5月5日の土方の誕生日。元気のない銀時。
死ねたです。
『みづいろのあづさゐに淡き紅さして雨ふれり雨のかなたの死者よ』作者高野公彦
「…………とき」
「銀時!!!」
土方が、今にも泣きそうな顔で俺の顔を覗き込んでいた。
「へ!?」
「ぼーっとしてどうしたんだ?折角のデート中なのに……」
今日5月5日。土方の誕生日。近藤さんの粋な計らいで休みを貰った土方とデートしてる。まぁ、これがデートと呼べるかは別としていつものファミレスに居るだけなんだけど………。急に貰ったもんだから、何処に行くってこともないし女みたいに喜ぶこともないしな……。
「ごめん。…………帰る。」
特別な日なのに、全然楽しくない。たぶんこの雨のせい。今年は、梅雨入りが例年より早く毎日のように雨が降ってる。
「どうしたんだよ?急に……」
俺が帰るって言ったから、当然の反応だよな。土方が、まだ何か言っていたが構わずファミレスを後にした。
傘なんて持ってなくて、髪を顔を肩を雨が濡らしていく。
まるで、今の俺の気持ちのような曇天の空が広がっていた。
ふと、立ち寄った公園。雨なので当然ながら他に人は居ない。まぁ、ホームレスは居るけど……。
ベンチの横には水色の紫陽花が咲いていた。まだ、花びらは数えるくらいしかないけど、何枚かは薄く紅が指してる。花びらを………正確にはガクっていうらしいけど、1枚採って口に含んだ。
銀時が出ていき急いで料金を支払い追いかけたが既に、姿はなかった。
「たく、傘持ってねぇのに何処に行ったんだよ。」
思わず、ため息混じりの愚痴が出る。この後、何処に行こうか話そう思ってた。残念な雨だけど、相合い傘して映画観に行ったり、水族館行ったり、夜は高級レストランでとか自分の誕生日なのに銀時とデートするのが楽しくて休みを貰った時には、にやけるぐらい嬉しかったのに……そんな俺の気持ちとは裏腹に空は曇っていて、降らなきゃいいのにと思っていたら、ポツリポツリと地べたを水玉に染めていった。
今思うと、今日万事屋に迎えにいった時から銀時の様子はおかしかった。なんだか、元気がなくて返事も上の空で“行こうか?”と言っても乗り気じゃなかったように思う。こういう時、銀時は何を聞いても答えない。恋人である俺にさえ何も言わず、何処か遠くを見ているような目をする。銀時の見る景色には俺は居ないんだろうなと、悲しくなるがそれもしかたないのかもしれない。俺は、あくまでも銀時の『今』しか知らない。過去に何があったかなんて関係ないが、もう少し俺を頼ってほしい。
「銀時?」
公園のベンチに凭れかかるようにして、銀時がいた。蛇の目の傘が、パラパラと軽快な音をたて水滴を弾く。俺がゆっくり銀時に近づく。銀時は、びくともせず右手と口回りに薄く紅が指した花びらがついていた。
完
タイトルの『Ortensiu~オルテンシア~』は紫陽花という意味です。
昔、紫陽花は