インフィニット・ストラトス・アストレイ   作:ichika

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最終回其ノ2 終わりなき旅路へ

side一夏

 

―一夏―

 

誰かに呼ばれた様な気がした・・・。

 

何処か懐かしく、そして優しい声だった・・・。

 

そうだ・・・、この声は・・・。

 

ゆっくりと目を開くと、

俺はいつぞやの白い空間にただ独り立っていた。

 

見渡す限り、何処までも白い空間が続いているようにも見えるし、すぐ手前に壁があるいう風にも見える。

 

この場所に俺がいると言うことは、

アイツが俺を呼び寄せたとしか考えられない。

 

「また何か用があるのか?女神?」

 

振り返りながら尋ねてみると、

俺の背後に純白の翼を広げた女神が立っていた。

 

やっぱ、あぁ言う風に羽根を広げてると神なんだなと納得してしまうな。

 

「ふふ~ん♪やっぱり察しが良いねぇ、一夏は♪」

 

「分かるさ、こんな所にいるなら、な?」

 

そうだ、女神が俺に用がなければ、

昔、転生する前にいた空間になんて呼ばれる筈も無い。

 

そう感じたからこそ、俺は女神に尋ねたと言う訳だ。

 

「うん、一つはお礼を言うために呼んだんだ、

私のお願い、聞いてくれてありがとう、

君のお陰であの世界は少しずつ綺麗になってるよ。」

 

「そうか・・・、それなら俺がやったことも、無意味じゃなかったんだな・・・。」

 

それだけで、俺の中にずっと渦巻いていた何かが、

少しだけ軽くなるような気がした。

 

俺はずっと自分を偽ってきた、

不要な殺人などあまりしたくなかったし、

何より、セシリアとシャルにまで罪を着せなければならなかった自分が嫌だったからな・・・。

 

「うん、本当に助かったよ、君がいなかったら、

あの世界は砕けて無くなってたからね。」

 

「そんな事は最終手段、アンタが手を下さない限りは無いだろう?」

 

「まぁ、そうなんだけどね~。」

 

そんな事だろうと思ってたさ、

神が創ったモノは、神の手によってでしか壊せない、

俺はそれを本能的に感じただけなんだろうな。

 

「で?礼を言うためだけに俺の魂をここに連れてきた訳じゃ無いだろ?聞いてやるから話せよ。」

 

女神の事だ、俺を呼び出すにはもっと深い訳が在ると予測出来る。

 

まぁ、礼だけ言われて後は地獄行きとかは勘弁してほしい、

どうせ行くなら最初からあっちへ飛ばしてくれた方が幾分気は楽だ。

 

「うん、やっぱり君は察しが良いね、

だから私も信頼して事を頼めたよ。」

 

女神は優しげに微笑みながらも、言葉を紡いでいく。

 

「実はさ、天界の方で人手が足りなくなっちゃって、一夏にも手伝って欲しいんだよね、まぁ、人じゃ無いんだけどさ。」

 

「おい、何をさらっと重大発言してんだこの駄女神、

んな事を人間風情に頼っていいのかよ。」

 

流石に俺にも手が剰るだろそれは。

 

いくら転生者とは言っても、それは所詮肉体能力を底上げされただけの事だ。

 

正直言ってしまえば、神に勝てる確率など0に近い、

存在そのものを消されてしまえばそれまでだしな。

 

「人間だったなら、君には頼まないよ、

でもね、君はもう既に人間じゃ無くなったんだ。」

 

「俺に神の使いにでもなれと?冗談は止してくれ、

俺は何千人も殺してきた、そんな奴に務まる事じゃねぇよ。」

 

そうだ、俺は数多くの人間の命を奪ってきた、

神にとっては些細な事だろうが、俺にとっては軽いモノじゃ無い。

 

「分かってるよ、私達と君達じゃ命の重みが違ってるって事はね、でもさ、これは見方を変えれば君は贖罪の為に新しい命を生きる事になるんじゃ無いかな?

