もし仗助が3部にいたら?   作:しろた

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スキューバダイビングをしよう!2

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「承太郎、仗助!お前たちも早く部屋から出ろ!この部屋を封鎖・・・ッ!!」

 

握ったドアの取っ手から、ハイプリエステスの鋭い爪をもった腕が伸び、アヴドゥルの声が途切れた。その爪先がアヴドゥルの首筋に伸びるよりも早く、スタープラチナがハイプリエステスを捕まえて両手で握りしめる。

 

そのまま首を引きちぎれ、というポルナレフの言葉通りにスタンドの手に力を込める承太郎。ベキベキという音とともに血が滴り落ちるが、その血は敵のものではなかった。手の内で圧壊される前に、剃刀に変化していたハイプリエステスがスタープラチナの掌をズタズタに引き裂いたのだ。

 

うきゃきゃきゃ、と子供のような動物のような無邪気さすら感じさせる笑い声を立て、剃刀がひとりでにスタープラチナの手から離れて行く。

 

「やれッ!」

「どらぁッ!!」

 

承太郎が声を発するのと同時に、剃刀周辺に砕かれたガラス片がまとわりつき、元の瓶の形に戻る。ボトルシップのように内部に剃刀を閉じ込めたコーラの瓶が、重力に従って着水する様を見届けることなく、彼らはドアを閉め、脱出用ハッチのある部屋へと急いだ。

 

「厄介っスね。」

「俺らが脱出するまで足止めができればそれでいい。」

 

潜水艦に穴を開けたり、ジョセフの義手を切断できるほど硬い刃にも化けることができるのだから、ガラス瓶に閉じ込めた程度でどれくらいの時間かせぎができるのか、はなはだ疑問が残る。

それでも狭い瓶の中では多少動きが阻害されるであろうし、小さいままでは瓶に穴を開けて出てくるにも少しは手間取るはず。

 

脱出する彼らを、ハイプリエステスは必ず追ってくるに違いない。それが海中であれ上陸後であれ、こんな海の底に沈んだ棺桶のような場所よりも自由がきく。なら、次に会った時が百年目、だ。

 

部屋を出て、脱出用の小部屋に到達した彼らは、ジョセフから簡単にスキューバのレクチャーを受け、海中へと泳ぎ出した。

 

 

 

背後に気を配りながら、着々とエジプトの海岸まで近付いて行く一行。

水深7メートルとなったところで、前方にアヴドゥルが海底トンネルを見つけた。

岩伝いに泳いで上陸しようと、彼らが海底トンネルに接近したその時、真下の岩がばっくりと割れ、岩の裂け目から急激な海流が巻き起こる。

 

もちろんこれは突発的な自然現象ではなく、ハイプリエステスの能力。

為すすべもなく海流に浚われ口内へ飲み込まれていくジョセフたちの姿を嘲笑しながら、スタンドの念話で親切にも能力や本体の位置の説明をし出した。

いくら情報を開示したとて、スタンドですり潰される運命の彼らには関係の無い話だとも。

 

 

「ここは・・・歯があるな、まだ口の中か。」

「そのまま奥まで飲みこまれなかったのは僥倖じゃが・・・。」

 

海水は喉奥へ排水されており、この空間内には空気がある。だがそれが何だと言うのだ。彼らの入ってきた方向は歯でかっちりと閉ざされ、逆に体内に続く奥には巨大な舌が控えている。

 

思いつく脱出路は3か所。

一つ目、体内の迷路を辿り、下から出て行く。

これは却下だ。このスタンドがいくら人間に近い構造を持っていたとしても、下に出口があるとは限らないし、出口に行く前に消化されかねない。何よりも心情的に遠慮したい。

 

二つ目、鼻から出て行く。

海中で発見した海底トンネルは、今思えばハイプリエステスの巨大な鼻だった。鼻であれば口と繋がっているから、喉を通ればそのまま外へ出られる公算はある。

問題は喉の前で立ちはだかる舌と、それをどうにかしても、再び海流が押し寄せてきてしまえば身体の奥へまっさかさま、という点だ。

 

(そして三つ目は・・・。)

 

ジョセフが前方の歯を見やる。と同時に、ふたたびハイプリエステスの念話が響きだした。

 

