「今度ね、ターミナルの近くで“全国スイーツ王決定戦”があるんだけど、ソレに出ようと思って応募しちゃった。」
銀時とのデート中、参加者の名札の様なものを見せてそんなことを言われた。
「お前も物好きだよなぁ。」
「まぁ、作るのがこの大会の目的っていうか、優勝商品がさぁ温泉旅行なんだ。」
「旅行に行きたいのか?」
「うん♪何処かの仕事バカさんと一緒にね。」
ゾクッ。なんだか悪寒、いや、殺気か。後ろを振り返るも何ら変わらないファミレスの風景が広がる。
「どうかした?」
「いやぁ~、なんでもない。」
「ふ~ん。」
銀時は、食べ終わったパフェを机の端にやりメニューを見始める。
「まだ、食べんのか?」
「プリン食べたい。」
「はいはい。どうぞ、食べてください。」
まだ、時間がかかるらしい。本日5本目のタバコに火を付けた。
夜勤のため、銀時とはファミレスを出て終わり。次はいつ会えるかわかんねぇけど……。
「次は、いつ会えんのかねぇ?」
銀時が言う。俺と同じことを思っていたなんて自然と口元が緩んでしまう。
「なに、ニヤニヤしてんの?キモいんだけど……。」
「俺も同じ事思ってたから……。」
「そっかぁ。」
自然と歩くのがゆっくりになってしまう。行かなきゃいけないのに銀時と離れたくない。
「もう、着いちゃうね。」
「あぁ。」
「ほら、早く行けって。お仕事頑張ってね。」
チュッ。
ほっぺたに柔らかいものがあたる。
「銀時?」
「………たまにはね。」
顔を真っ赤にしてる。
「口にしてくれたらなぁ。」
「さっさと行けし、帰る。」
「じゃあ。」
屯所の門の前に来てしまって、中に入るしかなくなる。
敷居を跨ぐとき、視線を感じた。
今日は、ずっと見られていた気がする。
いったいなんなのか、まるでわからねぇ。俺のファンなのかぁ?
「副長、失礼します。」
翌日、部屋で仕事していると山崎がいつもとは違うトーンで話しかけてきた。
「どうした?」
「副長宛に手紙が来てるんです。」
「また、いつものラブレターだろ?そこら辺に捨てとけよ。」
「それが、いつもとは違うみたいなんです。」
目の前に差し出されたソレは、いつもピンクとかキャラクターものの封筒が多い中、真っ赤な封筒にワープロ字で『土方様へ』と書かれている。
山崎が感じたように、普通のラブレターとは違い異様な雰囲気を出していた。
「わかった。後で、見るわ。」
「それじゃぁ、俺はこれで…。」
山崎が、部屋を出たのを確認し封を切る。
そこには、『別れて』とだけおそらく血と思われるもので書かれていた。
昨日、俺たちをつけ回していた奴だとはわかるが、今までこんな手紙は自慢じゃないが幾度となく見てきてる。特に気にすることもなく、俺は仕事へと戻った。
その日からだった。毎日のように真っ赤な封筒は屯所に届けられた。
日を追うごとに、内容も過激になってきた。今では、カッターの刃まで入ってる始末。最初は、俺へと思っていた手紙も銀時への愛情だと知った。
「ト~シ~、聞いてよ。」
「どうしたんだよ。」
「この前、スイーツ大会に出るって言ったじゃん。あれ、一応プロは参加できないんだけど、参加者の中に元プロが居てさぁ、負けちゃった。」
屯所まで来たと思ったら、いきなり泣きつかれた。
「旅行ぐらい連れて行ってやるから……。」
「うぅ……ん。」
抱きついて俺の胸で泣いてる。
「トシ…なんか疲れてる?」
「まぁ、立て込んではいたけど……もう、終わったから平気。」
「うぅ……ん?
「別に居て良いって。」
さっき来たばかりなのに、すぐに帰っていってしまった。
胸ポケットに直した真っ赤な封筒を取り出す。
今日も当たり前のように来てしまった手紙。いつもは、一言か二言ぐらいだった手紙。それが、今日は違っていた。
『男の貴方が、銀時様といつまで付き合ってるんですか?早く別れて。私の愛しい銀時様をこれ以上汚さないで、子どもも作ることなんて出来ないのに、貴方の回りにはいつも女の人がいるのに………。なんで、よりによって男である銀時様を選ぶの?
