FAIRY TAIL~全てを包み込む大空の軌跡~   作:綱久

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二日遅れですが、あけましておめでとうございます! 今年もどうかよろしくお願いします!

さて、本来なら自分のもう一つの作品の『リリカルなのは』を更新してるはずだったんですが……それに関して今はガチのスランプ状態に入っており、考えが浮かばず無駄に日が過ぎていく日々を過ごすことになって……なので先にこの話を更新しました。

『リリカルなのは』を楽しみにしていた方はすいません。いずれスランプを克服して更新を再開したいと思いますのでお待ちいただけると幸いです。

それではフェアリーテイルをどうぞ!



標的4 妖精の尻尾

 フィオーレ王国

 1700万人の人口を持ち、主な産業は酪農・園芸農業。X622年にて永世中立国に認められた王国。

 この世界では魔法が当たり前の様に存在し、当たり前の様に人々の生活を支えている。そして魔法を駆使して戦う者を『魔導士』と呼び、世界各地にある様々な魔導士ギルドに所属し、依頼に応じて仕事を行う。

 

 そのフィオーレ王国に数多に存在する一つの町、『マグノリア』。王国東方にある街で、人口6万人で古くから魔法も盛んな商業都市。

 

 そんな町に、ある一つのギルドが存在する……

 

 その名は――『妖精の尻尾(フェアリーテイル)』。

 

 

 

 綺麗で見上げるほどの石造りの高い建物、まるで小さなお城と言っていいだろう。

 入り口の門の上には大きな看板があり、【FAIRY TAIL】と書かれている。

 門の扉を開け中に入ると、長テーブルがいくつもあり、ある者は楽しそうに談話し、ある者は気持ちよく食事や飲酒し、ある者は愉快に喧嘩しているなど、このギルドにとって当たり前の光景であり、ギルドならではの騒々しさだ。

 

 その当たり前の光景に、一般とはかけ離れた存在がテーブルに座って食事をしている。

 

 桜色の髪と鱗模様のマフラー、右肩に赤い妖精の紋章、凶暴性が顕著に出ている鋭いツリ目が特徴の少年、『ナツ・ドラグニル』が、彼だけの特注の品である"ファイアパスタ"、"ファイアチキン"、"ファイアドリンク"を食している。

 

 "へ~、ファイアパスタにファイアチキン……何か辛そうな料理だね♪"なんて名前だけ見て思う人がいるかもしれないが、断じて違う。

 

 この料理、文字通り燃えている――というか炎その物だ。

 

 こんな物誰が食べるの?というかまず口に入れる事なんて出来ないでしょ!と一般の人なら口を揃えて言うであろうがナツは何の苦もなく、むしろ嬉々として手を伸ばし、美味しそうに食している。

 

 普通な人間なら――いや、どんなに鍛錬を積んだ魔導士ですら、こんな事が出来るはずはない。しかし、ナツはある意味で特別な魔導士なのだ。

 

 彼の魔法は《滅竜魔法》と呼ばれる、稀少すぎる竜迎撃用の太古の魔法(エンシェントスペル)であり、あまりの強さと術者の副作用により使用が禁止、時が経つにつれ忘れられた失われた魔法(ロストマジック)の一つでもある。

 術者の体質を自らの属性の竜に変換させることで、常人を超える程に身体能力が強化される。それに加え自分と同じ属性のものを食べることで体力回復、身体強化などが可能なのだ。その魔法を扱う魔導士を、人は《滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)》と呼ぶ。

 

 そしてナツが司る属性は"炎"……つまり彼にとって炎は恐れる物であらず、寧ろ賛美される物である。その魔法ゆえ――いや、それと関係なくナツの喧嘩早い性格ゆえ……彼はフェアリーテイルの戦闘派の魔導士で、強さはこのギルドの中でも折り紙付きでトップクラスを誇っている。

 

「あはは…いつ見てもナツの食事って凄いよね」

 

 ナツと向かい側の席に座り口にしたのは『レビィ・マクガーデン』。青色の髪にカチューシャと少し小柄な体型が特徴的な少女。いつも暇を見つけては、本を読む程の本好きで、語学に長け古代文字の分析や魔法の解除が得意な学問派で、ナツとは正反対の魔導士だ。

 

 現在、彼女は目の前の光景に少々苦笑いしている。いくらナツの魔法の理屈を分かっており時間が経つことで見慣れているが、圧倒されることに変わりはない。

 

「レビィも食うか?」

 

「いや、まず私は炎を食べられないよナツ」

 

 そりゃそうだ。炎を食べられるのは同じ属性を持つ滅竜魔導士のナツだからこそだ。他の者に炎を食べろなんて言ったら拷問以外の何物でもない。

 

