タイトル通り、X第五話で登場したゼロがリリゼロ世界の彼だったら? なネタ込み短編です。

さすがに二枚目ばかりじゃ他の世界のゼロたちにぶーぶー言われそうなので、ギャグ要素も入ってます。


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もしもX客演のゼロが勇夜だったら――

 

その1

 

「じゃあここからルイを――」

「残念だが大地、我々にはまだ次元を越える術がない」

 

エリア―T9Cにて。

 

「そうしけた面するなよ」

 

 すると二人の背後から、二人に声を掛ける者が一人。

 

「あんたたちがこの世界のウルトラマンだな?」

「君は……」

 

 

 長い黒髪を耳と平行になる高さで縛った見慣れない青年……いや少年だった。

 

「大地、彼はさっき次元転移してきたウルトラマンだ」

「え?」

「俺はゼロ――ウルトラマンゼロだ、この姿の時は諸星勇夜って呼んでくれ」

「この姿って……どう見ても……地球人にしか見えないけど」

「今の彼は自らの肉体を、地球人と同質の姿形に変質させているんだ」

「そういうこと」

 

 勇夜はこちらの世界に来た経緯を話し始める。

 

「最近スパークドールズを高値で闇取引しやがる連中が多くてな、あのナックル星人バンデロもその一人な武器商人で、俺はそいつを追ってたのさ、さっきは逃げられちまったが……ここの特異点を伝って来た通信電波のお蔭で、今奴は惑星ギレルモにいることが分かった、中々逞しいお仲間じゃねえか」

「ルイが……逞しい?」

「通信が来たってことは、自力でバンデロたちから振り切れたってことだろ? 」

「あ、確かに」

「助かったぜ、ありがとな」

「待って!」

 

 背を向けた勇夜を、大地が呼び止める。

 

「その惑星ギレルモへ連れてってくれ! ルイを……仲間を助けたいんだ!」

「気持ちがありがたいが………二万年は早えよ」

 

 双眸に厳しさを帯びた勇夜は、大地の気持ちを理解した上で申し出を断った。

 

「どうして?」

「気持ちが先走ってる状態で勝てるほどナックル星人とブラックキングは甘くねえ、俺の先輩も昔、奴らの策略で冷静さを失い、一度ボロ負けして磔にされたことがある、それにあんたらが留守の間に、他のスパークドールズの怪獣が実体化する可能性だってないわけじゃねえんだぞ」

「でも……このままじっと待ってるなんて、俺には……」

 

 そっと勇夜は大地の肩に手を置いた。

 

「心配するな大地、あんたの仲間と友達は、必ず連れ戻してやる」

「友達って?」

「〝怪獣たち〟に決まってるだろ?」

 

 微笑みながら勇夜はそう答え。

 

「まあ、もう暫く相棒――エックスを休ませておけ」

 

 今度こそ惑星ギレルモへ向かうべく、シュッと手を振ってその場を後にする。

 

『(マスター、なぜ彼とスパークドールズの関係性を見抜いたのですか?)』

「(なんとなく、ムサシと同じ感じがしたからさ―――さあいくぜ)」

『(はい、マスター)』

 

大地たちから距離を取った勇夜は、リンク――ウルティメイトブレスレットがはめられた左腕を伸ばすと、ウルトラゼロアイを取り出して手に取り。

 

「デュワ!」

 

 額に装着し、ゼロアイから迸る光に全身を包まれると、そのまま飛翔、上昇しながら本来の姿――ウルトラマンゼロとなり、瞬く間に大気圏を突破していった。

 

その2

 

 バンデロとブラックキングの二体を同時に相手にする状況ながら、ゼロはむしろ善戦していた。

 

「どこを狙ってる? こっちだ!」

 

 ブラックキングの尾の一閃を後転で回避し、挑発する一方、油断せぬようゼロは注意を心がけていた。

 相手は、ジャック――郷秀樹の精神を乱すために恋人を平気でひき逃げしやがった狡猾で外道なナックル星人……どんな悪辣な手を使うか分からない。

 

「ん?」

 

 反撃のチャンスを窺っている最中、橙の空に、自身が次元転移する際と同じワームホールが開き。

 

「なっ―――イージス!?」

 

 そこからウルティメイトイージスを身に纏ったウルトラマンエックスが出てきた。

 