罪は死ぬことだけじゃ償えない、君にも分かってるでしょ?」

 

「ちっ、何処までもお見通しかよ、

あぁ、その通りだ、俺はそうやって生きていく事が贖罪になるんだろうな。」

 

それは分かってる、だが、俺の中の何かがそれに対して待ったをかけている。

 

そうだ、俺は独りでその道に進むのが怖いんだ、

人を殺せたのも、セシリアとシャルに精神的に支えてもらっていたからこそだ。

 

「分かった、一つだけ俺からも頼み事がある、

それだけ聞いてくれたら慎んで手伝わせてもらう。」

 

「何かな?私に出来る事ならなんだってしてあげるよ?

力が欲しいの?それとも?」

 

女神め、本当に俺の心を読めているのか?

いや、それともわざとこちらを試す様な事を言っているのか?

 

俺は神じゃない、相手の心の内側を読みきるなんざ不可能だ。

 

それこそ、読心術の類いを使っても、分かるのはほんの一握りの事だけ。

 

それは良い、今はそんなことを考えている場合じゃない、

恐らく彼女は、俺の出方を試したいんだろう。

 

そう考えれば、俺の言える事はただひとつだけだ。

 

「セシリアとシャルを、俺の隣にいた女達を、俺と共にアンタの下に置いてくれ、それ以上は何も望まない。」

 

「理由を聞かせてくれないかな?」

 

「彼女達が俺を支えてくれなければ、俺はアンタに任された事を完遂出来なかった、

そうさ、俺は独りだったら戦えなかった、

だから、これからも二人に支えてもらいながら、生きていきたいんだ。」

 

俺はセシリアとシャルが隣に立って、

笑ってくれているからこそ戦えたんだ。

 

どれ程無謀な行為をやろうとも、どれ程邪な道に進もうが、彼女達が着いてきてくれたからこそ俺は躊躇なく進めたんだ。

 

これから先、彼女達が俺の隣にいてくれなければ、

俺は歩いていく事は出来なくなるだろう。

 

「君って、本当に欲が無いねぇ、

手の届く範囲で済ませるなんて、良いことだと思うよ、そんな君だから私は信頼出来るんだ。」

 

俺の言葉に女神は深く頷きながらも微笑み、

俺の後ろ、正確にはその更に向こう側を指さした。

 

「あっちの方に、強い魂の気配があるよ、

早く連れてきてあげなよ、私はここで待ってるからさ。」

 

「恩に着る、すぐに戻る。」

 

有り難い、場所まで教えてくれるとはな。

 

たとえその場所が地獄だったとしても、

セシリアとシャルは俺の隣に立たせて戻ってやるぜ。

 

居ても立ってもいられなくなり、

俺は女神に一礼し、その方角に向けて走り出した。

 

セシリア、シャル、待っていてくれ、今迎えに行くからな。

 

sideout

 

noside

 

何処までも続く白い空間に、

セシリアとシャルロットは佇んでいた。

 

「また、ここですのね・・・。」

 

「うん、あの時は錯覚かと思ってたけど、

どうやら今回は冗談抜きみたいだね。」

 

何処か諦めたかの様に、二人は顔を見合わせてため息を吐いた。

 

何故彼女達はこの空間に驚きもしないのか?

それには理由があり、彼女達は一度、この空間に来たことがあった。

 

その時は死んだという実感はなかったのだが、

今回は各々が死を覚悟し、意識を途絶えさせたという実感があったからこそ、彼女達は特に驚く事もなかったのだ。

 

「こっちでもセシリアに会えて嬉しいな♪

やっぱり独りぼっちは寂しいからね。」

 

「約束したではありませんか、

何時までも三人で一つですとね♪」

 

気を取り直したのか、二人は微笑みあいながら手を取り合った。

 

共に修羅場を何度も経験し、

同じ男に愛されたが故の友情が彼女達を強く結び付けているのだ。

 

「一夏様は、どうされたのでしょうか・・・。」

 

「分からないよ・・・、僕達の方が早くこっちに来ちゃった事は確かだろうけどね・・・。」

 

自分達が死んでから一体何れ程の時が流れただろうか?

 

一日?一週間?一月?一年?それとも・・・?

 

彼はどうなったのだろうか?

自分達と同じくここに来ているのか?

