昼寝を嫌がる丁に白澤はある提案を持ちかける。
それは、『ちゃんとお昼寝できたら森へ木の実を取に行く』というものだった。
白澤+丁で、のほほん小説です。
※白澤視点、時々丁視点。
あれ・・・?
何時の間に寝たんだろう?
あ、そうか。
丁を寝かしつけていて一緒に寝ちゃったんだ。
ん~
暖かくて気持ちいいな~
「・・・さま!」
ん・・・?
「はくたくさま!」
ああ、丁の声だ。
お昼寝から目覚めたんだね。
「起きてください、はくたくさま!」
丁の高めの声で意識が覚醒しはじめる。
「やあ、丁。もう起きたのかい?」
僕は身を起こして伸びをした。
「はい、早く木の実を採りにいきましょう?」
「そうだね。良い子でお昼寝できたから、約束通り連れてってあげるよ。」
僕は少し前にした丁との約束を思い出した。
昼寝のために寝室に連れて行ったところ、眠くないとぐずったので、
「お昼寝から起きたら、木の実を採りに森へ行こう」
と持ちかけた。
すると丁は嬉しそうに布団に入ったのだ。
全く純粋で可愛らしいものだ。
「さあ、行こうか」
「はい」
僕は丁の手を引いて家を出た。
しばらく歩いて、家からそう遠くない森へやってきた。
「わあ!」
丁は目を輝かせて走って行った。
あの子はこういった場所へはあまり来たことがないらしく、僕が色々なところへ連れて行く度に非常に新鮮で楽しそうな表情を見せてくれる。
それもそうか。
この子は僕に出会う前までは召使いとして一日中家に閉じ込められ働いていたのだ。
外で遊ぶ時間など与えられていなかっただろう。
なんてかわいそうな子だ・・・。
「おいで、丁。」
「はい!」
僕は笑顔で走り寄ってきた丁を抱き上げて森の中へ入っていった。
「丁、これがナツメっていう木の実だよ。」
ぼくはナツメを一つ採って丁に渡した。
「このまま食べるのですか?」
「このままでも食べられるけど、干したり煮たりした方がおいしいんだよ」
丁は初めて見るナツメをまじまじと見つめている。
「じゃあ、たくさん採って甘露煮にして明日のおやつにしようか」
「甘露煮好きです・・・」
丁は甘いものが好きらしく、甘露煮と聞いて嬉しそうに笑った。
「ふふふ・・・あ、あそこにたくさん生ってるから両手いぱいに採ってくれる?」
僕は丁を高く抱き上げて、実がたくさん生っている所へ近づけた。
「はい・・・あの、重くないですか?」
丁は心配そうに僕を振り返って声を掛けた。
「全然平気だよ。さあ、いっぱい採りな」
僕にそう言われ、丁は小さな手でナツメをどんどん採っていった。
「・・・・・・・?」
左腕に違和感を感じ、よく見たら切り傷があり、血が滲んでいた。
いつの間に・・・?
木が尖っている箇所で掠ったのかな?
痛みは全くない、気付かないくらいだからね。
でも、血が着物に付きそう・・・
ちゃちゃっと治しちゃうかな~
「丁、一度下ろすよ~」
僕は丁をそっと下ろした。
「はくたくさま!こんなに採れました!」
「たくさん採れたね~いくつある?」
「待ってください、数えますね!」
丁は両手に抱えていたナツメを籠に入れて、数を数えはじめた。
僕は丁がナツメに夢中になっている隙を見て、神気をほんの少し指先に溜めた。
よし・・・
着物の袖を捲って傷を露わにした。
うわ、結構深いな…
「はくたくさま!全部で・・・!」
丁が勢いよく顔を上げ僕を、いや、傷を見た。
しまった・・・
「はくたくさま!!どうされたんですか?!」
丁はナツメが入った籠をひっくり返して僕に駆け寄ってきた。
丁には血を見せまいと思っていたが、無理だった。
あの子は血相を変えて僕の傷を見た。
「こんなの平気だよ。」
「いけません!はやく薬を塗らないと・・・!」
丁は弾かれたように立ち上がり、さっき僕らが来た道を走って行った。
「丁!何処へ行くの?戻っておいで!!」
わたしはしばらく走って足を止めた。
「あった!」
そこには来るときに見つけたヨモギが茂っていた。
「これを揉んで貼って差し上げれば・・・」
ヨモギは傷薬になると書で読んだことがあった。
わたしはその場にしゃがみ込み、色の良いものを数枚選んでちぎって懐に入れた。
さあ、早く戻らなければ。
・・・丁は何処へ行ったのだろう。
道に迷っていたらどうしよう。
傷なんかよりも丁の行方の方が心配だ。
探しに行こう。
僕が腰を上げようとしたとき・・・
「はくたくさまー!!」
丁の声がした。
声のした方を見ると、丁がこちらへ走ってきた。
あんなに服を汚して、何をしていたのだろうか・・・
「丁・・・!良かった、心配したんだよ?」
僕は丁を抱き上げて膝の上に座らせた。
「ごめんなさい、はくたくさま・・・これを採りに行っていたのです・・・」
丁は少ししゅんとしながら懐からヨモギを出した。
「ヨモギ・・・?」
「はい・・・ヨモギは傷薬になるのでしょう?」
驚いたな・・・
ヨモギの効能を知っていたなんて。
「そうだよ、よく知ってるね。」
僕は感心して丁の頭を撫でた。
「ふふふ・・・お前は賢い子だね。」
「・・・前に、書で読みました・・・」
丁は頭を撫でられたことが恥ずかしかったのか、俯いてしまった。
そのままヨモギを両手でくしゃくしゃと揉み、平たく伸ばした。
「失礼します。」
そして僕の着物の裾を捲って傷を露わにさせた。
「・・・痛いですか?」
「うん、痛いよ。でも、丁が手当してくれているからすぐ治っちゃうよ」
本当はこれっぽちも痛くない。
でも、丁の優しさを無には出来なくて嘘を吐いた。
「・・・はやく良くなってください・・・」
丁は祈るようにそう言って、ヨモギを僕の傷に貼った。
「ありがとう。きっとすぐ良くなるよ。」
神気で治してしまわなくて本当に良かった。
「さあ、そろそろ帰ろうか。」
「はい!」
僕は丁の手を繋いで家へ向かって歩き出した。
「そういえば、ナツメは全部でいくつあったんだい?」
「22です!」
丁は手に持っているナツメが入っている籠を見てそう答えた。
「お~たくさん採れたね」
僕は満足そうに笑う丁を見て目を細めた。
今日は良い一日だったな。
終