意図せず世界を手中に収めよう   作:マーズ

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真耶と院長

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

真耶は二組の代表、凰 鈴音との対戦を目前にしている一夏を見る。

中国の代表候補生という強敵が相手だと言うのに、ずいぶん落ち着いて見える。

以前のクラス代表決定戦のときより、余裕があるからだろう。

 

「(専用機をぶっつけ本番で使いこなせと言われたら、緊張もしますよね)」

 

真耶はあの時のことを思い出して苦笑する。

一夏にそれを強制した千冬が彼の姉だからこそ黙っていたが、もし特別な関係がなかったら真耶は止めていただろう。

 

専用機は強力なものであるが、特定の領域に特化しているものが多いため、クセが強い。

たとえば、一夏の専用機である白式は攻撃特化型である。

さらに、武器が剣一つしかないという超近接格闘型である。

 

「(あの時、織斑くん以外だったらすぐに撃墜されていたでしょうね)」

 

真耶は最初、一夏が完敗するものだとばかり思っていた。

対戦相手であるセシリアも担当するクラスの子供であったからどちらかを明確に応援することはできなかったが、気持ち的には一夏よりであった。

 

何故なら、女尊男卑的な思想を持っているセシリアが院長の妨げになるかもしれないからである。

一夏はセシリアに負けはしたものの、あと一歩というところまで追いすがったのである。

 

その結果を受けて、真耶は彼に接近することにした。

気持ち的には味方であったが、あそこまで乗りこなすとは思っていなかった。

 

それに、一夏は世界で一人しかいない男のIS操縦者である。

その不確定要素が、真耶の思い描く『院長の支配する理想郷計画』に支障をきたしてはいけない。

だから、一夏のことを知ることにしたのである。

 

「(性格は、普通の男の子とあまり変わらないみたいですね)」

 

一夏と話すとき、彼の視線が胸元に集まりやすいことは知っている。

鈴音との対戦の前の今でも、胸元に視線を感じていた。

 

とはいえ、じっと見続けるほど変態なわけではなく、思春期らしくチラ見である。

真耶は自分の胸が男の視線を引き付けることを知っているから、それほど目くじらを立てるつもりはない。

 

「(それに、服装も少しあれですしね)」

 

真耶はゆったりとしたワンピースを着用している。

だが、この服は胸元がそれなりに開かれた形状になっている。

 

それは、全て隠してしまう服だと胸がかなり苦しくなってしまうという理由からである。

真耶の豊満な胸は、衣服を纏うと彼女を苦しめるものへと変わってしまうのだ。

 

「(それに、院長にも見てもらいたいし……なんてっ!)」

 

キャッと頬に手を当てて、くねくねと身体を動かす真耶。

箒が怪訝そうに見ているのも、気づいていない。

 

院長は、本当に男かと思うほど禁欲的な男である。

孤児院のメンバーには勿論男も混ざっているが、女の方が数は多い。

 

さらに、孤児院を実質運営する幹部メンバーは全員女である。

そんな女所帯の中で唯一なんでもすることが許されている男なのだから、少しくらい手を出しても問題ないのだが……。

 

「(ダメですね、私。院長のことばかり考えてしまって……今は、織斑くんのことを応援しないと!)」

 

ふと気を抜くと、いつも院長のことを考えてしまう。

IS学園に【もぐりこんでいる】のだから、怪しまれないように教職を全うしなければならない。

 

それに、一夏の戦闘データは貴重だ。

今このデータを手に入れられるのは、IS学園しかない。

 

国際IS委員会などは一夏のデータを要求してくるだろうが、素直に渡すことは千冬が許さないだろう。

下手をすれば、真耶が知りえないところで改ざんを勝手に終えてしまうかもしれない。

今のうちに、一夏のデータを集めておく必要がある。

 

「(それに……織斑先生は院長のことも怪しんでいたようですし……)」

 

