昔から私は病弱で、母さまも父さまも私をお外には出してくれなかった。
私も、当時から持病でいつも咳が出ていて、お外に出られない代わりに、と母さまと父さまがたくさんの本と、優しいメイドさんをくれた。
赤髪で本を読むのが上手なメイドさんは、私にたくさんの事を教えてくれた。
文字の読み書き、計算、外の世界のこと、吸血鬼や悪魔、魔女について・・・
母さまと父さまは、いつも忙しそうにしていたけれど、毎日必ず私の部屋に来て、お外の物や新しい本を持ってきてくれた。
日々増えていく本と優しいメイドさんのおかげで、私は限られた場所でも幸せに暮らしていた
・・・あの日が来るまでは。
その日、いつもは必ず決まった時間に来てくれる母さまと父さまは来なかった。赤髪の優しいメイドさんも来なかった。やってきたのは、鉄を頭に被って槍を持った知らない人達だった
お前が魔女だな、来い。
知らない人達の真ん中にいた一番大きな槍を持った人が、そう言って私の腕を掴む。
いやっ、母さま、父さま、助けて!
母さまと父さまは来てくれなかった。私は、知らない人達に連れて行かれて、十字架に磔られた
では、これより魔女裁判を開始する。
私を引っ張ってきた人が、磔にした私に向かって言う
助けて・・こあ・・けほっ
私は赤髪の優しいメイドさんの名前を呼んだ。
愚かな人間共よ。何故我が主人の娘に危害を加える。去れ
すると、どこからともなくメイドさんの声が聞こえてきて、いつの間にか私以外のみんなはピクリとも動かなくなっていた
大丈夫ですか、お嬢様?
どこからか現れたメイドさんは、私を解放してくれた
こわかった・・こあ・・けほ、けほけほ・・
お嬢様?しっかりして下さい、お嬢様!!
気が付いた時には、私はいつもの部屋ではないどこかで眠っていた
・・・ん。ここ、は?
お目覚めですか、お嬢様。ここは私の家です
私が起き上がると、すぐにこあが来て答えてくれた
ねえ、こあ。あなた、本当はなぁに?
ふと、そんな言葉が私の口からあふれ出た
・・・私は、悪魔です。お嬢様が産まれる前から、お嬢様の悪魔として、お嬢様のお母様と契約を結んだのです。その代償として、お嬢様は生まれつき病弱な身体に・・・
こあは申し訳なさそうに全てを話してくれた
こあが悪魔だということ、私が病弱なのはこあとの契約のせいだということ、魔女狩りで本当は魔女だった母さまと父さまは死んでしまった事、全部を私に話してくれた
ねえ、こあ。私は、これからどうすればいい?私、わかんないよ・・・!
いつも本ばかり読んでいた私は、父さまと母さまが二度と帰ってこないこと、これからは一人で生きていかなきゃいけない事を知っていた。けれど、そのためにどうしたらいいのか私には分からなかった。
・・・魔女に、なりましょう、お嬢様。あの虹のように七つの色の魔法を使えるような、魔女に
こあは、泣き笑いのような顔で、遠くに映る虹を指差して、答えてくれた。
分かったわ、こあ。だったら、私はあの虹のように七つの魔法を使える、『七曜の魔法使い』に、なる。
はい、お嬢様・・・いえ、『七曜の魔法使い』、パチュリー様。
こうして、私は病弱な女の子のパチュリーから、『七曜の魔法使い』パチュリーになった
その後、私が月、火、水、木、金、土、日の七つの魔法を完璧に使えるようになった頃、私は彼女と出会った
貴女は、吸血鬼かしら?
私は、レミリア・スカーレット。
出会ったばかりの彼女は、昔に私が両親を失い、道を閉ざしてしまっていた時のように、冷たくて虚ろな目をしていた。
そう、成り立ての吸血鬼さんが、私の図書館に何の用かしら?
あなた、私の眷属になりなさい。
傲慢を通り越して、いっそ笑えるような清々しささえ感じるその声は、私が魔女として生き始めた頃の声音そっくりだった。
・・・ふふっ、眷属にはなれないけれど、貴女の友人としてであれば、この『七曜の魔法使い』パチュリー、力を貸すわ。いいわよね?こあ
もちろんです、パチュリー様!
こうして、私とこあはレミリア・スカーレットという若い吸血鬼の友人として過ごす事となった
それ以降は、レミリア・スカーレット・・レミィの屋敷『紅魔館』の一室、『ヴワル図書館』でレミィの妹さんと出会ったり、いつの間にかレミィが東洋の妖怪らしい美鈴がやってきたり、どこからか連れてきた咲夜がやってきたり・・・
私は、こあにずっと救われてきていたのね、ありがとう、こあ・・
「・・・・ん・・・」
「おはようございます、パチュリー様」
「こあ・・・早速で悪いけれど、紅茶、淹れてくれるかしら?貴女の淹れた紅茶が飲みたいわ」
「・・・はいっ!分かりました、パチュリー様!」
「・・・・・・・・・こあ、ありがとう」
「え?何か言われましたか?パチュリー様」
「・・ふふっ、何でもないわ」