muv-luv the ∞ loop  『世界の負』と『狂戦士』の分岐点   作:光影陽炎

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恋人

 

1998年 2月21日

 

冬が過ぎ、桜が少しずつ散り始めている頃、とある男子二人が学生寮で目覚めた。

二人が通っている学校に寮はなかったのだが、帝国陸軍将校の推薦というのもあったので昔作った5階建ての一階ごとの部屋数12部屋の学生寮を急遽再開したのだが・・・・未だに入居人は四人だけである。もちろん、学生だけだが。

 

「おい、陽が昇ったぞ弾。そろそろ起きねば朝食がとれん。」

「ん~?もう朝かぁ・・・」

 

弾と呼ばれた少年は、面倒くせぇ・・・と呟きながらベッドから降りる。

弾を起こした少年、楯無はコーヒーをカップに注いでベッドの近くの丸机に二つ置く。すでに楯無は制服に着替えた状態だった。

 

「おい楯無・・・お前着替えるのが早すぎはしないか?」

「む、俺はお前が昨晩起きると言った時間に起き、室内でお前の言う筋トレなるものをやっていたのだが?」

「あー・・・すまん、誘っておいて起きなくて。」

「まぁ別にかまわんさ、二時間程度の睡眠でお前が起きるとは思ってなかったからな。」

「ウッ!?・・・悪ぃ。」

 

彼らは昨日の夜、全国の戦術機がどの戦闘を想定して作られているのかを自室で自習していた。その自習が午前四時まで掛ってしまったのだ、弾が誘った時間は六時、楯無は出来る限り弾を寝かそうと考え、八時まで起こさなかったのである。ちなみに2人が通っている学校、京都衛士訓練学校は学部が二つあり帝国軍衛士養成学部、いわゆる一般と斯衛軍衛士養成学校、つまり斯衛がある。

 

違いと言っても大きな違いはなく、その名の通り一般は卒業後に陸軍や海軍に回される学生であり、斯衛は卒業後が斯衛軍になる事が確定されている、いわゆる武家たちの集まりである。

斯衛から帝国軍に行けることはあっても一般が斯衛に行けるはとても稀である。

斯衛というのは、征夷大将軍の護衛を任されたり、その勅命を受けたりするため、それなりの地位が必要になる。つまり、武家でなくてはならない。

 

「今日は戦術機訓練ってあったか?」

「ちょっと待っていろ・・・・午前の座学の後にあるみたいだな。」

「よっしゃ!やっと乗れるぜ!」

 

戦術機訓練、その名の通り戦術機に乗ってBETAとの戦闘を前提とした訓練だ。

彼ら、弾と楯無を含めた四人はそれを待ち望んでいた事であり、この学校に入った理由でもある。

 

「弾、早く着替えろ。俺は先に行くぞ。」

「おう~先行ってくれ。」

 

楯無はカップに入っているコーヒーを飲みほして、玄関に向かい先に部屋を出た。

弾は楯無が部屋を出た後、近くに掛けてあった衛士訓練学校の制服を取り、ワイシャツの袖に腕を通し、ズボンを穿いて上着を着る。

そして楯無が飲みほしたコーヒーが入っていたカップと今自分が飲みほしたコーヒーが入っていたカップを台所に持っていき水に浸ける。

そして玄関においてある学生用のカバンを持って玄関を開けようとするが、胸ポケットに入っている写真を唐突に取りだす。

写真には五人の男女、うち一人は弾である事が分かる。他には両親と思われる男女に、万延の笑みを浮かべている二人の女の子だった。

 

「スコール・・・」

 

スコール・ミューゼル

 

弾と楯無がいた世界で、弾が強姦されそうになったところを助けた少女。

その後、弾の父親が家族として迎え入れ、以後五反田家の一員になっている。

時を経て、彼女は弾に告白をするのだが、その後弾はこの世界に飛ばされてしまった。

 

