オレマン。 ~やはり俺の漫画家になる道は間違っている。~ 作:4kibou
原作:やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。
タグ:クロスオーバー バクマン。 やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。 比企谷八幡 葉山隼人
というよりも俺ガイルのキャラでバクマンやっただけ。
ただ、ものすごく短い。それはもう某テニス全くやってないタイトル詐欺なテニスアニメくらい。
昔、叔父さんがまだ生きていた頃。
『コレ、八幡が描いたのか?』
『え?……あ、いや、まぁ……いちおう』
ボソリとそう呟けば、叔父さんは若干の髭がある顎に手を当てながら、ほうと呟いた。
中々に恥ずかしかったのを今でも覚えている。
何たって、相手はその道のプロと言っても過言ではない。
ギャグ漫画とは言え、十分立派な漫画家。
絵と話で食っている職業。たかが小学生が描いた絵なんて彼等から見れば拙いだろう。
だが、叔父さんは実に真剣にそう言った。
『上手いな』
『え』
たった一枚の、それこそ夏休みの宿題で描いたトンボの絵を見て、そう言ったのだ。
褒められると思っていなかったその時の俺は、酷く混乱した。
何と言ったって、相手は漫画家。
むしろ笑われる覚悟さえしていたのだが、実際は違う。
ただ何の偽りも無く、小学生の俺の絵を褒めたのだ。
変に言わずにただ一言、上手いと。
『少なくとも、俺よりセンスはあるな』
『そ、それはないだろ。叔父さん漫画家なんだし』
『ハハ。俺はダメだよ。昔は上手いって言われてたが、所詮井の中の蛙。大海に出りゃ下手だって分からされた』
苦笑いしながら、叔父さんは言う。
でも俺は別にそんなことを思った時なんてない。
雑誌に載っているんだ。十分に認められているではないか。
叔父さんはむしろ誇りだ。
親戚に漫画家がいる家庭なんて、そうそうない。
友達に言いふらしたいくらいだ。友達いないけど。
『将来は画家かデザイナーってとこか』
叔父さんは、「漫画家」とは言わなかった。
◇◆◇
季節は春。
桜の花が舞い散る四月。去っていった三年生、六年生の代わりに新しい一年生が入学する。
がしかし、それも過ぎ去った春だ。
既にそんな入学式やら何やらは終わった。
ちなみに俺は出ていない。
いや、存在感が薄すぎて気付かれなかったとか、そんな訳ではない。あり得そうではあるが。
単に事故って入院した結果、見事に学校生活に出遅れただけ。
その結果としてクラスの輪に溶け込めず、俺はボッチ。まぁ、そんなこと無くてもそうなっていただろうけど。
つまるところ俺はそんな高校一年生。
義務教育十年目の俺たちに、大人たちはいつも「進路は?」「将来の夢は?」と聞く。
俺、比企谷八幡はこう答える。
「専業主夫になることです」と。
よりよい高校、大学へと進むのが普通。でもぼっちである俺はアブノーマル。異端。異常者。何それ格好いい。多分あれだ。箱庭の学園でめっちゃカリスマ性溢れる女生徒会長と戦って敗北しちゃったりする。そんで惚れる。てか敗北しちゃうのか。まぁ仕方ないね。相手主人公だもん。勝てないわそりゃ。某人外でさえ無理なんだ。こんなDHA豊富そうな目をした人間に勝てるわけがない。更正はしてやらんけどなぁ!おっと、話がすげぇそれた。閑話休題。
ヒモではない。専業主夫。きちんとした役割をこなし、夫婦で寄り添って生きていく歴とした職業だと俺は考える。そんな男に、俺はなりたい。
だからこそ、この高校生活という時間は非常に無駄に思えて仕方がない。何が青春だ。アホらしい。青春ラブコメなんて吐き気がするね。もうお昼に食べた弁当全てリバースする勢い。とまぁ、これが比企谷八幡が生きてきて培ってきたぼっち精神である。見事だろ?褒め称えよ、雑種。ふははははは。心の中で高笑いしてたら生徒に睨まれた。何故に?
