後悔はしてません!
標的1 大空の迷い
「はぁ~、やっと終わった…」
夕焼けの街道。
そこには、一人の栗色の髪をツンツンにしたような髪型で中学の制服を着用し、中学生にしては幼い顔立ちをした少年が、腕をグッと伸ばしてストレッチをしながら歩いている。
この少年の名は沢田綱吉、通称ツナ。
何をやってもダメで、何かとドジを踏んでしまう事を除けば、どこにでもいる平凡で普通な少年である……一年前までは。
「情けねえな。そんなんでボンゴレ10代目になれると思ってんのか?」
しかし、突如自分の前に現れた、今彼の隣を歩いている黒スーツと黒い帽子を被った、
視るからに赤ん坊と思われてもおかしくない身長をした男の子……―――世界最強の
彼との出会いによって、ツナの運命は大きく変わった。
伝統・格式・規模・勢力すべてにおいて別格といわれる、イタリアの最大手マフィアである『ボンゴレファミリー』の10代目のボス候補であることを告げられ、立派なボンゴレ
その日から、彼の日常は非常識の世界へと変わっていった。
どこの教育機関や軍事組織でも絶対にやらない程の超スパルタで勉強や修業をさせられたり、彼が嫌がるのに関わらずどこか連れだしたり知らない人やマフィア関係者に会わせたり戦わせたり。そして裏世界の抗争、ボス候補をかけた争奪戦、世界の命運をかけた未来戦、過去の因縁による10代目ファミリー同士の抗争――と正に普通の中学生の日常から外れてしまっている。
だけど、そんな非日常を送りながらも、その日常でたくさんの友人や仲間ができて、そんなみんなと一緒に過ごす日々は綱吉にとって嬉しくて、楽しくてたまらなかった。
リボーンに会えたことは少し不幸だなと思いながらも、彼のおかげで自分は変わることができ、彼が家庭教師で良かったと思うことだってたくさんあり、感謝している。
でも……だからといって、この答えは今だ変わらない。
"何度も言わせるなよ…"と愚痴をこぼしながらも、ツナは告げる。
「俺は絶対にマフィアのボスなんかにならないからなっ!!」
もはや日常的に言ってる言葉かもしれない。
綱吉にとって、大きな権力も莫大な財産も必要ない。自分が楽しいと思える小さな幸せさえあれば、それでいい。そして綱吉自身、戦える力を武器に生きていきたくないと考えているのだから。
大体、綱吉は争いを好まない優しい性格の持ち主で、戦いでも仲間の身を誰よりも案じ犠牲にする事も絶対に行えず、自分の命を狙う敵であっても非情になれず、優しさや甘さを見せる。そのことから、綱吉を知るマフィア関係者の誰もが『マフィアのボスにはあまりにも不向き』、『集団を率いるボスとしては致命的弱点』と言われている。しかし、そんな評価を下されることに綱吉は何の不満もないし実に喜ばしいと感じている。
そんなツナに"全く進歩がねえな"とため息を付きながら、前の帰路に目線を戻すリボーンであった。
◆◇◆◇◆◇◆◇
人が未来に向けて歩く道は、いつだってその人自身が決める物だ。
だからこそ、ここから先の未来で綱吉はマフィアとは全く無縁の生活を送りたいと思っている。
だが……だが最近、シモンとの戦いの出来事から本当にそんな事でいいのかと思ってしまう自分がいる。
綱吉の脳裏に浮かぶのは――
『君はいつもそうだ。ボンゴレのど真ん中にいて、誰よりもボンゴレの力をあやかっているのに、いざとなったら責任逃ればかりじゃないか。ボンゴレの紋章を振りかざし、他人を巻き込み傷つけておいてボスを継がないなんて――虫がよすぎるよ』
『古里炎真』……マフィア、『シモンファミリー』10代目ボス。
過去にボンゴレの門外顧問によって家族を殺され、ボンゴレによって先祖代々自身のファミリーが苦しめられた経緯から、ボンゴレ10代目候補である綱吉を激しく憎んでいた。しかし、全てはある男の策略によるもので、今はちゃんと誤解も解け和解し良好な関係が続いてる。
