オリ主×踏み台   作:もぬ

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innocent starterが一番好き



無印 最終回

『……プレシア・テスタロッサは虚数空間へ落下しました。これから転送可能位置へと戻ります』

「了解。ご苦労様、クロノ。くれぐれも急いでね」

 

 リンディ提督に通信が届く。

 ……終わったんだ。やっと。

 だけどまだ落ち着くことはできない。オレ達のいる時の庭園は今や、提督の魔法でも抑えきれない致命的な崩壊を始めていた。

 崩落の音が、自分の心臓を脅かしている。

 

「ここは危険だわ。私達は先に帰投しましょう」

「あ、あの……オレ、みんなを待ちます」

 

 今すぐに帰りたいし、実際にそうするべきだった。

 だけど、みんなが帰るまで、まだ終わってはいない。自分だけ先に帰るなんてことは、してはいけない気がした。

 リンディさんは、何かを考えるような表情をした。オレをどう説き伏せるか思案しているのかもしれない。

 ……でも、それは違った。

 

「だったら、一緒に待つわ。こんなところで一人にはしておけないもの」

 

 リンディさんは、オレを安心させるように笑ってくれた。

 

 

 

 リンディさんと一緒に庭園の入り口についたオレは、不安を押し殺して、しばらくの間みんなを待った。

 

「来たっ!」

 

 遠くに、いくつかの人影が現れる。……みんなだ。

 フェイトは赤髪の女性……アルフに抱えられ、崩れゆく庭園から目を逸らせない様子だ。無理もないだろう。なのはとユーノは二人を庇うように追従している。

 ……おかしい。4人、だけか……!?

 

「ユーノ、あとの二人は!?」

「あ、あれ!? 途中まで一緒だったんだけど……」

「時間がないわ。エイミィ、4人を転送して」

「ま、待って! 二人を迎えに――」

 

 なのはの声は、途中で切れた。

 リンディ提督が耳に手をあて、念話を飛ばす。オープンな回線のようで、オレにも内容は聴こえていた。

 

『クロノ? 平気?』

『少し足が遅れました。もう到着します』

 

 すぐに返答が来て、胸を撫で下ろす。

 やがて、二人の姿が向こうに見えた。

 頭から少し血を流しているクロノが、あいつに肩を貸している。普通逆じゃないのか。

 思わず駆け寄る。……なるほど、どうやら足をやられたやつがいるようだ。

 

「面目ない。クロノさんも怪我しているのに」

「いいさ。ほら、ここまで来たら大丈夫だ」

 

 クロノが肩の荷を下ろすと、荷物の野郎はひょこひょこと片足で跳ねて見せる。余裕はあるみたいだな。

 ふう、と息が口を突いて出た。クロノとリンディさんの柔らかい表情を久々に見た気がして、ほっとする。

 よかった。これで帰れる。多少ケガなんぞあったようだが、事件は終わりだ。

 大きな、白く輝く魔法陣が、オレ達4人の足元に現れる。転送に備えてオレは目を閉じた。

 

「……! そこから離れろッ!!」

「え?」

 

 嫌な音がした。

 ぴしり、がらがらと。

 続いて、身体が浮く感覚に襲われる。飛行魔法も使っていないのに、なんでだろう?

 それはきっと……自分が、落ちているからだ。

 

 目を開ける。自分たちの立っていた地面は、一部が崩れて、落ちようとしていた。

 崩落する先は下の階? それとも次元の海?

