フェイトさんとの旅行先での事件から数日。普通に帰ってきたあたしは玄関で倒れてしまって大騒ぎになった。私はフェイトさんに「しばらく治療すること!なのはには言っておくから!」と病院にぶちこまれてしまった。
「はいヨシコ、あーん。」
「ヴィヴィオ・・・恥ずかしいよ・・・」
「個室なんだから大丈夫だよ。はい!あーん!」
「もぐ・・・」
もう一週間も入院しているんだが一向に退院させてはくれない。まぁまだフラフラなわけだけど。
「まだ退院出来ないんだっけ?」
「うん。フェイトさんがお医者さんと相談して決めるらしいんだけど・・・」
「あちゃーそれなら大分長くなりそうだね。フェイトママはすっごい過保護だから・・・愛が深いとも言うけど。」
「あははは・・・」
ともかく退院出来ない理由もあるわけだけど・・・プリキュアのフォームチェンジ。変身を解いて船室に戻った後に立っていられないほどの疲労感に襲われたんだ。なんとかごまかす為にフェイトさんと一緒に眠ってしまったけど・・・立ち上がれないと知ったフェイトさんの慌て様はすさまじかった。
「ねぇ、マクリル。」
「なにリル?ヴィヴィオ。」
「そのプリキュア、ほんとにわたしはなれないの?こんなにヨシコがぼろぼろになってるのにわたしはなにも出来ないの?」
「・・・ダメリル。この世界の人間はプリキュアにはなれないリル。」
「この世界の人間ってことはなのはママは出来るの?なのはママはヨシコと同じ世界出身なんだけど。」
「なのはママ?・・・あああの茶髪の人かリル。不可能リル。魔力を使いすぎているリル。」
「プリキュアになれるかなれないかって魔力が影響するんだ。」
「それもそうだけど・・・もっと根本的な問題でもあるリル。」
ヴィヴィオの膝に座っているマクリルはぽつりぽつりと話始めた。あの一件以来、あたしはまだマクリルとちゃんとお話出来ていない。ちゃんと・・・お話しないとね。
「ヨシコにいっぱいお話しようと言われてたし・・・まずはマクリルの方から話をしようと思うリル。」
「え、あ、うん。」
「まず、伝説の戦士プリキュア。プリキュアはマクリルの住んでいた世界、メグメルに伝わる滅びの危機から世界を救う戦士の事リル。といっても滅びの危機がやってきたことなんてメグメルの歴史には一度も無かったけどリル・・・」
「へぇーすごいねメグメル!そんな次元世界があったなんて。」
「この世界の文明レベルでは辿りつけないリル。次元空間の解釈の方法が違うリル。といってもマクリルは専門家じゃないから詳しくは説明出来ないリル。」
「うっそぉミッドの技術でも辿りつけないなんて。」
「ヴィヴィオ、まだこの世界には知らないことがいっぱいあるリル。」
「そうだね・・・世界って広いね。メグメルはどんな所なの?」
「メグメルはマクリルの様な妖精が住む世界リル。すごく豊かで、光に溢れたキレイな世界リル。周りの世界にの住人には楽園なんて言われてたリル。大きなお城があって女王様が治めていた平和な国だったリル。」
「ねぇ・・・ちょっと待ってマクリル・・・だったってどういうこと?」
「・・・メグメルは常夜の住人に滅ぼされたリル。」
「え・・・」
「ご、ごめん・・・」
「一応はメグメルに近い世界だったから交流もあったしお互い力の差もあったから監視しあっていたリル。」
「・・・なんで常夜の住人が攻めてきたのかな。」
「わからないリル。メグメルは、楽園と言われていたリル。常夜の住人の世界もメグメルほどではないけど豊かだった筈リル・・・いつの間にか貧困化して資源を求めてきたんじゃないかとも思ったリル」
「そんな・・・!」
「実際は本当に何故なのかわからないリル・・・本当にいきなりで、驚いたし、戦う力の無いメグメルの妖精は逃げるか怯えて怖がることしか出来なかったリル。」
マクリルは明らかに落ち込んでいて、うなだれてしまった。そんな理由があったなんて知らなかった。
「・・・それでなんとかメグメルを復活させる方法を探してる時にプリキュアのことを知ったリル。リリカルコミューンも見つけ出すことが出来たリル。それから常夜の住人がメグメルがある次元空間から人間の住む次元空間へ侵攻したことも・・・」