この台詞は、まだ誤解が解けていない炎真の口から綱吉に告げられた言葉。当初綱吉に憎しみを抱いていた事から棘が含んではいるが、この言葉は事実に近い。
ボンゴレの力……今自分が使っている『ボンゴレリング』も『アニマルリング』も、そしてこの二つのリングを融合した『大空のリングVerⅩ』もボンゴレの遺産であり力。そして、仲間や友達を守るために、今ではまるで自らの体の一部の如く当たり前の様にボンゴレの力を使っている……何も間違っていない。
他人を巻き込み傷つける……これも同じだ。笹川京子、三浦ハル――誰よりも平凡で平和で、一般な道を歩んでいたのに、自分のせいで未来での殺伐とした世界に巻き込まれ、敵の強制だったとはいえ遂には自分達の戦いまで赴くことにまでなってしまった。
そしてそれは、今では当たり前の様に一緒に戦ってくれる《守護者》の皆もそうだ。
山本は野球、良平はボクサーという道があったのに、自身の《守護者》に選ばれ、命がけの戦いに足を踏み入れる様になり、10年後の世界ではボンゴレに加入し10代目の《守護者》としての責務を果たしていた。
元々ボヴィーノファミリーの一員であったランボも自身の"雷"の《守護者》となり、5歳という幼さで戦場に繰り出していくようになった。
自分をボスとして認め接する獄寺も、自身の野望のためにボンゴレを利用している骸も、骸のためだと言いながらも自分を慕ってくれるクロームも、強者との戦いのために何かと自分達を助けてくれる雲雀も同じ。
結局自分が巻き込んだせいで、彼らの歩む未来は変わってしまった。
それだけじゃない。未来の殺伐とした世界では、自分に関わった知人や友人、そして家族までもが殺され、もしくは行方不明となっていたのだ……自分と関わったせいで………
それなのにボスを継がないなんて。確かに虫がよすぎる。
次に思い浮かべるのは、先程の負の様なものでない……
『いつも眉間に皺を寄せ…祈る様に拳を振るう……だからこそ、私は君を……ボンゴレ10代目に選んだ……』
『ボンゴレ
"武闘派"と"穏健派"に分かれる歴代ボンゴレボスの中でも典型的な穏健派と呼ばれるも、彼の心優しい人柄に惚れ忠誠を誓う部下が大勢いる。
そして、綱吉をボンゴレ10代目候補に選んだ張本人である。だが、決して9代目はボンゴレを更に繁栄させるためだとか、他の組織を蹴落とし頂点に立ち続けるためとか、そんな欲深い考えがあって選んだのではない。
本来ボンゴレファミリーはマフィアとしてではなく、大切な人達を守る自警団として、
ボンゴレ創設者であるボンゴレ
だからこそ――
『綱吉君なら、今の肥大してしまったボンゴレファミリーを―――本来の在るべき姿に戻せるかもしれない』
『
『純粋なボンゴレの意思を継ぐことが出来るのは君しかいないんじゃ』
『君が一日でも早くボスを継げば、君の見たくない抗争や殺し合いが早くなくなるはずじゃ』
9代目は、ボンゴレファミリーが本来の姿である自警団に戻ることを願う一人である。
そして綱吉ならば、それが出来ると信じ彼を正式な後継者として選び、未来での戦い、そしてシモンとの戦いでその想いが確信へと変わった。
9代目は決して大袈裟に言ってるわけでも、気を遣って言ってるわけではないことぐらい綱吉だって理解している。
彼は本心を告げている。9代目だけじゃない、綱吉の人柄を良く知る者ならば誰だってこう言うはずだ。
でも綱吉は、普段のダメな自分を見て過小評価しているため、自分はそんな革命的な事が出来るとは思っておらず自覚できていないし、何よりも自分にとって重すぎると感じている。
