マイスのファーム~アーランドの農夫~【公開再開】   作:小実

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 『ネルケ』にて、ようやくステルクさんが登場しました。
 『ルルア』? ……まだ、未プレイです。おかげで、ネタバレを踏んでしまわないかビクビクしております。


※感想返信、遅れてしまっております。大変申し訳ありませんが、少々お待ちください。※


帰還

***青の農村***

 

 

 

 しっかりと憶えているわけじゃなかった。

 ううん。というかむしろ、『フラウシュトラウト(おかあさんがいなくなった原因)』が記憶からすっぽりと抜け落ちていたのと同じように、おかあさん自身に関する記憶も虫食い状態に近かった。

 

 

 ――――()()

 

 

 第一、最後に会ったのはもう十年近く前で、私も()()()()あのころとは変わってて当然。うっすらと憶えている部分でさえ頼りにはならないだろう。

 

 

 ――――()()()()()()()()()()()()

 

 

 

「おかあさん!?」

 

 

 

 もちろん、私の勘違いの可能性だって十分にあった。

 けど……

 

 

「ん? どうかしたかい、トトリ?」

 

 

 私の呼び声に反応してコッチを向いた()()()は、一瞬だけ目を丸くしたけど、すぐにニカリと笑って――――()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 握りしめる手は確かに掴み

 抱きつく腕は空振らず

 肌に触れる無骨さのある衣服からは記憶の奥底に眠っていたおかあさんの匂いがして

 いつの間にか涙があふれてきてた私のその頭を撫でる手はいつかのあの手で

 その声は、確かにずっと聞きたかったおかあさんの声で―――――

 

 

「おかあさん、おかあさん……!!」

 

「……ははっ。「立派になった」って聞いたから一体どんな淑女(レディー)に成長しちゃったのかと思ったら……なんだい、アタシが知ってるのと同じでまだまだ子供じゃないか」

 

 

 十八歳(この歳)にもなって、「まだまだ子供だ」と笑うかのような物言いをされたけど、そんなことは気にならなかった。

 

 「子供のままでいい」そんな気持ちがなかったわけじゃない。でも、だからというわけでもない。 

 「子供だ」というおかあさんの声が、人を小馬鹿にするような言い方じゃなかったから――――というよりも、その声はどこか嬉しそうにしている気さえしたから、何故か私まで嬉しくなってたんだ。

 

 

 

「そっれにしても、ホント育ってないわねぇ」

 

 

 ――――嬉しくなって…………

 

 

 

 

 

「はっ!? まさか、トトリと見せかけて、ツェツィの子供だったりするのかい!?」

 

 

 

「おかあさんっ!?」

 

 顔をバッとあげて、これまでとは色々と違う意味で大声をあげてしまう。

 

 

 

「ハァ、ハァッ! ウソッ……!? ほ、本当に……おかあさん?」

 

 その声に振り返ると……ポカンとしてたり、頭抱えたり、目をパチクリさせてるみんなの合間を通り抜けてきた、少し肩で息をしているおねえちゃんが目をまん丸にしてコッチを見てた。

 

 その後ろの方から、ピアニャちゃんがテトテトと走ってきてるのが見えるから――万が一のために急遽避難して(離れて)たけど、遠目からその姿が見えたからか私の声で気付いたからか、おねえちゃんは信じられない気持ちで大急ぎでここまできたのかもしれない。それこそ、ピアニャちゃんの手を引くことを忘れちゃうくらいに。

 

「おおっ! ツェツィは聞いてた通りえらい別嬪さんになってるじゃないの!! これは、本当に良い旦那を捕まえて子供の一人や二人――」

 

「「おかあさん!!」」

 

 詰め寄ってきたおねえちゃんと、抱きついたままの私とが睨みつけながら声を荒げると、一応は止めたけど特に悪びれた様子も無く……むしろ「待ってました!」とでもいうのかケラケラと笑いだした。

 

 

「冗談だってジョーダン」

 

 

「冗談って……それでも言っていいことと悪い事が……」

 

「それに、なんでわざわざこんな時にいうのかしら……?」

 

 余りにも自由なおかあさんに、肩を落としため息をついてしまっていた。

 すぐそばからはおねえちゃんが吐くため息も聞こえてきた。きっとおねえちゃんも私と同じような表情でため息をついてたんだろうなぁ……。

 