 違う。眼下に現れつつある淡い彩色の海。虚数空間だ。

 すべての景色がスローモーションに見える。呼吸も鼓動も止まってしまったように、一瞬が引き伸ばされている。

 すでに飛行魔法は発動しなかった。周りを見る。リンディさんが手を伸ばしていたが、遠い。

 崩れる地面の縁、いち早く反応したクロノが、こちらに向かって手を差し伸べていた。自分も必死で腕を伸ばす。

 手が、空を切った。

 

「がっ!?」

 

 腰のあたりに強い衝撃が来て、オレの身体はぐんと押し出された。

 気付くと、クロノの手が自分を掴んでいる。オレは首で振り返って下を見た。

 

「ごめん、ちょっと力入れ過ぎた」

 

 最後の最後に、オレを見て笑う。その顔は、いつものどの表情ともどこかが違っていて、一生忘れられないと思った。

 そうして、あいつは一人で落ちていった。

 

 

 

「……やむを得ない。帰投するよ」

「―――さん。……そこにいたら、危ないわ」

 

 いつの間にか上に引き上げてもらっていたらしいが、足に力が入らない。震えるくらいに身体が冷たい。耳にあの声がこびりついて離れない。

 後ろから二人の声がする。二人は帰るみたいだ。

 オレはただずっと、果てのない空間の中を、穴の縁から覗いていた。

 ややあって、地面が白色に光る。転移の魔法陣が敷かれていた。

 なんとか足を引きずって、魔法陣の外に出る。

 

「エイミィ! 転送を中止してくれ」

 

 光が消える。誰かがそばまでやってきた。

 

「行こう。僕たちがここでできることは、もうないよ」

「……い、やだ……」

 

 随分喋っていなかったかのように、かすれた声が喉から出た。

 誰かが、強引にオレを振り向かせる。

 

「今にここは崩れる。ずっとここで泣いていたら、彼がしてくれたことは全くの無駄になるよ」

 

 泣いている? オレが?

 自分の顔を触る。冷たくなっていると感じてた身体から、信じられないくらい熱いしずくが流れ出ていた。

 どんなに痛い目にあっても、男に戻れないって言われたときも、涙なんて出なかったのに。

 

「………」

 

 頭が、勝手に動き出す。

 クロノが何かを言っている。それは耳では聞こえていても、オレの中には入ってこない。今は不要な情報だ。考えることはひとつだけ。

 何か、方法はないのか。

 虚数空間に落ちた者を助ける方法はないのか。

 また穴を覗き込む。この虚数空間は次元断層によってつくりだされたもの。そして次元断層は、ジュエルシードが引き起こしたものだ。

 

「……ジュエルシードを使えば……」

「なに?」

 

 以前クロノが言っていたことを思い出す。

 今ここにはジュエルシードがひとつだけ残っている。オレの中で、リンカーコアと混ざり合ったものだ。それが、再び願いを叶える機能を取り戻せば、もしかしたら……。

 意識してみれば、さっきからプレシアの発動させたやつと連鎖反応を起こしかけていて、鼓動がうるさいくらいだ。

 胸を押さえる。きっと、きっと今なら。

 

「君が何を考えているかはわかった。……たしか言ったはずだ。今度はどんな姿になってしまうかわからない。うまくいっても、二度と男には、人間には戻れなくなるかもしれないぞ。きっと君の身体はある意味、ジュエルシードと相性が良すぎるんだ」

 

 男に戻れなくなる。人の姿でなくなるかもしれない。

 それでいいのだろうか。本当に?

 それこそ、あいつが助けてくれたことを無意味にしてしまうかもしれない。

 オレは……どうしたらいい?

 

「……!?」

「これは!?」

 

 逡巡しているはずの頭を無視して、勝手に、胸のうちから蒼い光があふれてきた。

 ジュエルシードは願いに反応する。それは、言葉にする必要はない。触れた誰かの想いと結びつく宝石だ。

 ああ、そうか。

 頭で考えるより先に。声に出すより先に。

 ――心は、もう決まっていたんだ。

 

 

 

 

 一度目の死は、慈悲のあるものだった。今ではそう思わざるを得ない。

 これから迎える二度目の死はきっと、耐えがたい苦痛だ。

 視界には自分のほかに、落ちていく瓦礫と、あとは気分の悪くなる色の空だけ。もしかしたら海なのかもしれない。

 これから自分にできることは、どこか底にたどり着いて運よく落下死するのを願うことだけだ。そうでなければ餓死か、あるいは、逆さに落ち続けることによる身体の変調か。どちらにせよ苦しみ抜いて自分は死ぬ。