勿論9代目は、無理矢理綱吉をボスに継承したりしようとせず、継がないなら継がなくても良いと言われた。最初の答えは継がないと答えた……だが今もしこの場で同じ質問をされたら――正直答えることが出来ない。
次に思い浮かべるのは、ある二人の記憶――
『俺達が買い集めた食料をパオロの家の納屋に落としてきた』
『君しかいないよ、ジョット!!』
『待っていろジョット。君を助けにいく』
『俺はコザァートの救援に行く! 後は頼んだ』
『ボンゴレⅠ世の命により……いや、お前とジョットの友情において、俺達がシモンファミリーを――死守する!!』
『言ってしまったね。マフィアの掟にしきらせてもらうよ――ジョット君にコザァート君』
『『両ファミリーが真の友情を取り戻せたならば――誓いが守られた証として、その意思は一つとなり、オレ達の炎を灯す!!』』
ボンゴレファミリー創設者、ボンゴレ
困っている者をほうって置けないお人好し、大事なものを大切に想う優しさ……二人はボンゴレ創生期前からとても気が合う親友同士だった。
時が経つにつれ、ジョットは自警団を立ち上げ、コザァートはある隠れ島でファミリーとひっそり暮らし始め、互いの連絡も手紙で行いながらそれぞれの道を歩んでいた。
しかし、ある一人の男の暗躍によって、これからの未来のため、マフィアの掟により二人はもう二度と会うことはなかった……
『だが俺達は信じてるんだ。マギーの子供の子供のそのまた子供、もっとずっとその先かもしれないが……俺達の意思を継ぐ真の後継者が現れて――』
『『―――再び笑い合える日が来ると』』
それでも二人は信じていた。これから先の遠い時代になろうとも、自分達の意思を継ぐ本当の後継者が現れ、あの頃の自分たちの様に笑い合える日が来ると。
そしてそれは、10代目ボンゴレファミリーとシモンファミリーが遂に実現させ、今では前の抗争が嘘の様に、お互いが笑い合える楽しい日々を過ごせている。これこそジョットとコザァートが想い描いた光景……
シモンとの一戦一戦後で託される二人の記憶……それを視て綱吉が感じ気づいたのは――
ジョットとコザァートの絆の深さ……
そして、ジョットがどういう想いでボンゴレを築いたのかを……
最後に浮かぶのは――
『お前のやり方を見せてもらいましょう、沢田綱吉。ただし、名を汚す様な事があれば許しませんよ―――エレナの愛したボンゴレなのだから』
『
最初は自身のボス、ボンゴレⅠ世と共に常に弱者である市民を守り、貴族、政治家といった腐敗した者達を正していった。しかし、
二度と同じ過ちを繰り返さないため、そして自分に敵対する者を完膚なきまで潰すため、
その結果、ボンゴレファミリーは世界最大規模のマフィアとなり、人々にとって強さと同時に、ある意味で恐怖の象徴となった。
彼の行いは誰もが外道と呼ぶだろう。でもやり方が間違っていたとは言え、彼がボンゴレを想い、弱き者達の平和を願っていたのもまた事実。
一か月前、自分が思い描くボンゴレにとって不穏分子であるボス候補のツナを、シモンファミリーを利用して葬ろうとしたが――ボンゴレとシモンが起こした奇跡により、彼は敗北し、ボンゴレ創世記から永らえた生涯を閉じる事となった。
しかし
責任、期待、想い、託される。理由は様々だが、綱吉はそれを充分とは言えないが理解したつもりだ。
そして理解したからこそ、それを簡単に無視することなんて綱吉には出来なかった。
でも自分は、マフィアのボスに何かなりたくない思いもあるし、何よりも強い……
あれもいや、これもいや、家庭教師の言う通り自分は優柔不断すぎる……
一体自分はこれからどうすればいいのか……。その疑問が、最近の綱吉の思考の中でどんどん埋め尽くされていく……
◆◇◆◇◆◇◆◇
「…………」
そんな綱吉の様子を、リボーンは黙って見つめていた。綱吉の家庭教師として常に一緒にいるリボーンが、彼のそんな気持ちを気づかないわけがない。