一夏と鈴音の戦いが写しだされるモニターをじっと見ている千冬。

そんな彼女に気づかれないように、そっと千冬を見る真耶。

 

その目は、普段生徒たちに慕われる優しい教師の色は消えていた。

ハイライトが全て失われ、ドロリとしたおぞましい瞳であった。

 

それを、千冬に勘づかせない真耶もまた相当のものだ。

真耶は院長がIS学園の理事長に就任した時のことを思い出す。

 

「(あんなに嬉しかった時はありませんね)」

 

真耶はまたもや院長のことを考えてトリップしてしまう。

幸い、ここにいる者が一夏の戦いに夢中になっているから気づかれていない。

 

真耶は、学期が始まると院長と離れ離れになることを確信していた。

何故なら、院長の居場所はあの孤児院だからである。

 

外で駆けずり回るのは、院長による支配を求める自分たちだけでいい。

それが、幹部たちが珍しく共通する考えだったからだ。

 

院長を孤児院から引き離すなど、誰も考えたことすらなかった。

その考えを破壊した人物が、篠ノ之 束である。

 

孤児院の外に院長を出すという、画期的な考えを発表したのだ。

無論、他の幹部メンバー全員がそれに反対したが、院長の向かう先がIS学園となれば話は別である。

 

真耶やシャルロットが賛成して幹部メンバーの中でも意見が拮抗し合った。

決定的だったのは、院長がそれを了承したことである。

 

院長の決定は絶対である。

強い反対の意向を伝えていたエムやオータムたちも、院長の意見に逆らうことはできない。

するつもりも毛頭ないし、したとしても他の幹部の攻撃を受けるだけだ。

 

「(ずっと院長と一緒にいられる……つまり、もっと仲良くなるチャンスです!ここは、恥ずかしくても積極的にいかないと……!)」

 

とはいえ、院長にべったりのクロシロコンビがいるため、あまりに積極的すぎると排斥されてしまう。

いつも通り、その爆弾胸をチラ見せするくらいのアピールになるだろう。

 

「(く、クロちゃんみたいに、お風呂に乱入とか……そ、それは流石に……!)」

 

真耶は一夏の試合をそっちのけで、どのようなアピールをするかで頭がいっぱいになっている。

そんな時、真耶が想像もしていなかった緊急事態が起こる。

未確認のISがアリーナの遮断シールドを突破して降り立ったのだ。

 

「なっ……こ、これは……!?」

 

真耶は目を見開いて驚きを露わにする。

遮断シールドはISに使われているものと同じ性能である。

 

それを貫通するということは、ISを簡単に貫くことができるということだ。

それは、かつてない脅威だ。

 

「織斑、凰。すぐにアリーナから脱出しろ」

 

千冬がチャネルを使って一夏と鈴音に指示を送る。

他に同じ場所にいた箒もセシリアも、心配そうに一夏たちを見ている。

 

だが、真耶だけは違った。

あのISが貫通してきた瞬間から、すでに一夏たちのことなど忘却の彼方へと飛んでいた。

 

彼女の脳を占めていることはただ一つ、院長のことであった。

アリーナに突入してきたISが一機とは限らない。

 

こちらに現れたISは陽動で、目的は他にあるかもしれない。

その目的が、院長のことだったら……。

 

「織斑先生!私は生徒の避難誘導をしてきます!」

「おい、山田くん!」

 

真耶はそれだけ告げると、猛然と走り出した。

その速さは、普段のおっとりした彼女を思い浮かばせない。

 

千冬の呼び止める声も振り払い、院長の元へと向かう。

専用機を部分展開させてマップを表示すると、やはり未確認のISが他にも【何機か】現れていた。

 

その中には生徒たちが集まっていると予想される場所もあったが、真耶はそれを一切目にしなかった。

その視線の先には、院長がいるであろう場所に現れたISがあった。

 

「……っ!」

 

それを確認すると、真耶はもうなりふり構っていられなくなった。

専用機『ラファール・リヴァイヴ・スペシャル=幕は上げられた(ショウ・マスト・ゴー・オン)』を完全展開、周りにあるものをなぎ倒しながら院長の元へと向かった。

 