 そして何より、孤独だ。

 果てのない空間には誰の気配もない。先に落ちたプレシアという人もいない。あの瓦礫の粒が自分に見えないところまで行ってしまったら、いよいよ狂ってしまいかねない。しかしその方が楽だろうか。

 ああ、そうだ。

 ここには誰もいないのだから、もう格好をつける必要はない。

 力の限り泣き叫んだ。もっとうまくやれなかったのか。あのときああしていれば。なんのための鍛錬だったのか。そんなふうに、ひたすら自分を罵倒する。

 そうやってしばらく責めた後に、自分を許した。

 最後に、好きになってしまったあの子を、助けることが出来たからだ。

 それだけが、自分がもう一度生を受けた意味だったのかもしれない。このひと月あまりの短い時間こそが、自分の思い出の中で、一番鮮烈で、温かくて、たくさんの色がついていた。

 気付くと、手を、空に向けていた。

 名残惜しむかのように、未練があるように。当然だ。

 だけど、掴めるモノはもう何もない。くらいくらい空間を、ただ見つめ続けていた。

 

「……え……?」

 

 上にかざし、広げた指の隙間に、銀の光が煌めいて見えた。

 ……大して時間も経っていないだろうに、1番欲しいものの幻覚を作りだす自分の惰弱さに呆れる。

 光は大きくなり、輪郭がはっきりしていった。

 長く美しい髪をなびかせた少女の姿に。彼女は、空に伸ばされた自分の手を、そっと握った。

 

「あったかい」

 

 少女の背から伸びた青い光の翼が、つよく羽ばたく。

 もはや自分がそうなっているのも忘れかけていたが、ずっとあった落ちていく感覚が消えた。代わりに、上へ上へと昇っていく。

 そういえば、いつか飛行魔法を教えてもらおうって思っていたんだ。きっと気持ちいいんだろうなって。

 

「あのさ」

 

 声をかける。振り向いた顔は、ちょっと神々しすぎて、直視するには度胸がいる。

 いつかのとき感じた胸の衝撃を思い出す。今は、もっと好きになった。

 

「やっぱり、天使だったんだな、きみ」

 

 このときの顔は、一生忘れないと思う。

 天使のような、女神のような顔をした彼女は。しかしただの少年のように、いたずらっぽく、にっと笑った。

 

「ばーか」

 

 

 

 

 あれから数日が経つ。

 プレシア・テスタロッサは虚数の彼方に消え、娘のフェイトはアースラで保護されることになった。地球出身の協力者たちはそれぞれ帰るべき場所に戻り、それぞれの日常に戻る。

 あとはフェイトのしたことについて、少し長い裁判が待っている。それをもって、この事件は終わりと言えるだろう。

 きっかけとなった、ユーノ・スクライアの発掘した21の宝石、ジュエルシードはいくつかが虚数空間に失われ、いくつかは管理局が厳重に保存するという結果になった。

 ただし、この胸の中にある、1つを除いて。

 

「ほわ~、すごいねえ。それいつでも出し入れできるの?」

「できる。ほら」

「こら、まだ検査がちゃんと済んでないんだから、それ使って遊ぶんじゃない」

 

 あれ以来、オレの背中には一対の翼が生えていた。

 あのときにあった不思議な青い輝きは失われ、自分の髪と同じ銀色になっている。あと、半分実体で半分魔法の物体というか、自分の意思で消したり生やしたりできるみたいだ。

 正直あって便利なものでは全くない。扱いとしては、特に利用価値のない謎スキルといったところだろう。効果は、飛行魔法が使えない時でも飛べるってだけ。使わなくなってそのうち存在を忘れると思う。

 

「それより、準備は済んだかい。今日で海鳴とはお別れだ」

 

