いやー、ホントここまで待たせてもらってすいません。
大学卒論、就活、FGO開始、卒業、就職、ガチャ爆死、研修――とここまで色々な出来事とスランプで今日まで書けませんでした。現在会社の研修中で、社会人マジ大変です、ハイ。
今日なんとか更新までいけましたが、やはり社会人は忙しいので更新の速度は遅いですが、これからもよろしくお願いします。
久し振りなので文才は落ちていますが、お楽しみいただければ嬉しいです。
では―――どうぞ!
額から炎が消え、鋼鉄のグローブは毛糸の手袋へ、橙色の瞳は元の茶色に戻る。綱吉の"死ぬ気"化が解けたのだ。
(はぁ……何とか終わった~。ナツさん……だよね? 少し強めにやっちゃったけど、大丈夫かな?)
自分が後ろから手刀を打ったことで、気を失い倒れている少年、ナツに目を向ける。
彼が使う炎の《滅竜魔法》―――体のいたる所から炎を発動させ、剰え口から炎を吐いた。まるで人ではない生き物と戦った気分だ。だがそれでも、
驚かなかったと言えば嘘になるが、やはり元の世界の経験で不本意ながら目が肥えてしまったため、驚きの度合いは少ない。
しかし、それは先程の手合せに限っての話だ。
彼、ナツ・ドラグニルは自力で抑え込んでいるのか、無意識なのか―――全力じゃなかったことが綱吉には分かった。
今回綱吉は戦うと決めたものも、これから新たな仲間になるナツをあまり傷つけたくない想いもあって、最小限の攻撃で終わらせようと短期決戦で挑んだのだ。しかし、この世界の魔法の見極め、そしてナツの思った以上の粘りで少しばかり長引いてしまった。
結果、勝利することができた。だが、もし長期の勝負を挑み、彼の中に眠れる潜在能力を余さず発揮されていた場合は、勝敗がどうなっていたのかは分からない。
更に、この戦いの中で綱吉には一つの違和感を感じ取った。
それは、彼の炎の咆哮ブレスと自分が発し形成した炎による壁が激突した時のことだ。《妖精の尻尾》の一員の目から見れば、先程起こった橙色の炎の現象は信じがたいものだったはずだろう。
それは当然だ、あれは炎であって炎ではない。
これは《死ぬ気の炎》と呼ばれる、闘気オーラを超える超圧縮エネルギー。更に《死ぬ気の炎》には属性がいくつも存在しており、綱吉が持つ属性は、持つ者が稀と言われる程の希少価値が高い"大空の炎"。
"大空の炎"の性質は『調和』。並程度の戦士が出す炎であれば、その性質の影響を受けるのは同じ炎だけ。ただ綱吉のような熟練の戦士ならば、色は鮮やかで純度が高い炎を容易く引き出せ、属性の特徴は《死ぬ気の炎》だけにとどまらず、世界に存在する全ての
ただ、先程はスムーズに属性の特徴を受けているように見えた。まるで《
勿論自分の勘違いという線も否めないが、それで片付けてしまってはいけないと"直感"が頭に響いてくる。しかし、まだ情報が少なすぎる綱吉にさっきの現象の答えは出せない。取り敢えずこの件は保留に――
『ツナが勝ったあああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!』
『お前すげーよ!! あのナツに勝っちまうなんて!!』
『こりゃ期待の新人だな!!』
『うおおおぉぉぉぉ!! 漢だったぞツナあああぁぁぁぁぁ!!!』
