Aqoursの二年生三人がアキバ巡りするお話
九人全員を出す力はありませんでした……
1stシングルの自己紹介を元に思い込みで書いたので、キャラブレ酷いと思います

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Aqours全員を出す力と余裕はありませんでした……。まだ情報が少ないので、キャラぶれ酷いと思います。


君のこころは憧れてるかい?

AqoursのPVが公開された十日後、秋葉原駅前電気街口広場に、

「こ……ここが秋葉原か……!」

興奮を隠そうともしない人物が降り立った。

「ちょっと千歌ちゃん、速すぎるってば……」

「まあチカっちが興奮する気持ちも、分からないではないかな〜」

続いて、二人。

「だって秋葉原だよ⁉︎ 全スクールアイドルの憧れ! まさにその場所!」

一人目、高海千歌。

「さすがに、それは言い過ぎだと思うけど……」

二人目、桜内梨子。

「まあスクールアイドルとして、やっぱり来てみたい場所ではあるかもね」

三人目、渡辺曜。

スクールアイドルAqoursの二年生三人は、打ち上げと観光を兼ねて秋葉原へやって来ていた。

「じゃあさっそく行こう! __梨子ちゃんの案内で!」

「よろしく!」

「わ、私⁉︎」

驚いて自分を指差す梨子に、

「だってどこに何があるとか、全然知らないもん」

「そうそう!」

二人は当然のように応える。

「もぅ……仕方ないなぁ」

何となく反対しても無駄だという事は学習しているので、梨子は諦める。

「よーし、出発進行!」

「ヨーソロー!」

「……おー」

 

 

 

 

「__やっぱりここに来たかった!」

「ホントにあるものなんだねえ」

三人が最初に赴いたのは、アイドルショップ。様々なグッズが所狭しと並んでいるのを見て、

「ほぇ〜……分かってはいたけど、こんなにたくさんのスクールアイドルがいるんだね〜。__Aqoursは……さすがにまだ無いよね」

千歌は感心の声を上げる。

「ねえ、梨子ちゃんオススメのスクールアイドルとかいないの? 私、μ's以外よく知らなくて」

「私に訊かれても、ここに来た事なんてなかったし……」

「秋葉原に住んでたのに?」

素で驚いた千歌は、

「まあまあ、梨子にだって好みがあるんだからさ。チカっちが強引に誘わなかったら、ここにはいないかもよ?」

曜に頭をポンポンされて、やや不満そうな顔をする。

「そうかもしれないけど、もったいない……」

「まあいいじゃない。__さてさて、どんなスクールアイドルがいるのかなーっと。__お、これってμ'sじゃない?」

「どれどれ⁉︎」

曜の声に、凄まじい勢いで駆け寄る千歌。

「これって……にこちゃん、だったっけ。他のメンバーのは売り切れみたいだけど」

曜の持つブロマイドを見て、梨子が自信なさげに言う。

「そうそう! にっこにっこにー、が合言葉!」

そう言って、そのポーズを取る千歌。

「__ちょっとそこのアンタ」

すると、背後から声が飛んだ。

「あ、は__い⁉︎」

千歌の声が不自然に跳ね上がったのも無理はない。振り返ったそこに立っていたのは、まだ時期の早いコートに身を包み、サングラスとマスクをかけた怪しさ満点の女性だったからだ。

「今、『にっこにっこにー』やったわよね?」

「や、やりましたけど……」

直立不動の千歌の後ろで、同じように固まる梨子と曜。怯えてフォローに入れそうもない。

「……一つ訊くけど、何で手の形がピースなのかしら?」

「え? だって『に』っていうくらいなんだし、ピース以外なくないですか?」

キョトンと答えた千歌に、

「甘い!」

一喝が飛んだ。

「はい⁉︎」

「いい? ピースサインのアイドルなんてもう大量にいるの! その中でポーズを開拓するには、目新しさが必要なのよ! 分かった⁉︎」

「は、はい!」

「じゃあ今すぐ覚えなさい! いい? 手はこう! この形!」

「こうですか?」

「親指が伸びてない!」

「ごごごごめんなさいぃ!」

突然始まった『にっこにっこにー』講座に、梨子も曜も、当事者の千歌も、思考回路が追いつかなかった。

 