「ナツ~、早く食べて仕事行こうよ~」

 

 ナツの肩辺りでぷかぷかと背中から生やした二本の翼で浮いている青い猫、『ハッピー』が呼びかける。ナツの相棒的存在であり、(エーラ)と呼ばれる魔法を使う魔導士だ。

 

 "猫が喋ってる!? つうか翼生やして飛んでるとかどういう事!?"と、常人ならそう思わずにいられずツッコミを入れるだろうが、ギルドメンバーにとってはもう見慣れた光景で気にする者は誰もいない。

 

 ハッピーの言葉に"そうだった!!"と、残っている炎料理を掃除機で吸い込むように食べ終え、依頼書が載っているクエストボードへと早々と走って行く。

 

「…全く、いつまで経っても変わんないねぇナツは」

 

「ふっ、それでこそ漢ぉ!」

 

「カナ! それにエルフマンも!」

 

 レビィの席に二人の男女が加わる。

 

 一人はウェーブのかかった茶髪のロングヘアに、上半身は水着のビキニ様な物だけを纏うといった、露出度の高いラフな服装が特徴的な『カナ・アルベローナ』。

 若い世代のギルドのメンバー中でも古参であり、その実力はギルド内でも上位にも入る実力者……なのだが、18歳の身でありながら、とんでもない酒豪で、今も樽に入った酒を手に持ちグビグビと気持ちよく飲んでいる。(この世界で飲酒は15歳から認められている)

 

 もう一人はカナと同じくギルド上位実力者の一人である、身長が二メートル近くもあり、銀髪で色黒で筋肉質で、学ランのような服を着用し見るからに暑苦しいと思わせる大男である『エルフマン・ストラウス』。

 年中漢!漢!漢!漢!と叫び喧しい男なのだが、戦いでは常に正々堂々と戦い、情に厚くて涙脆い面を持ち決して悪い人ではないので、あしからず。

 

「そういえばレビィ、聞いた? 今朝ギルド前に倒れていた男の子の話」

 

「あぁ…その話ね。確か今は部屋の奥で寝てるんだよね」

 

「今姉ちゃんが見てるからな、流石は漢ォ!」

 

「ミラは女でしょうが……にしても見知らずの奴を保護するなんて、私達がこのギルドに入る時といい、本当マスターってお人好しねぇ……」

 

「あはは! そういうカナだって、実際にそういう子が目の前にいたらほっておくことが出来ないでしょ? 昔からずっと孤児院の子供達の所へ遊びに行ってるし、カナってホントいいお姉さんだよね」

 

「う、うっさいわね! じゃあ言わせてもらうけど、アンタだって誰に対しても明るく笑顔で振舞って心が広くて怒っても仕方ない場面でも滅多に怒らず笑顔で許す……これをお人好しと呼ばずなんて言うんだい!」

 

「あ、あうぅ……そ、そういうカナだって――」 

 

互いが全く傷つくことはなく、逆に互いの更なる魅力が分かり好感が上がっていく口喧嘩、それに気づかず言い合うレビィとカナ……

 

「うおおおおおぉぉぉぉぉ!! 二人共漢だああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

確かに見てて好ましくて微笑ましいが、決して漢だからという理由でやってるわけではないし、この二人は女性だ……。取り敢えず、今涙を流し感動しているエルフマンの言葉は無視していい……いや本当に。

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

「ナツぅ、どの依頼にするか決めた?」

 

「ん~~、どれにすっかなぁ」

 

 現在ナツとハッピーは、依頼書が数多に載っているクエストボードの前でどの仕事をするのか悩んでいる。

 魔物と呼ばれる獣や魔法を使った犯罪者の討伐、魔導士でなければ解決できない呪いの解除や古代文字の解読、一般人でもこなせる業務や雑用、と依頼書の内容は多種様々。

 

 そして戦闘派の魔導士であるナツが最も得意とする依頼は討伐系で、今まで討伐できなかった魔物も魔導士もいない。……といっても、彼の魔法は周りに甚大な被害を及ばすため、器物破損によって報酬金を引かれるのが常だが……

 

 

『危険魔物の討伐・報酬金80万J』

 

「お、いいの発見!」

 

 自分にピッタリで更に報酬金も良い依頼を見つけ、嬉々としてその依頼書に手を伸ばそうとすると―――誰かの腕とぶつかり合う。

 

「「――あぁ”?」」

 

 その相手に向き合った瞬間、ナツも相手も機嫌が悪くなる。それはそうだろう。何せこの二人……出会えばすぐに喧嘩へと発展させてしまうのだから。

 

「……何してんだタレ目野郎」

 