「――え、え……えぇぇぇぇ!!?」
考え事に集中していたためか、《妖精の尻尾》のメンバーが自分を囲んでいたことに気づかず、今現在進行形で綱吉は頭を撫でたり肘でついたりして、揉みくちゃにされている。
最初は驚き戸惑った綱吉であったが、彼らから暖かさを感じたことから次第に受け入れていく。死ぬ気モードである自分を見て、自分に対する彼らの態度が変わっていくんじゃないかと心配したが、彼らの様子を視る限り、その心配は杞憂だったようだ。
しかし、正直心の中では嬉しさ半分で複雑半分だ。勿論、称えられたり褒められるたりして嬉しくないわけはないのだが、やはり戦闘面で評価されるのは正直複雑。だが、今は素直に新たな仲間の受け入れよう。グレイにワシワシと頭を撫でられたも、エルフマンにバンバン背中を叩かれても、カナに腕や脚や体を確かめるようにナデナデ触られたり服の下から直接体を触られ――
「――ちょ、ちょっとどこ触ってるんですか!!?」
「いやーほら。アンタって見た目からじゃやっぱ強そうに見えないからさ。体に何か秘密があるかなーと思ってちょっと――」
「――ちょっとでも駄目に決まってますよ!! というか少し酒くさいんですけど!!」
「ほうほう、顔を真っ赤にさせちゃって。お姉さんに触られて照れているとみる」
「そ、そりゃ……綺麗な年上の女の人に触られたら……」
「嬉しいこと言ってくれるじゃないツナ~。ま、
「や、やっぱこの人酔っ払って―――私が?」
「気を付けなよツナ。ほら、あそこに青髪にカチューシャかけた女子がいるだろ。あの子もアンタの体に興味示して今でも触る機会を窺ってるよ」
「…………」(黙ったままレビィから距離を離れようとする)
「ちょ、ツナ君!!? 違うよ、私はそんなつもりは全くないからね!! ちょっとカナ!! ツナ君に誤解を与えるようなこと言わないで!!」
「ナツに勝っちまうなんてやるじゃねーかツナ。最初は見た目でお前の強さを判断しちまって悪かったな」
「あ、ありがとうございます変た―――えっと……」
「よしまず自己紹介だ俺の名はグレイ・フルバスター断じて変態という名じゃないからよく覚えておけ!!」
「ひいぃぃぃぃ!! す、すいませんでした!!」
「いや、ツナは全然悪くないからね。悪いのは変態と思われても仕方ない格好をしているグレイが悪いから。現にグレイ今全裸だし」
「……ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁ!! は、恥ずかしい!!」
「と、というか――なんだツナのこの怯えよう……」
「さっきまでと同一人物なのか疑いたくなるな……」
「あ、あはは……ですよねー」
「自分で肯定してどうすんの?」
「ツナ、お前滅茶苦茶強ぇな!! 次は絶ってぇ負けないからな!!」
「お、ナツが目覚めた」
「復活早すぎじゃないですかこの人!!」
「あい。それがナツなのです」
「それで納得しろと!!?」
どこの世界に行こうと、自分の
「はーーいみんな、注目!!」
盛り上がってる中手をパンパンと鳴らし、ミラが全員の視線を自身に集めさせた。
「みんなツナに聞きたいことはたくさんあると思うけど、そのまえに――まずはツナの歓迎会をやらなくちゃね♪」
『『『おおぉぉぉぉ!!!』』』
(へ、歓迎会?)
