アイシールド21 センスレス   作:大宗 武正

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そういえば、青春タグ付けてます。
つまりは、ヒロインとの甘酸っぱいあれやこれがあるわけです。

でも誰がヒロインかは決まってないです。
まあ、そんな選択肢が有るわけではないんですが……


3th Down 星空園の灰斗です

「ここが僕の家だよ」

 

放課後、栗田に連れられて来たのは大きな寺だった。

どうも、朝に話していたDVDを灰斗にも観てほしいということらしい。

 

「栗田くんはお寺の子なんだね」

 

灰斗は口にしつつも、そのことを特別だとは思わなかった。

確かに珍しいが、それを言ったら自分だって似たようなものだ。

小学五年になるまでに、孤児院出身の子供は一人もいなかった。

家の事情は人それぞれ。当たり前のことだ。

 

「うん……嫌かな?」

 

栗田は俯いてしまう。

大きな栗田が俯くと、ちょうど灰斗と視線が合う。

 

「や、別に。大きな家だね」

 

あるだけいいじゃないか、両親のいる家が。

 

なんてこと、言えるはずもない。

人の家族を見て羨むことに、意味はない。どうせ自分のものにはならないのだから。

 

「あら、お帰りなさい良寛……と、そちらは?」

 

その時、家の奥から箒を持った黒髪の女性がやって来る。

お帰りなさい、と言うことは、この女性が栗田の母親なのだろうと灰斗は思った。

 

栗田に似た優しげな目元が、何やら嬉しそうな形にかわる。

 

「あなた! 良寛がお友達を連れて来ましたよ!」

 

そして、寺の本堂へと大きな声で呼び掛けた。

 

「お、お母さん、いいよお父さんは……こ、怖がられちゃうよ」

 

栗田の慌てた様子に、灰斗は普段聞いている厳しい父親が苦手なのだろうと感じた。

 

「あの、おかまいなく……栗田くんのお母さん」

 

助け船のつもりで出した言葉はしかし、

 

「お、お母さん!? 栗田くんのお母さん!?」

 

何やら彼女の琴線に触れたらしい。

 

「あなた! お友達はとても礼儀正しいお子さんですよー!」

 

「ええぇぇ……」

 

そうこうしているうちに、本堂から袈裟を纏った厳めしい顔つきの空海が現れる。

 

「……いらっしゃい。良寛の父だ」

 

太く重い声だった。

 

「あわわわわ」

 

横で栗田の狼狽えたような声がする。

 

「初めまして、花宮灰斗と言います」

 

そう言って頭を下げる灰斗に、目の前まで歩いてきた空海は軽く頷いた。

 

「初めまして。良寛の友達だそうだね。いつも愚息が世話になっている」

 

「いえ、僕の方こそ、いつも栗田くんに助けてもらっています」

 

空海は息子の連れてきた友人に、軽い戸惑いを覚えた。

小学五年生にしては妙に大人びている。それでいてまるで、相手の機嫌を窺っているかのような目線だ。

 

子供らしくはない。

それが空海の、灰斗への第一印象だった。

 

「そうか……まあいい。奥にあがりなさい。すぐに茶を持っていこう」

 

ともあれ、いつまでも立ちっぱなしというわけにもいかない。

普段の息子のことなども聞いてみたいが、急ぐようなことでもない。

 

しかし、空海の言葉に、驚きを浮かべたのは誰あろう、灰斗本人だった。

 

「いいんですか?」

 

思わず聞き返した。

 

「それは、どういう意味かな?」

 

空海からの返しに、灰斗は思わず言葉に詰まった。

 

(知らないなら、言わなければよかった。

でも、黙ってた方が後からひどいだろうし……ああ、なんで朝の僕は簡単に観に行くなんて言っちゃったんだ)

 

色々なことが頭をよぎるが、すぐに振りきると、空海の目を見て口を開く。

 

「僕は、星空園の子供です」

 