「……見りゃ分かんだろ、仕事するために依頼書選んだんだ。そんなことも分かんねぇのかツリ目野郎」

 

『グレイ・フルバスター』。

 黒髪で顔立ちも整っており、見るからにイケメンの青年で女性からさぞかしモテる……所構わず服を脱ぐ抜き癖がなければ。現に今は上半身裸で下はパンツだけという、"お前は海水浴にでも行くのか?"というツッコミを思わずいれたくなる。酷いときは街中で全裸を披露し、『評議院』と呼ばれる、この世界の警察・司法組織にお世話になりかけた事なんて数えるのが馬鹿らしいほどだ。

 しかし彼の魔導士としての実力は本物。

 武器や物体を自身が生み出す氷によって造形する『氷の造形魔導士』で、その実力はナツと共にギルド内でトップクラスの実力を持つ男。

 

 そしてナツとグレイ……仲が超絶悪いとか互いに酷く嫌っているとか、そんな感情を抱いているわけでは決してないのだが、昔から出会えば口喧嘩から始まり殴り合いへと発展していくのだ。

 

 ギルド内にいるメンバーは『また始まった』、『ホント、懲りないな…』と呆れるだけで止めはしない。あの二人が喧嘩するなんて日常茶番と言っていいほどやっているし、止めになど入れば自分がとばっちりを受けるのは明白だから。

 

「離せよ、これは俺が先に見つけた依頼だ」

 

「いや同時だ、つうか俺はクエストボードを一目見てこの依頼にするって決めたんだ。ここは決断力が速かった俺に譲れや」

 

「バカかテメェは。俺は一時間前からこの依頼に目をつけてたんだ、だからこれは俺のだ!」

 

「さっきまでどの依頼にすっか悩んでただろうが!? 嘘ぶっこいんてじゃねェぞ!!」

 

 互いに額を擦りつけ合い『やんのかゴラ!』と不良顔負けの脅し顔をぶつけ合うナツとグレイ。もし周りに年半端ない子供や喧嘩とは無縁の生活を送っている一般人が見れば即逃げ出すほどのレベルだ。

 このまま拳の一つでもお見舞いしてやろうかと真っ先に考えた二人であったが、これから仕事に向かうのに、今目の前に立つこのバカ相手に体力を使いたくないという思いからその考えを捨てた。ならば一体どうやって状況を打破しようかと考えたグレイであったが――

 

「よし。んじゃジャンケン、あっち向いてホイで決めっか。」

 

「…………はぁ?」

 

 突然のナツの提案に耳を疑い、思わず聞き返してしまった。

 いや、この状況で別にジャンケンを提案するのが不思議ではない。喧嘩早く、語るなら拳で語れ!がモットーなナツが提案したことが不思議なのだ。

 

「おいおい珍しいじゃねぇかナツさんよぉ。真っ先に拳を交えての喧嘩を始めるお前さんらしくないじゃねぇか」

 

「こっちの方が手っ取り早いだろ。それともグレイ、勝つ自信がねぇのかよ?」

 

「上等だよこの野郎……受けて立ってやらぁ!!」

 

 ナツとグレイの空気が変わった……表情は正に戦士の顔。二人から魔力が溢れだし、ナツは紅色、グレイは白銀色とそれぞれの魔法の特徴を表す色の魔力が溢れでる。

 

 魔導士が魔力を使うということは……依頼を、敵を、本気でこなし・倒すことの表れ。

 

 それでもう全員には分かるはず……この二人は本気で勝ちにいこうとしていることが。

 

 だからこそ、二人が勝負にかける想いは同じ―――"この勝負、決して負けられない!!"

 

 

 

「……何でたかがジャケンであそこまで魔力をむき出しに出来んだ?」

 

「あい! ナツとグレイだからです!」

 

「それで納得できんのがある意味で恐ろしいな……」

 

遠くからナツとグレイのジャンケンを傍観する、チーム『シャドウギア』の一員である『ジェット』と『ドロイ』は、ハッピーの言葉に何故か説得力があってあの二人があそこまで本気になるのか、つい納得してしまう。

 

 

そしてジャンケンの結果はと言うと……

 

 

 

ナツ→グー

 

グレイ→チョキ

 

 

 

「よっしゃあああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

「くっそおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

 勝利したナツは歓喜の声を、グレイは悔しそうに声を上げる。その姿、まるで学校最後のスポーツ大会で見る勝者と敗者にも見えなくもない……凄く大袈裟だけど。

 

 

 

「……相変わらずリアクションが大袈裟だねあの二人」

 

「そんなんで一々あの二人にツッコミを入れると疲れるぞ」

 