『(マスター、二度見しなくとも私はちゃんとここにいます)』

「(あ、すまねえ)」

 

 ちゃんとイージス――リンクが左腕にいる感触があるにも拘わらず、ゼロはリンクをつい二度見してしまう。

 

『この世界の防衛チームにはファントン星人からの技術提供を受けているそうです、恐らく先程の戦闘データとサイバー怪獣の技術を応用して、私の姿と機能をある程度再現したのかと』

 

 とはいえ、それでも地球の科学でイージスの次元転移能力を再現してしまうとは………驚嘆させられる一方で、自分に授けられた〝力〟の怖さを身を以て経験してきただけに、ちと複雑ではある。

 何しろ……イージスの源流たるウルトラマンノアの姿と力を模した対スペースビースト兵器が生み出されたのを切っ掛けに、一つの文明が滅亡してしまった悲劇が過去にあったからだ。

 

「よくここまで来れたな?」

「二万年も待ってられなかったんでね」

 

 だが……あの聖なる鎧と纏った〝二人〟の雄姿は、不思議とそんな不安の靄を払しょくさせていった。

 大丈夫だ―――この二人なら、そんな悲劇に至らせはしないと、信じられる。

 

「よし――行こうぜ! エックス!大地!」

 

 

 

 おまけ

 

 ナックル星人バンデロは倒され、ブラックキングもXたちによってスパークドールズになった直後。

 

「ゼロさま~~」

「ゼ、ゼロ様?」

「ゼロ様ちょ~~~うカッコいい! トサカも二本あるし」

「いや、これトサカじゃねえから」

 

 それを拾った眼鏡っ子――ルイって名前らしい大地の仲間から、何やら妙に熱烈なラブコールを受けてしまった。

 しかも様付け……エメラナにだってそう言われたことない……自分としちゃ変に畏まらず対等に接してくれた方がしっくり来るので、全然気にはしなかったが。

 しかし……何だ? この妙な汗を流させる嫌な予感。

 すっかりデレデレなルイの態度を見れば見るほど、実際にはいない筈なのに、フェイトがジト目でじーっと自分の背中を凝視している姿が浮かんできた。

 あの子も結構やきもち妬きなとこあるから、あり得ない話じゃない、ここは慎重な対応しないと。

 俺はまだ良い……同じ海鳴市に住んでいる異世界の自分は、はやてにシグナムにフェイトと、分かっているだけでも三人の女の子から好意を抱かれている。

 もしあちらの世界の彼女らがこんな状況を見たりなんかしたら………想像するだけで恐ろしかった。

 

「お写真良いですか?」

「おう……まあ、そんぐらいなら」

 

 携帯端末を取り出して、ルイは写真を催促してきた。

 まあ写真程度、エックスと一緒に写るくらいは問題ないだろう。

 

「あ、エックス……ちょっとフレームから外れてくれないかな」

 

 こらまて。

 

「なんだよ!? 私も結構頑張っただろう!?」

 

 まさかのぞんざいな扱いを受けたエックスの図に、ユナイトしている大地と一緒に苦笑いが浮かんでしまいながら、タイガと一体化していた時の自分の姿を思い出させられた。

 この時はこの落差の理由が分からずじまいだったが、後々、この時期のエックスの戦績を知る機会があり。

 

 対デマーガ:大地が高所恐怖症と言うハンデを抱えながらも勝利。

 対バードン:嘴と猛毒に苦しめられながらもゴモラアーマーで勝利。

 対テレスドン:高速回転タックルに苦戦しつつも、エレキングアーマーで勝利。

 対ベムスター:初戦で腹の口から食われてしまいながらも、防衛隊の尽力で脱出し、

二戦目は勝利。

 

 エックスたちには申し訳ないのだが、なんとなく落差の理由が分かってしまった(汗

 俺たちウルトラマンに依存せず、懸命に自分たちができることを尽力し、助け助けられながら共に戦う関係性は喜ばしいだけに、これもこれで複雑だ。

 

「こいつだってわざわざ次元の壁突き破って助けに来てくれたんだぜ、仲間外れはいけねえだろ」

「しょうがないな……ゼロ様がそこまで言うのなら」

 

 こっちの説得が功を奏し、どうにか写真撮影はエックスとのスリーショットの形で落ち着くのだった。

 

『(モテモテですね♪ マスター)』

「(うるせえ)」

 

 おわり。

 



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