久々の更新です。
白髪の男は、しばらく初春を見つめたあと、初春の居る出口に向かって歩き始めた。
初春は、身構える。ほんの一瞬の迷いのせいで、何が起こったかは分からなかったが、目の前の男が何かしたことは明白だった。
そうして男は初春の目の前に迫らずに、そのまま初春の横を素通りした。
「ちょ、ちょっと!」
男は立ち止まり、首を傾けて、目線だけを初春に向ける。
「あなた、これどうやったんですか?!」
初春はほぼ確信をもって尋ねた。
あの路地裏には、初春とこの男しか居なかった。初春でないなら、可能性は一つしかない。
だが、男はそれを否定した。
「オマエだろ?」
「はい?」
初春が何もしていないことは、初春が一番分かっていた。
「オレじゃなきゃ、オマエだろ?」
暴論。だが、その暴論は先程から初春もそう考えた。
「こんな華奢なオレにできるわけねェだろ」
「はぁ、いや、でも」
「ジャッジメントのお陰で助かったぜ。じゃあな」
男はそういうと、路地裏から、大通りへ歩を進める。
今の一言を信用できるわけがないと、初春は思った。しかし、男が何かしたであろう場面を見ていたわけでないことも確かである。男の言うことを否定できない。
あの状況を、あの男がしていなかったとして、他の誰かがやった可能性はあるだろうかと、初春は思案する。
可能性がないわけではない。ここは念動力や瞬間移動といった超能力の開発を目的とした街だ。不思議な現象はいくらでも存在する。
だが、あの袋小路の中で、あの状況を作り出せる能力は限られるだろう。その能力者が、運良く犯罪行為の現場を確認することがあるだろうか。ないとは言えないが、それはかなり低い確率であろうことは想像に難くない。
初春は、やはりあの白髪の男が怪しいと踏んだ。なにより華奢であることなどは、この街ではあまり関係がないのだ。そう思って振り向くと、男の姿はそこにはなく、既に大通りの先の方におり、杖をつきながら歩いていた。
「ちょっと!」
初春は声をかけながら、駆け寄る。
男はその様子を、気だるそうに振り向きながら確認すると、まるで何も見なかったかのように歩き始めた。
「だから!」
初春はそういいつつ、男の前に飛び出す。
「ちょっと待ってください!」
男は立ち止まって、ため息をつく。そうして、黙って初春を見て言った。
「仮によォ、俺がやったとして、なんか問題でもあんのかァ?」
「え?」
「囲まれて殴られて、ヘラヘラ笑ってりゃあよかったってことかァ?」
「い、いえ、そんなことは」
初春は思案する。なぜ、問い詰めているのかを。状況からして、白髪の男に非がないことは明らかだった。
さらにいえば、倒れていた男たちも、ざっと確認した限りでは特に重症を負っているようにも見えなかった。
なぜ、問い詰める必要があるのか、それは初春自体も理解していなかった。もしかしたら、単なる好奇心かも知れなかった。
それに気づいた初春は、口をつぐんだ。
と、そこに突然声をかけられた
「あれ? そこにいるのは、アクセラさんじゃないですか」
初春が振り返ったその先にいたのは、初春の友達で、少しばかり疎遠になっている、佐天涙子だった。
少し、時間が取れそうなので、少しずつアップしていきます。