muv-luv the ∞ loop  『世界の負』と『狂戦士』の分岐点   作:光影陽炎

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与えるのは

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「まったく、巨人殿は人使いが荒いな・・・」

 

鎧衣左近は目的地に歩きながらそう呟いた。

 

彼は数日前のある事件の背後事情を探っていた。

対BETA用地中ソナーに掛らず、突如京都訓練学校に現れた新型BETA母艦(キャリアー)級メガワームと呼ばれている地中を潜る巨大な蟲と言っても過言ではないほど、その姿を見た者に恐怖を与える異物。

母艦(キャリアー)級は単体であれば出現前に警戒を怠らなければそうそうやられることは無いだろう。だが奴等には単体で地中からの奇襲以外に、もう一つの役割を持っている。

それは母艦としての役割、航空母艦なら艦載機を搭載して海上からの発艦、着艦の効果を持つのと同じく母艦(キャリアー)級にもBETAを搭載し、そのBETAによる奇襲、地中からの強襲を可能とすることができる。

母艦(キャリアー)級一体につき搭載できるBETAの数は、確認できただけで約千体。ちなみにこの千と言う数は要塞級も込みのこの数字であって、実際は百から二百の誤差がある。

彼が探っていた事件に現れた母艦(キャリアー)級の数は5体。単純な計算をしてでも、5千はいるはずなのだ。それらのBETAが3時間で全滅したというのだ。

5千のBETAを3時間で全滅、この記録に日本帝国城内省の大臣達は躍起になって全滅させた陽炎のパイロットを探し始めた。

だが鎧衣は知っていた。それを行った者の名前と、その者がどんな名前で呼ばれているのかを。

2~3ヶ月前に奇跡的な成功を収めた朝鮮半島撤退作戦『光州作戦』に参加した者は、その名を知らない者はおらず、そして彼に感謝している衛士も少なくはなかった。

名を『鉄光成』と名乗った彼は、BETAの奇襲により全滅したかと思えた大東亜連合と国連軍指揮下に入っていた日本帝国陸軍の彩峰中将率いる帝国陸軍第六独立大隊『デュラハン』大隊の遥か前方で接近してきたBETAを撃破。撃破と同時に北方の本隊の救出の為、戦闘中のBETAを撤退まで追い込んだ。そしてBETAの撤退を司令部にて確認した後、彼はどこかに去って行った。

それから彼はいたるところにその姿を現した。

モスクワに、ギリシャに、ベルリンに、イギリスに、中国にその姿を現した。

そしてその姿を見たものは口をそろえてこう言った。

『血の巨人』と

残念ながらその姿は、一ヶ月前を境に見ることは無くなってしまったが、個人的なルートから彼は日本にいることが分かっていた。

だが彼がいると判明した場所が、彩峰中将の元であったため押しも引きもできなかった。

そんな彼から、ある一通の手紙が届いた。

鎧衣は、数日前に届いた手紙を上着のポケットの中から取り出した。

 

『調べてほしいことがある。受けるか受けないかは自由だ。受けるのであれば、指定の時間に下記の住所に来てほしい。』

 

行く必要もないと最初は思っていたのだが、住所を見た瞬間驚いた。なんと書いてあるのは代々五摂家の守護を任された月詠姉妹の屋敷の住所だった。

とりあえず確認を取ってみた所、確かに鉄光成らしき人物がいることが分かった。

 

「なぜ五摂家の守護を任されている者の家に、光州の英雄がいるのか・・・」

 

彼はこの国を、この世界を救うことができるかもしれないと思わせる力がある。

故に五摂家の守護を任される月詠家にいるのだろう。つまりこれはある意味での挑戦状なのかもしれない。

 

『期待を、裏切ってくれるなよ?』

 

手紙越しにそういわれているのかもと、そう思った。

ならば乗ってやろうと、英雄の期待に応えてやろうと、そう思った。

 

「さて、吉が出るか凶が出るか・・・突いてみなければ分からん、か」

 

そして、彼は静かに歩みを速めた。

 