たかが新人の自分何かのために、そこまでする必要あるのかつい口にだそうになったが、ここにいる全員誰もが乗り気で反対する者はいない。その状況の中で、場の空気を乱す発言をするような綱吉ではないし、心の底からの善意で自分を歓迎してくれるような彼らに、"自分なんかのためにそこまでする必要はない"とは言えない。ここは素直に彼らの好意を受け取ろうと、彼らと共に足を―――
「―――いや、それは少し待ってくれないか」
不意に、制止の声が聞こえる。これがただの一般魔導士なら反応する者は少なからずいるだろうが、全員が一斉に反応する程ではない。だが、現に全員がその声に反応した。
それもそのはず、今静止の声を上げたのが――この《妖精の尻尾》の中でも最強の一人とされるS級魔導士――《
―――しかも何故か綱吉を抱えて。
「―――あれ?」
いつの間にかエルザに自分が抱きかかえることに気付く綱吉。抱きかかえ方は、女性の誰もが憧れるであろうお姫様抱っこ。普通抱く方と抱かれる方が逆じゃねぇの?と言いたくなるが、何故か全員が口を開くことはなかった。
「それではマスター、先程話したとおり、少し行って参ります」
「ふむ、早めに帰ってくるんじゃぞぉ」
「はい―――そういうわけなので、みんな。ツナを少し借りていくぞ」
「いや、あの……俺全く状況が理解できないんですけど……行くとか借りるとか一体――」
「心配するな、そう時間はかからない。それではツナ、行くぞ!」
「いや人の話を聞い――――ってなんでぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!?」
綱吉の言葉に耳を傾けることなく、エルザは彼を抱えたまま―――"消えた"。
「……え?」
流石に"消えた"という言葉には少しばかり語弊があるが、神速の如くこの場から走り去っていったので、ある意味で"消えた"というのは正しい。
あまりの出来事に全員がポケーっと呆けてしまっていたが、時間が経つにつれ正常に戻り――
「ツナが誘拐された!?」
「しかも俺達の身内に!!」
「と、取り合えず評議員に連絡――」
「いや、だから俺達の仲間が俺達の仲間を誘か――」
「ごめん、ちょっと何言ってるのか分かんない」
――この通り騒ぎはじめた。
「あの……マスター」
「大丈夫じゃよ。エルザからは事前に聞いておる」
「……それは、どういう事ですか?」
エルザに限って心配はないと思うが。やはり心配の色が隠せないミラの問いに、マカロフは顎鬚をこすりながら"ふむ"と呟き――
「少し、ツナと二人きりで話したいことがあるそうじゃ」
◆◇◆◇◆◇◆◇
「さあツナ、存分に戦い合おうじゃないか!」
「ええええぇぇぇぇぇぇぇぇ!! 無理矢理連れて来ての第一声がそれですか!!?」
現在エルザによって強制的に連れて来られた綱吉は彼女と共に、ギルドから少し離れた森の中にいる。この空間には二人しおらず、そして綱吉は現在進行形でエルザにいきなり剣を突きつけながら、またしても勝負を挑まれている最中である。
「ふっ冗談―――と言いたいところだが、やはり先程から体が疼いていてな、戦いたいのは本音だな」
「この人もナツって人と同じ戦闘狂!? 嫌ですよもう戦うの!! もう俺の力を見せたんですから、戦う必要はないでしょ!!?」
戦いに否定的な態度を隠すことなく表わす綱吉。先ほどのナツの腕試しという名の模擬戦を受けたのは、あくまで自分の実力を見せるためで仕方なく戦っただけで、普通ならどんな理由があれど戦いや喧嘩といった争い事はしたくない。
そんな綱吉に戦いを申し込んだ張本人であるエルザは、彼の今の態度に不満は全く抱いていない。むしろやはり彼は本当に争い事が嫌いなんだと改めて理解した。
そう、そんな彼だからこそ聞かなければならないことがある。だから――
「――ここに連れて来たのは―――ツナ、君に聞きたいことがあるからだ」
―――場の雰囲気を変えた。
先程まで浮かべていた誰もが親しみしやすい笑みは閉じられ、その眼は"嘘は許さない"と訴えかけるように真っ直ぐ綱吉を見据え、《妖精の尻尾》最強の"魔導士"の一人である、《