 『週刊ソーサラー』というフィオーレ中に広まっている雑誌で『彼氏にしたい魔導士』上位ランカーの魔導士『ロキ』は毎度のことながらリアクションの一つ一つが大袈裟な二人にため息をはき、胴体だけ何故か大きく『絵画魔法』の使い手で絵を書くことを趣味としている魔導士『リーダス・ジョナー』はは見慣れているからか、あまり気にせずスケッチブックで絵描きに集中。

 

 

 

「調子こいてんじゃねぇぞ! まだジャンケンに負けただけで、まだあっち向いてほい!が残ってるんだからな!」

 

「問題ないね! 次も俺が勝つからな!」

 

 方やここで負ければ敗北してしまうが、ここを乗り切れば勝つチャンスが巡って来るグレイ。方や王手をかけて勝利まだ後一歩だが、このチャンスを逃せば振り出しに戻ってしまうナツ。

 

 だからこそ二人は意識を集中させる。

 

 この勝負に勝って仕事に行くために……そして何よりも、目の前に立つコイツにだけは絶対敗北という二文字を自分に刻ませないために!!

 

「あっち向いて――」

 

 まるで相手にタイミングを計らせないようなタイミングで、ナツは素早い速さで人差し指をグレイ目掛けて突き出してくる。その速さは銃から発射された銃弾のような速さに匹敵するほど……

 

 常人なら目で追いつけず、思わず逸らしたくなりそうになるが、グレイは微動だにせずナツの指先を冷静に眺めていた。

 

(俺はお前の指から決して目を離さねぇ!!)

 

 いつ指先がどの方向に向くのかを見極め向いた方向とは違う方へと顔を向けるため、指の動きを凝視し、言葉の通りグレイは目を離さなかった。

 

 

 ナツの指とグレイの目との距離が15cm……まだ真っ直ぐだ。

 

 距離が10cm……まだ方向転換しない。

 

 距離が5cm……いい加減そろそろ方向転換させるだろう。

 

 距離が1cm……ここで曲げるつもりだろう。さあ、動かせ!!

 

 距離が0cメぶすっ――……あれ?左目が真っ暗になっ――

 

「ぎゃあああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!! 眼がぁぁ、眼があああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

「俺の勝ちだな、かっかっかっか!!!」

 

 左目の痛みに床を転げ回るグレイに、悪役に相応しい高笑いを上げるナツ……。

 詳細を説明すると、ナツは指を右にも左にもどの方向にも向きを変えず、ただ真っ直ぐに突き動かした。それゆえ、顔を全く動かさなかったグレイの目に綺麗に突き刺さったのだ……

 

 顔の向きを変えなかったグレイもそうだが、指を方向転換させなかったナツにも非が……というかこの悪役顔負けの高笑いから見るからに、わざとなのは明白。

 

「あっち向いてほいと見せかけての眼潰し!?」

 

「相変わらずエグいな!」

 

「いや、これどっちかと言うと卑怯じゃねえのか?」

 

「漢としてあるまじき行為!!」

 

 西部大陸からの移民し西部劇にでてくるよう衣装を纏っている魔導士の『ビスカ・ムーラン』と『アルザック・コネル』は相変わらずやる事一つ一つがエグいナツの行いに改めて戦慄し、ギルド内でも上位の実力を持つ『ウォーレン・ラッコー』はナツの行いを冷や汗を流しながらも冷静に卑怯と指摘、エルフマンはウォーレンの言葉に共感し漢らしくないと叫ぶ。

 

 さて、見事ナツにしてやられたグレイであるが……勿論やられっぱなしなのは彼の性分ではないし、他なら兎も角ナツに負けるのだけはどうしても許せない。

 

 だからこそ未だ痛みが奔る左目を押さえながら、彼は今だ勝利の余韻に浸っているナツへと立ち上がり――

 

 

「……あ、ギルダーツが帰ってきた」

 

「何ぃぃ!? 帰ってきたのかギルダーツ!!」

 

 『ギルダーツ』……ナツにとってとても無視できる名ではなく、思わずグレイから意識を外してその男を目で探す。

 

 勿論嘘だ。数秒も経てばナツにだって嘘だと理解できる嘘だ。しかしその数秒、ナツが自分に対して意識を外してくれれば、この技の準備の時間は充分稼げる。

 

 手を組み、両方の人差し指だけをつきたて、狙いを定め……

 

 

「くらえナツ!! ジイさん直伝奥義、サウザンドキルぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!」

 

 

 ぶすっ!!とまた何かに突き刺された音が聞こえる。

 

 正し今度は目潰しではなく……――肛門潰し。

 

「あ"あ"あ"ああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 悲鳴を上げ、力なく倒れるナツ。

 

 