まぁ、そんなのは些細なことだ。人から受ける悪意ってのはちょっとだけ慣れてたりする。これもうアブノーマルってかマイナスよりじゃね?流石に親からガソリン飲まされたりはしてないけど。てかそんなことされたらここにいねえわ。何なの、中途半端なの、俺。こんなんじゃスタンド制御出来ないよ。スタンド無いけど。
(あほらし……)
もう何度か分からないそんな事を考えながら、俺はノートにペンを走らせる。今は授業中。事故にあったとは言え、利き手以外の全身に打撲と片足を骨折。それにもう完治して退院しているし、特に不便はない。交友関係以外は。
(きっちり利き手庇うとか……何なの?俺)
はぁ、と溜め息をつけば教師にまた睨まれた。別にいいじゃねえか、溜め息つくくらい。何だよさっきから。あ、やめてそんな睨まないでごめんなさいなんか怖い。え、マジで何あれ。何なのあの教師。名前なんて言ったっけ……えーっと、確か平……平丸?平坂?ま、何でもいいや。
(……未だ描いてんのは、ぼっちだからだよな。そう。することないから指動かしてるだけ)
カリカリではなくサラサラとペンを動かす。ノートに描くのは俺より前の教室の風景。ちなみにぼっちだからバレる要素はない。完璧だ。って俺凄い暇してるなぁ。なんて考えながらも、絵は完成されていく。陰影つけたりして、ノートを持って少しだけ傾ける。あ、やべ。これ後ろの奴に見られ……たりはしてないな。セーフ。ぼっちで良かった。
(うわぁ……大分下手になってる。なにこれ、小学生以下。やばい。ちゃんと毎日描かないといけないんですね分かります)
随分と拙い自分の絵を見て再度溜め息をつけば、ちょうど授業終了のチャイムが鳴った。さて、明日からテストらしいが、まぁ問題ないか。授業は真面目に受けてたし。赤点は回避余裕。ただし数学以外。
そんなことを考えながら、俺はそそくさと教科書をバックに詰めて教室を出る。自分、ぼっちですから(渋い声)。
その後ろ姿を、一人のリア充が微笑みながら見ているのも知らずに。
◇◆◇
家に帰れば気付いた。ノートがない。あの気紛れで絵を描いたノートが。
別にノートが無くても勉強できるし、問題はない。
けれども、あのノートは明日まで残しておきたくなかった。
おふざけで机漁られて見られでもしたら面倒だし。教卓の上なんかに出されていたあかつきには死ねる。
多分あれだろ。比企谷って絵上手いんだきもー、とか言ってくるんだろ。知ってる。女体上手いんだね引くわーとか。そんな上手くねぇよ何言ってんの。こちとら女体の神秘すら見たことない童貞だわ。ど、どどどど童貞ちゃうし!とか言っちゃうレベル。
そんなことどうでも良いけど、ノートはどうでもよくない。即刻取りに行こう。決まれば早い。俺は一度帰宅した家を出て、再度学校へと向かった。
校門をくぐれば、向こうから歩いてきた女性の教員らしき人に呼び掛けられた。てかめっちゃ睨んでたあの人だ。
「なんだ比企谷。珍しいな」
誰かが俺に話しかけてくる方が珍しいんだけど。
「ノートを忘れてしまって」
「……そうか」
おい。なんだその疑わしい目。そんな比企谷にも以外に普通なところがあったんだなー、みたいな目もやめてください。酷く傷付くじゃないか。あ、傷付く心が無かった。え、何これすげぇ虚しい。こうなりゃやけだ。気になるあの子とアクセルシンクロォォォォオ!!俺の主夫生活へと向けて、光射す道と成れ!!レベル十六!シンクロモンスター!センギョウシュフ・ハチマン!このシンクロモンスターがバトルゾーンに出たとき、自分はデュエルに負ける。駄目じゃねえか。
と、そんな馬鹿な思考回路も一旦中断。ガラリと教室の戸を開いた。
