アイシールド21 センスレス   作:大宗 武正

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主人公以外のオリキャラは、基本的にサブキャラになります。


1th Down 灰斗という少年

花宮灰斗(はなみやかいと)はごく平凡な家庭で産まれた。

 

サラリーマンの父に、専業主婦の母。

 

だからというわけでもないが、灰斗は特に大きなイベントに出くわすこともなく、すくすくと大きくなった。

 

両親が大好きだった。

近所で同い年の友達もいた。

 

 

灰斗が五歳になった時だった。

 

 

父親が家に帰らなくなった。

 

どんな理由があったのか、未だに灰斗はわからない。

当時はそうした様々を理解するには幼すぎたし、

何より日常の変化というやつに、灰斗はまるで経験がなかった。

 

ただ、また三人で暮らしたいと思ったのは覚えている。

 

結局それも、灰斗にはどうすることも出来なかった。

どうにかする機会を、灰斗は与えられなかった。

 

どこにでもいた平凡な少年は、ある日、母親と出掛けた見知らぬ公園で、

 

捨て子になったからだ。

 

 

 

 

────────────────────

「灰斗くんだね?」

 

第一印象は、優しそうなおじさん。

 

「僕は木下直史(きのしたなおふみ)といいます」

 

丁寧な口調、そして柔らかな、こちらを安心させるような声。

 

「星空園という、孤児院をやっています」

 

孤児院、という言葉は当時わからなかったが、星空園というワードから、灰斗は自分が通っていた幼稚園を想像した。

 

「今日から、よろしくね」

 

よく、わからなかった。

 

「大丈夫。今日から僕たちは家族だ」

 

わからなかった。

 

「──もう、大丈夫だからね」

 

全くもって、わかりはしなかった。

わかりたく、なかった。

 

 

結局、もう二度と自分が家族と一緒に暮らすことはない。

そのことを灰斗が理解するまでに、五年という時間が必要となった。

 

 

小学生の頃から灰斗を知る人間は、そう多くはない。

クラスメイトとの付き合いもあまりなく、クラス替えでもすればたちまち印象が薄れてしまう。

 

気が付けばいるが、誰も気に止めない。

好かれも嫌われもしないような子供だった。

 

つまりは……

 

 

下校時刻。

 

「おいっ、お前!」

 

校門から出ようとしていた灰斗は、足を止めた。

それが自分を呼んでいるということは、振り返るまでもなく明らかだ。

もはやため息すらなく、灰斗は声の方へ向き直った。

 

坊主頭で小四にしては大柄な少年がそこにいた。

周囲には三人ほど、取り巻きのように立つ者達。

 

「なに?」

 

どうせわかりきっている答えを、灰斗は問う。

 

「俺たちはこれから公園でサッカーをする! だから、そこまでカバンを持ってこい!」

 

そんなことだろうと思った。

 

これまでも給食のデサートを盗られたり、いきなりボールをぶつけられたりしていたのだ。

 

さすがに、学校の外でまで何かしてくるとは思わなかったが。

 

まあ、つまりは、いじめっこというやつだ。

 

「いいけど、時間がかかるよ?」

 

「五時のチャイムまでに持ってこい!」

 

それだけ言うと、「行こーぜ!」と仲間に声をかけ、いじめっこは走って公園に向かって行った。

 

後にはランドセルと手提げが四人分。

小学生でなくても、一度に持つには手間な量だ。

 

「……往復かなあ」

 

呟きに被せるようにして、遠くから自分を呼ぶ声がする。

 

「は~な~み~や~く~~~ん!」

 

ドスドスと、自分には出せそうもない音を響かせて、やって来る少年……と呼ぶにはやや疑問なサイズの存在。

 

「……栗田くん」

 

丸い身体に頭、そして手足。

この春からクラスメイトになった巨体の少年(?)、栗田良寛であった。

 

「一緒にかえろ!」

 

そう大した距離を走ったわけでもないだろうに、すでに額には汗が浮かんでいる。

 

「良いよ。でもその前に汗を拭きなよ」

 

言いながら、考える。

 

(でも、カバンを運んでたら結構時間かかりそうだよなぁ)

 

「はなみやくん? どうしたの?」

 

取り出したハンドタオルで顔を拭きながら、栗田が言った。

 

「いやさ、ちょっとこのカバンを公園まで運ばなきゃいけなくてさ。遅くなりそうだから今日は帰れないかも」

 

「む~」

 

灰斗の言葉に、栗田は残念そうにうめいた。が、すぐに分かりやすい造形の顔を笑いに変えて、

 

「じゃあ、僕も一緒に運ぶよ」

 

と言った。

 

「……え?」

 

それ以上何かを言う間もなく、栗田は手提げとランドセルに手をかけ始める。

 

「ふんっ!」

 

手提げは両ひじに、手には一つずつのランドセル。

そのランドセルを両肩に乗せて、頭の上にもう一つ。

 

「ありゃ、一個余っちゃった……」

 

地面にあるランドセルを見て、困ったように呟く栗田に、灰斗は思わず笑っていた。

 

「僕も持つよ。ていうか、もともと僕の荷物だからね」

 

ランドセルを拾い上げ、公園に向けて歩き出す。

 

「ありがとう、栗田くん」

 

「いいよ、友達じゃないか」

 

 

灰斗を小学生の頃から知っている人間は、そう多くない────むしろほぼ皆無である。

 

その希少な例外は、灰斗のことを友達と呼んだ。

 

 

 

 

 




栗田はきっと、誰とでも友達になれる気がする。
でも、誰しもが栗田と友達になりたい訳じゃない。

原作の中では栗田、十文字、ヒル魔の順に好きです。

仲間への想いや距離感が好き。
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