muv-luv the ∞ loop 『世界の負』と『狂戦士』の分岐点 作:光影陽炎
京都にある、とある武家屋敷の一室にある人物達が集まっていた。
人数は5人、顔立ちからして日本人ばかりだが年齢層は低い。平均的に言って15歳ぐらいだろう。
服装もそれぞれ違い、黒い軍の制服―――国連軍の軍服を着ているのが一人。
それ以外は現代には合わない私服、どこかの高校の制服などなど人によってそれぞれだったが、明らかに
「・・・・・こねぇな」
「だな」
唐突にそうつぶやいたのは左から数えて1番と2番目で胡坐をかいている二人だった。
1番目の方の名前は松田誠二と言い、その隣は元浜正也という。
去年、ちょうど光州作戦の開始から突如現れた日本のデータベースに乗っていない人間の内の2人だった。
鉄とは違い戦術機ごと現れたわけではなく、皇居の門の前に倒れていたのを発見された。
不審者という事で留置所に入れられていたが、データベースに乗っていない事が判明された瞬間すぐに刑務所に異動させられた。
その後、城内省の鎧衣課長からの口添えによって特例だが鎧衣の保護下という名目で釈放を許された。
・・・・・実際はもっと別の人物による恩赦らしいのだが、本人達はその事を知らない。
「なぁ、俺達出されたはいいけどよ。これから何をすりゃいいんだ?」
「それを言われる為にここに来たんだろうが・・・・・」
相方の馬鹿さ加減に呆れている正也だったが、正也の肩をツンツンと叩く人物が隣にいた。
「なぁ、おたくらもなにも言われないでここに呼び出された口か?」
「・・・・ここにいる全員はそんなもんだろ。ま、あっちの軍服さんは知らんがな」
長髪の男に答えるのと同時に、一番右側にいる黒い国連軍の軍服を着た男にも聞こえるように声を高めた。
「俺も何故ここに呼ばれたなんか知らないよ・・・・こっちはいきなり上司にここに行けって命令された人間なんだからさ」
軍服の男も最初は腕を組んで胡坐をかいていたが、組んでいた腕を解いて正也の言葉に反応した。
反応からして、彼もほぼ強制的にここに行くように指示された人間なんだろう。
「こっちとら連戦で疲れてんだからよぉ・・・・とっとと帰してほしいもんだぜ」
肩をすくめながら彼はそう言った。どうやらここにいるほとんどの人間はさっさと帰りたい気分らしい。
「ところでよ、紹介がまだだったな。
俺は五反田弾。んで、隣にいるムスッとしているのは更識楯無って言うんだ。よろしくな!えっと・・・」
今まで忘れていたのか、長髪の男――――弾は自己紹介を始めた。
先ほどまで一言も喋っていない隣の男―――楯無は少しだけ上半身を少しだけ傾けて、すぐに姿勢を戻した。
「俺は元浜正也、隣にいる馬鹿は松田誠二と言う。」
「よろしくな!正也と誠二。
そこの軍服さんもどうだい?」
弾はさりげなく軍服の男にも自己紹介を促した。
彼は、ため息を吐きつつ弾の誘いに乗った。
「軍服さんはよしてくれ・・・これでも16なんだ。」
「「16!?」」
弾と誠二は二人して驚いた。楯無と正也も少しほど動揺をしていた。
なぜならば、彼の体格は16にしてはもはや軍人寄りだ。細身ではあるが筋肉はしっかりと付いており、身長は170を優に超えている。
外見だけで言ってしまえば20歳は超えているだろうと勘違いさせられる。
彼が口を開こうとした時、上段の襖が開いて二人の男が現れた。
入って来た二人は上段中央に座り、正也や弾達とは正面から向き合う形になった。
「今回集まってくれて感謝する。俺は
「
二人・・・・克影と光成と名乗る二人は、弾達4人には聞き覚えのない名前だった。
だが軍服の男は名前を聞いた途端、険しい顔になりなにやらただならぬ気配になった。
「・・・・どうかしたのか?」
克影は、軍服の男の険しい気配に気づいたのか、突然男に声をかけた。
「・・・いえ、何も」
軍服の男はすぐに気配を四散して、普段通りの状態に戻った。
他4人はその状況をジッと見ていたが、さほど気にすることはなく黙っていた。
「さて、今回集まってもらったのは分かっているとは思うが、本題に入ってもいいか?」
「本題?」
「俺たちは何も聞いていないぜ?」
「なに?・・・・分かった、じゃあまず集まってもらった理由から話そう。」
克影はそう言い、正座の状態から胡坐になった。少しの静寂・・・・そして彼は言葉を紡いだ。
「俺は君達・・・いや、アンタ達はこの時代の人間じゃないのは知っている」
「「「「「!?」」」」」
弾達は驚愕した。まだ誰にも言ってない事だ、この時代に来てからも言わないだろうと思っていた事だが、その秘密を彼によって暴かれた。
「・・・・なんでそんな事が分かる?確証はあるのか?」
「まぁ俺もこの時代の人間ではないからこそ分かるのだが・・・・まぁいい。この世界の歴史はもちろん知らないよな?」
「歴史?