(!……葉山隼人)
誰もいないと思っていたその教室に一人だけいた訪問者。一番後ろの席に座っている彼の名前は前述の通り葉山隼人。俺が珍しく覚えている名前だ。いや、リア充だから忌むべき存在としてつい耳から離れなかったんだ。恨むなよ隼人クン。俺が恨んでるから。
(こいつなんでここに?テスト前だぞ。帰って勉強しなくていいのか。まぁ、こいつの場合もとが良いから問題ないか……)
「ヒキタニくん」
え?それ俺のこと?やめろよ。新手のイジメかと勘違いしちゃうだろ。てか誰それガチめに。ヒキタニって。マジダセェ。お前ネーミングセンスねーな。あはは。ってどう考えても二人の教室で名前的なものを呼ばれたんだから俺のことですよね。本当にありがとうございました。だか無意味だ。俺は無視する。
「……、」
「うわ、華麗なスルー。ヒキタニくん、探し物はこれ?」
サッ、と葉山が上げた手に握られていたのは、どこからどう見ても俺の忘れたノート。なんでお前が持ってんだよ。人のだろ。てかはよ返せ。これ以上お前と一緒の空間にいるとじんましん起きそう。責任とれイケメン。あ、でも俺がとられたくねぇ。やっぱとらなくていいよ。せめてあれだ。某満足さんの地縛神召喚のリアル生け贄となって死ね。
「……なんでお前がノートを?それとヒキガヤだ」
「見たよ。絵、上手いね」
人の話は聞かないんですかそーですか。てか何勝手に見ちゃってんの?え、何?これまじで何?今から凄い貶されるの?ここの服の皺こってるねー、何?好きな子?とか問い詰められたりするの?さっきからクエスチョンマーク乱立してんだけど。てかはよノート返せ。そろそろ悪口のストックが尽きそうだ。
「全体的によく描けてるし、下手なネットの人たちより上手い。好きなのか?絵を描くの」
「……好きだった。今は別にそうでもない」
「だった?」
「……っ。どうでもいいだろ。そんなこと。ノート返せよ」
なんかイラついてきたんで強行策に出ると、葉山はヒョイと俺の手を躱した。くそが。イケメンはやっぱり身体能力もいいのか。あれ?でもこいつ部活入ってねーよな。確か。全部拒否ってたの思い出した。なのに運動神経良いとか……まじふざけんな。宝の持ち腐れ過ぎる。死に晒せ外道。外道は俺か。自分で自分の首絞めるとか、現代の女の子っぽくいうとマジうけるー。うけねぇよ。何なの。アホなの。言語能力低下しすぎてこっちの方がうけるわ。
「ああ、別にヒキガヤくんがこのノートに皆の様子を描いてたことは誰にも言わないし、伝えない。ノートだってちゃんと返すよ」
「ならさっさと返せよ。てか誤解を招く言い方をするな」
様子を描いてたって、確かにそうだけどただ適当に見えるもの描いただけじゃん。流石にそんなときに女体に欲情しねえっての。でなきゃちゃんと描けないし。女体の神秘は知らなくても、人体の神秘は知ってる口です。間接とか筋肉のつき方とか覚えてる系。マジウケルー。
「ただし条件がある」
(うわきたよ……)
何だ、今すぐ死ねか?流石に嫌だわ。イケメンの言うことは聞きたくない。てか個と個のぶつかり合いならこっちにも勝機があっぞこらぁ。仲間を呼ぶされたらオワタけど。何それ弱い。袋叩きが弱点とか。並の人間過ぎて八幡怖い。
「俺と組んで漫画家になってくれ」
「……はぁ?」
後にこの出会いが、その後の俺の人生を大きく変えていくことを、俺はまだ知らない。
バクマンの方が原作売っちゃっててうろ覚え。惜しいことをした。売るんじゃなかったぜちくせう。今度また買い揃えよう。
だから連載じゃなくて短編です。
連載してもこれ上手くいく気がしないんだけど気のせいだろうか。この二人。