そして、ISの機能の一つであるズームを使うと、院長の背中が目に入った。

院長が無事であることにホッと一息つく。

 

「―――――」

 

だが、彼の前にあの無機質なISがいたことで頭が真っ白になる。

とはいえ、何も考えられない馬鹿になったわけではない。

 

身体は怒りで燃え上がりそうなほど熱くなっているのに、頭は酷く冷え切っていた。

元日本代表候補生・現孤児院幹部メンバーの技術をいかんなく発揮する。

ブースターをふかして速度を急上昇、一気に敵ISの元へと向かうのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

IS学園を襲撃したISの名前はゴーレムIという。

複数機で襲撃をしたのだが、そのうちの一機が院長の前にいた。

 

ゴーレムIは無人機である。

ただ、自らを創った大天災の指示する行動をとるだけである。

 

その命令に従い、院長に無機質な手を伸ばした。

一切の感情を感じさせない無機質なISに手を伸ばされることは、普通の人間なら恐怖のどん底に突き落とされるものである。

 

だが、院長はただいつも通りニッコリと笑っていただけであった。

その理由が、次の瞬間に明らかとなる。

 

「―――――ッ!?」

 

ズドンと胸部に強い衝撃を受けるゴーレムI。

見ろしてみると、強靭な胸部装甲がほんの少し凹んでいた。

 

何らかの攻撃を受けたのだ。

攻撃を受けた場所から方角を計算し、愚かな攻撃者を見つけ出す。

 

そこには、緑髪で眼鏡をかけた小柄な女がいた。

ISを身に纏い、自分を見ている。

そんな彼女が手に持っているのは、対IS用のショットガンであった。

 

「…………」

 

女は何も言うことはなかった。

ただ、その冷徹な目は口に出さずとも感情を伝えていた。

 

それは、重々しい苛烈なまでの憤怒であった。

感情を持たないゴーレムIであるが、それを通して操作していたどこかの兎の背中に、ゾクッと冷たいものが走る。

 

―――――ガン!ガン!ガン!ガン!

 

動けないゴーレムIに、女の容赦ない射撃が降り注ぐ。

全身に強烈な衝撃を受けて、院長からどんどんと離れていく。

 

そうして、しばらく続いていた射撃がピタリとやむ。

おそらくショットガンの残弾が尽きたのだろう。

 

ゴーレムIはその隙に掌を女に向けて、ビーム攻撃のチャージを行う。

背後で暗躍している兎の干渉によって通常よりも早くチャージが完了する。

 

「―――――?」

 

そして、いざ女に撃とうとすると、先ほどまでいた女がいなくなっていた。

どこに行ったのかと、センサーをフル稼働させて探索する。

 

とある兎のバックアップのおかげで、女の居場所はすぐに判明した。

探索の結果、女が移動した場所は己の懐であった。

 

女が構えていた武器は『灰色の鱗殻(グレー・スケール)』。

通称『盾殺し(シールド・ピアース)』と呼ばれる第二世代機最高の威力を誇る兵器であった。

 

「―――――壊れろ」

 

その一撃で、兎とゴーレムIとの交信は断絶することになった。

ゴーレムIはコアに至るまで、無残に破壊されたのである。

 

普段の穏健な教師の姿はそこにはなく、冷徹な狂信者がそこにいた。

女―――山田 真耶は、現役の代表候補生ですら苦戦するゴーレムIをあっさりと撃破せしめたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あぁぁぁぁっ、院長!無事ですか痛くありませんか怖くなかったですか!?私がもっと早く来られていればぁぁぁっ!!」

 

ゴーレムIが粉砕された後、院長の頭を豊満な胸に押し付けて抱きしめる真耶の姿があった。

その熱い抱擁は、院長が真耶の乳房の中でぐったりとするまで続けられたのであった。

 

 

 

 

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