でもそれに対してリボーンは口を挟まない。彼の使命は『沢田綱吉を立派なボンゴレ10代目に育て上げる』ことで、10代目にさせる事ではない。
本心では10代目になってほしいが、結局自分の道は自分で決めるものだ。
けど、今綱吉はマフィアのボスについて真剣に悩んでいる。いつもいつもただならないとの一点張りだったが、
それを密かに嬉しく思いながら――
「ガハハ!! 死ね、リボーン!!」
「失せろ」
「ぐぴゃっ!!」
――綱吉と共に帰路を歩んでいく。
「って、なに何事もなかった様に流してるんだよリボーン!! 大丈夫かランボ!?」
1.牛柄の子供、茂みから飛び出し手榴弾をリボーン目掛けて投げる
2.リボーン、息をするかの様に自身の相棒のレオンをバットに変身させ手榴弾を打ち返す
3.牛柄の子供、打ち返された手榴弾で爆破され吹き飛ばされる
という動作が先程の台詞で行われていた。
そして現在、爆破を受けた子供を抱える綱吉であったが「が・ま・ん……――できな~~~い!!!」と子供は大声で泣き叫び、思わず耳を塞いでしまう。
……というか、綱吉にとって見慣れた光景だからツッコまないでいるが、本来手榴弾やダイナマイトといった爆発物を正面から受ければ、子供であろうが大人であろうが重軽傷を受けるのは確実。
なのに目だった外傷もなく、ただ泣き叫ぶだけで済むなんて考えられない――と考える人もいるかもしれないが、それでツッコまれるとキリが無くなるので勘弁……
まぁ、今泣いてるこの子供は普通という枠に当てはめるには流石に無理がある……
このモジャモジャ頭で牛の柄の服を着た子供は『ランボ』。この見た目で年も5歳という幼い子供でありながら、イタリア中小マフィア『ボヴィーノファミリー』の一員であると同時に、綱吉を守護する6人の守護者の内の一人である、"雷"の《守護者》である。
本来ランボは、リボーンを暗殺するために日本へ来たのだ。それが最初の失敗から綱吉の家に居候するようになり、今では立派な沢田家の一員となっている。
今回リボーンに手榴弾を投げて暗殺しようとしたのも、自分の使命を思い出し久しぶりに行動を開始したのだろうが、結果は失敗。
というか、標的がリボーンじゃいつ成功するのか。未来永劫無理な様な気がすると綱吉は思う。いや、暗殺者がランボに限らず凄腕の殺し屋であろうと誰にでも言えることであるが……
しかしランボも男の子なのか、それとも負けず嫌いなのか、このままやられっぱなしは我慢ならないのか――
「リボーンの大馬鹿野郎!! 変な揉み上げのくせに!!」
「って、こんな所で『10年バズーカ』を使うのはやめろよ!!」
――自身のモジャモジャ髪の中から、あれ?この髪の中でこんなバズーカが入ってるなんておかしくない!?というツッコミが飛んできてもおかしくない、ピンクの色をしたバズーカを取り出す。
しかもこれはただのバズーカじゃない。バズーカに撃たれた人間を現在から10年後の人間と5分間だけ入れ替えることが出来るボヴィーノファミリーに伝わる伝説の兵器、『10年バズーカ』。
大抵今の自分の力で勝つことが出来ず我慢の限界が訪れるとバズーカで10年後の自分と入れ替わっているが、入れ替わっても勝負の結果は大して変わらないことが多い……
話は戻るが、一応ここには自分達以外の人がいないとはいえ、こんな一般的な場所で10年バズーカを使うとするランボに焦る綱吉。
しかしリボーンにとってはどうでもいい。ただの子供の戯言と流せばいいのだが、リボーンにとって格下にバカにされるのは我慢ならず、更に自分のチャームポイントについてもバカにされ――
「天へ昇れ」
「ぐぴゃ!!」
一瞬で間合いを詰め、ランボの顎を上空へと躊躇いもなく蹴り飛ばした……
(あ、相変わらず容赦ねえ!!)
