いやな。」
「今はそうだけどいずれはどうか分からないよ。失神した人を食べちゃったり連れ去ったりするかも知れないし・・・」
「対策としては一人にならないように周知徹底させるしかないな・・・」
「そうだね・・・現状それしか対応出来ない。」
「よし!そうと決まったら関係各所に通知するで!入念にな!」
「了解だ・・・!」
「マクリル・・・マクリルもウラメシーナかどうかわからないの?」
「一瞬過ぎてわからなかったリル・・・でもこのまま捜査が進めば進展する筈リル。」
「そうだね・・・ただの変質者だったら良いのに。」
いや良く無いが。自問自答しながら今回の事件も早く片がつくよう願うあたしだった
つづく
No.5ノッペラボウウラメシーナ