その気迫を正面から受けた綱吉は"ひぃっ!"と一瞬悲鳴を上げるも、次第に落ち着き、困惑しながらもエルザと顔を合わせる。そんな綱吉の反応に、"本当に戦いの時は別人なんだな……"と心中で苦笑いを浮かべながらも、ここに彼を連れて来た理由を語りだす。
「マスターの目が節穴ではないことは私も理解しているし、君が《妖精の尻尾》の一員になることに異論は全くない。現にギルドのみんなは君は歓迎している。無論それは私も同じだ―――が、これだけはどうしても聞いておきたい。ツナ―――いや、ツナヨシ・サワダ。君はこれほどの実力を
「――え?」
予想もしなかった問いに綱吉は一瞬呆けてしまうが、エルザは構わず言葉を続ける。
「どうして戦いになるとあれ程人が変われるのか? 額に炎が灯るのか? 毛糸の手袋が鋼鉄のグローブに変わるのか? 魔法もなしに炎を出せるのか? その力をどこで手入れたのか? それを持つツナは一体何者だ? と、ギルドのみんなが抱いているであろう疑問を口にしたが、それについて君が話さない限り、私は追及するつもりはない。私が知りたいのは、実力を身につけ極めた理由だ」
「あの炎の力……詳細はまだ分からないが、確かに見る限り強力なのは見て分かる。だが、数々の実践と修羅場を乗り越えない限り、ナツとの戦いで見せたあれほどの動きが出来るはずもない――いや、強いわけがない。だからこそ聞きたい……君は一体、それほどの実力を手にしたその理由を」
突然だが、この世界の"魔法"は基本――覚えて身につける『
だが、現在ではそれら以外の方法で"魔法"を扱える者が存在している。
一つ目は『
一応、爆弾魔水晶のような戦闘に使える『
そしてもう一つは―――エルザもこの眼でまだ見たことがなくマスターマカロフに聞いた話なのだが、『
マカロフ曰く、『異能系』だからと言って誰も彼もが強いわけではないが、全員がこの世の魔導士では決して習得できない、『
話は戻るが、エルザは綱吉の橙色の炎の力は『
綱吉の橙色の炎の希少さも理由の一つだが、何よりも彼の態度だ。綱吉に対してのナツの模擬戦申し込みの際、綱吉は大きく反対していた。力をあまり人前に見せたくない理由も確かに彼にはあったのだろうが、先程の彼の態度も観て、綱吉という人間は争い事を好まないことがよく分かった。
それならまだ納得できた。そんな人間なら"戦闘力"もない、ただ"力"を持っているだけの人間だと思うことができたからだ。
しかし、綱吉が戦闘の始めに見せた歴戦の戦士と思わず感じさせる威圧感、ナツとの戦闘の際に見せた動きと反射神経、ナツの動きを冷静に見定められる観察眼……。どれも"力"だけを持っているだけじゃ説明ができない。何せそれらは、数々の修練や実践経験を積まなければ決して手に入るものではないからだ。
だからこそ、エルザはこうして綱吉に問いかけている。彼の人柄を見る限りでは、後ろめたい事情はないのだろうが、それでも彼自身の口から聞かない限り自分は納得しないし、綱吉を本当の意味で仲間として接することは出来ない。
「い、いや……そんな……! な、ナツさんに勝てたのは、まぐれみたいなもので………!」
明らかにごまかそうとしているのが見え見えの綱吉の態度。別にこれは綱吉に後ろめたい事情があってのことじゃない。自分の戦闘面の話を出来る限りしたくないことも理由の一つであるのだが………
そんな綱吉の心情を知らないゆえか、"やはり初めて会った者に対してそう易々と話せないか"と思ったエルザ。しかし、これだけはどうしても彼の真意を知りたい。それを知れば、"沢田綱吉という人間がどういう者なのか"が分かる……そう予感している。だから、少しばかりやり方は好ましくはないが―――
「まぐれでナツに勝てはしないさ。それとも話せないのは――――何か後ろめたい理由があるからなのか?」
「――――っ!」
「金か? 名誉か? それとも自身の欲望を満たすた―――」
「―――違う!!」
エルザの声が、綱吉の強い否定な言葉で遮られる。