 

 この奥義……

 人間の尻穴を砕き

 人間の肛門を潰し

 人間の寿命を確実に縮める体技奥義……

 

 

 

 なんてまあ…ご大層に語り凄そうなネーミングだが――要するにただのカンチョーだ。しかしただのカンチョーとはいえ、その威力と狙い場所は馬鹿にならない。いくら竜から直々に滅竜の魔を教わった竜の子であろうと、急所に攻撃を受ければタダでは済まない。

 

「眼潰しに対抗して肛門潰しか…」

 

「こっちもこっちでエグいな」

 

「ていうか、あれのどこが秘伝奥義?」

 

 ギルド内で年輩の魔導士である『マカオ・コンボルト』と『ワカバ・ミネ』はグレイの反撃に少々引き気味でありながらも感心し、ギルドの中でも社交性が高い魔導士の『マックス・アローゼ』はあれのどこが秘伝奥義なのか問い詰めたい気分だった。

 

「何してくれてんだぁ変態氷野郎!! 尻が二つに割れちまったらどうすんだ!!」

 

「元から二つに割れてんだよ炎バカ!! つうか先に仕掛けたのはてめェだろうが!!」  

 急所攻撃を受けながらも、男の意地なのか根性なのかナツは立ち上がり、自分をこんな目に合わせた元凶と対立する。

 勿論先に仕掛けたのはナツでグレイの言い分は尤もだが、彼も昔ナツとの張り合い勝負で何度も策を巡らせ今回のナツのような行為をしているため、人の事は全く言えない。

 

「だあぁ!! もうジャンケンとかそんな温いやり方はやめだ!! 手っ取り早く魔法で決着つけてやる!!」

 

「いいねぇ、その方がどっちが上かハッキリさせてくれるからなぁぁ!!」

 

 瞬間、ナツからは周りを燃やしかねない熱気を、グレイから氷点下を軽く下回る冷気を発生させる。二人をよく知る人物ならば、彼らが今から何をするのか嫌でも分かるだろう。彼らは魔法を使おうとしている……しかも結構本気で。

 

「やべぇ! ナツとグレイが魔法で戦おうとしてやがるっ!」

 

「止めろぉ!! 誰かあの二人を止めろぉ!!」

 

「阿呆が!! あの二人を止められんならもうとっくに止めてるわ!!」

 

 周りが慌てるのも仕方ない。

 ナツとグレイはギルドの中でもトップクラスの実力を持った魔導士だ。殴り合いなら兎も角、この二人が魔法を使ってぶつかり合いなんてすれば、周りは勿論、このギルドの建物ですら崩壊することに間違いないのだから。並の魔導士では止めることは叶わず、それにあの二人の喧嘩に割って入れば被害は自分にも向いてしまう。

 だからこそ、誰もが止めたいという思いはあれど、動こうとする者はいなかった。あの二人を止められるのは、彼らと同等の実力かそれ以上の者でなければ無理だ。

 

「……ったくあのバカ共。魔法なんかで戦り合ったら私まで被害が及ぶじゃない。止めるよエルフマン」

 

「ふっ。喧嘩を力づくで止めるのも漢の仕事ォ!」

 

 その中で二人の強者が動き出す……カナとエルフマンだ。カナとエルフマンも妖精の尻尾の中でも上位に入る実力者で、それは周りも認めている。

 カナはカードを、エルフマンは腕を、自身のそれぞれの魔法の得物を取り出し――

 

「えーっと……カナ、エルフマン。二人共止めに入らなくていいみたいだよ……」

 

 一瞬横から声を掛けてきたレビィの言葉に眉を潜めたが、彼女の指が刺した方向に目を向けると"あぁ、成程"と思い、二人ともそれぞれの得物を下げた。

 

 自分達が止める必要なんかない。ナツとグレイ……あの二人を止めるに相応しい執行人が彼らに歩み向かっているのだから……

 

 

 

「「くたばれナツ[グレイ]ーーーーーーー!!!」」

 

 炎を、氷を、それぞれの拳に纏わせ、一斉に二人は拳を振るう。

 その一撃は遊びが全く入ってない本気の一撃。岩に当たれば容易く粉砕され、木に当たれば容易くへし折られる……そんな一撃。

 

 別に相手が本当に憎いからではなく、"好敵手には絶対負けらない!"、"コイツ相手にはどんな時でも全力だ!"という思いから来る本気の一撃。

 

 そして……遂に魔法を乗せた互いの拳はぶつかり合――

 

 

 

「「――くぺらっ!!?」」

 

 地に沈んだ、いや沈められた……誰かに横から殴られたのだ。

 

