FAIRY TAIL~全てを包み込む大空の軌跡~   作:綱久

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標的3 明日への軌跡の選択

 寒気が奔った。

 視界が真っ暗になった。

 体中が震えあがった。

 身体が恐怖に染め上がる。

 顔がみるみる内に青くなっていく。

 

「ツ、ツナヨシ君!? どうしたの、様子が――」

 

 ミラは綱吉の様子がおかしい事に心配の声をかけるが今の彼には彼女の声は届かないし、答える余裕なんて全くない。

 

 綱吉は絶望した……

 ここは自分がいた世界でも10年後の世界でもない……魔法が発達した『平行世界(パラレルワールド)』……もしくは自分の世界と異なる時空や世界である『異世界』という可能性もある……もしもファンタジーやSF好きのマニアならば今の状況を喜んだり感動するなどのリアクションを取るであろうが、生憎綱吉はその分類には入らないし今はそんなことはどうだっていい……問題なのは――――自分がいた元の世界に帰られるかどうか……

 いや、元の世界に帰れないこともそうだが……何よりも思うこと、それは――

 

 ――自分にとって大事で、誇りでもあり、かけがえのない……友達や仲間ともう一生会えないかもしれないことだ……

 いや、"かも"なんかじゃない。

 もしここが自分の世界と同じ文化、技術、科学力……そして死ぬ気の炎があるなら可能性はあったかもしれない。でもここは世界そのものが自分のいた世界と全く違うのは明らか……つまり――自分の知識の中でこの世界には帰る手段は何もない……

 もしかすればこの世界に何かヒントがあるかもしれないが、ある保証はどこにもないし、まず自分なんかじゃ探し当てることすらできないだろう……

 綱吉は自分を過小評価している部分があるが、ある程度は自分のことは分かっているつもりだ。死ぬ気になればある程度は戦えるが、それ以外は自分一人ではたかが知れている……仲間の助けがあったから……みんなが自分のそばにいてくれたからこそ、自分はここまで生きてこられたし、前へ進むことができた。

 彼らなくしては綱吉は途中でくじけ立ち止まり、最悪の場合はこの命を失っていたかもしれない。

 

 しかし、ここには誰もいない……

 自分のそばにいてくれる友達も……頼りになり一緒に戦ってくれる仲間も……自分をいつだって導いてくれた家庭教師も……

 そして……自分が帰るべき、大切な居場所も……ここにはない。

 

「……はは」

 

 思わず笑い声が零れてしまう……自分が情けなさすぎて……

 ああ……改めて思い知った。自分一人じゃ何もできない……みんながいなければ何の気力も起きない……

 

 ここには何もない……

 あるのは友人や仲間に会えない絶望と喪失感だけ……

 そんな想いを抱いただけで自分は暗くて冷たい絶望の海へと沈んでいく感覚が襲ってくる……

 

 こんな想いをずっと抱き続けるくらいなら、もういっそ―――

 

 

 

「――え?」

 

 暖かさを感じた。

 全身に奔っていた寒さがなくっていくのを感じた。

 一体どうなっているんだという疑問に思わず閉じていた目を開くと、自分がミラに抱きしめられていると気づく。その姿はまるで、泣きちらす弟を安心させるよう抱きしめる姉の様に見えた……

 

「なに……してるんですか……?」

 

「……今の貴方を見てられなかったから……。だってツナヨシ君……泣いてる」

 

 ミラの言葉に思わず自分の頬に手をやる。

 それで自分が涙を流していることにようやく気づいた。

 

「……あなたには関係ないはずだ」

 

「……確かに私とツナヨシ君は、今日会ったばかりで数十分ぐらいしか一緒に時を過ごしていない……でもそんな貴方を見てると、心が痛んで……ほうっておけない」

 

 今だ悲しみと絶望の中に囚われているためか、つい冷たい反応をしてしまう綱吉だが、ミラはそんなことは気にせず彼の悲しみを少しでも癒さんと更に抱きしめる力を強める。

 