「そうだったんだ・・・そんなことが・・・」
「とりあえずプリキュアの話に戻すリル。」
マクリルがふわりと浮いてあたしのベッドに乗る。
「今の所プリキュアになることが出来るのはヨシコだけリル。そこは大丈夫リル?」
「うん。」
「でもどうしてなの?」
「さっき言った通り根本的な問題で・・・マクリルみたいに妖精的に言うとヨシコは光の人間。ヴィヴィオ達は闇の人間リル。」
「ええええ!?わたしは闇なの!?」
「・・・それを判断するのが魔力なのね。」
「そうリル。魔力は闇の力・・・魔力に触れ続けた人間はどんどん闇の力に染まって行くリル。プリキュアは闇とは真逆の光の力で変身するリル。魔力で魔法を使い、闇の力が身体に浸透したこの世界の・・・ミッドチルダだったリル?ミッドチルダの人間は光の力と反発し合うから変身出来ないリル。」
「ねぇ・・・マクリル。闇の人間ってことは、わたしたちはプリキュアの・・・ヨシコの敵なの?」
「!!」
「・・・敵かどうかを決めるのはヨシコリル。ひとつ言わせてもらえるとすれば闇の力は決して悪の力じゃないリル。常夜の住人達とマクリル達妖精は少しの間でも手を取り合うことが出来たリル。たまたまヨシコとヴィヴィオ達は配られたカードが違うだけなんだリル。だからプリキュアは伝説の戦士であって正義の味方じゃないリル。」
「そっか・・・」
「大丈夫だよヴィヴィオ!あたしはウラメシーナとか常夜の住人からみんなを守る為にプリキュアになったんだから!」
「そうだよね。ありがとうヨシコ。」
「それにプリキュアに変身してもヴィヴィオには勝てる気がしないね・・・」
「もー!!ヨシコそれどういう意味!?」
「あははは!」
「・・・次は常夜の住人についてリル。といっても実はあんまりよくわかっていないリル。メグメルの近くに存在する世界の住人で純粋な闇の力の権化だということ。今ウラメシーナという僕を使って仲間を増やそうとしていること。ミッドチルダの人間を狙っていること。そして何故急に侵略行為をしたかわからないことがわかっているリル。」
「それ・・・ほとんど何もわかってないのと一緒じゃない!」
「事実そうリル。メグメル以外の世界でも調べたけど何もわからなかったリル。常夜の住人の世界の名前もわからなかったリル。そもそも常夜の住人というのもマクリル達メグメルの妖精が住人の住む世界の雰囲気でそう呼んでいただけで正式にはなんて呼ばれているのかは教えてくれなかったリル。それどころじゃなかったリル。メグメル以外のの世界ではメグメルはヴァルハラ、エリュシオン。常夜の住人の住む世界はコキュートスとか黄泉とか言われてて架空の世界扱いになってたリル!心外リル!」
「・・・詳細不明、正体不明。常夜の住人っていうのはいったい何なんだろう。」
マクリルはヴィヴィオが剥いたリンゴを人かじりする。あたしもお茶を一口。ヴィヴィオもリンゴをほおばった。
「とにもかくにも・・・常夜の住人がなにかとんでもないことをしようとしているのは間違いないリル・・・」
「・・・。」
「・・・。」
病室にリンゴを咀嚼する音だけが響く。
「あと何か聞きたいことはあるリル?」
「マクリル、わたしからひとついい?」
「何リル?」
「ウラメシーナを使って仲間を増やそうとしてるって・・・どうやってるの?」
「・・・ッ!」
「・・・同じ闇の力を持つミッドチルダの人間をノーメーンという呪具を使ってウラメシーナに変身させるリル。ウラメシーナは成長して、やがて人間の体を捨てて常夜の住人と同じ存在になるリル。」
「嘘・・・とし・・・つと・・・なじ・・・」
「・・・ヴィヴィオ?」
「・・・。」
「えっと・・・それじゃあ、常夜の住人ってどんな姿なの?あたしまだウラメシーナしか見たことないし・・・」
「常夜の住人の姿、リル?・・・うーん・・・なんて言ったらいいか・・・まず人間や妖精のように基本になる姿がないリル。頭が牛ですごく大きかったり、人間の身体で首がすごく長かったり・・・無機物だったりするリル。」
「へぇ・・・バラバラだねぇ。」