 そんなことを考えてると、また頭の上におかあさんの手を感じた。今度は撫でるようにじゃなくて、ポンポンと優しく叩くような動きで。

 

 

「言うべきことも、言いたいこともあるんだけど……それは家に帰ってからって決めちゃっててさ。ちょっとだけ、待ってくんない?」

 

 

「それは私たちを待たせ過ぎな……ううん、いまさらね」

 

「そうだね、おねえちゃん。おとうさんだけいない時になんて、かわいそうだし」

 

 おかあさんの帰りなんて、もう何年も待たされ続けてきた。そこに今更ほんの少しの時間なんて、有って無いようなものだよ。……遠い地で亡くなって、もう二度と会えないとさえ思ってたんだから、なおのことだ。

 

 ……けど、確かに私にも、何があったのか問い詰めるよりも先におかあさんに言いたいことはある。それも、おかあさんと同じくヘルモルト家(私たちのお家)で言いたい一言が。……きっと、おねえちゃんも同じだと思う。

 

 「おかえりなさい」って。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ととり~、ちぇち~」

 

 間延びした声が聞こえたのとほぼ同時にクイクイッと服の袖を引かれ、自然とソッチに顔が向く。そこにいたのは、さっきおねえちゃんを追ってこっちに走ってきてたピアニャちゃん。

 ピアニャちゃんを挟んだ向こう側にいるおねえちゃんは「あっ」って顔をしてた。いきなりのおかあさんの登場に慌てて駆けつけたために、うっかり忘れてしまったんだろう。

 

 

 ――()()()()

 

 

「ねぇねぇ。もんすたーじゃあ……なかったんだよね?」

 

 おかあさんのことをチラチラと見ながら聞いてくるピアニャちゃん。

 おかあさんもおかあさんで、そんなピアニャちゃんの様子に「ん? なんだい?」と首をかしげてた――けど、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「うん。この人は私たちのおかあさんで……ほらっ、『最果ての村(ピアニャちゃんのいた村)』にあったお墓の――」

 

「墓っ? なーんでそんなモノが……って、あのおばあちゃんしかいないよねぇ。作んないでって言ったのにさ」

 

 説明しているところを聞いてたおかあさんが驚き、困ったように笑ってた。

 いや、それはまあ、生きてるのに知らないうちにお墓を建てられてたら……でも、おかあさんの場合、『アランヤ村』的には行方不明期間が凄く長かったわけだし、事情を知ってた『最果ての村』側でも状況が状況(ほとんど死にかけ)だっただけに、お墓が建てられても仕方がない気がする。

 

 そのお墓を建てることを決めたピリカさんも、おかあさんが生きてたことを知ったら驚くだろうなぁ……。

 

 

 っと、説明を聞いたピアニャちゃんはわかったのかわかってないのか、小首をかしげながら「ふ~ん?」という生返事をしてて――――

 

 

 

 

 

「それで、マイスはー……?」

 

 

 

「えっと、それは――――んん?」

 

 

 ()()()……()()()()…………???

 

 

 

 

 

『あっ』

 

 

 

 

 

 それは、私の口から漏れ出したのか、おねえちゃんの口からだったか……それとも、周りにいた先生やミミちゃんからか――――正直よくわからなかった。

 だって、頭の中が一瞬真っ白になってしまってたから。

 

 そもそも、今日こうして集まってるのって――おかあさんが出てきた『ゲート』を発生させて反転させたのって――――()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()―――――

 

 

 

「あ――――――――――っ!!」

 

 

 

 そそそっ! そうだったー!?

 反転させた『ゲート』から、死んだと思ってたおかあさんが逆流してきて(出てきて)、そのことで頭がいっぱいになってた!

 

 ……って、こうして改めて思い返してみると、おかあさんが『ゲート』から出てくるってわけわかんないなぁ。

 「なにはともあれ、話は家に帰ってから」みたいな流れになっちゃってたけど、ちゃんと話を聞かないとどうしてこんなことになってるのかが意味がわからないよ……。おかあさん、あの『はじまりの森』にいたってことだもんね?