「ねぇツナヨシ君……良かったら話してくれないかな? 話せば少しは楽になるかもしれないし……私で良ければ力になりたいから」 

 

 ミラの言葉には自分を心の底から心配している想いが籠っているのが、超直感に頼らずとも分かる。そんな彼女につい話してしまいそうになるが、直前で口を噤む。

 いくら彼女といえど信じてもらえるわけがない。"自分はここの世界じゃない平行世界か異世界から来たんですよ"なんて言ったって頭のおかしい人としか思われない。

 平行世界や異世界なんて本来は架空のものであり、自分だって未来の世界で正一に教えてもらえるまではそう思い込んでいた。

 だからこそ、何て言葉を出せばいいのかと綱吉は悩んでしまう。綱吉自身嘘をつくのはあまり上手だとは言えず、先程のミラに言った偽りと真実を混ぜ込んだ話だってたまたま出来が良かったに過ぎない。このまま黙り続けるという手もあるが、それは単なる時間稼ぎにすぎず、いずれ時が来れば口を開かなければならない……こんな事なら、家庭教師から話術についてもっと教わっていればと後悔してしまう……一体どうすれば――

 

 

 

「――ミラ、入るぞ~い」

 

 そんな思考はこの部屋に入ってきた第三者の声によって遮られる。

 声のした方に目を向けると見るからに小柄な老人……どこにでも見かける歳を取り永く生きてきた老人がいた。表情は少々間が抜けている様なのほほんとした笑みを浮かべており、今の雰囲気に全く似合わない……にも関わらずまるで空気を読まない様にズカズカとその表情を浮かべながら入って来る。

 

「マスター……」

 

「ほう、今朝ギルド前に気絶しておった少年か。眼が覚めたようで何よりじゃわい」

 

「あ…ありがとう、ございます……」

 

「わしはここの魔導士ギルド《妖精の尻尾(フェアリーテイル)》のマスター、『マカロフ・ドレアー』じゃ。よろしくのう」

 

「……沢田、綱吉です。名前が綱吉で、名字は沢田です……」

 

 突然の来訪者の登場に流れていた雰囲気が変わった……いや、変えさせられたと言ったほうが正しいのかもしれない。

 先程から超直感が頭に訴えかけている……うまく隠しているが歴戦の猛者を思わせる覇気、そして組織を導く長としての雰囲気をこの老人が持っていることが分かる。

 それ程の人物ならば今流れていた沈んだ雰囲気を変えることなんてわけないのか……

 ただ組織の長としての雰囲気にどこか違和感を感じるが、これは――

 

「それで一体なんの話をしておったのじゃ? どうやら楽しい……といった類のものではあるまい」

 

 マカロフの表情が切り替わった。

 のほほんとした笑みから真剣味をおびた顔へと変わり、事の詳細を二人に求める。

 突然のマカロフの表情の変化に初対面の綱吉は戸惑ってしまうが、ミラはそんな彼の顔を知っているのかそんな色の反応は見せず、自分が現時点で分かっている綱吉のことについて説明する。

 ミラから詳細を聞き終えたマカロフは"ふむ"と顎鬚を触りながら考える素振りを見せた後で、今度は綱吉の方へと眼をむけ、今度は彼から説明を求めようとする。

 目と目が合ったことで一瞬逸らしたくなった綱吉だが、老人とは思えないマカロフの力強さを感じる目から逸らせなかった……

 

 その目から逃れられなかった綱吉は話した。

 勿論ミラ同様、本当のことは話さず偽りを混ぜ今の状況について話した。

 自分が帰れない状況にあるのかもしれないというのに、綱吉は信じてもらえないという想いと自分のことで巻き込みたくないという想いから本当のことを話さなかった。

 