 エイミィと雑談しているところに、クロノが声をかけてくる。

 オレはこれから、海鳴市を離れて、管理局本局の保護施設で暮らすことになる。部屋は引き払って、学校も転出。まあ誰も別れを惜しんだりするような知り合いはいないので、えらくスムーズに事は進んだ。

 もしかしたら次の事件には関われないかもしれないけれど、最近はそれでもいいと思ってる。むしろいない方がいいかもしれない。

 自分が物語からフェードアウトしてしまう、という見方をすると気持ちが暗くなるけど、新しい世界での新しい生活はどんなものだろうという楽しみも、今は感じることが出来るようになっていた。海鳴市だけがこの世界のすべてじゃない。アニメで描かれていないところにも、たくさんの世界が広がっているんだ。そのことは、今のなのはや、あいつや、地球の誰より、オレの方が知っているはずのことだったのに。

 

「そろそろ時間だ、臨海公園へ行こう」

 

 クロノが時間を確認し、オレに向かって言う。

 

「ん? オレも行くのか?」

「当然だろ」

「いや別に……フェイトみたいに別れを言う相手とかいないし……」

「何今さら意地張ってるんだ、行くよ」

「あ、ちょ、わかったから!」

 

 途中でフェイトと合流し、アースラの転移ゲートへ。

 少しそわそわした様子で、フェイトはアルフに、自分の格好は変じゃないだろうかなどと確認している。

 オレにも声をかけてきた。緊張を抑え、なんとか可愛いという言葉を絞り出すと、向こうは「すごくきれいな女の子がいうなら……」などと言っていた。お前の方が美少女だろ。なんかむなしい。

 転移魔法陣が光る。これからフェイトは、なのはと初めて、本当の言葉を交わすのだ。

 

 

 

「友達になるの、すごく簡単だよ」

 

 なまえをよんで、となのはが言う。

 互いの名前を呼び合う。それが高町なのはにとっての、友達のなり方だ。

 そうして、何度も何度も、フェイトとはなのはの名前を読んだ。

 ふたりが何度もぶつかりあった末に、ようやくフェイトは自分を始めることができた。なのはは何かを見つけることができた。これは、そういう物語だ。

 

「あんたのとこのなのははぁ……とってもいい子だねええ」

 

 泣きながら肩に乗ったフェレットに話しかけるアルフ。まあいいシーンだよな。わかる。

 これがこれからずっと続く友情の始まりだと思うと、少し感慨深い。オレはもう二人とはあまり関係ないけれど、この場に立ち会えたのは、なんだか気持ちが温かくなれて良かった。

 

「時間だ」

 

 クロノが腰を上げる。アースラへ引き上げ、地球から旅立つときだ。予定より随分オーバーしていると思うが、こいつも大概空気読むやつだな。

 公園の休憩所から立ち上がったクロノ達は、ふたりのいる場所へゆっくり向かっていく。

 オレもそれについていこうとして……ふと思って、そいつに声をかけた。

 

「なあ」

「なに」

 

 見慣れた仏頂面は、今日も硬そうだ。

 少し躊躇して、息を吸ってから、話しかける。

 

「その……お前の、名前は、なんていうんだ?」

 

 聞いたとき、そいつは不意を突かれたように、一瞬固まった。

 

「今さらか? 知っているだろうに」

「……いいや、モブキャラの名前なんて、オレの貴重なメモリーに保存してなくてさ。いいから教えろって」

 

 早口でまくしたてる。たしかに、知識としてこいつの氏名を知ってはいる。でも……。

 我ながら、恥ずかしいことをしている。

 

「折野 緋色。ひいろ、だ」

 

 その名前を聞いて、やっとこいつと、そして自分に、色が付いたような気がした。

 

「赤い色って意味。発音は“ひ”から、なだらかに上がるように……」

「あーもうはいはい、発音とかいいよ」

 

 カッコいい名前もらってんな。こいつの赤い魔力光とも合ってる。

 聞きたいことを聞いたので、切り上げて歩き出す。さっさとこの町からオサラバしなきゃだからな。

 