 

 

 ふと、周りに意識を向けてみると、先生やステルクさん、その他大人数が私と似たような状態でワタワタと慌てて――比較的冷静なのは、仮設本部にいるマークさんとホムちゃんくらいじゃないかな? 何か機材とにらめっこしてる。きっと『改良版ゲート発生装置(新生・げーとくん)』や計測器など周辺装置の上体を確認してるんだと思う。

 

 

「そうそう、『ゲート』だよ『ゲート』! って、ああっ! 消えちゃってる!? さっきの爆風で……? とにかく、『属性結晶』はまだまだあるし、発生装置が無事ならまた出来るよねっ? どこも壊れてないといいんだけど……!!」

 

「ねぇ、ちょっとどうしたってのさ? 話の流れが……マイスがどーたらこーたら言ってるけど、何? マイスがいなくて心配してたとか、『お祭り』の準備が上手くいってなくてあわててるとか?」

 

 「そういえば、見たこと無いモノがいっぱいあるけど何か関係あるの?」と改めて周りをキョロキョロ見渡してたおかあさんが、そんなことを言って……。

 でも、そんな構ってるヒマが無い――というか、ヒマがあるかないかわかんないというか、『はじまりの森』のこと自体よくわかってないから判断しようがなくて、急ぐに越したことはないだろうってことで……。

 

 

「って、そうだ! おかあさん、事情はよくわかんないけど『ゲート』のむこうに――『はじまりの森』にいたんだよねっ!? 実はマイスさんも事故でソッチに行っちゃってるみたいで……おかあさん、何か知らない? 噂話を聞いたとか、痕跡とか……!」

 

「ああ――――

 

 

 

 

 

 

 

 

――――()()()()()()()()()()()()()?」

 

 

 

「「「「「「えっ!?」」」」」」

 

 

 おかあさんの言葉に、私だけじゃなくて他にも沢山の人が反応をした。

 というか、伝染するようにみんながみんなピタリと固まって、おかあさんのことを見てる。

 

 やっぱりアストリッドさん(先生の師匠)が言ってた通り、目撃されたっていうあの謎の光は『アーランド(こっち)』から『はじまりの森』へと流れる、『ゲート』とは逆の流れのモノで……! って、それは確信してたことだからいいとして……「()()()」!?

 

 

「そそ、それってどこでっていうか、どこらへん……! ううん、なんて聞けばー……!?」 

 

 知ってる場所ならどの辺って言ってもらえばいいけど、再三言ってる通り『はじまりの森』のことなんて全然知らないわけで、仮に「どこ」って言われてもどうしようもないよね……。

 

 でも、何か知ってるなら聞かない手は無いし――ああっ!! そういえばさっき、私のこと見て「「立派になった」って聞いたから~」みたいなこと言ってた! もしかして、それってマイスさんから聞いて……!?

 だとしたら、マイスさんは? も、もしかして何かあって『はじまりの森』じゃなくて『シアレンス(あっち)』に帰っちゃってたり――――

 

 

 

 

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

 

 

 

 

 

 

――――――へ?

 

 

 ()()()()()()()()()おかあさんが「ほらっ」とさっきまで私を撫でていた右手()とは反対の()をヒョイとあげて――――その手には、どこかで見た……というか、かなり見覚えのある()()()()()()()()()が……。

 

 これまた、私だけに限らず、周りの人たち全員が固まった。もちろん、その視線はおかあさんとそのあげられた(モンスター)に縫い付けられてる。

 

 

「も……モキュ~……」

 

「あら? 目ぇ回してら。どおりで静かなわけだ」

 

 

 そう。おかあさんが示したのは、主に『青の農村』で見かけることができた()()()()()

 一時期「幸せを呼ぶ金色のモンスター」として噂もたったりした……最近では、体毛の色が違う同種らしき怪我をしたモンスターが保護されたりもした、一般に「()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 おかあさんに首元を掴まれている目を回している「モコちゃん」。

 

「まっ、それも仕方ないか! 最初こそいい感じにスルスル行けてたのに、途中から強い向かい風の中を突き進むみたいになって、無茶苦茶頑張って何とか抜け出せたわけだし」

 

 それってもしかして、私たちが『ゲート』を反転させたからじゃぁ……?

 思いはしたけど、口には出せなかった。とてもじゃないけど、そんな空気じゃないし……それ以上に頭の中がグチャグチャで、色々と言わなきゃいけないこととか、疑問とか、驚きとかが全然おさまらなくって……!

 というか、何時から? 最初から!? いや、でも……ううん、ずっとおかあさんにばっかり気を取られてたし、気付けなかった……!?