 ナツとグレイの互いに魔力を込めた一撃の間に割って入り、尚且つ二人の動きを強制的に止めるなどという技が出来るのは、彼らの戦闘力を上回る実力者でなければ無理だ。

 確かにこの二人はギルド内でトップクラスではあるのは事実だ。しかし、彼らより上の実力者がまだ存在する。

 

 例えば年中仕事ばかり行ってる破壊のオヤジとか、金髪でヘッドホンかけて如何にも自分は王様だぜ!みたいな羽織と風格を持つ雷お兄さんとか、顔も実力も知らないが最強の一人に数えられている霧の名を持つお兄さんとか……

 

 

 

綺麗な緋色の長髪の美人で鎧を着た『妖精の尻尾(フェアリーテイル)』女性最強のお姉さんとか……

 

「「エ、エルザぁぁっ!!?」」

 

先程の威勢が嘘かのように、二人揃って恐怖の声を上げる。

 

『エルザ・スカーレット』。

 普段着のように騎士が纏うような鎧を服の上から着用し、腰近くまで伸びた綺麗な緋色の長髪に凛として整った顔の美女。

 彼女こそ、ある特別な試練を乗り越え、S級と呼ばれる命の保証が全くできない依頼書を唯一受けおえ、マスターマカロフに認められたこのギルドに5人しかいない『S級魔導士』の一人で《妖精の尻尾(フェアリーテイル)最強の女》、またの名を《妖精女王(ティターニア)》の肩書を持つ強者である。

 

 仲間への想いは人一倍強く、仲間が抱えている悩みにも乗り励ましたり力になったりするなどの優しさを持ち、それだけを見れば強くて優しくて頼りにり、性別問わずつい憧れを抱いてしまう程の女性だ。

 

 ただ……彼女はルールに厳しい厳格で度胸があり大胆な豪胆で、男勝りの性格も持っている。そのためギルドメンバーは彼女のことを"嫌っている"とか"苦手だ"と言うわけではないが、ついビクっ!となってしまうレベルで恐れている。

 

 彼女のギルド内のポジションは、学校でいう風紀委員長……つまりギルド内の風紀を乱す者に対して注意したり、度が過ぎる者には自らの力をもって粛せ――制裁を行う役割だ。……今のナツやグレイの様に。

 

「ナツ、グレイ。お前達がいつも何かしらで張り合い、お互いを高め合っているのは知ってるし、それは良きことだと思う。だが、ギルド内で魔法を使ってやり合うのはやりすぎではないのか?」

 

 ギロっ!!と鋭く威圧感が籠った視線に睨まれ、まさに二人は蛇に睨まれた蛙。

 

 基本ナツとグレイは誰が相手でも臆せず立ち向かえる高い勇気も度胸も持ち合わせているのだが、エルザが相手では別。

 昔、勝負を挑んで返り討ちにされたりとか裸でウロチョロしてる所が見つかりボコボコにされたりと、理由は様々だが二人はエルザを恐れており、例え挑んだとしても酷い返り討ちにあうのがオチ。

 

 だから二人が真っ先に取る行動は……

 

「ま、待ってくれエルザ!! こうなっちまったのは全部ナツの責任だ!! 俺に罪はねぇ!!」

 

「グレイテメぇ!! 自分だけ助かるつもりかっ!!」

 

「いや、悪いのはお前だろ!? お前がまともなジャンケンをしてればこんな事にはならなかっただろうが!!」

 

「俺は悪くねぇ!! 悪いのは目潰し如きで怒ってやり返したテメェだろうが!!」

 

「目潰しておきながら責任を全て俺になすり付ける気かお前は!!?」

 

 ブチっ!!、と往生際が悪く互いに責任転嫁し合う二人にエルザの堪忍袋の緒が切れ……

 

「歯を食いしれバカ者共おおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

 ぎゃあああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!という断末魔がギルド内に響き渡る……

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

「……あの、あれ止めなくていいんですか?」

 

「大丈夫よ、いつもの事だから」

 

「いつもあんな事やってるの!?」

 

「そんなで一々ツッコミを入れたら身が持たんぞツナ。あれでもまだ序の口じゃ」

 

「序の口ってどう意味ですかっ!?」

 

 妖精の尻尾(フェアリーテイル)に入ることになった綱吉は、マカロフとミラに案内されてギルドメンバーがいる場所まで来たのだが……桜髪と黒髪の青年が緋色の髪をし鬼にも劣らない形相な女性にフルボッコにされている場面を目のあたりにしてしまった。

 

 だがミラとマカロフから言わせれば、この程度はまだ可愛い物で、酷い時はギルド全員が暴れてこの建物全体がぶっ壊され再建するハメになる程らしい。

 まさかここは自分がいた並盛と同じで非日常が毎日起こっているのでは!?と、軽くこの先の事に不安を覚えてしまう。

 

