その系統が苦手な方は読まない方がいいかもしれません。
「ねね。ゆきのん!ヒッキー!今度の日曜日花火大会あるんだけど、一緒に行かない??」
期末考査も終わり、明日から夏休みを迎えるため部室の掃除をしている最中由比ヶ浜が唐突に言い出した。
「えー。悪いんだがその日は用事があってだな…………。」
「ごめんなさい。私もちょっとその日は。」
「ゆきのんは仕方ないにしても、ヒッキーに用事があるなんてありえないっ!」
「ひでえ言われようだな。」
「じゃあ小町ちゃんに聞いてみる!」
由比ヶ浜は電話のスピーカーをONにして電話を掛けはじめた。
ピピピピピピピピ プルルルルルルルプルルルルルルル
『はい。もしもし小町ですう。』
小町2コールで電話出やがった。材木座並のスピードだぞ。
「やっはろー!ねえねえ、小町ちゃん。今度の日曜ってヒッキー予定あるの?」
『あ、やっはろーです。結衣さん。いやー。兄にも春が来たというかなんというか、お兄ちゃんその日ちょうど予定あるらしいんですよー。』
「今季節夏だよ?」
『あ、はい。ですよね~』
「分かった!ありがとね!小町ちゃん!」
『いえいえ。ごめんなさい結衣さん。』
「いやいや。じゃあねー!」
プツ
小町の奴余計な事言いやがって。なんだよ春が来たって。それ言ったら大抵の奴気づいちゃうだろうが。変な汗出てきちゃったじゃねえか。
横を見ると、明らかに様子のおかしい方が約一名。
「ど、どうしたのかしら八…比企谷君。」
「いまゆきのんヒッキーのこと八幡って呼ぼうとしてた!?」
「するわけないじゃない。由比ヶ浜さん。私でも怒ることはあるのよ?」
「そっかー。ごめんねゆきのん。」
由比ヶ浜がアホの子で本当に良かった。
由比ヶ浜side
ゆきのんにもヒッキーにも断られちゃったし、優美子とか誘ってみようかな。
でもさっきのゆきのん少しおかしかった様な気がするけど…。まあいいか。
とりあえず優美子にでもlineしておこーっと
☆☆★ゆい★☆☆
やっはろー!( ^_^)/優美子!(^。^)/
あのさー今度の日曜日って暇(・・?
暇なら一緒に花火大会行かない?(*^ω^*)
yumiko
いいよー!
あれ、でも結衣は奉仕部とかで行かなくていいの?
☆☆★ゆい★☆☆
うん!(*^ω^*)
二人とも用事があるから無理なんだって(๑•́o•̀๑) ↯↯
yumiko
ふーん。まああーし的にはそれは嬉しいんだけどね!
じゃあ何時にどこ集合にする?
☆☆★ゆい★☆☆
5時に駅集合でどうかな(´・ω・`)?
Yumiko
おっけー!
じゃあ日曜日の5時に駅だね!
さて、優美子と行くことは決定したから、浴衣とか準備しておくかな。
八幡side
由比ヶ浜が誘ってくれた花火大会って俺と雪乃が行く花火大会なんだよな。
あ、俺と雪乃は付き合っている。付き合い始めたのは4月辺りからだ。俺と雪乃が付き合っている事はまだ由比ヶ浜には言っていない。俺も由比ヶ浜の気持ちがわからない程鈍感ではないからな。
もし、雪乃と由比ヶ浜の仲が俺と雪乃が付き合った所為で悪くなったなんて事にはしたくない。
「じゃあね!ヒッキー!ゆきのん!」
「おう。」
「ええ。さようなら。」
由比ヶ浜が帰り、俺達は20分程読書をしていた。
「ねえ。八幡。そろそろ帰らない?」
「おう。もうこんな時間か。送っていく。」
「ありがとう。ねえ。八幡。今日はうちでご飯を食べていかない?」
「おお!いいのか?」
「ええ。」
「ならよろしくな!じゃあちょっと小町にメールしてくるわ。」
「ええ。なら荷物をまとめて外でやってもらえるかしら?私は職員室に鍵を戻してくるから。」
「わかった。じゃあ校門で待ち合わせでいいか?」
「ええ。」
雪乃の料理はマジで金払ってでも食べたいレベルだ。俺は、付き合い始めてから数回食べに行っているが、毎回の料理のクオリティが高い。
えーと、初めて行った時はビーフシチュー、2回目はグラタン、3回目はパエリヤ。パエリヤは昨年の嫁度対決の際に食べさせてもらい、どうしても2回目か食べたいと頼んだら、頬を赤く染めて「いいよ。八幡の頼みは断れないもの。」と言ってくれた。あの時の雪乃マジで可愛かった。またあの顔見たいなぁ。
比企谷八幡
今日は雪ノ下の家で飯食うから、晩御飯いらないから。
♡こまち♡
えー。せっかく用意してたのにー。まあ、雪乃さんの家なら仕方ないか。
あと、お兄ちゃん!小町とのラインくらいつもみたいに雪乃って呼びなよ!