流石のエルザも目を丸くし、言葉がでない。綱吉のテンションが変わることは先程の戦闘で分かっていたが、それは戦闘の際に限ってだと思い込んでいた。さっきまでのオドオドした態度が一変して、戦闘で見せた表情とは、また違った真剣な表情でエルザを見つめている。そんな彼の姿に、一瞬ではあるがエルザは気圧された。
「確かに……人は自分の利益のために動くのが普通だ。だから貴方がそう思ったって仕方ない。でも――」
人間は全て、自分の利益のために動くものだ。自分の利益しか考えず相手の利益を考えない行動をとる者も存在するが、相手の利益だけを考えて自分の利益を考えない者は存在しない。つまり、『これは自分のためではない。相手のためだ』だと口にする人物は、100%偽りであると言わざるを得ない。自分の利益のために行動することは当たり前のことであり、それは決して、自己中心的なことではないのだ。自己中心的であるとは、自分の利益のみを考えることであり、自己中心的でないとは、自分の利益と相手の利益を共に考えることだ。
つまり、この世には自身の利益のためにしか動かない人間と、自身の利益と共に相手の利益のために動く人間の二人が存在している。
綱吉は後者の人間、戦闘時の自身と相手の利益の比率は自分への利益が圧倒的に少ない。それも、自身の利益も力ある者から見れば本当に些細なことだ。だが綱吉にとって、それが何よりも大切なのだ。だからこそ―――
「―――俺はこの力を、私利私欲のためや己の力を誇示するためなんかに使いたくない。俺は―――仲間を守るために使いたいんです!!」
この言葉は綱吉の決意の言葉であり、誓いでもある。
自身の名誉のためではない、自身の欲望のためでもない―――仲間を守り、共に笑い歩んでいきたいという、決して覆らない自分の願い―――いや、覚悟だ。
「さっき模擬戦を受けたのは、俺の力を《妖精の尻尾》の皆さんに見てもらうためで、俺的にはこれ以上戦うのはごめんというか……だから、すいません」
そんな綱吉の姿に対し、エルザに驚きはない。戸惑いもない。あるのは、"やっぱりか"という自分の目と予感に偽りがなかった安心感と幸福感。
「君の気持ちはよく分かった。本来なら、この話で納得し君を受け入れ、ギルドに帰るのが普通だろう。だが話を聞いて尚更――――君と戦いたくなった」
「なんでぇっ!!?」
自身の偽りない気持ちを伝えたはずなのに、それでもなお自分と戦おうとするエルザに、どうやったら納得してもらえるの!?と苦悩してしまいそうになったが―――
「――私が培ってきた今の力と、これから更に強くなっていく理由は―――君と同じだからだ」
「――――え?」
「……詳しくは
「っ!」
エルザの突然の言葉に綱吉は言葉を無くしてしまう。しかしエルザは続ける。この少年は自身の真意をしっかり話してくれた。勿論全てとはいかないだろうが、紛れもない本心を。ならば自分は話せねばなるまい。まだ全部とはいかないが、それでも自分が想っている本心を。
「この世界は色々と物騒な世の中でな。理由は様々だが、私のような孤児はいくらでもいる。そんな親も、幼馴染も、友も失ったこの私に孤独から救ってくれたのが、《妖精の尻尾》だ。私はそこにいるのが嬉しくて、楽しくて………私は《妖精の尻尾》の一員であることを誇りに思っている」
「…………」
「私はこの居場所を、そして仲間を、ずっと守っていきたい。だからこそ、私は強くなりたいんだ。誰一人失わないように。ギルドのみんなといつもと変わらない日々を過ごしていくために」
『《妖精の尻尾》最強の女』、《
しかし、エルザは現状に満足していない。まだ知らないだけで、このイシュガル大陸には自分よりも上のクラスにいる魔導士などいくらでもいる。例えば、今自分と話しているこの少年のように。正確には彼は魔導士ではないのだが、ナツとの戦闘を見る限り――軽く見積もっても、自分と同等以上であることは分かる。
いくら自身で鍛錬を積み上げて強くなったと思っても、それがイコール実践で役立つとは全く言えないし、強さの上限を上げるのにも限界がある。やはり強くなるためには、対人戦がどうしても必須である。それも、自分に匹敵する実力者が。