 なんて考え事をしていると、マカロフの室内全体に響く呼びかけでギルドにいる数十人全員の目が綱吉の方へと向いた。

 

 ある状況下、そして覚悟を決めた綱吉ならばこの程度の人数に注目されようと緊張することも狼狽える事もせず、逆に周りを落ち着かせ安心させたりとボスとして相応しい振舞いを見せるのだが……今回はそのある状況というわけでもないので、今はガチガチに緊張しており、醜態をさらしたらどうしよう!?と不安の事ばかり考えてしまう。

 

「今日からこのギルドに加わる事になったツナヨシ・サワダ、通称ツナじゃ。みんな仲良うするのじゃぞ」

 

 "ほれ、お主からも何か一言"というマカロフの言葉に発言権のバトンが渡されたことで更に心臓が高鳴る。

 注目を浴びるのはやはり好きではないし、緊張してしまうがそうも言ってられない。人は第一印象によって変わるとか言われてるし、ここが言ってみれば正念場。

 

 深呼吸を繰り返し、ようやく覚悟が決まった綱吉はみんなの前に立ち――

 

「今日からこのギルドにお世話になる事になった沢田綱吉です。これからどうかよろしくお願いしまちゅ――」

 

 

 

 "やっちゃったあああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!"と心の中で大声で叫ぶ。

 

(あんなに注意して自己紹介していたのに、最後の最後で噛むなんてそれはないんじゃないの!? 早速醜態さらしちゃったあああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!)

 

 しかしどんなに叫んでも時間が戻るはずはなく、このやってしまった時間を過ごすしかない。恐る恐るギルドメンバーの反応を見てみると、必死に笑いを堪えて俯いている者もいたり、大笑いして腹を抱える者(ナツ一人)もいたり、頑張れ!というエールを送る者がいたり、"お前の気持ちは分かるぞ"と同情な眼差しを送る者がいたりと様々だったが、誰しもが決して自分を馬鹿にするといった負の感情を込めていなく、逆に"面白そうな人"といった正の感情が込められている事が分かり、ここにいる人達が良い人達だなと感じる。

 

「だっはははははは!! 面白いなあいつ――くぼっ!!」

 

「ナツ。いくら悪意で笑っていないとはいえ、人の失敗を笑うとは何事か」

 

 大笑いしていたナツを拳一つで沈めたエルザは、先程ナツとグレイをフルボッコにしていた鬼の形相が嘘かのように、これから新しい環境を迎える新人に"何の心配もないぞ"と安心させる笑みを浮かべながら、宜しくの握手のため手を差し出す。

 

「ナツが失礼したな。これから同じギルドの仲間として歓迎するぞ、ツナ」

 

「ひいぃっ!」

 

 ……だというのに綱吉は悲鳴を上げ少し後ろに下がってしまう。

 

 それはそうだろう。綱吉とエルザは初対面でお互い何も知らず、どんな人物かも分からないが、綱吉は見てしまった。どれだけ鍛え上げた魔導士ですらも逃げ出し恐怖する程の鬼の形相で男二人をフルボッコにしている所を……。

 

 勿論理由なく拳を振るうような女性ではないことは分かるが、それでも綱吉にとってエルザは怖い女の人と認識してしまったのだ……やはり第一印象は大事だ。

 

 だがそんな事など知らないエルザにとって、自分に対して恐がる綱吉の態度に、ガーン!!とショックを受けており、暫し固まってしまった。そして何か知らない内に綱吉に何かしてしまったのではないかと恐る恐るミラに尋ねる。

 

「お、おいミラ……私は彼に何か恐がる様なことをしてしまったのか……?」

 

「それはね――」

 

 ミラはゴニョゴニョとエルザにしか聞こえないように、あの場面を綱吉が見てしまった事実を耳打ちする。 それを聞き終えたエルザは"自分は何て過ちを犯したんだ!"と、悪気がなく罪を犯した容疑者のようにズーンと落ち込み……

 

「わ、私は何てことを……。快く迎えなければいけない新たな仲間に恐怖を与えるなど……。私のせいだ!! 取り敢えず殴ってくれ!!」

 

「え、えぇぇぇ!!? い、いやそんな事出来るはずないでしょ!!」

 

「あぁ…お前、ツナっていったか。エルザは真面目だけど少々ズレてる所があってな、あんま気にしない方がいいぞ」

 

「で、でも何か俺のせ―――へ、変態だ!!」

 

「おいぃぃぃぃぃぃぃ!! 初対面の相手に変態呼ばわりはねェんじゃないのか!!?」

 