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萩閣のツテから人を呼んでもらったのだが、唐突に手紙を書けと言われた時には驚いた。

そもそも俺は、手紙を書くような人間じゃなかったから、文章が無駄に挑戦状形式になっていた。

別の文章を書いても同じ、また書き直しても同じ、また同じ・・・と、まぁ5回は書き直しに挑戦をしたのだが、あっけなく敗北して中でもマシだったものを送ることになった。

月詠さん達に文章を見られた後、それで笑われる羽目になっていたのは、結構恥かしかった・・・・一緒になって笑っていた光成はシメたが。

これで来てくれればいいが・・・・もしもの事を考えて国連と城内省のデータベースには忍びこめるようにはしておいたが、正直見つかる可能性は限りなく低いと思っている。

廊下を行ったり来たりしながら、気を紛らわしたりはしているが・・・

 

「これで本当にこなかったらなぁ・・・」

「誰が、と聞いておこうか」

「!?」

 

突然後ろから聞きなれない声を聞き取り、後ろを振り向くとそこには張り込み捜査官のような服装をした男性がいた。

普通なら気配、と言うか空気が変わるのだが今目の前にいる男が背後に立っても何も感じなかった。

つまり相当な手練れ、随分なキレ者であることはたしかである。

 

「鎧衣殿!勝手に歩かれては困ります!」

「はっはっは、いやぁ申し訳無い。見た事の無い者を見かけたもので」

 

と、男性の後ろから現れたのは軍服姿の真那さんだった。

いつも思うのだが、あの人プライベートでもあれなのか?さすがに無いと思うが・・・

真那さんも真耶さんも、いつも見かける時はあの軍服姿だからあれしかないのかと考えたりしてしまったり、なかったり・・・

 

「君が、鉄光成かな?」

「え?あ、いや光成なら別の所にいると思いますよ?」

 

月詠さん達の服装について考えつつ、目の前の男性に警戒をしていたら唐突に光成の所在を聞かれてしまい少しだけ何を考えているんだ?と、思ってしまったが先ほどシメた光成は、屋敷内の何処かにいると思い軽く適当に答えてしまったが、あながちはずれではないはずだ。

 

「ふむ・・・では、君が『巨人』かな?」

「・・・・鎧衣左近さん、ですね?」

 

鉄光成というワードから、急に巨人に変わったという事は萩閣が言っていたツテの事だろう。

名は鎧衣左近、娘や自宅の近隣の住民には自分の仕事を『世界を飛び回る貿易会社の課長』と言っているが、実際は帝国情報省外務二課の課長をしているらしい。

彼が持っている情報は公私共に有益な物ばかりである。故にその収集力と実力を買われて征夷大将軍の護衛なども務めているらしい。なのに、月詠さんとはそれほど仲が悪いわけでは無いというが、近衛の大半には嫌われているという。まぁ、自分の信念を横取りされれば嫌われんのもわかるが。

多分この人は最初から俺の事を『巨人』と踏んでいたのだろう。

だからふらりと歩くふりをして俺の背後に立ったのだろう、その実力を試すためというか、依頼を受けるに値するかだろう。

 

「ふむ・・・・若いな、だがその若さでどれほど戦ってきた?」

 

月詠さんに聞こえないように小さい声で話しかけてくる。

戦い、この呪いを認めてもう何年だろうか。信じては裏切られ、信じては裏切られの繰り返しだったような気がする。誰かに認めてもらいたくて、誰かと一緒にいたかった、そんな時も確かにあった。

 

「ざっと10年、世界のほぼすべてを相手にした」

「・・・・なるほど、強さ以外はすべてを捨てたか」

 

強さ以外すべてを捨てた・・・的を射ているかもしれないが、すべてを捨ててはない。

捨てたというならば、己を捨てた。だが己がここに存在する意味は捨てていない。

 

「この手で救える者を護る為に、捨てられる荷物は捨てただけですよ。」

「己の心は捨ててはいない、か・・・・君の手は大きそうだな」

「小さいですよこの手は、ね・・・」

 