 嘘だとバレない自信はあった。

 偽りを混ぜたとはいえある意味では本当のことだし、最近はあの家庭教師からその部分についての教育も少ししてもらったし、先程のミラだって気づかなかった……なのに――

 

「嘘じゃな」

 

 この老人は気づいた、自分がついた偽りの言葉を……

 胸がバクンバクンと高鳴り、嫌な汗が流れる。

 嘘を他人に見破れたとなれば誰もが見せる反応……それが重要なことなれば尚更。

 戸惑いを隠せない綱吉は一体何故分かったのかという表情を出していためか、マカロフはその疑問に応え始める。

 

「儂は今年で88歳でのぅ。永く生きた恩恵なのか、それとも元から持っていたのか知らんが……そのおかげか、お主の様な若造の言ってることが偽りか本当なのかぐらい分かる」

 

 "そしてもう一つ…"と、間を空けて、これが本題だと言わんばかりに告げる。

 

「お主は悪意があって嘘をついたのではなく……何か理由があって嘘をついたという事もな」

 

「っ!!」

 

「信じてもらえない……他人を巻き込めない……恐らくじゃがお主が話さん理由はそんな所かのぅ……、まぁまずは話してみなさい。どんな話でも儂は真剣に聞くし、これでも儂は度胸はあるほうじゃ」

 

 "じゃから遠慮はせす、ほれ"と、マカロフは綱吉を不安にさせない様ニカッと笑って見せるが、綱吉自身は何もかも自分のことを見透かされている様なマカロフの発言にある種の恐怖を感じていた。

 それ故なのか、綱吉はつい目の前の老人に向けて、普段の自分なら上げない怒鳴り声を上げてしまう。

 

「なんで……なんでミラさんといい、貴方といい!! 何で初めて会った俺にそんなことを――」

 

 

 

「――泣いている子供を放っておく大人がどこにおるんじゃ」

 

 今度こそ何も言えなくなった……

 偽りも、思惑も、裏もない、本心から放ったであろう真っ直ぐな言葉……

 それに心撃たれたのか、感心したのか分からないが、綱吉は言葉を失った……

 

「話してみなさい。もしかしたら力になれるかもしれん」

 

 マカロフのその言葉をきっかけに綱吉は、どんなことでも自分の唯一の味方である大事な家族の親に話す子供のように、自然に口を開いた……

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

「なるほどのぅ……こことは違う世界――平行世界、もしくは異世界から迷いこんだ……か。ミラ、今までそのような事例はあったかの?」

 

「……残念ですけど、私の知る限りでは……」

 

「やはりのぅ……これは前途多難じゃな」

 

「――ま、待って下さい!」

 

 当たり前のように会話してるマカロフとミラに思わず口を挟んでしまう。

 だってそうだろう……この二人の会話はまるで――自分の今起きてしまった状況を信じてるように話してる(・・・・・・・・・・・)のだから……

 

「……この話を信じるんですか?」

 

「なんじゃ、この話は嘘なのかの?」

 

「ち、違います!!」

 

 今度は偽りを混ぜず真実だけを語った。

 マカロフの誰しもが自分の親と思える雰囲気に流され、つい本当のことを言ってしまったのだ。当然鼻で笑われるか痛い子だと思われると予想していた。だからまさか、こんなにあっさり信じてくれるなんて思いもしなかった。

 そんな綱吉の心情を察したのか、二人は彼を安心させる笑みを浮かべながら――

 

「先程と同じじゃが、これでもだてに歳を取ってはおらん。偽りか本当なのかくらい目を見ればわかる」

 

「最初はちょっと騙されちゃったけど、今度は騙されないし信じられるわ。だってツナヨシ君、分かってもらおうと必死だったじゃない」

 

 唖然としてしまった。

 理由はそれぞれだが、自分の話を二人は信じている。果たして自分が彼らの立場だったら、例え超直感を持っているとしても彼らの様に今の自分と同じ立場に置かれた者の言葉を信じることができるだろうか。