 

「__つ、疲れたよ……」

あれからしばらく後、ようやく女性に解放された千歌達は、休憩がてらに近くのハンバーガーショップに立ち寄った。

謎の女性は「何でにこ以外が売り切れなのよ……」とか呟いていた気がしたが、三人にそれを聞き取る余裕は無かった。

「あんなにもアイドルに熱い人がいるんだねえ。さすがは秋葉原。ルビィちゃん以上かもね」

テーブルに突っ伏した千歌を見ながら、曜は感心したように呟く。

「買ってきたよ。千歌ちゃん、はいポテト」

「あ、梨子ちゃんありがとう」

ポテト三つとハンバーガー一つを乗せたトレイを持って、梨子が千歌に声をかける。

「これ、曜ちゃんのチーズバーガーね」

「おーありがとー」

お礼を言うが早いか、チーズバーガーにかぶりつく曜。

「うん美味しい」

三人が満足そうに軽食を頬張っていると、

「__ハラショー。これがビッグバーガーなのね」

「いくら気になったからって、そんな大きなの……食べきれるの?」

隣の席の会話が聞こえてきた。

「元々私、こういうお店って全然行かなかったし、ずっと気になっていたのよ」

「最近はよく来るじゃない」

「それはほら、みんなと一緒だし、これを注文する子もいたじゃない? ……同じ物を注文するのは、気が引けちゃって」

「変な所で真面目よね。そこまで気にする必要無いんじゃない?」

「でも違う物なら、食べ比べもできるでしょう? 一口どう? 美味しいわよ」

「い、いいわよ別に」

「あらそう? お嬢様は、ハンバーガーは食べないのかしら?」

「からかわないでよ!」

磨りガラスの仕切りがあるせいでおぼろげにしか分からないが、どうやら一人は金髪らしい。

「金髪っていうと、鞠莉ちゃんもそうだよね」

「鞠莉ちゃんはハーフだけど、あの人はどうなんだろうね?」

「秋葉原には染めている人も多いから、分からないけどね」

梨子のセリフに、二人はまたも感心の声を出す。

「__でも!」

と勢いよく千歌が立ち上がる。

「金髪ならμ'sにもいるもんね! 大人の魅力を出す絢瀬絵里さん!」

隣でゴホッ! と盛大にむせる声が聞こえたが、三人は気付かない。

「まあそれは置いておいて。お嬢様って感じなら、やっぱりダイヤちゃんだよねー」

曜が軽く受け流しながら会話を進めると、

「千歌ちゃん、μ'sにはそういう人、いるの?」

梨子が質問。

「もっちろん! クールとキュートを併せ持つ、西木野真姫さん!」

「冷たっ!」「ちょ、盛大にこぼしたけど大丈夫?」

興奮する千歌と、それに聞き入る梨子と曜には、隣の惨事は気付かない。

「Aqoursも中々個性的なメンバーが揃ってると思ってたけど、さすがは伝説のμ's。私らの特徴くらいは網羅しちゃってるのか〜」

曜が残念三割、楽しさ七割で口を開く。

「だって全スクールアイドルの憧れだよ? 当然だよ!」

拳を握って力説する千歌は、その横で慌てる二人には、最後まで気付かない。

 

 

 

