TwitterのRTハッシュタグによる執筆お題。
①原作:IS
②文字数:五千文字以内 ←失敗。七千文字近い。
③テンプレ
④何故か愛される

適当に書いたので山なしオチなし。戦闘描写練習として読んで頂ければと思います。


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英雄王の己(オレ)がISで戦う落書きss

 

 

 

 蒼穹を裂くように二筋の閃光が、不規則に疾る。何度もぶつかり合い、掠め合い、激しく互いを傷つけ合って縦横無尽に空を駆け回る。まるで自然なものではないが、人の手によるものなのか疑う軌道と速度は、一見するとひどく現実味に欠けていた。

 回転しながら、優雅に舞うは銀の閃光。大きな鋼の翼を翻し、力強くも繊細に空を斬り裂いていく。翼そのものが鋭利な武器であり、舞い散る羽の様な光弾は山をも穿つかの如き威力を秘め、敵を堕とさんと舞い散る。幻想的ながらも、死の色の濃い攻撃だ。

 一方の金色の閃光は、高貴で麗しい輝きそのままに、嵐のように荒れ狂っていた。身の丈を超えるかのような大剣を振り回し、豪快ながらも流麗な太刀筋で銀の閃光を唐竹割にしてやろうと猛攻を続ける。だが、互いに決定打を与えることは出来ず、戦況は拮抗していた。

 

 

「心の通わぬ絡繰風情で、よくぞこの(オレ)とここまで競り合う!」

 

 

 黄金の機械の鎧を纏い、金髪緋眼の少年はニヒルに嗤った。

 鋼の翼とぶつかり合う衝撃は如何に鎧に守られ、身体を強化された彼であっても生半可なものではない。事実、大剣が悲鳴を上げる度に眉間に皺が寄り、こめかみを冷や汗が伝う。一瞬たりとも気の抜けない殺し合いに、だが彼は確かに愉悦を感じているのだ。

 自らの力を思いの侭に振るう悦びが、彼の心から恐怖を拭い去っている。友の窮地が。世界の危機が。強大な敵が。概ね世間一般において一般人と称される者では凡そ遭遇出来ないイベントが、彼を興奮へと追いやっている。

 敵は白銀の翼を駆る天の鳥。そして対する自分は、神話に伝わる数多の武具を駆る英き雄。一世一代の晴れ舞台に、心踊らないはずがない。例えそれが、命の危機と紙一重であっても。

 

 

「だが! 木偶では(オレ)は倒せぬ! 戯れだ、踊るがいい人形!」

 

『―――ッ!!』

 

 

 一瞬、ほんの一瞬だけ打ち合いのリズムが崩れた瞬間を狙い、そっと置いてやるように大剣を手放してやる。本来ならなんてことない速度の、否、静止としか言えない行為も、高速戦闘中に於いては敵の意表を突く妙手。

 然るに白銀の翼は、ふわりと目の前に降りてきた大剣へと突っ込む形になる。其れにしてみれば、突如にして鋼鉄の壁が現れたかのようなものだっただろう。分厚く広い刀身を、転がるように失速、辛うじて自身へと伝わる衝撃を緩和。しかし失速は免れぬ。

 

 

「―――王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)

 

 

 無手となり、間合いもとった。天の鳥が祝福の鐘を鳴らす距離よりも近く、鋼の翼が彼を捉えるよりも遠い。

 乃ち、彼の本来の間合いである。たった一言、それだけで顕れる、神秘の威力。ゆらりと彼の背後の空間が波立った。

 

 

「ギルバート! ギル! ‥‥あいつ、また調子に乗りやがって!」

 

「援護をする暇もない、か。まったく、悪い癖だ」

 

「どうする箒? ギルの奴はノリノリだけど、このまま任せるか?」

 

「そんなわけにいくか! 大体、あいつだけだと肝心なところで“うっかり”何かやらかしかねん。というか、多分、直にやらかす。援護に回るぞ、一夏」

 

「おう、そうだな。ほんと、危なっかしい奴だよまったく!」

 

 

 金と銀の閃光がぶつかり合う少し後ろの方を飛ぶ、白い剣と赤い刀が呆れたように愚痴を零した。織斑一夏と、篠ノ乃箒。先程から空戦ではしゃぎまくっているギルバート・ウルクのクラスメイトであり、今回のミッションに於いては共に戦列を並べて戦う戦友でもある。

 暴走した機動兵器―――銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)を抑えるために、本来ならば彼ら三機を以て当たるはずであったのだが‥‥結果としてギルバートが先行してしまったがために追いつけず、なんとか後方で不規則な機動をする二機に喰らい付いているのが精一杯であった。

 