比企谷八幡
悪いな。
この埋め合わせはいつかする。
♡小町♡
べつにいいよ!
愛するお兄ちゃんとお兄ちゃんの愛する雪乃さんの為だもんね!
あ、今の小町的にポイント高い!
「八幡。小町さんに連絡した?」
「ああ。」
「じゃあ行きましょうか。」
俺達は無言のまま雪乃の家へ向かった。俺は雪乃と歩き時の無言の時間が嫌いではない。寧ろ、好きな位だ。
「八幡。帰り道スーパーに寄っもいいかしら。」
「おう。」
「八幡。今日は何が食べたい?」
「オムライスが食べたいかな。」
「オムライス?そんなもので良いのかしら?」
「ああ。俺は雪乃の作るものならなんでも美味しく食べれるし、オムライスって他の場所で食べてもあんまり旨くない外れの店が多いんだよ。」
「そうなの?まあいいわよ。じゃあスーパーでサラダに入れるものと卵と挽肉を買って帰りましょう。」
「了解。」
スーパーに着いたら、ちょうどタイムセールをやっていて恐ろしい程込み合っていた。っ、あのババア人の足踏んで何も言わないで行きやがった。
「雪乃。あそこで卵売ってるんだが....」
「そう。ならオムライスは無しね。」
「よし。雪乃!このバック持っててくれないか?」
「いいけど、行ってくるの?」
「おう。」
「いってらっしゃい」
「いってきます」
多分、今の俺たちの顔は真っ赤だろう。
俺はおばさんの間を通り抜けながらなんとか1パックだけ手に入れることができた。
「雪乃!取れたぞ!」
「おかえり。八幡。」
「おう。」
「じゃあ野菜と挽肉は買っておいたから、お会計をして、帰りましょうか。」
「そうだな。」
会計を終え雪乃の家へ歩いた。やはりその時も無言で手を繋ぎながら歩いているだけだった。
その日、俺は雪乃の家でオムライスを食べて、すぐに家へ帰ろうとしたのだが....
は?なんでこんなに雨降ってるの?
今日は雨が降るなんて予報が無かったから、傘とかなんにも持ってきてねえよ。最悪雪乃に借りるか。
「雪乃ー。傘借りてもいいか?」
「今日は泊まっていきなさい。」
「は?いや、でも着替えとか無いし。」
「それなら家に予備の下着と寝間着ならあるわよ。」
「いや、なんで寝間着とかあるんだよ。」
「パンさんよ。パンさんの寝間着がペアだったのよ。」
「じゃあ、下着は?」
「もし、八幡が急に泊まることになっても大丈夫なように....。」
可愛い!何、俺の彼女マジで可愛い!
「わ、分かった。じゃあ小町に連絡するが、本当にいいんだな?」
「良いと言っているじゃない。もしこんな日に帰られて怪我でもしたら私....。」
「ありがとな。雪乃。」
「ええ....。」
そして、俺達はその後何をするわけでもなく、話した後すぐに眠りに着いた。
日曜日
由比ヶ浜side
私と優美子は駅で待ち合わせしてから少しの間立ち話をしていた。
「ねえ、結衣。あれってヒキオと雪ノ下さんじゃない?」
「見間違いでしょー。今日はヒッキーも、ゆきのんも用事があるから無理だって言ってたし。」
「いや、あれ絶対そうっしょ。」
私が周りを見渡すと見慣れた顔のカップルがいた。
それは紛れもなく、私の想い人と私の親友だった。
さらに2人は今日、二人とも予定があるから花火大会に来られないと言っていた。
なのになんで?なんで2人は駅前を仲良く手を繋ぎながら歩いているの?