スタンド本体はやはり女性らしく、好みのタイプだという承太郎を殺すのを残念がっているが、それでもDIOへの愛情か忠誠心かが勝っているようだ。

 

ポルナレフが承太郎に何かを耳打ちし、やれやれといった風に承太郎が、女性に気を持たせるような台詞を吐く。承太郎の言葉にぽっと口内が赤らんだのを見て、これはイケるかもしれないと続いてポルナレフ達も少ない情報からなんとか褒められそうな部分を探して口説き文句を述べていった。

 

「高根の花ってやつ?是非ともお近づきになりてぇーなー。」

 

だがしかし、かなり無理やりな口説き文句の連発と、最後の仗助の棒読み加減でついに堪忍袋の緒が切れてしまったか、ハイプリエステスがぶっ殺す、と大きな舌を差し向けて来た。

 

「ガァッ!」

「ガフッ!」

 

最も舌近くに居た仗助と承太郎が背後からの襲撃を受け、別方向に吹っ飛ばされていく。

二人の身体は、左右の奥歯に投げ出された。

まな板の上に置かれた鯉のように突っ伏す承太郎と仗助を歯に乗せたまま、上あごと下あごの距離が近づく。

 

かろうじてハイエロファントグリーンの展開が間にあい、舌の攻撃を避けられた4人が、再び迫りくる舌へ猛攻を仕掛ける。痛みは感じるのか、攻撃を受け舌は喉の奥に縮こまるが、それも相手の時間稼ぎだったのだろう、舌に関係なく、無情にも上下の歯は噛み合わされていく。

 

「承太郎ッ!仗助ッ!!」

「クソッ!間にあわんッ!!」

 

スタンドを展開して歯に抵抗する二人をあざ笑うかのように、声が意気揚々と告げる。この歯はダイヤモンド並みの硬度を誇り、砕くことは不可能だと。

 

押しつぶされないようスタンドで歯を支えていた二人の目があう。

承太郎が仗助に向かってひとつのジェスチャーをし、それを見た仗助がうなづいた。

が、次の瞬間にはハイプリエステスの奥歯はすき間もないほど奇麗に合わさり、圧力に屈した酸素ボンベが盛大に爆発した。

 

二人の身を案じる一同に、障壁を隔てた向こうから小さく、しかし段々と力強く「声」が聞こえる。

 

「オラオラオラオラオラ」

「ドラララララララララ」

 

バキンという音とともに奥歯が粉々に砕け散り、それぞれの歯の残骸から承太郎と仗助が現れた。

 

「このまま外へ脱出するぜ。準備しておけ。」

 

そう承太郎がジョセフたちに声をかける間にも、競い合うようにスタンドは次々に他の歯を砕いて行く。

 

「オラァッ!!」

「ドラァッ!!」

 

最後の前歯にスタープラチナとクレイジーダイヤモンドの二つのコブシがさく裂し、ビキビキとガラス細工のようにひび割れていく。

ダブルラッシュに耐えきれず、歯の向こうで閉ざされていたスタンドの唇が開き、海中へ血と歯をまき散らした。

 

吐きだされる空気と一緒に海中へと帰還したジョセフたちの中で、承太郎と仗助がハイプリエステスへと振り返る。

 

「悪いが俺は大和撫子が好みのタイプなんでな。」

「ダイヤモンドは砕けねぇからダイヤモンドなんだぜ。」

 

 

なんとか、エジプトの海岸に上がった一行。海岸に点在する岩場の影にはハイプリエステスの本体、ミドラーと思しき女性が倒れていた。ミドラーの顔を拝みに行ったポルナレフが、再起不能な様子の女性の顔を見て早々に引き返してくる。

 

「ようやく、ここまでこれましたね。」

「飛行機なら一日で着くところを、28日もかかってしまったわい。」

「旅に出た当初は、まさか人体や夢の中でまで戦うはめになるとは思いませんでしたが。」

「幽霊にも会ったしな。誰かのおかげで!」

「3週間もありゃあDIOの野郎をぶっ飛ばしておつりがくるぜ。」

 

「行くぜ。」

 

朝日を背に、承太郎が終着の地へと一歩を踏み出した。

 




なんとかエジプトまでこれました!
読んで下さっている方々に感謝を。
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