まだ小さい、萩閣にこの世界に来た時の話を聞かせてもらったときそう思った。

萩閣の家に着いてからすぐに、その話が持ち上がった。

その時、俺と光成に残ったものは後悔に満ちていた。

自分のせいで友人が死んだ、いや正確に言うには両親と妹を置いて行かざるを負えなかったと、そう思った。

(ベルセルク)あいつ(アンラ)も元を辿れば人間だ。感情だってちゃんとある。それでも、自分達のやっていることに意味はあるのかと、ここにいる価値はあるのかと、ふと思ってしまう。

好きな人も、家族もいない世界で俺が護るべき存在は俺に関わったすべての人達以外いない。

今はそれを護るだけでいい。そう、思うしかなかった。

 

「・・・・ところで、依頼したいと伺ったのだが?」

「あ、はい。月詠さんちょっと下がってもらってもいいですか?」

「・・・・分かりました、昼食が出来たらお呼びいたします」

 

不服そうに下がる真那さんを横目で見つつ、声が聞こえない範囲に入ったのを確認したら、鎧衣さんに依頼の話を始めた。

 

「探してほしい人達がいます。範囲は出来る限りで世界、少しでもその情報に掠ったりしたら教えてください。連れてきてくれるのも可とします。」

「ふむ・・・で、兎はなんだね?」

「行方不明者だったが突然現れた人、死亡とされたが発見された人、国のデータベースにすら乗ってない人達。これでお願いします。」

「・・・・興味本位で聞くのだが、何をする気だね?」

 

その質問には、何が込められていたのだろう。

確かに探してほしい人間の範囲が広すぎるのも確かだ。それに内容も危険極まりない。つまり他国のデータベースに侵入しろとも言っているのだから。

でも今回はそれほどまでに重要な事である。もしも因子所持者がこの世界に多数存在するのであれば、それなりの人が必要になる。この戦争に終わりが来たときは、彼等の世界に俺が行かなくてはいけない可能性だってある。だがそれほどまでに人が必要なのだ、新たなBETAが発見されてから数日たっているが政府は未だに俺達の捜索をしている。だから力が必要なのだ、人類もBETAも相手にするぐらいの力が。

 

「いつか来る平和を築くために、彼等にも来てもらわなければならないんです。この世界の為に、そして何より彼らの為に」

「・・・・」

 

何も感じず死んだ人だっていた、戦いに飲まれて死んだ人もいた、何も守れなかったと、何も救えなかったと、何も取り戻せなかったと、欲望に飲まれて死んだ人だっていた、世界の理不尽を赦せなかった人もいた。

ここは、そんな人が集まる世界だ。

だから俺達が術を教える。何かを残し、世界に立ち向かう術を。欲望や、戦いに飲まれない心を。護り、救い、取戻すための力を。後悔しないための知恵を。

それが、俺の今やるべきことだ。

 

「・・・・5人なら今連れて来られるかもしれん」

「本当ですか!?」

「ああ、御用とあらば連れてくるが?」

「ではお願いします!今日の夜にでも!」

 

今は時間がない。もしも萩閣の話が本当ならば、すでにハイヴが落ちているはずだ。

1ヶ月でどこまでできるかは分からないが、基礎ぐらいだったらできるはずだ!

 

「ちなみに、名前は?彼等自身でここに足を踏み込まなければ意味がないので」

「ああ、たしか・・・・

 

 

 

 

五反田

御手洗

松田

元浜

須川

 

だと言っていたな」

「(聞いたことのない名前ばかりだな・・・・まぁ、いいか)」

 

そう思いつつ、彼等に伝言を伝えるよう頼んだ。

狂った歯車に乗せられし世界に飲まれた彼らに、力を与えるために。

 

今、世界は分岐した。

 

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すいません、光影陽炎です
すぐに投下しようと思ったのですが、登場キャラに悩んでしまって
まぁ、最初の5人はこれでいきたいと思います。

その内意外なメンバーも出したりしたいんで。

後この5人・・・・原作から外れています。
彼らはどんな道を取ったのでしょうか?
では!また次回に
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