だがエルザの強さは、他の魔道士とは一線を画しており、《妖精の尻尾》内でも彼女の相手になる者はほんの一握り程度。そしてそのほんの一握りの相手も、個人のそれぞれの都合で最近全く会えていない。
だからこそ、今日からギルドの一員となる――自分同等以上の実力をもつ綱吉に勝負を挑む。己の力を誇示するためでも、戦闘力で上位に入るナツを倒して調子に乗らせないためでもない。
「勿論、ツナがどうしても嫌だと言うなら強制はしない。ここに連れて来たのは君の話を聞くためであって手合せはついでだ。だが、できることなら私と手合せをしてほしい。同じ仲間を守るために強くなった者同士、共に高みあえる関係として」
自分の本心を伝え、綱吉の目をしっかり見つめるエルザ。
そんなエルザに、綱吉は一瞬悩みはしたが、すぐに答えを口にする。
本当に戦いたくないのなら、"断る"ときっぱり言い放てばいい。しかし、彼女の真意を聞いた綱吉は、エルザを無視することが出来ず――
「………はぁ、分かりました。今回だけですからね」
「本当か!?」
「でもこれでホントに最後ですからね!!? 次誰かが挑んできても絶対受けるつもりはないですからね!!?」
「ふっ、可愛い奴め」
「いや、ミラさんにも言ったけど可愛いなんて男の俺には―――ってあーーーーっ!! そういえば死ぬ気丸がもうないんだった!! い、急いでギルドに――」
「――死ぬ気丸といものは分からないが、この鞄に入ってるのか?」
「俺の鞄!? ありがたいですけど、なんでエルザさんが!?」
「ナツとの戦闘前の準備に焦っていたようだからな、もしかしてと思って念のために持ってきたのだが……」
「よ、よく見てましたね。というか、"死ぬ気丸"を持ってくるあたり、これ完全に戦う気満々できましたよね?」
「な、なんのことやら……」
ジト目で睨むも視線を逸らすエルザに呆れながらも、鞄を受け取り死ぬ気丸を取り出し、模擬戦のためエルザから一定の距離で離れる。
(はぁ……リボーンから言われてるけど、俺って本当にアマいよなぁ……)
つくづく自分はお人好しと言われるのが、今更ながら痛感させられる。戦うのは嫌だが、彼女の気持ちを知った以上、やはり見て見ぬふりはどうしてもできないし、今戦うことにも後悔もない。
気持ちを切り替えると同時に綱吉は、戦闘用の手袋を身に着け"死ぬ気丸"を飲み込む。瞬間、手袋は鋼鉄のグローブへと変わり、額に"大空"の《死ぬ気の炎》が灯り、目は橙色に変化する。瞬間、彼がまとう雰囲気も"平凡"から"戦士"へと切り替わる。
「…やはり戦闘時は、こうも変わるものなんだな」
一度見ていたとはいえ、やはりこの変わりようは圧倒されることに変わりない。それにもし見ていなければ、彼の強すぎる雰囲気と存在感に吞まれていたかもしれない。そのおかげでエルザはまだ正常でいられるが、それでもやはり体は正直で、冷や汗までは止められない。
しかしエルザは怯えの気持ちは抱いておらず、むしろ待っていた言わんばかりに笑みを深くする。自分の得物の
互いに準備は整った。お互いに相対する相手の動きを見極めんと静かに見据える。
しかしこの場所には相対する二人しかおらず、開始の狼煙の合図はなかった。故に風によって飛ばされた木の葉が舞うように地面に静かに落ちたのを合図に―――
―――《大空》と《妖精女王》の戦闘が始まった。
久し振りの投稿で執筆ミスや描写が下手な部分があると思うので、もしあったら指摘よろしくお願いします。
あぁ……閃の軌跡Ⅲ早くやりたいです。今回の帝国に入る《結社》メンバー―—《鋼の聖女》、《劫炎》、《紅の戦鬼》、《道化師》、《神速》、《剛毅》、《魔弓》――更にファルコムさんの話では《死線》や結社勢揃いのイラストに載っていないキャラもいるらしく、ガチで帝国を落とせる戦力。まあ、自分は《結社》派なので、むしろ超歓迎なんですけどね!!
関係ない話になっちゃっいましたが、次回もよろしくお願いします。