 

「ラウラ! セシリア! 聞こえるか!」

 

『こちらラウラ・ボーデヴィッヒだ、聞こえている』

 

『セシリア・オルコットですわ。準備は出来ておりましてよ、一夏さん!』

 

「―――助かる! 多分もう少しでギルが“やらかす”から、援護射撃を頼む! その隙に俺と箒で抑えにかかるから!」

 

『ああ、こちらでも状況は把握している。‥‥いつもの通りだな』

 

『清々しいぐらいにいつも通りですわね。まぁ、逆にやりやすくて助かりますわ』

 

『おそらく“やらかす”タイミングもいつも通りだ。そうだろう一夏?』

 

「‥‥あいつ、完全に把握されてんなぁ。まぁそういうところ含めて友達だけどさ」

 

 

 機動兵器、ISの機能を用いた通信から聞こえる友人たちの様子に、戦闘中だというのに思わず苦笑が零れる。完全にアホの子の扱いであるが、どうしてもそれを否定できない。

 ああ、なるほど、そういえば。確かに彼女たちの言うとおり、ギルバート・ウルクという人間は随分と分かりやすい性格をしていた。

 

 

「さぁ木偶よ! (オレ)の財に呑まれるがいい!!」

 

「ギル!」

 

 

 まるで水面のように波打った空間に開く、幾多の砲門。そこから湧き出て来るのは、総じて震えの走るような神々しさ、禍々しさ、美しさ、雄々しさ、力強さを秘めた武具の数々。

 山をも斬り崩した剣がある。雷を絶った刀がある。海の向こうまでも届いた槍がある。射ったが最後、必ず(あた)った弓がある。小島一つを打ち砕いた鎚がある。

 彼が誇らしげに語ったところによると、全てが正真正銘の神話の兵器。正確には、神話の兵器の原典だという。その真偽はさておき、威力は本物だった。何がどうなってそれが彼のものとなっているかはさっぱり分からないが、古代ウルクの英雄王の持つ宝物だ。

 既存のどんな兵器よりも、そう、ISよりも強力で比べものにもならない最強の武器。王者の武器。その一斉射の前には堅牢な城塞であろうとも崩れ落ちる定め。彼の必殺の宝具。王の象徴。故に、彼は王者の慢心を以て其れを放つ。

 ―――もう、何度か手痛い失敗をしているにも関わらず。

 

 

「げッ?!」

 

 

 鋼鉄をも容易く引き裂く宝具の弾幕を、隙間を縫って舞うかのように銀の翼は羽ばたいた。翼を掠める魔弾を撫で、僅かに軌道を逸らし、その隙を突く。

 剣林弾雨の具現に遮られ、一瞬途絶える視界。そしてそこから突如として出現する銀色の翼。完全に虚を突かれ、ギルバート・ウルクは思わず素で呻いた。

 

 

「ギルゥッ!!」

 

「い、一夏ッ?!」

 

 

 腕を組み、胸を張って堂々と立ったギルバートはすぐには動けない。王者たらんとした慢心は、王者のみにしか許されない。王者ではない彼の慢心は報いを与える。

 だが無防備な偽りの英雄王を、鋼の翼が薙ぎ払おうとした瞬間。疾る閃光、友の援護が彼を救う。

 

 

『当たりましたわ!』

 

『油断するなセシリア! 距離を保て! 私も狙撃ポイントを移動する!』

 

 

 紫電を曳いて疾った閃光と蒼光が、まさにギルバートを襲おうとしていた翼を直撃した。正確無比、一撃必中の狙撃だが、イカロスを堕とすには未だ足らない。

 仮面に覆われた頭部を見てとるや、黒い甲冑に身を包んだラウラ・ボーデヴィッヒは即座に射撃のポイントを変えるべく反転し、一夏達とは九十度ほど違う宙に陣取っていたセシリア・オルコットもまた遠隔操作兵器であるブルー・ティアーズを放つ。

 軍用にチューニングされた銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)は非常に強力な機体である。競技用にデチューンされた学園のISでは、まともに戦っても太刀打ち出来ない。

 

 

「まったく、傍迷惑な友達だわホント! ほら下がってなさいよ邪魔よ!」

 

「鳳!」

 

「ここはボク達に任せて! 四人で必ず隙を作るから! トドメを!」

 

 

 銀の翼が態勢を立て直す暇を与えず、鳳鈴音の操る甲龍とシャルロット・デュノアの駆るラファール・リヴァイブ・カスタムが突っ込んだ。双刃太刀を振り回し、衝撃砲で不可視の弾幕を張る鈴音と、機関銃で的確に援護するシャルロットの組み合わせである。

