書き溜めすればいいんですが、せっかくなので、アップしていきます。
白髪の男は、佐天を見ると顔をしかめた。
「アクセラさん、お久しぶりです!」
「あァ」
佐天のその言葉に、男は短く返事をすると、目を細める。
その様子は決して友好的とは思えない。
「俺は約束は破ってねェぞ」
その言葉に佐天は慌てて顔と手を振って、笑う。初春が最近よく見る、いつもの笑顔だ。
「ああ、違います、違います。それはもちろん分かってますよ。そうじゃなくて」
佐天は初春に目線を合わせ、唇の端を上げる。その様子を見て、男は佐天と初春を見る。
「お前ら知り合いか?」
「はい」
佐天はその問いを肯定する。
男は気だるそうに俯いて、ため息をつく。
「知るかよ、そんなこと」
「まあ、そうですよね。なので、先に言っとこうと思いまして」
佐天は、その笑顔を酷く歪めた。
「後で、もめるのも嫌でしょう?」
男は俯いたまま、目線を佐天に向ける。自然とその目つきは睨みつけるような形になる。
いや、その様子から察するに、睨みつけていると考えるのが正しい。
「まァな」
男はそのまま長くため息をつくと、気だるそうに顔を上げて、しばらく佐天と初春を見比べた。
そして、顎で初春を指す。
「じゃあ、こいつはお前が連れて帰れよ」
「いやあ、友達の恋路を邪魔する趣味はないんで」
「あァ?」
男と佐天は、初春を見る。
「え?」
初春はいきなりの展開についていけない。
「え? え? い、いやいや、違いますよ、佐天さん! 私はちょっと気になっただけで!」
佐天は嬉しそうに破顔する。
「んー? いやいや、恋の最初はそんなもんなんだよ、ういはるー?」
「ち、違いますって!」
楽しそうに言い合いをしている佐天と初春を尻目に、男は杖をついて、歩き始めた。
初春は男が歩き始めたことに少し後に気がついて、慌てて追いかけようとする。
「佐天さん! 違いますからね! 本当ですからね! 変な噂流さないでくださいね!」
初春はそう言いながら、男の後を追いかける。その様子を佐天は生暖かい目を眺めていた。
初春は男にようやく追いつくと、後ろから話しかける。
「ちょっと待ってくださいよ。少しだけ話を…」
「お前、あいつとどんな関係だ?」
男は歩みも止めず、振り返りもせずに問う。抑揚のない声だ。初春も歩きながら答える
「えっと、はい。友達、です」
「よくあんなのと付き合えるな」
「あ、あんなのって! 佐天さんは明るくて、優しくて、どこか安心できて、他人のために頑張れる人で…! 私は、だい、すきで…」
初春の語尾はしりすぼみになった。
初春の知っていた佐天を、二人で何も考えずに笑いあえていた頃を思い出して喋ったが、次第に今の佐天を思い、その昔との違和感につい黙り込み、立ち止まってしまった。
男は後ろの足音が聞こえなくなったことに気づいたのが、初春が止まった少し先に立ち止まり、振り返った。
「その様子を見ると、あいつがああなったのは、最近のことみてェだなァ」
初春は体を震わせる。
「最近…?」
「あァ、あれはもう駄目だ。何が原因か知らねェがな。早めに離れたほうがいいぜ」
男の言葉を、初春は否定できなかった。
「じゃあな」
男は何事もなかったように歩き始めた。
初春はその男の後ろ姿を、黙って眺めていた。