「やっぱりここに来ないとだよね!」

三人がいるのは、電気街から外れた閑静な住宅街。とあるお店の前。

「和菓子屋『穂むら』? チカっち、そんなに和菓子好きだっけ?」

「あれ? ここって……」

首を傾げる曜と、何かに思い至る梨子。

「こんにちはー」

千歌が扉を開けると、

「__ちょっとフリル多すぎない?」

「そんな事ないよー。可愛いでしょ?」

「そうだけど……私に似合うかな」

「似合うよ!」

「そんな断言しなくても……」

店員らしき女性と、親しげに話すお客が一人。

「__あ、いらっしゃいませー」

店員の女性がこちらに気付き、挨拶を送る。

「ほら、お客さん来たから、また後でね」

「うん」

そう言って、お客だと思っていた女性は奥の民家の側に引っ込んだ。

「ご注文はお決まりですか__」

そこまで言いかけて、女性は千歌の様子に気付く。

「ここが……」

感慨深げに辺りを見渡す千歌。

「あのー、もしかして、お姉ちゃんに会いに来ました?」

「は、はい! あ、あの、私μ'sの大ファンで、その、高坂穂乃果さんは……」

それを見て、曜は納得。

「あー、そっか。穂乃果さんの家は、和菓子屋みたいな事言ってたっけ」

「じゃああの人は妹さん……。あの人も、スクールアイドルだったりするのかな?」

その隣で梨子が、的を射た発言。

視線を前に戻すと、

「ごめんなさい。お姉ちゃん、今は出かけてていないんです」

「そ、そうですか……」

「いつ帰ってくるかわからないし、待つのはオススメできないですけど……。__いきなり出て行っちゃったし、おかげで私が店番するハメに……。帰ってきたら小言言ってやる」

後半は完全にただの文句だったが、千歌にとっては求める人物が不在という事実で充分。

「チカっち、どうするの?」

「残念だけど、いないものは仕方ないし、秋葉原巡り再開!」

 

 

 

 

続いてやってきたのは、

「ここが……」

「何だか緊張しちゃうかもね……」

「懐かしいなぁ」

国立音ノ木坂学院、まさにその場所。

流石に中には入れないので、校門で写真を撮り、外周をぐるりと回る。

その途中、

「弓道場なんてあるんだねー」

「あ、誰かいるみたいだよ?」

「音ノ木とμ'sの事、何か聞けるかも!」

弓道場と、そこで練習する人影を発見。

しかし、やや距離があるせいで大声でないと届かない。案の定叫ぼうとした千歌を、梨子が慌てて押さえる。

「近所迷惑!」

仕方なく、気付いてもらえるよう三人で視線を送る。曜、梨子、千歌の順で並びながら、

「……あの人、たまにポーズっぽい事してない?」

「私にもそう見える……」

「きっと、あれも弓道のルールの一つなんだよ! 何かそれっぽいポーズだし、私が名前つけるなら……」

「__ラブアローシュート!」

「そうそんな感じ!」

「⁉︎ いつからそこに⁉︎」

反射的に叫んでしまった千歌のおかげで、女性には気付いてもらえた。だが何となく、梨子と曜には嫌な予感がした。

「そこで何をしているんですかいつからそこにいたんですか何が目的なんですか!」

恐ろしい勢いで駆け寄って来た女性は、顔を真っ赤にしてまくし立てる。

「え、いや、ちょっと音ノ木について訊こうかなー、って思ったんですけど……」

「それなら何故こんな所で私の練習を覗いてるんですか! 怪しいです!」

正論すぎて、言い返せない。

「えっと……凛々しい大和撫子って感じが、園田海未さんに似てて……つい」

「⁉︎ どうしてその名前を……!」

驚愕に目を見開く女性に、千歌はキョトンとする。

「え? だってμ'sの一人じゃないですか! 凛々しくて、綺麗で、格好よくて……。“美少女”って、ああいう人のためにある言葉だと思うんです!」

力説する千歌の後ろで、それは目の前の人に失礼じゃないかなぁ、と梨子は思っていたのだが、事実には気付かない。

「な、な、な……何を言ってるんですか! 破廉恥です!」

千歌の心の叫びを受け取った女性は、再び顔を真っ赤にして走り去ってしまった。

「あ、行っちゃった……。まだ何も聞けてないのに……」

「まあまあ、音ノ木については、そこに元在校生がいるんだからさ」

「それもそっか! そうだよね梨子ちゃん!」

笑顔で振り返った千歌に、

「ちょっとしかいなかったから、そんな詳しくないよ……」

梨子は少し身を引いた。

 

 

 

 