「性格は様々あるリル。でも基本はちょっと乱暴で喧嘩が好きだったりとかするけど、情に厚くて陽気な連中リル。ほんとに何が常夜の住人を変えてしまったのかさっぱりわからないリル・・・どうして・・・どうしてこんなことになってしまったリル・・・」
「・・・ねぇヨシコ。ちょっとね聞いて欲しいんだけど・・・」
「なにヴィヴィオ?」
「気になってたんだけど・・・やっぱり無関係じゃないと思うんだ。都市伝説。」
「としでんせつ?」
「今ねミッドチルダで流行ってるの。あのね・・・」
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私の執務室で頭をうんうん唸らせてこの間の戦闘映像をチェックする。攻撃パターン・・・目的・・・なんでもいい。なにか気づくことが出来れば。
「なのは・・・この怪物、以前現れたものと姿形は異なるけどが共通点が結構あるんだ。」
「ほんとだね・・・特にこのマスク・・・」
「フェイト執務官、こちら調査結果です。」
「ありがとうティアナ。」
「都市伝説との照らし合わせ・・・どう?」
「まだ何にも・・・この怪物側の情報が少なすぎます。」
「うーん・・・そっかぁー・・・そうだよねー・・・」
「そういえばはやてが対策チームを立ち上げるって言ってたよ。メンバーはあの怪物と戦ったことがある人間だって。」
「そうなんだ・・・はやてちゃん。仕事が早いなぁ。」
「私はちょっと別口で調べてみようと思うから参加するのは遅くなると思う。ごめん。」
「別口・・・?フェイトさん別口って・・・?」
「二度も怪物を退けたあの子・・・あの子を追ってみようと思うの。」
映像に映るピンクのドレスのバイザーを付けた子と青いドレスのフードとマフラーを付けた子。この二人が同一人物であるのは確信している。
「この子・・・」
「あの怪物が現れる所に必ず現れる子・・・未知の魔法で怪物を退ける子・・・」
「港での戦いでも魔法らしい反応はありませんでしたよね。魔導士なんですか?」
「わからない・・・でも船の戦いの時に少しだけ話が出来たよ。プリキュア・・・そう名乗った。」
「ぷりきゅあ?」
「うん。何者かって聞いたら・・・自分はプリキュアだって。そのあとまた逃げられちゃったけど・・・」
「そっか・・・プリキュア・・・」
「この子を追えば、もっといろいろわかるかも知れない。」
「そうやな。フェイトちゃんは頼む前から動いてくれて助かるわぁ。」
「ひゃわあ!」
はやて・・・せめてノックして。けっこうびっくりしちゃったよ。それにしても頼む前って事は私がやろうとしてることわかったんだ。
「うーん・・・プリキュア・・・ねぇ・・・プリティー、キュアーか。随分とファンシーな名前しとるなぁ。」
「えっとはやて、あの彼の身辺調査終わった?」
「もちろんや。タルカス・マクラーレン二佐、魔導士ランクA+、次元航行部隊、巡洋艦シヴァーの操舵手。提督になる直前でシヴァー退役に伴いリストラ・・・ってとこやな。」
「操舵手・・・提督昇格直前・・・だから船に乗りたいっていってたんだ・・・」
「どうして怪物化したかは不明・・・フェイトちゃんが嘘付いてるとは思えへんし、港での怪物も人が変身しとったんかな。救助者リストをさらったけどそれらしき人はわからんかった。」
「そっか・・・」
「それでやフェイトちゃん?今日はそのプリキュアとやらの話を聞きに来たんや。怪物出現事件で謎の少女対策としてな。」
「わかった。ごめんなのは、ティアナ。ちょっと言ってくる。」
「フェイトちゃん借りるでー。」
「うん。じゃあティアナ早く報告書書いちゃおう。」
「はい。」
人の弱みにつけ込んであんな怪物の実験体にするなんて許せない。プリキュアと名乗るあの少女も、あんな無謀な戦い方をして、無茶な人体改造を施しているに違いない。そんな危険なことを止めさせなくては。あれだけ強力に強化するなんてそれ相応の施設がないと不可能な筈。間違いなく組織に属しているか、操られているはず。また・・・しらみつぶしに違法研究施設を調べて回るしかない。地道だが、こういうのが解決に近づく筈だ。一日10件回るので遅ければ100件回ればいい。ごめんヨシコ。またしばらくお休み取れなさそう・・・ごめんね・・・
「うらめしや・・・」