みんな大好き束さんとちーちゃんがイチャイチャするおはなし。
 わっちゅーねぃむ?

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 タイトルだとかタグだとかあらすじが内容と関連してなきゃいけないなんて決まり無いと思うの。

 ではでは始まります。


タイトルなし

 1

 

 薄暗い室内には血管のように張り巡らされたケーブルとそれが発する生暖かい空気、振動音があった。

 中心にはお伽話のモンスターの骨格じみた椅子が置かれており、そこに一人の女性が居る。

「うふふ……やっと来てくれた……」

 薄気味悪く笑う彼女は迷い込み、囚われた少女を演じようとする。

 事実、彼女が腰掛けている椅子はちょうど兎を捕らえる罠のように複雑な形でいる。それに捕らわれた彼女は満更でもなさげな表情を浮かべ、指先で椅子をなぞった。

 彼女の前方に在る鋼鉄の扉は硬い。レーザーでも使わなければ傷一つつけることすら出来なさそうなそれに一筋の光が差し込む。

 その光は閉ざされた世界に終止符を打つ救世主か。

「見つけたぞ」

 或いは彼女のたった一人の幼馴染か。

「えへへ、めっかちゃった」

 低めの声とともに扉が真っ二つの割れて倒れた。切断面はささくれ一つ無く、なめらかな光沢を帯びている。

「ちーちゃんったらもー。壊しちゃだめじゃーん」

「勝手口が無かったんでな」

 千冬の手に握られた日本刀の仕業であることを束は知っている。無論それを使った千冬の強さも。

 時の名匠・明動陽の作品「緋宵(あけよい)」は先ほど箒に手渡された物だ。

『……これで姉の闇を払ってください。姉さんを……救ってください』

 酷使した体に鞭打って頼み込む箒の姿に千冬もそれを承諾した。

「なぁ束」

「なーに?」

 学園で教鞭を振るっている時と同じ黒のスーツを付けた千冬だが暗い部屋には一切同化していない。少なくとも束にはそう感じられた。

「もう満足しただろう」

 抜き身のそれを鞘へと納め、千冬は言う。

「……。なにが?」

 朗らかに答える彼女に千冬は辟易したようにため息を吐き、壁に背を預けた。

 頭につけたウサ耳型カチューシャをピコピコと動かしながら束も背もたれに寄りかかる。

「一夏を唯一の男性操縦者に仕立てあげ、箒に専用機と活躍の場を与え。あまつさえアイツも……」

「ちーちゃん」

 千冬を遮り束が大きく伸びをする。それに合わせて椅子も形を変えていく。

「それっていけないことなのかな」

 無邪気に、本当に自然な様子で束がたずねる。天災らしからぬ素朴な疑問、否、天才が故の小さな不思議だった。

「『人とは無限の探求と好奇心の生き物』誰かがそんなこと言ってなかったっけ? うふふ、気のせいかな? 私が不思議を求めるのは悪いことなのかな?」

「さぁな。だが束、これだけは言えるぞ? おまえはやりすぎた」

 鋭い眼差しを向け、千冬は続ける。

「おまえが思い描いた幻想は所詮はただの『ゆめまぼろし』だったんだ。おまえはルイス・キャロルにはなれない。おまえは神じゃない」

「……」

「さぁ、帰ろう」

「いやだよ」

 千冬が話す間、徐々に表情を暗くしていく束はその誘いを断った。

 拒絶の念に合わせ、彼女を捕らえる椅子が再び形を変える。

「せっかく楽しい楽しい世界になったんだよ? どうしてそれを壊すの?」

「私はあるべき姿の世界が好きだからだ」

 鈍く光る漆黒の椅子は物体の形状維持を止め、どろどろとした液体となって束を飲み込んでいく。

 彼女を縛りつける心の闇という名の化け物とでも言うのだろうか。

「助けてくれるよね? ちーちゃん」

「待っていろ。すぐに行く」

 最後まで見えていた束の顔がついに闇に飲み込まれた。

 何かを望んだ者が纏う黒の鎧。千冬はそれを良く知っていた。

「まったく……」

 闇は束を飲み込んだあと球状になり、表面にスパイクのような棘が飛び出した。

「人を羽ばたかせたモノの製作者がこんな引きこもりでは世話ないな」

 シニカルに笑い刀の柄へ手を置く。

 かつて弟がしたように。自分も束を救ってみせる。

 外で待機させている一夏の姿を思い浮かべながら千冬は刀を腰で構えた。

「行くぞ」

 瞬間、一つ踏み込んで距離を縮めた千冬はすばやく腰を切り最速の抜刀を行う。

 斜め下から右手を振りぬき一閃。その一太刀で闇は火花一つ散らさず真っ二つ割れた。

「(見えた!)」

 闇から露出した束の胸元にある物体を睨む。

 ISのコアにもみえるそれは無機物らしからぬ様子で脈動している。

「終わりだ。帰ろう束」

 流れる動きでそれに緋宵を突き立てた。

 一つの閃きがすべてを払い、心の鎖を断ち切る。これこそが『一閃二断の構え』だ。

 切っ先でショートしているそれから刃を抜き、鞘へ落とす。

 

 膝から倒れる束を抱きとめたと同時に閉ざされた世界は崩壊を始めた。

 

 2

 

「ん……んー?」

 顔面に差し込む光に呻きながら束が目を覚ます。太陽に起こされるなどいつ以来だろうか? と笑う束はゆっくりと体を持ち上げた。

「やっと起きたか」

「おはよ、ちーちゃん」

 振り向いた先には千冬が足を崩して座っている。

「うわー、メチャメチャだねぇ」

「そうだな」

 歩み寄り、背中合わせで座る。言葉通り彼女の研究所は今ではただの鉄屑となって辺りに散乱していた。

 もう一度太陽を見上げてみる。眩しかった。

「なぁんだ……」

 クスリと笑った束が千冬の背にもたれ掛かる。互いの後頭部が優しくぶつかった。

「結構面白いじゃん。世界」

「……そうだな」 

 幼いときより興味は愚か認識するのも止めていた世界は中々に面白いものらしい。なんだか損をした、と束は胸元にぶら下がっている鉄屑を投げ捨てた。

「もうちっと寝ててもいい?」

「ああ」

 ゆっくり目をとじる。起きたら何をしようか? きっと世界中から追われるだろう。そうなったら千冬と一緒に逃げてみようか、それとも心中なんかしようか?

 どちらもロマンティックだがなにか違う。

 じゃあ箒ちゃんやいっくん達と遊ぶ? 昔みたいに。

 どれも捨てがたい。あぁ、世界はこんなに楽しさに満ちていたのか。

 

 世界は《無限》の不思議を持っていた。

 

 

 

 子鹿は「きみはいったいなにものなの?」といった。とても爽やかな声で。

「それがわかればいいんだけど」アリスはこう答える。

 そして少しだけ悲しそうに言った。

「ちょうど今は何でもないの」†1

 

 

 自分はこう答える。

「私は篠ノ乃 束。超天災ぷりちー束さんだよ!」

 なぜって?

 狼にこう言われたんだもん。

 

 『おまえは誰だ?』ってね。

 

 

 

 

†1 ルイス・キャロル著「鏡の国のアリス」より引用。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





 さてさて「IS短編ってあんまり見ないからやってみたいよね!」と始めた結果がこれっすよ。ははは

 では、読了ありがとうございました!

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