「「「いただきます!」」」

その後、手近な店で昼食。

「ここにしよう!」という曜の提案で、GoHANーYAという店に。

「白いご飯だけってあるんだ……。知らなかった」

メニューを見て、梨子が呟く。

「ちょっと気になっちゃって。スポーツすると、やっぱりお米が欲しくなるからね」

その隣で、早速曜が注文する。その隣では、

「あ、ラーメンもある。私はこっちにしよう!」

千歌がラーメンを注文。

そんな三人とは別のテーブルで、

「今日も美味しい白米、いただきます!」

超幸せそうな声が聞こえてきた。

「相変わらず、ご飯大好きだにゃ〜」

その傍で、こちらも特徴的な口調。

「“にゃ”って、また個性の強い口癖だねー」

「日常的に使う人って、中々いないよね」

「あ、でも喜子ちゃ……ヨハネちゃんも、中々個性的な口調だと思うけど……」

「「…………確かに」」

好き勝手言う三人には気付かず、テーブルの女性二人は美味しそうに、そして楽しそうに仲よさそうに食事を続ける。

「……あの人、ホントに美味しそうにご飯食べるなぁ」

そんな食事風景を見ながら、曜はしみじみと呟く。

「よし、じゃあ私達もあのくらい美味しそうに食べよう!」

そう言って千歌は、何を勘違いしたのか早食いに移行する。

「熱っ!」

そして断念。

「ラーメンでそんな事しようとするから……」

隣の梨子は、呆れながらハンカチを差し出す。

「うう……ありがとう梨子ちゃん……」

飛び散ったスープを拭く千歌を横目に、マイペースに食事を続ける曜はふと、

「でも早食いって、確か太りやすいって聞いたような」

千歌、そしてテーブルの女性の動きがピタリと止まる。

「でも! ご飯大好き小泉花陽さんも星空凛さんも全然太ってないよ!」

謎の反論を飛ばした千歌の声に、「ひゃい⁉︎」「にゃにゃ⁉︎」テーブルからも謎の声が飛ぶ。

「まあそれは人によりけりなんじゃない? Aqoursだと、果南ちゃんが一番かな?」

「果南ちゃん、全然太らないよね……。いつでもウエスト締まってるし」

梨子が呟くと、

「「羨ましい」にゃ……」

テーブルからそんな声が聞こえたとか聞こえてないとか。

 

 

 

 