「・・・今気にしていてもしかたない、か。」

 

胸の中のモヤモヤとした感情を振り払って、玄関のドアを開け、寮の食堂で待っているであろう楯無の元へ向かう。

 

―――――――――――――――――――――――

 

 

食堂で楯無と合流して、6人席に座る。

ちなみに寮にいるのは弾と数馬、そして誠二と正也、寮長兼厨房長とその娘さんだけであり、朝食や夕食は主にこの6人で取っている。

 

「おや、今日は随分と遅いじゃないか。」

「ええ、弾が遅くまで勉学に励んでいたもので。」

 

机にやって来たのは寮長兼厨房長である京塚さん。

元々は横浜の方で店を開いていたのだが、彩峰准将がいない寮長の代わりとして呼んだのだった。

 

「あら、そうかい。勤勉なことだね。」

「まぁ京塚さんの調理には適いませんよ。あの食材でどうやったらあそこまで美味しく作れるのかが分かりません。」

 

世界的に食料難な世界では、合成食料という科学性の物を料理に使用している。

つまり、遺伝子を組み合わせたりして作られたものだから、とにかく不味い。

そのとにかく不味い物を限界まで美味しくして見せたのが、京塚さんだ。

 

「知りたかったら、いつでも教えてあげるよ。まぁ、生半可の気持ちじゃあ付いて来られないからね!」

「ええ、承知しております・・・。が、その前にそろそろ食事を取らねば学校に遅れます。朝食の方は?」

「ああ、今持ってくるよ。」

 

京塚さんは調理場へ行き、皿に盛られた食事を持ってくる。どうやら、今日は鯖煮定食らしい。まぁ、もちろん合成が頭につくが。

京塚さんの手伝いをしているうちに、食堂入り口から二人やって来た。

 

「うい~っす、おはよーさん。」

「あぁ、クソねみぃ・・・」

 

片手を上げて挨拶してきたのは松田誠二だ、ちなみにもう片方の若干あくびをしながらやって来たのは元浜正也だった。

 

「よう、相変わらずの時間だな。」

「まぁな。ランニングから帰ってきてからここに来るのはこんぐらいになるからな。」

「ランニングって・・・お前ら4時起きだろ?どこまで走っているんだよ。」

「「軽く西の湖あたりまで。」」

 

ちなみにここから西の湖までは30キロ以上ある。往復でも60キロは上回る計算になる。

それをこの二人は3時間から4時間で帰ってくるのだ、オリンピックでも出れば優勝できるんじゃないか?

そして今日の授業の中に戦術機訓練がある事を伝えようとしたら、奥の厨房から皿を両手に大量に持って楯無がやって来て、2人が来た事に気がついた。

 

「また走りに行っていたのか?なんともご苦労な事だな。」

「まぁな。今んところこれぐらいしかできないからな。戦術機に乗るんだったら体を鍛えておかないと不味いだろ?」

「といいつつ、座学の成績がまずいから実技で挽回しようとしているんだろ?」

「座学じゃねぇ、この国の歴史についてだ。」

 

ちなみにこの二人、座学では戦術などの分野ではそれなりの成績なんだが、歴史や現在の世界の情勢などはからっきし駄目で、それ以外の近接戦闘訓練などはほぼ1位と2位を守護している。ちなみにこの近接戦闘訓練は、時々教師も一緒になってやる事がたまにある。

だが訓練する相手は成績が5位から上位の生徒としか出来ない。理由はあるのだろうが、多分他人からの評価で浮かれているいずれ兵士になっていく子供に慢心をさせない事だろう。

戦場での慢心などは死に直結する事もある。それをさせないのが元軍人達の彼ら教師の役割でもある。だが、それでも慢心や油断は起きるものだが。

 

「それよりも飯だ、飯!まだなら手伝うぞ。」

「ああ、なら奥の厨房から持ってきてくれ。今日は鯖煮定食だ。」

「鯖煮か、おばちゃんのはかなり美味いからな、これは期待大だ。」

 