「待って」

 

 声を聴いて、足を止める。

 

「君の名前は?」

「……それこそ知ってるだろ、今さら」

「いいじゃないか、そっちも聞いたんだから」

「………」

 

 出たよ、こいつの頑固なときの目。わかったよ、言えばいいんだろうが。

 

「シェメル。シェメル・ステップラダー」

 

 人に名乗るなんて、ただのなんでもないことだ。

 だけど今だけは、少し、勇気が要った。

 あいつは嬉しそうな顔をして、ようやく歩き出す。

 

「じゃあ、行こう、シェメル」

 

 ……どきりとした。

 とぼけたふりをしておいて、こいつはわかってるんだ。

 なのはとフェイトのやりとり、一緒に見てたから。

 つまり。名前を教えあったなら、次にすることは。

 

「ああ」

「………」

 

 だがそうはいかん。オレはただ名前を聞いただけだ。それをどうするわけでもない。

 なんかしゅんとしてるな。雰囲気で何を考えているかはわかるぞ。あんな、なのフェイみたいなこと、お前とできると思うか?

 さっさと早足で歩き出す。変な空気になったが、このやりとりはもうおしまいだ。

 

 みんなに合流する。

 なのははユーノを肩に乗せ、涙を拭いながら、アルフやクロノに別れを告げていた。地球に残るなのはとはしばらく会えなくなるメンバーだ。ユーノはしばらく残るらしい。

 それをすぐ近くで、だけど遠くから見ていると……なのはが、オレの方を向いた。

 

「えと。シェメル、くん? ちゃん? どっちで呼んだ方がいいかな……」

 

 ……なのはが、オレの名前を呼んでくれた。

 驚いて、心拍数が上がる。なにか返事しなきゃと思って、まわらない口で適当なことを言う。

 

「ど、どっちでもいいよ! オレもほら、あの、嫁って呼ぶから!」

 

 あ。いつもの文句を口にしてしまった。今のは、ないよな……。

 なのはが少し表情を変える。恥ずかしくなって、オレは顔を伏せた。

 

「ずっと思っていたんだけど、その呼び方は好きじゃない」

「えっ……」

 

 ……やっぱり、嫌われてたのか。

 そうだよな。今になってやっとわかる。アニメの世界なんだから、自分の思い通りになるはずだと思っていたのかもしれない。だけどここも現実の世界だ。それはちゃんとわかったんだ。

 もう会うことはないけど、最後に謝ることだけはしないと。

 

「ちゃんと名前で呼んでくれないと。わたしは、なのは、だよ。シェメルくん」

「え?」

 

 顔を上げる。

 なのはは、こちらの返事を待っていた。

 

「な、なのは……」

「目も合わせて!」

「うん……あの、いままでごめん……」

「うん? なんのこと?」

「う、ううん」

 

 力強い目に気圧される。この子は、こんな瞳の色だったんだ。吸い込まれそうな、空のような、海のような。

 彼女の言った通り、本当に、簡単なことだったんだ。

 こんなオレが、なのはと、友達になれた。

 思えばクロノやユーノも。これからきっと、フェイトやアルフ、アースラの人たちとも。

 フェイトと同じように、この事件を経て、オレは何かを始められたと思う。同時に何かが終わってしまったのかもしれないけど。

 わかったことはきっと、誰かと友達になる方法。

 そして――、

 

「さあ、時間だ」

 

 足元に転送の魔法陣が現れ、オレ達を光で包んでいく。

 景色が霞む中で、最後に見たのは、あの面白みのない無表情。

 いや。珍しく、笑っているようだ。だからオレも、気まぐれに呼んでみた。

 不意を突かれた面白い顔を期待して。

 

「またな、ヒイロ」

 

 そのときの顔といったら、きっとずっと記憶に残るくらい、もう傑作で。

 名前を口にしたあとの喉は、胸の内は、妙に熱くて。

 

 オレにとっては、きっと……ヒイロが、初めての、友達なんだ。

 

 

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