 そう思えるほど、綱吉は二人の今の態度に唖然としてしまう。

 

「じゃがすまんのぅ、話してくれてなんじゃが……別の世界から迷い込んだなんて事例は聞いたことがなくてのぅ。詳しく調べてみないと分からん……じゃが恐らく……」

 

「……やっぱり、そうですか……」

 

 すまなそうに語るマカロフに綱吉は気にしていない素振りを見せながらも内心で落ち込んでしまう。期待していなかった……と言えば嘘になるが、もしかすればという希望があったためショックであるのは事実だった。

 

 やはり自分は元の世界には帰れないという事実は変わらない……

 再び暗闇の海の中に沈みかけようとした時―――

 

「……ツナヨシ君、君が良ければなんじゃが――」

 

 

 

"――妖精の尻尾(フェアリーテイル)に来んか?"

 

「――……はい?」

 

 マカロフが一体何を言っているのか、まだこの現実に打ち拉がれていた綱吉には理解できなかったし驚いた。ミラも最初はマカロフの言った言葉に驚いていたが、次第に彼の内心を理解し納得し笑みを浮かべる。

 

「ミラから話は聞いたじゃろ。この世界では魔導士が当たり前のように存在し、ギルドという一つの組織に集い、ギルドから寄せられる様々な依頼をこなし収入を得る……そしてこの妖精の尻尾(フェアリーテイル)もその一つ」

 

 今だその言葉を理解できていない綱吉にマカロフは魔導士ギルドについて改めて話す。そして……

 

「自分で言うのもなんじゃが妖精の尻尾(フェアリーテイル)はこのフィオーレという国の中でも1、2を争うほどのギルドでな、最新の仕事や情報もいち早く入って来る。……それらの中にもしかすれば、君が元の世界に帰れるヒントが見つかるやもしれん」

 

「っ!!」

 

 俯き気味だった綱吉の顔がガバッ!と上がる。

 無気力だった表情が少しばかりだが明るさが灯った。

 マカロフの最後の言葉は、それほど綱吉にとって無視できる言葉ではなかったから。

 

「勿論絶対あるとは言えんし、可能性は低いかもしれん……じゃが、0%ではない」

 

 確かに今まで綱吉の身に起こった事例はないため、低いというのは事実だろう。しかしマカロフの言う通り、可能性は0ではない。

 

「で、でも……俺は魔導士じゃ……」

 

「なあに、だったらこのギルドのウェイターでもやってくれれば良い。現にここでは魔導士以外の者も勤めておる、魔法が全てではあらせん」

 

 魔導士ギルドという名だからこそ魔導士しか入れないと思った綱吉は口にするがマカロフは構わないと告げる。

 このギルドには酒場や料理店があるため料理人やウェイトレスがおり勤めているのは魔力を持たない人であり、だから君は拒みはしない、と。

 

 この世界の住人ではない、右も左も分からない綱吉にとってマカロフの話はとてもメリットがある。そしてまだ可能性の話だが元の世界へ帰れるきっかけを掴めるかもしれない。普通なら二つ返事で提案に乗ってもおかしくないほど……

 

 だが……それでも、それでも……

 

「なんで……なんで、初めて会った俺にそこまでしてくれるんですか…?」

 

 決してマカロフを疑ってなどいない。

 まだ会って間もないが彼の人柄は分かったつもりだし、超直観でも彼の言葉に偽りではないと判断できる。でも、やはりこれほど待遇を迎えさせてくれるとなると何故自分にそこまでしてくれるのかと疑念を抱いてしまう。

 

 綱吉のそんな心情を理解したのか、このような態度を取って当然だと思っていたのか、マカロフは本心を口にする。

 

「世の中には孤独を好む者がいる……しかし、孤独に耐えきれる者は誰もおらん。そしてお主は明らかに孤独を嫌う――いや、孤独を恐れておるのが分かる」

 

「っ!」

 