続いてやって来たのは、

「今さっきご飯食べたばかりなのに……?」

「食後のデザートだよ!」

「甘いモノは別腹って言うじゃん?」

「太る太らないの話をしたばっかりだよぉ」

「「うっ……」」

とあるメイド喫茶。

「でもやっぱり、秋葉原といったらメイド喫茶でしょ⁉︎」

「そう言われても、私は来た事ないし……」

「そうなの? 梨子って実は、あまり秋葉原を満喫できてなかったり?」

曜の言葉に、梨子は少し悩む。

「地元だと、逆に行かないのかも」

「ああ、それはあるかもね」

「それなら、今日がメイド喫茶デビューって事で」

「うん。ちょっと緊張するなぁ……」

三人が入り口をくぐると、

「お帰りなさいませ! お嬢様♪」

フワッフワな微笑みを浮かべたメイドが出迎えてくれた。

「本物のメイドさんだ……。しかも超可愛い……」

「ふふっ、ありがとうございます♪ 私はミナリンスキーといいます。よろしくお願いします♪」

「あ、はい!」

「こちらへどうぞ」

ミナリンスキーなるメイドに案内され、席に座る。

「メニューになります。ごゆっくりどうぞ」

ニッコリ微笑まれて、三人は思わず姿勢を正してしまった。

「はわー……」

「何だか癒されるね……」

「優しそうな人だなぁ……」

三者同様に呟き、周りを見渡す。

「結構、女性客も多いね」

「ホントだ。意外と、普通のカフェみたいな感じなのかも」

「メイド服も可愛いよねぇ……」

「チカっち、話がズレてる」

曜が軽くツッコんだが、

「だって! μ'sで衣装を担当する南ことりさんだって、メイド服は衣装みたいな事言ってたよ!」

千歌はテーブルを叩いて反論。

「いや、そういう問題じゃないかと……」

梨子の指摘も、

「梨子ちゃんはメイド服は嫌なの?」

スルー。

「そうじゃなくて……」

「__あの……」

会話が堂々巡りしそうになった時、横から声。

「あ、ミナリンスキー、さん?」

「お冷をお持ちしました」

「あ。ありがとうございます」

グラスをテーブルに置いたミナリンスキーは、じっと千歌を見る。

「な、何でしょうか……」

「メイド服も、衣装だと思いますか?」

「へ?」

千歌が面食らっていると、

「やっぱりメイド服だって衣装ですよねぇ〜。ちょっと動きにくいけど、そこは生地を薄くしたりスカートを短くしたりすれば解決だし……。お友達にお願いしても、恥ずかしいって断られちゃうんです。絶対可愛いと思うのになぁ……」

勝手に話を始める。

どうやら何かのスイッチを押してしまったらしく、そこからは呪文のような単語が流れるように出てくる。

「…………」

千歌が無言で正面二人に助けを求めると、

「…………」

やはり無言の敬礼と、

「…………」

やっぱり無言の苦笑いが返ってくるだけだった。

 

 

 

 

 

「__秋葉原に来たら、絶対に寄りたい場所の一つ!」

何とか気をとり直した千歌が仁王立ちするその場所は、急な階段の下。

神田明神男坂。

「ここでμ'sも練習を……。__梨子ちゃん、ちょっとカバン持ってて!」

「へ? 千歌ちゃん⁉︎」

「ヨーイドン!」

梨子に向かってカバンを放り投げると、千歌は階段ダッシュ。

「…………」

「おー、チカっち速いねー」

流れるような連携に、呆然と見送る梨子と楽しそうに見上げる曜。

「私らも行く?」

輝くその瞳に、

「走るのは、ちょっと……」

「あーそっか。チカっちの荷物もあるもんね」

「そういう問題じゃなくて……」

 

 