 

 

「ん? なんだい? みんなして黙りこくっちゃって……マイスのことが心配だったていうなら、そこはもっとこうワーッ!って喜んであげたっていいんじゃない?」

 

 いや、そうだけどそうじゃないっていうか……

 

 

 

「えーっと、ギゼラさん?」

 

「……? あらぁ! 誰かと思ったらメルヴィアじゃない! こんなに立派に育っちゃって~!!」

 

「どうも~……って、そうじゃなくて。マイスのことなんだけどー……?」

 

「マイスだろ? ほれっ」

 

 そう言って、左手に持つ目を回した金色の毛のモンスター(モコちゃん)をズズイッと突き出してみせるおかあさん。

 

「うーーーん! そうだけど、そうじゃないっていうか。その、一応……ねぇ?」

 

「はぁあん? 何言ってんだか。いったい、マイスがどうしたっていうのさ?」

 

 

 心底不思議そうに首をかしげてるおかあさんが腕を曲げて、さっきまで突き出してた金色の毛のモンスター(モコちゃん)を自分の(ほう)へと向け「ねぇーマイス?」って、まるでお人形遊びをしてる子共がお人形に語りかけるかのように言って――――

 

 

 目をパチクリ瞬かせてから私たちの方を見て……

 

 金色の毛のモンスター(モコちゃん)をへと視線を戻し……

 

 また、私たちの方を見て……

 

 それを一度二度繰り返し……おかあさんは、その右手を自分の後頭部へと持って行き……笑った。

 

 

 

 

「そういえば、マイスが金のモコモコ(この子)だっていうのは秘密なんだっけ? ごっめん! さっきのナシで!!」

 

 

 

 

 

『え』

 

 

 

 

 

『ええーーーーーー!?』

 

 

 

 

 そのみんなの絶叫は、「マイス=モコちゃん」という事実に対してのモノか――それとも、そんなことを暴露をしたのにケラリと笑って無かったことにしようとするおかあさんに対してか。

 どちらにしても、きっと今日一番の……ううん、過去最高の大声だったと思う。

 

 

「あーはっはっはっー!!」

 

 

 本当に本当に久々の再会の、ほんのちょっとの時間だったんだけど……以前話を聞いてまわってた時に「ギゼラさん(おかあさんい)に振り回された」って言ってた人たちの気持ちが、マイスさんとのお金関係の話を聞いた時以来かなまた少しだけ理解出来たような気がした。

 

 

 とにかく、私はただ、私がまだ知れていない「いなくなってからのおかあさんの足取り」の中で、おかあさんが周りに()()迷惑をかけていないことを家族の一員として祈ることにした。

 ……絶対、かけてるんだろうなぁ……。

 

 いや、でも、もしかしたら、ずーっと『はじまりの森』をさまよっててサバイバル生活みたいな感じで過ごしてたなら、まだ……!!

 

 

 

「……おかあさん? いちおう聞いておきたいんだけど、『ゲート』のむこうって『はじまりの森』だよね? そこでマイスさんと会ったんだよね?」

 

「そうだよ? フォローも何もしないで、他人の都合全然考えないでエラそうなことばっか言ってきた『あく何チャラ』とか言うのをぶっ飛ばしてから、ちょっとコッチに帰れそうな可能性がありそうってことで書置き残して『はじまりの森』に突入したんだよ」

 

 

「『あく何チャラ』って……あの、ギゼラさん? もしかしてですけど、それって『アクナビート』じゃぁ……?」

 

「ああっ、それそれ!! よく知ってるねぇ!」

 

「……『アクナビート』って確か、マイスのいたところの水の神様の名前よね? それも世界を創ったっていう……」

 

 ミミちゃんの口から出た言葉と、ケラケラと笑うおかあさんの姿を見て、久々にお腹がキリリと痛んだような気がした……。

 

 

 




 なお、まだ序の口の模様。
 トトリの胃がしに、ツェツィはぶっ倒れる。

 ……前にも書きましたが、ほぼ間違いなく原作以上に酷い帰還。
 ロロナやトトリ、その他大勢の頑張りとはなんだったのか……(意味はある)。

 次回『ギゼラの大冒険(ダイジェスト)』。
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総合評価:11033/評価:7.86/連載:22話/更新日時:2026年07月16日(木) 19:00 小説情報


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