ねえ。なんで?
「ねえ。結衣!」
あれ、なんか優美子の声が聞こえる。
「ねえ!結衣ってば!」
なんだか気が遠くなってきた。
そして、私を必死で呼びかけている優美子の顔がどんどんボヤけてきた。
そこで私の意識は途切れた。
私が目を開けるとそこには知らない天井があった。
時間を見ると、23時をまわっていた。私、何時間寝てたんだろ。
そして、足下に違和感があったため見てみると、先程まで一緒にいた浴衣姿の優美子が突っ伏して寝ていた。
「ねえ。優美子。起きてる?」
「ん、あ、おはよう。結衣....結衣!?」
「えっ。何、優美子。いきなりおっきい声出して。で、ここどこ?なんで私ここにいるの?」
「結衣、覚えてないの?ここは病院。結衣は駅前でヒキオと雪ノ下さんが一緒に手を繋ぎながら歩いているのを見て、急に倒れたんだよ?」
「ゆきのん。ヒッキー。」
あれ、なんか私、気持ち悪くなってきた。なんだかいままでには感じたことのない感覚。あるとしたら、ゆきのんとヒッキーが手を繋いで歩いたのを見た時。
「ごめん。優美子。少し1人にさせてくれない?ほんとごめん。」
「いや、別にいいし。何か、欲しいものある?何か買ってくるけど。」
「うーん。いいや。なんか今は何も欲しくない。」
「そっか。じゃあ戻っても良くなったり、気分が悪くなったらすぐにメールかラインしてね。」
「うん。ありがと。」
そうして、優美子は部屋を出て行った。
正直、優美子と話している際も気持ち悪くて何度も吐きそうになった。
ゆきのんとヒッキーは付き合ってたんだ。なんとなくそんな気がしていた。最近の2人は様子が少しおかしかったから。ゆきのんはヒッキーを、ヒッキーはゆきのんをチラチラみながら頬を染めていたんだから。
あれ、なんだか涙が。
私は30分程泣き続けて、優美子を呼んだ。
八幡side
花火大会の日から3日程経った頃、俺と雪乃はショッピングに、来ていた。いつものように手を繋ぎながら歩いていると、聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「あれ?ゆきのん?ヒッキー?」
「由比ヶ浜さん。」
「やっぱり2人は付き合ってたんだね。私見ちゃったんだ。花火大会の日、2人が手を繋ぎながら駅前を歩いているの。2人が付き合ってるなら言ってくれれば良かったのに。」
「ごめんなさい。由比ヶ浜さん。」
「ねえ。ゆきのん。2人のことお祝いしたいから、今度ゆきのんの家でお祝いパーティーしない?」
「ありがとう。由比ヶ浜さん。」
「いや、別にいいよゆきのん。2人が付き合ってても私達は友達だもんね。」
なんだか、今の由比ヶ浜は以前とは少し、いや全くと言っていい程違った。前の勘違いしていた時は、もっと暗い雰囲気があったのに、今はそんな感じが全くしない。人なんてそんな1年でそこまで成長できないものなので、俺は嫌な予感がしてならなかった。
「ゆきのん!ヒッキー!おめでとう!乾杯!」
「ありがとな。由比ヶ浜。」
「ありがとう。由比ヶ浜さん。」
俺達は、雪乃と俺準備した料理を食べながら思い出話をしていた。
「あら。買っておいたと思ってたアイスが無いわ。ちょっと買ってくるわね。」
「ヒッキーも行ってきなよ!こんな時間に女の子1人で歩かせるのは危ないよ!」
「あ、ああ。」
俺と雪乃がマンションのエントランスを抜けて、外に出た次の瞬間。
1台の携帯が落ちてきた。
その直後目の前に笑った女の顔が逆さで落ちてきた。
その女の顔が由比ヶ浜のものだというのはすぐに気づいた。
そして、俺と雪乃には先日食べたオムライスのケチャップのような、色の液体がかかっていた。
俺も雪乃も何も言うことが出来なかった。
そして、俺と雪乃はすぐに別れた。
このまま2人で付き合っていても、あの時の出来事は忘れることなんて出来ない。
俺と彼女の夏はすべてまちがっている。