とある花弁の無限迷路《ラビリンス》【完結】   作:ちひろん

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 今回から、1話ごとが少し短くなります。
 では、よろしくお願いします。


一方通行

 初春飾利は所属する風紀委員《ジャッジメント》の支部、第一七七支部からの帰り道を一人歩いていた。

 風紀委員《ジャッジメント》とは生徒によって構成される治安維持機関である。生徒で構成されるため、治安維持とはいうものの、重要な、危険な任務につくことは少ない。そういった類ものは、教師によって構成された警備員《アンチスキル》が対応することになる。

 完全下校時刻を過ぎたため、風紀委員《ジャッジメント》の業務は終了となった。

 空は赤から黒へ色を変えようとしている。

 

 「はぁ」

 

 初春は、溜息を漏らす。

 それは、友達である佐天涙子との、最近の交流について思うところがあったためだ。

 

 いつもはことあるごとに、佐天が初春に声をかけていた為、特に気にすることなく一緒に居ることが多かった。

 だが、最近は佐天が用事があるとのことで、意識していないと一緒に居れないことが多くなっていた。

 

 初春も四六時中一緒に居たいわけではないが、隣いた友達が少し遠くなったようで、ほんの少しだけ寂しかった。

 

 だが、その寂しさよりも、安堵の気持ちが強いことに、初春は心を痛めていた。

 

 『嫌いなわけないんだけど』

 

 嫌いなわけがない。だが、初春は佐天と話せないことに、どこか安心していた。

 佐天はいい意味で変わっていた。明るくなり、どこか卑屈めいたような言動は無くなった。

 一緒にいて嫌な気持ちになることなどない。

 

 けれど、どこか違っていた。

 どこか、『怖い』と感じていた。

 あの笑顔が怖いと。

 

 飢餓に苦しむ人々を移すテレビを見ても、ファミリーレストランで大声を上げる迷惑な客が居ても、コンビニエンスストアでぶっきらぼうな店員に対応された時も、初春と話している時も、いつも笑顔であった。

 

 すべて同じ笑顔だった。

 

 それが、初春は怖かった。

 

 「はぁ」

 

 初春はまた溜息をつく。

 友達にこんな感情を持ってはいけないと、頭を振る。そして、両手を握りしめる。

 

 「よし!」

 

 初春は声を出して自分に気合いをいれる。明日、何かあったのか、佐天に聞くと決めた。

 

 と、何かをひっくり返したような音が聞こえた。

 音は、ビルとビルの隙間の路地裏から聞こえた。

 嫌な予感しかしない気持ちを抑えながら、初春は恐る恐る顔を覗かせる。

 

 そこには、杖をついた白髪の華奢な男が、行き止まりの壁を背に立っていた。そして、大柄な強面の四人の男が出口である初春側を塞ぐように立っていた。白髪の男の逃げ場はなかった。

 

 明らかに恐喝行為の現場である。

 初春は生唾を飲み込む。

 

 『アンチスキルに連絡しないと』

 

 初春は通信機器を取り出して、すぐさま連絡をいれる。

 だが、連絡を入れればすぐに現場に来るわけではない。到着まで時間稼ぎをする必要がある。

 荒事に得意な風紀委員《ジャッジメント》の友達の顔も浮かんだが、わざわざ友達を危険なことに巻き込むわけには行かないと、その考えを却下する。

 

 初春は、二の足を踏む。直ぐにでも飛び出すべきだという気持ちに、心が追いつかない。

 

 だが、初春も風紀委員《ジャッジメント》だ。経験が無いわけではない。警備員《アンチスキル》が来るまでの単なる足止めだと、自分に言い聞かせ、数瞬後、路地裏の入り口に飛び出し、盾のマークの腕章を相手に見えるように引っ張った。

 そして、

 

 「ジャッジ、メント、です」

 

 風紀委員《ジャッジメント》だと叫ぼうとした言葉は、しりすぼみに小さくなり、目の前の光景に唖然とする。

 

 大柄な男の四人は、その場に倒れ、白髪の男は、何もなかったかのように、悠然と立っていた。

 

 スイッチを切るような、乾いた音がした。初春は、音の方へ白髪の男に注目する。

 

 白髪の男は、その視線に気づいたのか、初春に目を向け、酷く不機嫌そうに目を細めた。




 多分、目安として、12話前後で終わるのではないかと思います。
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