幼少の頃に、自分が織斑一夏の偽物であることを知った。

“織斑一夏”となるまえに消された“俺”という存在。

俺はこの世界を恨む。

―それが“俺”という存在の最後の望み。

“復讐”なのだから。

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「復讐心は毒と同じ。人を蝕んで、いつの間にか人を醜く変えてしまう。」

                         映画「スパイダーマン3」より


それは復讐劇で喜劇で悲劇

―名前とはこの世で一番短い呪いである。

 

名を奪われる事すなわち自身を奪われると同意義である。

他者の名を与えられることもまた自身を奪われる事、その名の者になり果てることと同意義である。

 

 

 

 

―そして俺はその名を奪われた。

 

―与えられた名は“織斑一夏”。

 

―与えたのは身勝手な大人たち。

 

最初から名の無かった俺という存在に与えられたその名は、俺を呪いとして降りかかり俺という自我を殺そうとしてきた。

 

―だが俺は消えなかった。

 

―俺の中に巣喰う復讐の心がそれをよしとしなかった。

 

だから俺は“俺自身”という存在を葬ろうとした者達を、そんな者達がいる世界へ報復する。

 

“本物の織斑一夏”を、俺の姉と言われ続けた“織斑千冬”へ報復する。

 

その為に“織斑一夏”を演じ続けた。

 

 

そしてIS学園に強制的に入れられ、そこで復讐を行うにたる力を手に入れた。

 

 

『よう、相棒。復讐など所詮は大量殺人だ。結局殺すしかないのさ。だろう?』

 

俺の手に入れた力はそう俺にささやいてくる。

俺が右手に持つその相棒は古い名を雪片弐型といった。“俺”の“織斑一夏”名前と同じ偽物の名前だった。

 

だからこそ共感した。以来こいつは俺を相棒と呼んでくるのだ。復讐に怒りや狂気がにじみ出る声で。

 

 

俺たちはまず、俺たちの復讐を止めようとした白式の人格を喰らった。奴は悲鳴を上げながらも最後まで俺を諭そうとしたがまるで無駄だった。

 

そこからは本格的な復讐の始まりだった。

こいつは俺達の復讐に合わせた姿へと変わった。

 

剣と銃と楯が一体となった武器になり、機体の姿形も変わった。何よりも俺たちは“喰う”事始めた。

ISを喰らい、人を喰らい、武器を喰らい、核すらも喰らった。

 

喰う事で相手を取り込み、相手の技特徴を取り込み命や存在すら“奪った”。

 

それが俺たちの復讐だった。

俺という存在を、“織斑一夏”という存在を奪った者達へ、この世界への報復だった。

 

 

―そして俺たちは戦争を、殺し合いをし続けた。

 

何億と殺した。向ってくるISを次々と喰らった。

 

その途中で鳳鈴音と戦った。

 

「あんた、私とあった時から復讐に取りつかれたたの?…………ねえ、答えてよ!!」

 

単騎で向かって来た彼女は俺に疑問をぶつけ、涙した。

俺は彼女を殺した。そして喰らった。

彼女は最後にこう言った。

 

「じご……くでまって……かく……ご……なさ……い………………。」

 

 

彼女を殺し最後に残る相手へ向かうため、かつてすごしたIS学園へ向かう。

 

そこで俺は戦った。

 

“本物”の織斑一夏と織斑千冬とマドカと箒とセシリアとラウラとシャルロットと。

 

それらすべてと同時に戦った。

 

「貴方にはここで果てていただきます。理由はお分かりですね?」

 

―セシリアは覚悟を決めたように言う。

 

「お前とこうなるとはな。……何故だ!一体何がお前をそうさせた!!」

 

―織斑千冬はそう嘆く。

 

「所詮はケモノだ。人の言葉も解さんだろう。」

 

―マドカは軽蔑の眼をもって言う。

 

「鈴の仇だ。殺させてもらうぞ!」

 

―箒は殺された鈴の仇と言い。

 

「復讐に生きずただ普通生きるとは、もういかんか。」

 

―ラウラは嘆くように言う。

 

「それは他人が決める事ではないんじゃないかな?」

 

―シャルロットは俺を見据えて言う。

 

 

 

 

『復讐の為だ。選んで殺すのがそんなに上等かね?』

 

―相棒は馬鹿馬鹿しいと鼻で嗤う。

 

「殺し過ぎるお前は。」

 

―本物の織斑一夏はそう冷たく悟ったように言う。

 

 

 

「理不尽に生かされ、理不尽に死ぬ。

それが俺だった。

 

俺はそれが嫌だった。

 

“好きなように生き、好きなように死にたかった。

 

だがそれは許されなかった。

 

だから報復する。

 

それの何が悪い。」

 

 

そして戦闘が始まった。

度重なる戦闘で疲弊した俺には1対多数は不利であったが箒、セシリア、マドカ、ラウラ、シャルロットを戦闘不能に追い込む事はできた。

しかし織斑千冬に相棒を破壊されてしまった。

 

『……すまねえなぁ相棒。どうやら俺は此処までらしい。

良かったぜ?お前とは……。』

 

最後の相棒はそう言って砕けた。

俺は相棒だったその残骸を“喰らい”最後まで戦った。

 

しかし不利な状況は覆せず。最終的に織斑一夏によって敗れる。

 

「お前にはすまないと思っている。

―名前を奪い、存在を殺し、自由を奪った事を。

……だが聞かせてくれ、何故こんな方法しか無かったのかを。

もっと別の方法があっただろう。」

 

織斑一夏は俺を憐れみの目で見、問うてくる。

俺は胸に穴が空き、瀕死の体に鞭打って動かしながら答える。

 

「愚問だ。俺には復讐しかなかった。奴らに“消された”俺という存在には!!俺は憎い!この世界が!!俺という存在を奪ったこの世界が!!だから殺した!今までも!そしてこれからも!!」

 

「ッ!?馬鹿な!?あの状態で!?」

 

俺は崩れた鉄骨のむき出しの柱を引き抜く。

 

「ここが!この復讐が!!俺という存在の!魂の居場所だ!!!!」

 

そしてその柱を織斑一夏に向かって振り抜いた。

 

―しかし気が付けば俺は負けていた。

 

視界が暗くなっていく中、最後に感じたのは俺の姉とされた織斑千冬が俺を抱えて泣き叫ぶこえとその温もりだけだった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『復讐心は毒と同じ。人を蝕んで、いつの間にか人を醜く変えてしまう。』

 

復讐にのみ踊らされた彼はひどくいびつな存在となってしまった。

人“だった”彼は存在を殺され、復讐心が心に残った。

それが“織斑一夏”としての彼の心も蝕み、最後は醜い獣へと変えてしまったのだ。

 

だが“彼”は気が付けなかった。

存在を殺された“彼”と織斑一夏にされた“彼”は別人であった事を……。

『復讐は死んだ者の為でなく。残された者の自己満足である』という事を。

 

 

これは悲劇だろう。しかし喜劇だろう。

 

幼い心の起こした復讐劇は他の者にはどう映るのだろうか?

 

それはその人次第である。






この短編のテーマは作中で何回も出てくる「復讐」というものです。

なぜ短編書いたかといえば、気晴らし&構想をまとめるため。
しかしいろいろ考えてたらこんなの仕上がっていて没もなんかさびしいから物は試しにと思って投稿しました。

解説欲しかったら活動報告にでも載せようかと思います。

※尚反響が良ければ長編化するかも?

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