私の銀時様を返して。』
朝にこの手紙が届いて、ずっと読み返してる。
今まで、無視していたけど『子どもも作ることなんて出来ないのに』このフレーズが頭から離れずに、仕事も手についてない。確かに俺が銀時の未来を妨げていたのかもしれない。この女に言われるまであまり意識しなかったが、心のどこかで負い目に感じていたのかもしれない。
俺は、銀時と別れるべきなのか………。
それから、1ヵ月銀時を避けた。別に今まで仕事で1ヵ月逢わなかったことなんてざらにあったし、銀時からも特に逢いたいとも言われなかった。だから、街ですれ違っても言葉もかわさなかった。
その事が女には別れたように思えたのか、あんなに来ていた手紙はぱったりとして来なくなった。
「あっ……。」
「よぅ。」
久しぶりにいつもの居酒屋へ出向くと、カウンターで銀時がチビチビ呑んでいた。
「話あっから隣座ってくんない?」
他に客は
「いつもので……。」
親父に言うと、すかさず熱燗が運ばれてくる。銀時が、食べていた肉じゃがを差し出してくる。
「俺さぁ、なんかした?」
「ぃゃ……。」
気まずくなり、小声になってしまう。親父も空気が重たいのがわかったのか、俺にお通しを渡すと店の奥へと行ってしまった。
「俺、お前に避けられてるよねぇ?」
「………別れたいんだ。」
今言ってしまえ、じゃないと言えなくなってしまう。別に、ストーカーの言いなりになる訳じゃないけど、ストーカーの言う通りだと思った。俺は、銀時の
「そっかぁ。」
「えっ?それだけか?」
「それだけって別れたいんでしょ?………やっぱり、あいつ行ったんだ。お前のとこ……。」
どこか遠くを見つめ話してる。
「あいつって?」
「俺のストーカー。俺のとこに最初来てて、『好き』とか『結婚して』とか言ってきてさぁ。まぁ、一人すでにストーカーは居たし、今さら増えても大差ないと思ってたんだけど……なんかしつこくて。つい、恋人が居るって言っちゃったんだ。そしたら、諦めると思ったから……。
でも、お前のこと調べあげられちゃって……。あーいうのが危ないんだねぇ。俺んとこに来なくなったから、安心してたんだけどお前に嫌がらせしてたなんてな。」
銀時は、全て知っていたのか?後の言葉が出てこない。
「けど、やだ。お前と別れんのも嫌だけど、一番あんなストーカーの言いなりになるなんてやだ。
それとも、トシは俺と別れたいの?」
「別れたくなんてねぇよ。けど、お前の重みにはなりたくない。」
「あいつに何て言われたかは知らねぇけど、重みになんてなってないし、そんな風に思うんだったらハナから男となんか付き合うかよ。それに、好きになった奴がたまたま男ってだけで、誰でも良い訳じゃないし、俺は、土方十四郎が好きなんだよ?」
「良いのか?ガキ作れねぇぞ?お前、ガキ好きだし……。」
「確かに好きだよ。けど、すでに手のかかる子供4人かかえてるし、今さら要らねぇよ。」
「4人?2人じゃなくて?」
「うーん、3人かなぁ?神楽でしょ?新八でしょ?定春と後は、トシね。」
「俺も入ってんのか?ってか、犬も入れんのかよ。」
「大事な家族だし、なんちゃってだけど。こんな子持ちの中古品だけど、貰ってくれる?………って恥ずかしい。プロポーズみてぇ。」
「プロポーズって受け取って良いのか?」
「へぇ?………うん〃〃」
顔を真っ赤にしながら、とっくの昔に冷めたであろう熱燗をとっくりごと飲み干した。
「貰ってやるよっていうか、お前の残りの人生俺に全てくれ。」
「お前、恥ずかしすぎ。」
少し、遠回りしたけどストーカーのお陰でより仲良くなれた。
後日、二人の左の薬指に銀色に輝く指輪が江戸中の皆に目撃された。
完
本当は、別れて終わりだったんだけど、あまりにトシが可哀想になっちゃってハッピーエンドにしました。
銀ちゃんのストーカーは、さっちゃんではありませんよ。さっちゃんは、私の中では『銀ちゃんが好きだけど、恋を邪魔する人じゃない』んです。よって、今回の二人を別れさせようとしたのは只のモブです。