 的を射ている言葉に思わずドキリとしてしまう。

 あの家庭教師に出会う前……何をやっても駄目で友人もおらず、ずっと一人だったあの時の自分だったらそんな想いを抱かなかった……でも今は違う。

 少しずつ大事な友達や仲間がたくさんできていき、彼らと一緒に過ごしたい、笑い合いたい、失いたくない、守りたいと思うようになった。だからこそ、孤独を恐れていると告げたマカロフの言葉にドキリとしたし、否定もしない。

 

「目が覚めたら自分が住んでいた世界とは全く違う世界におり、そこには自分の心許せる友人も知人も、家族もいない……儂にはお主の気持ちが分かるなどとはとても言えんし、同情などすればお主は怒るじゃろ」

 

「………」

 

「じゃが、今のお主を放っておくことはできん。とても悲しそうに、今にも消えてなくなりそうなお主をな」

 

「……っ!」

 

「そんな若者を見捨てるなど儂には耐えきれんし、自分を許せなくなってしまう……」

 

 マカロフの、正に大人の鑑とも言える思いやりの言葉に綱吉は再び言葉を失う。果たして彼と同じ心を持った大人が……いや、人間がいるのだろうか、そう思える程だった。

 

「そして妖精の尻尾のメンバー全員が仲間であると同時に家族でもある。彼らはお主を拒みはせんし必ず受けいれてくれる――決してお主を一人にはさせん」

 

 今だ言葉を失っている綱吉の前に立ち、マカロフは手を差し伸べる。

 その手はまさに、言葉通りの"救いの手"だっだ。そしてそれと同時に……

 

「これは救いであると同時に、お主が明日の軌跡を歩むための選択。どれだけ提案しても、結局選ぶのはその人自身……人には選ぶ資格がある。この手を取って儂らと共に歩み帰る方法見つけるのもよし、手を取らず一人で探し歩むのもよし……どうか後悔のないように」

 

 ……正直綱吉は、この手を取るべきなのかと一瞬思った。

 自分がこうなったのはあらゆる不運な出来事が重なって起こったとはいえ、自分一人の問題。本来なら自分で解決しなきゃいけないこと……だけどこの世界のことは全く知らず、自分一人ではやれることは限られているのも、また事実。

 

 だからと言ってマカロフの案に簡単に乗るのもどうか、何せ彼の提案はまるで自分が元の世界に帰るために妖精の尻尾(フェアリーテイル)を利用しろみたいに聞こえて嫌だったし、今だ自分のことで巻き込みたくない想いもあった。

 

 でも……自分は帰りたい。

 ハチャメチャな非日常で、苦労も絶えない、これからだって怖い事や大変な事、そして命がけの危険だってあかもしれない場所……

 それでも自分は帰りたい……自分が大切に想い、自分を変えてくれた、これからもずっと一緒にいたい友達や仲間……そして家族がいる、あの場所に。

 

 そしてマスターマカロフ……彼が自分を心から想っての提案を無下にしたくない。

 それに……これは完全に自分の感情なのだが、マカロフ、ミラ……彼らの様な暖かい人達が所属している魔導士ギルド『妖精の尻尾(フェアリーテイル)』……"そこにいる彼らと一緒に歩んでみたい"……そんな想いが後押しされ―――

 

 

――綱吉はマカロフの手を取った。

 

 それが一体何を意味するのかを理解できていたマカロフとは自分の息子を眺める親の様な慈愛を含んだ笑みを浮かべながら……

 

「ツナヨシ君……いや、ツナヨシ。今日からお主は妖精の尻尾の一員であり、どんなことがあっても仲間でもあり、そして家族じゃ。その事を決して忘れぬよう(・・・・・・・・)にな」

 

「は、はい……」

 

「さて、本来ならこのままお主を仲間の前に連れていき自己紹介させたいところじゃが……ミラ」

 

「はい、マスター」

 