「全裸の人に言われても説得力がないんですがっ!!?」

 

「……どわあぁぁぁ!! い、いつの間に!!」

 

「オイラ、ハッピーっていうんだ。よろしくねツナ」

 

「あ、あぁよろし――って猫が喋ってる!!?」

 

「そりゃ喋れますよ、猫ですから」

 

「猫は普通ニャーニャーしか喋れないんですけど!!」

 

「へぇ……中々いいツッコミじゃない、気に入ったよ。これからお姉さんと一緒に飲まないかい?」

 

「お、お酒ぇ!!? しかも一杯が樽なんて多すぎのレベル超えてる!! そ、そもそも俺、14だから飲めませんよ!!」

 

「大丈夫だって。私が飲み始めたのは13からだから、アンタもきっといけるよ」

 

「貴方を基準に考えないで!! というか13から飲んでるって飲酒年齢を思い切り破ってるから!!」

 

「す、凄い……初対面なのに……こんな数々のボケに、的確にツッコミを入れるなんて……」

 

「それも……グレイやハッピーやカナはおろか、エルザ相手に……」

 

「こ、こいつ……ただ者じゃないぞ!」

 

「漢だぁぁ!!」

 

「遂に、妖精の尻尾(フェアリーテイル)に常識人が入るんだね……」

 

「それってここには誰一人まともな人がいないという意味なんですかぁぁぁ!!?」

 

 ぜぇ…ぜぇ…と休みなしでツッコミっぱなしだったため流石に疲れを見せる綱吉。

 

 何だこのツッコミ所が満載な集団は。

 自分がいた並盛の仲間と対して変わらない……いや、問題を間違えただけで銃で撃ったり、ダイナマイトを所構わず投げたり、群れてるという理由で咬み殺したり、"愛のためなら人は死ねる"とか言いながら毒物を食わせたり、修業やボンゴレ式と言いながらの地獄巡りをさせないだけでまだマシか……

 

 いや、自分はまだ彼らの事をよく知らない。もしかすれば自分の仲間達にも劣らない問題児の集団なのかもしれない……頭が痛くなる綱吉。

 

 というか、そんな事を基準に考えている時点で彼もまた普通ではないのかもしれない……

 

「うふふ。大丈夫ツナ?」

 

「ミ、ミラさん……何とか」

 

「ふふっ、やっぱり圧倒されちゃった?」

 

「ええぇ……ある意味で予想通りで、ある意味で予想外すぎて……」

 

「でも、それが妖精の尻尾らしいのよ。そしてみんな、貴方を歓迎してくれてる……それがよく分かったでしょ?」

 

「…………はい」

 

 ミラの言葉に、勘で理解していたのか綱吉は頷く。

 会話の内容や彼らの性格はともかく、ここにいる全員は決して自分を拒みはせず、当然のように快く受け入れてくれる。初めて会ったばかりなのに、どんな人物かも分からないのに関わらず……

 

 これも、マスターマカロフの教えによるものか……それともこれが彼ら自身の心の広さ…いや優しさ…それともただのお人好しなのか。

 

 "彼らはお主を拒みはせんし必ず受けいれてくれる"、マカロフの言った事が今ようやく理解できたような気がする。

 

 こんな自分を受け入れてくれる嬉しさと感謝、そしてこんな彼らと一緒の時間を過ごす期待……そんな感情を込めて、これから新たな仲間に声を掛けようと――

 

 

 

「お前ツナって言ったよな! 俺と勝負しようぜ!」

 

――エルザの拳に沈められたにも関わらず、僅か数秒で蘇ったナツに勝負を挑まれてしまった。




さて、ツナのヒロインは誰にするか!?……で、ミラをヒロインの一人に加えて!!という意見が多数来たこと、友人の薦め、そしてミラはお姉さん的ポジションだった自分もまぁいいか!という考えに至り、彼女をヒロインの一人に加えることにしました!!

なのでヒロインを3人に増やし、アンケートで選ばれた3人をツナのヒロインにしたいと思います!……最近では友人が『マフィアのボスなら奥さんがたくさんいても問題ないんじゃない?』、『ツナなら全員の好意をしっかり受け止め全てを分かった上で愛してくれる』など言われて、候補を全員ヒロインにしてとあ魔の上条ハーレムならぬ綱吉ハーレムにしようかとガチで悩んでいるんですけど…… まぁ、アンケートの結果次第なんですけどね!!

言い忘れてましたけど、アンケート期間は原作開始……つまりルーシィの登場する話までです!

さて次回はツナvsナツの戦い……ナツが規格外の滅竜魔法で圧倒するのか、それとも逆にツナが――……お楽しみに!
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