誰に対しても容赦ないリボーンに改めて戦慄を覚える綱吉――だったが、彼が今だ持つドジの体質は彼を傍観者でいさせてはくれない。
「へぶっ!!」
ランボが蹴飛ばされたことで、持っていた10年バズーカも同様に飛ばされた――綱吉の顔面に。まるで吸引機の如く、見事綱吉の顔面にクリティカルヒット! そして打ちどころが悪かったのか、彼の意識は闇へと落ちた……哀れ綱吉。
しかし彼の受難は終わらない。綱吉にぶつかったバズーカはその拍子で上空へと上がっていき、やがて重力に従って綱吉に落下していく……このままではもしかすれば10年バズーカに被弾するかもしれない。
それに対してリボーンは「相変わらず自分のことに関してはダメツナだな」と、呆れるだけで何もしない。
別に10年バズーカに被弾しても当事者に害はなく、ただ5分間10年後の未来へタイムスリップするだけ。それに10年後の綱吉がどうなっているのかという好奇心もあったためリボーンは手出ししな――
「――っ!」
殺気を感じた。
自分達がいるこの場所に向けられた明確な殺気を。
殺気の強さは体内に溜めておいた空気がちょっとした油断で少し口から漏れた感じだ……
リボーンは世界一の殺し屋という肩書を持つ男。
それ故に敵の殺気、殺意を手に取るように把握することなどわけない。例え自身の身を隠そうと、ここから
「ちっ!」
彼はすぐさま懐から自分の愛銃『チェコ製、Cz75の1ST』を取り出し、殺気を感じた方向へ構え迎撃しようとするが――
ボン!!という爆発音と共に自身の視界がピンク色の爆煙で埋めつくされる。
これを意味するのは――10年バズーカの引き金を引かれたのだ。
そしてそれは綱吉が立っていた場所から煙が舞っていることから、つまり綱吉が被弾したのだ。恐らく、煙が晴れたそこには10年後の世界からタイムスリップして来た沢田綱吉が現れるだろう。
だが、リボーンはこの状況に違和感を感じていた。
(何だ、何か引っかかる……)
はなから見れば綱吉は10年バズーカに被弾しているように見えた。現に10年バズーカが放たれた後に出るピンク色の爆煙が舞っていることから、引き金が引かれたのは確かだ。
しかしリボーンの暗殺者としての能力は世界一と言っていい。もし、その世界一の殺し屋としての動体視力や感覚が見間違いじゃなかったら―――
――綱吉は10年バズーカに被弾していない。10年バズーカの引き金が引かれる直前、綱吉の気配が消えた……確かにリボーンは感じた。
そしてその証拠を裏付けるかの様に……
「ぐぴゃ。誰もいないもんね……」
そう、ランボの言う通り。
煙が晴れたそこに―――綱吉はいなかったのだ。
仮に10年バズーカに被弾すれば、今ここに10年後の綱吉がいるはずだ。
数か月前の10年後の戦いの時はある装置によって、バズーカに被弾しても10年後の自分は出ることはなかったが、今その装置は止まっているはずなので10年後の自分が出てこないはずはない。
ならこの現象は一体どう説明すればいい?
