大宗武正です。
おおむねと読みます。
気軽にむねむねと呼んでください。
どんな漫画よりアイシールド21が好きです。
よろしくお願いします。
誰にだって大切なものはある。
ある友人は、
「仲間と仁義だ」
と言い、またある友人は、
「みんなとアメフトだよ!」
と言い切った。
「自分」
……まあ、そんなのもありだろう。
それに、例え本心は違うところにあるとしても、この友人は絶対にそれを表には出さない。
ただ、三者三様にきっと、似たようなモノに大切を感じていると言うことはわかった。
それだけで、
──────────────────────────
「タッチダウーン!」
審判のコールが聞こえる。
今の今まで、懸命に追いすがっていた相手が両手を挙げて、笑いながら仲間のところに走っていった。
てぃん、ていん、と、ボールが取り残されたようにフィールドに転がる。
不意に沸き上がる、腹の中をくすぐるような寒気と息苦しさ。
ついさっきまで全力疾走していたからだろう、と、灰斗は思いたかった。
違う。
これは、焦りと絶望だ。
また点を取られた──取り返さなきゃ──どうやって?
自分がやるんだ──だから、どうやって?
走らなきゃ──相手のワイドレシーバーにも追い付けない鈍足で?
パスを取るんだ──それで何回、カットされた?
それでもやるんだ、やらないと……
だって、もう、時間が──
いつの間にか下を向いていた顔を上げる。
56対3
自分が役立たずであった結果が、そこにはあった。
「時間切れだな」
そんな声が聞こえた。
確かめなくてもわかる。少しかすれた、低い声。
「ヒル魔……」
振り向くと、金髪を逆立てた目付きの悪い友人が立っていた。
「第4Q残り1分、こっちのパス成功率は10%以下、ラン1回の最大ゲインは4ヤードそこそこ。それでも勝ちてえなら、悪魔に魂でも売ってみるか?」
意地の悪い、どこかからかうような口調だが、目付きは真剣だった。
言っている本人が、一番理解しているのだろう。
アメフトには、祈る神も悪魔も居りはしないということを。
「……ごめん」
それだけ言うのが精一杯だった。
「ちっ……舐めたこと抜かしてんじゃねえぞ
ゲシッ、とヒル魔が灰斗の尻を蹴り上げる。
そのまま、メットをかぶりながら歩き去る。
蹴られた所を擦っていると、ムサシと栗田がやって来た。
「よくやった」
「え?」
ムサシの突然の言葉に、灰斗は思わずそう返した。
「ってことだ。あいつがああするときはな」
そんなわけない。
あんなに楽しみにしてた、麻黄デビルバッツの初試合を、
「僕が一人で、試合を潰したのに?」
言ったとたん、涙が込み上げてくるのを感じた。
「そんなことないよ!!」
栗田の声が響く。巨体の割には頼りなさげな声で、
「灰斗がいたから、試合になったんだよ?
ランニングバックもワイドレシーバーもいない僕らだけじゃ、ボールを運べないんだから!」
と励ますように言った。
優しさに、涙がこぼれる。
「そうだ灰斗。タイトエンドのお前がいたから、前進を重ねてキックが入れられたんだ」
ムサシの渋い、まったく中学生には聞こえない大人びた声が、さらに追い討ちをかける。
「さっきだって、相手のワイドレシーバーに最後まで追い付こうとしてたろ。助っ人連中やヒル魔が、諦めても」
「それは……」
そうでもしないと、情けなくて死にそうだったからだ。
そう言おうとした矢先、
「くぉら! オメーら!! ちんたらしてんじゃねー、相手のボーナスゲームだ!」
ヒル魔の怒声が響いた。
「行こうよ、灰斗。せめて今日はもう、一点も取られないで終わるんだ!」
栗田が言って、走り出す。ムサシも、そのあとに続いた。
灰斗は一度だけ大きく深呼吸をすると、二人のあとを追い掛けた。
その日、麻黄デビルバッツは58対3というスコアで、大敗を喫した。
主人公、苦い初試合。
ムサシはキッカーじゃん。蹴るとき以外に出るの?
とか思ったけど、元々助っ人だらけのチームなら、やむにやまれぬこともあるよね♪
次回は少し戻って少年期です。
2、3話で中学生編予定。