それを行うために少女は世界に喧嘩を売った。
セカン党や束ファンの皆さんごめんなさい!
「なんでだ! なんでこんなことに!」
「いや! わたしはあんなおぞましい体になりたくない!」
「くたばれ織斑一夏、貴様のせいだぁぁぁぁ!」
そこは地獄絵図だった。虚ろな目の人間達……否、悪性ウイルス兵器によって理性を失った暴徒達が街中を闊歩する。そしてまだウイルスに感染していない市民を襲って仲間にしていくのだ。逃げ惑い絶望を叫ぶ人々は次々に餌食になる。
「「「ヒヌヒヌヒヌ、ヒんヌー」」」
「やめろ、僕の好みは巨乳美人、メロンメロンなボインボインこそが桃源郷なんだ! 来るなっ来るな来るな来るなぁっ!?」
命乞い虚しく暴徒達の波に呑まれる青年。その人波が去った後には倒れ伏した青年の姿が。彼はやがて立ち上がるもその目に、先程までジャンボなバストについて熱く語っていた情熱はすでに無い。彼も感染してしまったのだ。
「まないたまないたまないたぁ」
巨乳至上論者を、貧乳愛好主義に強制改宗させる悪夢のウイルス「nobreast-adoration-infective-mutation-neo-virus」、略称naimuneウイルス。読んで文字のごとく無い胸の無い胸による無い胸のためのウイルスだ。男女の区別なく巨乳至上論者にのみ接触感染し、発症率は100%である。感染したが最後、男性はまな板、ヒンヌー、ヒンニューと連呼するだけになり、胸の無い女性の奴隷となり果てる。女性の場合はボディビルを始めてマッスルな身体改造を強制させられるのだ。
そして貧乳愛好主義ゾンビの群れの中にはそれらを統率する者がいた。その者こそがウイルスの開発者にしてすべての元凶。ISの開発が世界にとって一つ目の天災とするならば、このnaimuneウイルスは二つ目のセカンド・インパクト。そんなことが言われるのは第二の天災が……セカンド幼馴染だからだ。
「この凰鈴音を貧乳と笑ったことを死ぬほど後悔させてあげるわぁ……。この世すべての巨乳に鉄槌を!」
最初は些細なことだった。想い人の好みをちょっと変えてみようというだけのこと。彼女の想い人にして世界唯一のIS男性操縦者、織斑一夏は買い言葉に売り言葉で鈴音のことを「貧乳」と喧嘩の最中に言い、鈴音はそれを結構気にしていた。思考誘導ウイルスを開発して巨乳こそ至上という世の風潮を塗り替えてやると錯乱するほどに。
一年という短期間で代表候補生の地位をつかんでみせたそのガッツと才能をもってすれば、恋によって暴走する乙女に不可能はなかった。そしてそれは世界にとって不幸なことだった。結果的にウイルスは完成してしまい、しかも、その初期ロットはたまたまその研究内容をハッキングして知っていて面白半分でウイルスに接触した天災博士に感染した。彼女の場合、自前の免疫機能でブロックできたはずなのでわざと感染したのだろう。
そのまま即座にボディビル用薬剤でスーパーマッスルボディに変身した博士は、当惑している鈴音をよそにISの設定を変更。その日を境にすべてのISは貧乳女性にしか動かせなくなった。モデル体型のボンキュッボンッな操縦者が多い中でそれは大打撃。そんな中で天災博士が起こした貧乳ウイルスバイオテロに対応する能力は各国には無かった。
事態を収拾するには、ウイルスが沈静化するまで――地球上の人類すべてが貧乳で貧乳を崇めるようになるまで――待つしかないということが開発者の鈴音には分かってしまった。
というわけでもう開き直り、どこかに逃げて隠れている一夏をウイルスに感染させようとゾンビたちを指揮している鈴音なのだった。さっき犠牲になった市民はその巻き添えを食ったわけである。
「待っていなさい一夏。貧乳サイコーとあんたに叫ばせる日は近いわよ……」
地球上全てが貧乳に染まる日は近い。
筆者は巨乳というより美乳、つまりバランスの方を大事と見ている。
そしてファース党だ。・・・ああっ、座布団投げないでっ! ロケラン構えないで!