空海は目の前の子供が、まるで今にも泣き出しそうに見えた。横にいる妻・比丘尼が、息を呑む気配が伝わってくる。

 

「か、灰斗! 何を言ってるの!?」

 

栗田の慌てた声。

 

「そんなの関係ないよ‼ お父さん、お母さん、灰斗は僕の友達だよ! もし、そんなことで灰斗に何か言ったら、僕は許さないからね!」

 

しかし、最後は珍しく、強く言い切る。

 

「まあ……」

比丘尼は口元に手をやると、

 

「良寛が、こんなに主張するなんて……感激だわ」

 

いまいち掴みにくい反応を見せた。

 

「あー、花宮くん」

 

空海は妻のことを一度無視すると決めた。

 

「君が星空園にいるとして、それが理由で、君は何か悪いことをしたのかな?」

 

「園の迷惑になるようなことはしません。

でも、そのように(・・・・・)は見てもらえません。

なので、先に言っておくべきだと思いました」

 

「そうか……」

 

空海は天を仰ぐ。

 

「君は色々な経験をしてきたんだな……頭も良い。

改めて、よく遊びに来てくれた。良寛といつも遊んでくれてありがとう。今日はゆっくりしていきなさい」

 

再び灰斗へ向けた顔には、その厳めしい顔にわずかな笑みを浮かべていた。

 

その言葉を聞いた栗田は、くしゃっと顔を綻ばせた。

 

「灰斗、行こう!」

 

灰斗の手を引いて走り出す。

 

「うわっ」

 

相変わらず、同い年とは思えない力の強さだった。

 

「あのっ、ありがとうございます、お邪魔します!」

 

辛うじでそれだけ言うと、灰斗は栗田の後に続いた。

 

 

 

二人が去ったあと、空海と比丘尼は悩ましげな顔を見合わせた。

 

「子供らしくないとは思ったが、まったく、そのように扱われなかったのであれば、それも当然であったか」

 

「木下さんは良い人です。私は、例えあの子が良寛の友達ではなかっとしても、信じますよ」

 

そして、と比丘尼は続ける。

 

「どうかこれからも、あの子の良い友達でいて欲しいと思いました」

 

「……二人に、飲み物を持っていってやってくれ」

 

「なら、シュークリームも持っていきましょう。

あの子の大好物ですし」

 

笑う比丘尼の声は、どこまでも楽しげだった。

 

 

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灰斗は呆然としていた。

 

「ほらここ! 僕より大きいし、走るのだってそんなに速くないけど、身体を張って仲間を守った!」

 

栗田の嬉しそうな声が耳を通り抜けていく。

 

二人は今、小林の残したDVDを観ているところだ。

映像は海外のプロ試合。

要所要所に小林が入れたと思われる解説や字幕があり、初めて観たものでも取っ付きやすくなっている。

 

なっているから、わかる。

 

(これ、確かに栗田くんには向いてるよ)

 

が、

 

(僕には無理だぞ。映像の中にいる、誰の動きだって出来るとは思えない)

 

「すごいよねぇ……ぼ、僕も、こんな風になりたいなぁ」

 

(うん、そうなったから、僕を誘ったんだよね)

 

「ね、ねえ、灰斗……」

 

(ああ、わかってるよ。言いたいこと)

 

「一緒にアメフトやろうよ!」

 

(無理だあぁぁ……)

 

今日、ここに二人のアメリカンフットボールプレイヤーが、誕生した。

 

一人は巨体と怪力が取り柄の──

 

もう一人は何一つ取り柄を持たない──

 

一人は運命に導かれるように──

 

もう一人は──

 

「も、もちろんじゃないか。友達ダロ?」

 

若干どもりながら、転がり落ちるように。




さあて大変。

主人公のリアルラックがやばい。

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脇役列伝

⬛木下
一話に登場。
灰斗のいる孤児院、『星空園』の院長。
心優しく、子供たちに深い愛情をもって接している。
地域住民に孤児に対する偏見を無くしてもらおうと、様々な活動をしているが、効果は薄い。
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