日向ヒナタの想いは募る。心の命ずるままに彼女はそっと筆へと手を伸ばした。
今日も木の葉の里の空は高く、澄み渡っている。
彼女はそんな空を見上げて、きっと同じ空の下にいるだろう修行の旅に出かけた愛しい少年のことを思った。
「ナルトくん……」
心の中に彼の強い眼差しと笑顔が浮かんでくる。
そして、きっと厳しい修行にだって諦めることを知らずに頑張っているだろう姿も浮かんできた。
「ナルトくんだってがんばってるんだもの。私も……」
彼女はそう呟いてから空を見るのを止めて、歩き出した。
『出せない手紙』
ナルトくん、お元気ですか?
私は今日ナルトくんへの手紙を書いています。
ナルトくんが里を離れてからもう大分時間が過ぎちゃいました。
修行大変ですか?辛くないですか?……寂しく…ないですか?
私は…私は、ナルトくんがいなくて寂しいです。ナルトくんの顔が見たいし、声が聞きたい。
でも、我慢してます。ナルトくんだって修行頑張ってるんだから私も逃げずにがんばろうって思ってます。
でもやっぱり、ナルトくんが早く修行が終わって帰って来てくれたらとも思います。
もしナルトくんが帰ってきたら、そしたら―――
「そしたら、私……」
彼女はそう呟いて、筆を止めた。
そして、自分の想像に火照った頬を隠すように手で顔を覆った。
「私……」
その時のことを想像するとドキドキと胸が高鳴る。
記憶にあるより少し大人びて精悍になったけど、変わらない、飾りの無い笑顔を向けてくれるだろうか?
そして、なんて言ってくれるだろう?
「ナルト…くん……」
彼女は今日何度目かの彼の名前を呟いた。
…うぅうん、なんでもないです。
えっと、その、そう!帰ってきたらラーメンご馳走しますね。
ナルトくん、今もラーメン好きですか?
私、この頃ラーメンを美味しく作れるように勉強してます。一楽には全然敵わないけど、シノ君やキバ君は腕を上げたって言ってくれました。
ちょっと自信在り、です。
あっ、そうそう。シノ君といえばこの間の中忍試験でシノ君とネジ兄さん、リーさんが中忍になりました。
私は本選まで進めたけど、選ばれませんでした。
次回こそって、修行しています。
今度は前みたいにナルトくんも一緒に試験が受けれたらいいなって思ってます。
ナルトくんと一緒だと心強いし。
そう自分の手で書いてから彼女は胸が苦しくなった。
募る想いを手紙に書くことで紛らわせているが、でもそれは、彼がここにいないことを再認識させ余計寂しさを増す。
だから、想いが募る。
ナルトくん……好き。
「好き。」
知らず、声となって零れ落ちた言葉。
自分の言葉に驚いて彼女は我に返った。
そして、グシャグシャグシャグシャ!と、たった今書いた言葉を滅茶苦茶な線で書き消す。頬が熱い。
「ハァ…何書いてるんだろ?私」
結局今日も手紙を最後まで書くことは出来なかった。
もう何度目だろう。こうして出せない手紙を書いたのは?
とてっ、と机に突っ伏す彼女。視線の先に集合写真がある。探すことも無く彼の姿を捉えた。
「ナルトくん……」
また彼の名前を呼ぶ。でも返事は無い。
愛しいのに恨めしい。
会いたいけど、邪魔したくない。
どうしようもない想いが渦巻いて、やるせない。切ない。
でも写真の中の彼はVサインをだして笑っている。
「ナルトくんの……バカ。」
ヒナタは、彼を指で突っついた。
「ふぁ…くしょん、くしょん、くしょん。」
盛大なクシャミが夜の荒野に響き渡った。
二人の男がこんなところで戦っている。一人は50代半ば過ぎ、もう一人は10代半ば、いや後半か。
少年といってもいい若い男のくしゃみとともに、戦いの空気が薄れる。
男のほうが少年に語りかけた。
「何だ?ナルト。風邪かのう?」
「ん、別に違うってばよ。誰かが噂してんのかも」
へへっと、何故か笑いながらそう言う彼をジライヤは、ガキじゃのうとか思いながら口を開いた。
「一に誉められ、二に貶され、三に愛され四に風邪というしのう。
ナルト。誰かに愛されておるようじゃのう?」
「なにそれ?エロ仙人。」
「なんじゃ、知らんのか。ダメじゃのう。」
貶されて、ナルトは、ぶーと顔を膨らませる。
「くしゃみの数で噂の内容がわかるって奴じゃのう。さしずめ今回はお前さんに惚れてる奴が噂でもしとるんじゃろ。」
その薀蓄に最初きょとん、と聞いていた彼だったが、聞き終えると満面の笑みを浮かべた。
そして、妄想する。
「えっ、へへー…」
(サクラちゃんかな?それとも……へへっ、俺ってばモテモテ?)
すこしデレェとしたナルトにむかついた大人気ないジライヤが怒鳴る。
「ほれ、いつまでデレェっとしとる。
そんなこっちゃ何時まで経っても強くなれんぞ。」
「いっくぞぉ、エロ仙人!今度こそ、一本とってやるてばよ!!」
彼の修行はまだ道半ばと言うところだった。
彼女の想いが通じ、彼が木の葉の里に帰ってくるは、まだまだ先のことだった。
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