何故知っているのかは問題ではないと言わんばかりにこの世界について説明しだす克影、それに反応を示したのは意外にも誠二だった。
「そんなものだが・・・ちょうどいい例が出たからここで答えよう。
第2次世界大戦時、原爆はドイツのベルリンに落とされている。」
「・・・・は?」
軍服の男を含まない4人は首をかしげた。
第2次世界大戦では、日本の広島と長崎に原爆が落とされている。そんなことは中学生でも知っている事だ。
「第2次大戦中、ドイツがアフガンの石油を抑えた事によってアメリカに原爆を落とされ、ドイツの降伏宣言・・・それがこの世界の歴史。」
「なん・・・だと!?」
「そしてドイツの降伏によって後ろの守りを失った日本も全面降伏にはならなかったものの、戦線が孤立するのを予想して降伏。ただ、天皇の人間宣言など当時の日本の象徴たるものは失われず今も続いている・・・これで理解したか?」
「・・・突然説明が始まってしまい少し水を指すところで悪いのだが。」
彼らの時代とこの世界の違いを簡易的に説明が終わった頃、楯無が突然しゃべりだした。
今まで何も語らなかった彼の顔は・・・・・笑っていた。
「それがどうした?俺はBETAとやらを全滅させるために呼ばれたとばかり思っていたのだが。」
「おい楯無、お前何を・・・」
「白銀の話を聞いていなかったのか?『巨人殿がお前達に話があるそうだ』と言っていただろう?」
「・・・あ、確かに」
弾は手をポンと叩き、納得したようだった。
一方誠二と正也は
「日本は全面降伏せずにいたのか・・・・」
「だからまだ帝国なのか。まぁ俺たちは狙って飛ばされたわけだからあまり関係ないけどな。」
二人してケラケラと笑っていた。
克影と光成は戸惑うと思っていたのだが、どうやら予想は外れたようだ。
「えーと、じゃあ本題に入るけど・・・いいか?」
「いいぜ、んでなんだよ?」
「日本軍・・・いや、帝国陸軍に入ってはくれないか?」
「軍?なんでまた。」
この情況的に言ったら帝国軍に入ってくれと言われるのが普通だったのだろう。そもそも彼らは戦争の経験がない、はずなのである。
だが、この場にいる全員が普通では無かった。
「現状で人類はBETAという怪物共に攻められていおり、既に確認されているだけで50%の人類は奴らの餌食になっている・・・・そこでだ、俺はあんた達のような人間を捜して軍に入ってもらう事にしてもらっている。」
「ちょっと待てよ、それが何で俺たちなんだよ?」
「だから俺はあんた達を知っているからだって言っているだろ?元テロリストに元戦争屋、神話の存在とされている龍、12歳から戦争に参加している子供・・・」
彼の言葉から紡がれた言葉はこの場の人間でしか分からない言葉。
異常であるからこそ、その異常な力を使ってほしい、というわけなのだろう。
「・・・元テロリストを軍に誘うか?普通」
「そんな事を言ったら戦争屋だって同じだろ?」
「そっちはいいよな~こっちなんかファンタジーなバケモンだぜ?」
「「・・・・」」
思い思いに一言言っている3人、そして黙っている2人。そして、軍服の男が喋り始めた。
「俺は既に国連軍に所属している。軍部が違うから俺は帝国軍に入れないはずだが?」
「いや何、後々国連軍に異動する事になるのが決まっている。まぁ、今回は本土防衛のための人員補充ってところだからな。」
「本土防衛?近いうちに戦場になるのか?」
楯無が防衛という言葉に反応する、どうやら日本が戦場になる事を察したらしい。
「ああ、今年の八月あたりだ、それまでに4人には戦術機の扱い方を学んでもらう。」
「戦術機?なんだそりゃ?」
「ああ、簡単に言ってしまえばロボットだよ。」
弾と楯無は驚き、誠二と正也はまるで玩具を見つけた子供のように笑う。
どうやら誠二と正也は経験があるらしい。
「それで4人には戦術機の扱い方を教える学校に入ってもらう事になるからな。」
「は?学校?」
「ああ、その方が手っ取り早いしそっちの方が楽だ。俺はこの前試験をやって来たからついでってことで口添えはしておくが、あんまり意味はないからな。」
克影と光成は元々試験が必要なかったのだが、巌谷中佐が実力を見極めたいという事で戦術機の戦闘試験が入った。
そこでの成績が期待をはるかに上回るものだったため、文句なしの入学を認められた。
「・・・では俺はそっちが国連に来る時のパイプになってくれってことか?」
「そういう事『殲滅隊長』」
殲滅隊長、それが軍服の男―――須川の異名である。
5千のBETA群をたった一機で殲滅したことから付けられた名前である。本人はまんざらではないようすだった。
「はぁ・・・分かった、上司にはそう伝えておく。」
「頼んだ。では今日はこれで終わりだ、4人には追って通達する。」
「はいはい」「りょ~かい」「また戦争か・・」「・・・」
彼らはそれぞれ立ち上がって部屋を出た。だが、須川だけはまだ残っていた。
それに気づいていた克影は話しかけた。
「まだ何か質問があるのか?」
「いや、少し聞きたい事があってな・・・『誓約者』と『紫の戦士』殿は元気か?」
「!?・・・・・最近は会っていないが、元気だと思うぞ?」
須川の言葉に驚いた後、何かを察したのか返答する。
その返答に満足したのか、彼は微笑を浮かべていた。
「・・・知り合いなのか?」
「知り合い・・・そうだな、ちょっとした腐れ縁だ。」
まるで昔を思い出すように彼はそう言った。
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