それとも生き残ってしまったのか・・・。

 

「僕達はもう・・・、一夏と会えないのかな・・・?」

 

「会えますわ・・・、ここで待ち続けていれば、

必ずや一夏様が見付けてくださりますわ。」

 

不安げな表情を浮かべるシャルロットに、

セシリアは優しく諭しながらも、心の内側では正直言って、不安に押し潰されそうになっていた。

 

彼が死んでいるのかも、生きているのも分からぬまま待ち続けていたとしても、

一体何れ程の時間を待てば良いのかも分からない。

 

そんな不安が彼女達の内に生まれた、まさにその時だった。

 

「・・・?今、誰か僕達を呼ばなかった?」

 

「確かに・・・、幻聴ではないですわね・・・。」

 

二人同時に、自分達の名を呼ぶ声を耳にした。

 

幻聴かと思ったが、そうではないと理解したため、

二人はよく耳をすませた。

 

―・・・リア、シャ・・・―

 

「この声は・・・!」

 

「うん・・・!」

 

声の主を思い浮かべた彼女達の表情が、

パッと華やいだ。

 

そう、何度も耳にし、その言葉に救われ続けた声だからだ。

 

―セシリア!シャル!―

 

「一夏様!」

 

「一夏!!」

 

今度こそ、ハッキリと聞こえた声に、

セシリアとシャルロットは歓喜の声を上げた。

 

白い空間の一点より、

彼女達が愛した男、織斑一夏が姿を現す。

 

「セシリア!シャル!」

 

「一夏様!」

 

「一夏!!」

 

互いの姿を認めた三人は、

互いに向けて走り、抱き合った。

 

互いの温もりを感じあうかの様に、

きつく、きつく抱き合った。

 

「セシリア・・・、シャル・・・、お前達まで道連れにしてしまったな・・・、こんな不甲斐ない俺を許してくれ・・・。」

 

二人を抱き締めながらも、彼は愛しげに詫びた。

 

「良いのです、一夏様・・・、

貴方様は私達を愛してくださりました・・・。」

 

「貴方に着いていく事が僕達の幸せなんだ、

後悔なんてしてないよ。」

 

彼女達は彼の詫びに対し、

涙を滲ませながらも微笑んだ。

 

もう一度会えた、ただそれだけが嬉しいのだと言うかの様に・・・。

 

「まだ俺に愛想を尽かして無いなら、

これから先も俺に着いて来てくれないか・・・?

俺はお前達がいてくれないと駄目なんだ・・・。」

 

そんな彼女達の様子を見ながらも、

彼はプロポーズをするかの様に訪ねる。

 

言葉自体に強制力はなく、

だだ、着いてきて欲しいと言う気持ちだけが籠っていた。

 

「はい、貴方様の隣に立つことが私達の喜び。」

 

「それが永遠の運命だったでしょ?」

 

それは愚問だと言うように、彼女達は大輪に咲き誇る薔薇の様に笑い、彼に着いていく事を望む。

 

たとえそれが、永遠に続く終わりない旅だとしても、

死さえ許されない過酷な道であろうとも、

彼女達は彼と共に在り続けたいと願う。

 

あの日、海岸での誓いを護り続け、

三人で歩くために。

 

「ならば行こう、三人でな。」

 

「はい♪」

 

「うん♪」

 

満面の笑みで微笑むセシリアとシャルロットに腕を差し出して掴まらせ、

彼はゆっくりとだが、しっかりとした足取りで歩き始める。

 

迷うことは何もない、俺達三人なら何が起きようとも乗り越えられる。

 

そんな力強さが見てとれた。

 

彼等の姿は光の中に消え、後には無音の空間のみが残った・・・。

 

 

ここに、世界を変えた英雄は、新たな旅へと赴いた。

 

誰も知らぬ場所を見るために、

そして、自らが殺めた者達への贖罪の為にも・・・。

 

sideout

 




インフィニット・ストラトス・アストレイ、
めでたく完結させる事が出来ました。

これも一重に皆様の御声援のお陰です、
稚拙な作品でしたが、約一年間、応援してくださってありがとうございました。

次の作品を何時書くのかはまだ決めておりませんが、
何か書ければまた投稿したいと思います。

それでは、また何時の日にか~。
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