ちなみに彼らは京塚さんの事を『おばちゃん』と呼んでいる。まぁ京塚さんの雰囲気からして間違いではないが。ちなみに京塚さんの娘さんの事は『お嬢』と呼んでいるらしい。

俺はお嬢を呼んでくると言って、食堂から出て行った誠二を横目に、俺達は机の上に手早く載せていく。

 

食卓の上にたくさんの鯖煮定食が並んだところで、京塚さんはエプロンを付けたまま椅子に座っていた。

俺達も両側に空いている椅子に座っているうちに、誠二が肩車をしながらお嬢、雅美ちゃんを連れてきた。ちなみに手を繋ぎしながら。

 

「「手を繋いで・・・だと!?」」

「2人ともどうした?」

「「そして肩車、だと!?」」

「あんた達何にそんな驚いているんだい?ほら、アンタ達も早くしないと冷めちまうよ?」

 

俺達が驚いている事を放置して、京塚さんは雅美ちゃんと誠二を急かす、まぁ俺達も時間がないから早くしたい所だ。

 

「・・・・・・さっきの。」

「おう、分かっている。」

「ん?何の話だ?」

「気にすんな。つーか早くしねぇと教官に怒られるぜ?」

 

雅美ちゃんが誠二に何か言っていた気がするが・・・まぁいいか。

ちなみにうちの学校のほとんどの教師は帝国軍から出向してきた軍人がほとんどで、中には帝国大からやってくるのもいる。

んで、俺達は斯衛と違って甘く指導されるわけじゃない。どちらかというと、もはや軍の訓練学校に近しい所だ。つまり、教師は全員教官と言い換えられている。

ま、自宅から徒歩で来るあたりは学生だがな。

 

「さて、俺は先に行かせてもらうぞ?」

「げ、楯無の奴早すぎるだろ!」

「はいはい、食っちゃべってないでとっととしな!」

「「「うい~っす」」」

 

食べ終わって食器を片づけている楯無を横目に、俺達は食事を掻っ込む勢いで飯を食べる。

食い終わったと同時に、食器を洗い場に持って行って即座に洗い、布巾で皿を拭いて食器棚に戻す。

そして机に戻りカバンを手にして楯無の後を追う。

 

「行ってきます~」

「行ってくる」

「おばちゃん、夕飯多めに頼む!」

 

各々出かけの言葉を送る。一名ほど別の事を言っていたが。

 

「行ってらっしゃい!車には気をつけるんだよ!」

「・・・・行ってらっしゃい。」

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

同居人達が出かけて行ったのを確認した少女は、スタスタと母の元へ戻る。

 

「ほら、雅美も学校だろ?早くしな。」

 

少女と自分の分を片づけている母は、学生の娘を学校へ行く準備を急がせた。

既に少女は支度を整えているのだが、自分を余所に掃除をしている母に聞きたい事があった。

 

「・・・・・・母さん。」

「ん?なんだい?」

 

12歳になった少女だが、知らぬ事もあるものだ。つまり知らない事は聞かなくてはいけない、だが誰に?

そう、自分の母親以外に誰がいるだろうか。母であるが故に分かる内容、つまり・・・

 

「ケッコンって、何歳で出来るの?」

「・・・・・・・・・は?」

 

夫婦になる条件、だった。

 

京都府某中学校 1年3組

京塚雅美 12歳

 

15歳の元戦争屋に、恋をした。

 




どうも、光影陽炎です。
え~っと、まず京塚雅美ちゃんですが、オルタ漫画版で出てきましたので出しました!
なぜ12歳なのか、それはまりもちゃんが学生時代の時のみしか絵が無かったのでそこから推測しました。
何故出したか?それはあれです、戦争屋にもしも早い段階で妻が出来てしまったら?って事で正妻候補(?)を出しました。
内緒の約束については、近いうちに本編で。
では
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