一方、男坂を登り切った千歌は、

「こ、これキツいよ……」

膝に手を付きグロッキー。

「こんなキツい練習を毎日やるんだもん……。それはあんなパフォーマンスもできるよね……」

「__おーい、大丈夫かチカっちー?」

「曜ちゃん梨子ちゃん、これ、かなりキツい!」

「歩いても大変だもん。それはそうだよ……」

梨子が呆れる横で、千歌は体をほぐすために軽い体操。

そこへ、

「君たち、ちょっとええ?」

声が飛ぶ。三人が振り向くと、

「わ、巫女さん……」

長い髪を一つに束ねた、巫女服に身を包んだ女性が立っていた。

「な、何でしょうか……」

梨子が恐る恐る訊くと、

「あーそんな緊張せんでええよ。別にとって食べようってんじゃないから」

「はあ……」

女性は微笑むと、

「君たち、μ'sを知ってるんかなって思ったん」

「知らないハズないですよ! 憧れです! 特に、神田明神といえばスーパーラッキーガールの東條希さん!」

千歌、顔を輝かせて即答。

「そっか。それは嬉しいなぁ」

「巫女さんも、μ'sをご存じなんですか?」

話し足りなそうな千歌をなだめつつ、梨子が口を開く。

「んー、そうやなぁ。知ってると言われれば、よく知っとる。毎日のようにここで練習しとったからね。それこそ、九人揃う前から」

「そうなんですか……」

「あの、九人になる前って事は、μ's結成の話とか、何か知らないんですか?」

曜が好奇心でぶつけた質問は、

「μ'sの裏話!」

再び千歌を輝かせる。

だが女性は、静かに首を横に振った。

「ごめんな、ウチからは何も教えられん」

「そうですか……。ちょっと残念」

ちょっと、というレベルでない落胆ぶりを見せた千歌に、女性も苦笑を作る。

「神社といえば花丸ちゃん……。巫女さんも、ここに住んでるんですか?」

「いやいや、ウチは単なるお手伝いさんや。ここには住んでないんよ。__それよか君たち、もしかして、スクールアイドルだったりするん?」

「はい!」

「まだ始めたばかりですけど……」

「まだ一つしか曲ないし……」

質問に肯定した三人を見て、

「そっか……。ウチらの想いは、ちゃんと受け継がれていたんやな……。無駄じゃなかった」

「? すみません、もう一回お願いします」

聞き返した千歌に、女性は笑顔で首を横に振る。

「何でもないんよ。聞かなかったって事で」

「はあ」

女性は微笑んで、三人を見つめる。

「ウチが言う事じゃないかもしれないけど、スクールアイドル、頑張るんやで」

「「「はい!」」」

元気な返事が、境内に木霊した。

 

 

 

 

場所は戻って、秋葉原駅前。

「結局、誰にも会えなかったねー」

割と本気で残念がっている千歌に、

「まあ仕方ないよ」

「そうそう。来られただけでもよかったと思わないと」

梨子と曜は一応フォロー。

「それもそうだよね。いっぱい写真も撮れたし、みんなへのお土産ができたと思えば!」

「帰ったら自慢してやろう!」

「そうだよ千歌ちゃん、元気出して!」

「うん!」

千歌は勢いよく頷くと、少し名残惜しそうに改札口へと進んでいった。

「__ちょっと待って!」

所を後ろから抱きしめられた。

「だだだだ誰⁉︎」

梨子も曜も、隣にいる。そして同様に驚いている。

「よかったー! 間に合った!」

そう喜んで千歌をハグから解放した人物は、

「ここここ高坂穂乃果さん⁉︎」

千歌を驚愕させるのに、充分すぎる存在だった。

「どうしてここに⁉︎ というか、何で私達に⁉︎」

混乱を極める千歌に、穂乃果は笑顔で答える。

「みんなが教えてくれたの!」

「みんなって……」

「μ'sのみんなだよ? μ'sのファンぽい三人組の女の子が、アキバ巡りしてるって」

「ええ⁉︎ だって誰にも会えてないのにどうして⁉︎」

「? みんな会ってるよ? まあ、会ったって言えるのか分からないメンバーもいたけど……」

「ど、どこで……」

知らぬ間にすれ違ったのかと考えた千歌達だったが、

「えーっと……」

穂乃果が指折り答え始めると、驚愕の事実。

「まずアイドルショップでにこちゃんでしょ? それからハンバーガーショップで絵里ちゃんと真姫ちゃん。穂むらでは妹の雪穂と絵里ちゃんの妹の亜利沙ちゃん。音ノ木坂では海未ちゃん。GoHANーYAで花陽ちゃんと凛ちゃん。メイド喫茶でことりちゃん。神田明神で希ちゃん。みんなから連絡が来たよ」

「ええええええええええ⁉︎」

周りの迷惑など意識の外。千歌は大声で叫んでいた。

「嬉しい! μ'sのファンでいてくれて、スクールアイドルをやってくれて、本当にありがとう!」

穂乃果は千歌の手を握って、ブンブン振る。

「スクールアイドルの輪は、どんどん広がってる……。私達がいなくなっても、その輝きは永遠に続いていく……」

その言葉に、千歌は少し悲しそうな表情を作る。

「本当に、もうμ'sは活動はしないんですか……?」

「……うん」

「私、穂乃果さんに憧れて、スクールアイドル始めたんです! 穂乃果さんがいなかったら、今の私もいないと思うんです!」

穂乃果は照れたようにはにかむと、

「穂乃果にそんな力があるかは分からないけど……ありがとう! 元気もらっちゃった!」

「そんな、それはこっちのセリフですよ!」

穂乃果は千歌、梨子、曜を順に見つめると、

「これからもスクールアイドル、頑張ってね! __ファイトだよっ!」

力強く拳を握りしめた。

「「「はいっ!」」」

 

 

 

 

九人の女神と、走り始めた水の如き少女達。彼女達の存在が、やがて新たな伝説を生み出していく。

 


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