リボーンが知る限り、先程の状況で人間をこの場から瞬時に移動させる現代の装置も、技術も、そして死ぬ気の炎も知らない。
いや、一つだけ心当たりがあるが、
そして更に――
「殺気が消えた……?」
先程自分達に向けられた殺気、それと同時に気配が消えたことにリボーンは瞬時に気付き、急いで自身の相棒、記憶形状カメレオンの『レオン』に双眼鏡に変身してもらい、
殺気を感じた場所――ここから数km離れたビルの屋上をそれで覗き込み確認を行った。
しかしその場には人の影すらなかった……
「一体、どうなってやがる……」
◆◇◆◇◆◇◆◇
「……任務完了。"大空"のボンゴレリングの保持者、沢田綱吉をあなた様がいる『アースランド』の世界へと送りました」
『よくやった。これで我らの悲願へとまた近づいた』
周りはまるで漆黒に染まった夜空の様に真っ暗な場所。
それは限られた者にしか認知、入ることができない空間。
その道を、この暗い空間の中では目印になってると言っていい程の輝く白色の髪に藍色の瞳をした一人の青年らしいが者がいる。
暗闇ゆえに男の特徴はそれぐらいしか認識できないが、今男は手に何かを持って誰かと会話を行っている。話し方はまるで仕事関係の部下と上司の様な話し方だ。
「…彼の6人の《守護者》はどうしますか? 命令とあれば彼らも――」
『いや、必要ない。確かにあれを解くにはボンゴレの6人の守護者も必要だが、"大空"さえいれば充分だ。それに奴らを相手となると深追いは禁物……ボンゴレを甘く見るな』
「……承知しました。しかし、彼らボンゴレの技術力を以てすれば、私達の世界を渡るのは時間の問題かと」
『それならそれで構わない。守護者が来ようが来まいが奴らの運命は変わらんさ……それより早く帰還してくれ。まず、この世界に来たであろうボンゴレ10代目がどこに現れたのかを調べなければならん』
「そうですね。私もボンゴレ10代目が住む並盛町という土地に辿り着くのに、時間を少しばかり取られましたので」
『そう言う事だ。最初は『イシュガル大陸』から探し当てるか……西の大陸にあるあの帝国に落ちていない事だけは祈ろう。あそこは無駄に土地が広いからな』
この会話だけで一体彼らが何の話をしているのか、裏社会の人間なら少しは内容を理解できるかもしれないが、全てを理解なんて出来はしない。
全てを理解するためには、まず彼らの言うアースランドの世界を理解することから始めなければならない。
では、その世界とやらを知っている彼らは一体何者なのか?
『ふっ、それではアースランドでまた会おう……『リオコルノ』』
「了解です……」
会話を終えたのか、リオコルノと呼ばれた男は仕事で一区切りついた社会人の様にフゥ…とため息を吐きながら耳に当てていた物を懐にしまい、先に続く道を歩いていく。
ここまでは全て自分達の思惑通り。後は向こうの世界に迷い込んだ沢田綱吉を見つけ、来るべき時まで待つだけ。そしてその時が来れば……
そんな中、リオコルノの脳裏にある一人の男が浮かんでくる。
沢田綱吉を狙う際、誰にも感知されない自信があった自分の存在に気付いた、この世界最強の7人の内の一人を。
「…流石は
しかしこの場を突き止めることは例え彼であろうと不可能。
何せ今自分が歩くこの場所と彼のいる場所とは既に
「この世は表裏一体、コインの表と裏の面があるからこそ一枚のコインがある。そして
光と闇があるからこそ、表社会と裏社会があるからこそ……世界があり、成り立つ」
リオコルノはまるで状況を呑み込めない者がこの場にいるかの様に語りだす。
そして……最後に物語の始まりだと言わんばかりに、男は告げる。
「炎と魔……表と裏の力が交わる時、どのような物語が紡がれるのか……見届けさせてもらおうか」
オリキャラも登場しますが、基本メインは原作キャラです。
自分にはほかに作品があるので亀更新となる可能性があるのでご了承を。
ではまた次回お会いしましょう。
感想、指摘があればよろしくお願いします!