 マカロフの言葉にミラは彼とはある意味で同じで違う、弟を眺める姉の様な慈愛の笑みを浮かべながら―――綱吉を自分の身へと抱き寄せた。

 

「ミ、ミラさんっ!!?」

 

 先程は状況が状況だったため乱れることはなかったが、今はミラの女性特有の柔らかさや匂いに顔を真っ赤に染め上がる。しかも顔は彼女の胸に丁度収まる形になっているため恥ずかしさは尋常ではない……そんな中、更なら暖かさが綱吉を包み込む。

 

「マ、マカロフさん……?」

 

 マカロフまで自身を抱きしめる。

 勿論身長の関係でミラ同様床から立ったままでは出来ないのでベッドの上に上がってやっと出来る行為だ。一体二人ともどうしたんだと尋ねようと口を開きかけよう――

 

「――ツナヨシ君……ううん、ツナヨシ。泣いていいんだよ」

 

 ミラの言葉に自身の中で掛けていた我慢というブレーキが外れそうになる。

 先程少しばかり涙を流していたが、あれはほぼ無意識で、泣いたとはあまり言えない。まだ初めて会った者達の前では泣けないという思い、男としてのプライドなのか、綱吉は泣かず内に多く溜めこんでいた。

 

 だが、今はそれが外そうになっている。

 それでも何とか堪えようと外れかけようとしたブレーキをを締めようと――

 

「はぁ……全くお主は、儂が言ったことを早速忘れてるのぅ。言ったじゃろう、儂らは仲間であり家族。お主はもうその一員じゃ……そんなお主に、今もなお悲しみに囚われてほしくないんじゃ」

 

「っ!!」

 

「今は泣きなさい、心内に抱えている悲しさも苦しみも……全てを洗い流すほど。家族として、胸ぐらいは貸してやるわい」

 

 この言葉をきっかけにブレーキが外れた。

 瞳から涙が流れ頬を伝う……口にする声に嗚咽が混じる……

 

 綱吉は泣き続けた。

 今まで貯め込んでいた貯蔵タンクにある水を全てを放出する様に涙を流し……全てを洗い流す恵みの雨の様に心内に抱いた悲しみや苦しみ、そして絶望を洗い流す……

 

 でもこの涙は立ち止まるために流すのではない、前へ進むため……明日への軌跡を歩んでいくために流すのだ。必ず、必ず……みんながいる世界へ帰るためにも……

 

 そんな泣き続ける綱吉を、マカロフとミラはただ黙って胸を貸し続けるのであった……




早速ですけどアンケートを取りたいなぁと思っています。
その内容はツナのヒロインは誰にするのか!?です。

ツナのヒロインは二人で、候補は『ルーシィ』、『ジュビア』、『レビィ』、『ウェンディ』の四人です。本当は自分で決めなくちゃいけないのですが、この四人は自分にとって誰もが魅力的で選べなかったのが本心です。

なのでアンケートを取って誰をヒロインにするのかを決めたいと思っています。あ、勿論全員ヒロインでOKという案も大丈夫です。

活動報告に作っておくので、それに投票して下さい!
一人で二人のヒロインを選んで投票して下さい! もし全員ヒロインOKという方はヒロインには投票しないで下さい。
結果はどうなっても、自分は既にどんなヒロインのルートでの物語の道筋を決めており、もし『ジュビア』や『レビィ』がヒロインに選ばれて、公式でカップリングになっている『グレイ』と『ガジル』の対応(リボーンかフェアリーテイルのキャラとくっつけるか、自分・もしくは皆さまが考えたオリキャラとくっつける案)も考えていますので遠慮なく、ツナのヒロインに相応しいと思える人にドシドシと送って下さい! もし少なかったり投票がなかった場合は自分が潔く決めますので。

さて、次回は早く投票したいと思っていますが、そろそろもう一つの自分の作品である『リリカルなのは』の方にも更新させないといけないので、少しばかり遅れますがご了承ください。

それではまた次回!
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