 接近戦のセンスに優れる鈴音が猛攻を加え、それが堪らぬと退がることは戦巧者のシャルロットが許さない。そしてそこに桁違いの性能を持つ第四世代機を専用機とする箒と、男性唯一のIS操者たる一夏が加わった。

 

 

「お、お前たち‥‥!」

 

『ギルバート・ウルク、聞こえているか』

 

「千冬?!」

 

『織斑先生だ、馬鹿者。この通信は公式の記録に残さないからよく聞け。いいか、今まで何度か言ったとおり、前の武装は確かに強力だが当たらん。面制圧しか出来ない上にお前に当て勘も技術もないからな。だが、その火力だけは馬鹿に出来ん。

 織斑、篠ノ之、オルコット、デュノア、鳳、ボーデヴィッヒの六人で隙を作る。そこに強引に捻じ込み、吹き飛ばせ』

 

「しかし!」

 

『連中が甘んじて囮に徹してくれている意味をよく考えろ。今まで失敗続きのお前の成功を、今度こそ信じているわけだ。ここ一番でやらなければ、お前は本当に口先だけの愚か者になる。愚か者でいたいのか?』

 

「ッ! 俺は、(オレ)は愚か者などではない! 教師とはいえ口を慎めよ、雑種!」

 

『‥‥そういうところを直せば、もう少しよく見られると思からわけだが。まぁいい、決めろよウルク。わざわざ非公式にお前を出した、意味がない』

 

 

 むぅ、という唸り声をインカム越しに聞き、織斑千冬は苦笑交じりに通信を切った。IS学園は個性の坩堝と化した特殊な空間であるが、その中でもあれほどの問題児は類を見ない。個性というよりは、主張だけをひたすらに発散しているような少年である。

 隣で心配そうにしている山田真耶教諭も、おそらくは千冬と同じ気持ちだろう。あのどうしようもないぐらいに生意気で我儘で子どもっぽくて、それでいながら呆れるぐらいに友人思いで捻くれ者で、素直で善良な生徒は、教師ならば誰だって気にする存在だった。

 

 

「奴にとっては、一世一代の大舞台だな」

 

「織斑先生?」

 

「いや、何でも」

 

 

 中東からの留学生、ギルバート・ウルクは金髪緋眼の成りながらも日本語を流暢に操る変わった少年だった。しかもかなり傾いた、というより尖った日本語を。

 振る舞いは尊大で我儘。他人を“雑種”と呼んで偉そうにふんぞり返っているくせに、なんだかんだ授業はしっかり聞いていたり他人に話しかけることは好きだったりと随分な変わり者だ。

 つまるところ極大の目立ちたがり屋で寂しがり屋で捻くれ者、というのがクラスメイトや教師達を含めた大方の認識である。実際ISの操縦に関しても天性の才を持ち、有事の際には“宝具”と称する正体不明の力を行使しながらも戦闘自体のセンスは皆無で、馬鹿正直に突っ込んだり弾幕を張り続けたりして何回か痛い思いをしている。その度に拗ねたり落ち込んだりしている様は、本人は隠しているつもりだろうが周りからは実に生暖かい、微笑ましいものを見る目で眺められていた。

 この世のものとは思えない美貌を持ち、女子高であるIS学園においてたった二人きりの男性でありながらも浮いた話の一つもないのは、そういうところが関係しているのだろう。道化、という言い方では愛がない。いわゆる、クラスのお調子者だった。本人は名誉と自負にかけて否定するだろうが。

 

 

「‥‥何故、こんなことに」

 

 

 しょんぼりとした本人の呟きが、彼の思いを如実に表していた。

 自らの魅力と能力で、本来ならば好き放題モテモテウハウハの第二の人生が送れると思っていたのに、毎日誰かしらにからかわれたり適当に微笑まれながらあしらわれたり、あるいは千冬‥‥織斑先生に頭を鷲掴みにされたりするばかりである。女の子から憧れる展開もないし、戦いだって結局のところ圧勝なんて一度も出来なかった。

 彼は大きな勘違いをしているのだが、本来、彼の望むままの行動なんてしていたら、邪険にされこそすれ現在のように友人として接してくれているはずがない。要するに、彼は彼が思うよりも善良で、どうしようもないぐらいに小物だった。悪者になりきれない悪者なんて、お笑い以外の何者でもない。そして邪険にされないぐらいには、なんだかんだ彼は優しく、友達思いの人間だったのだ。

 もし彼が自身の善良さ、勤勉さ、誠実さに気づけていたなら或いは、彼の生活も変わっていたのかもしれない。知らぬは本人ばかりなり、である。何処までも空回りする彼の様が愛されていたのは、まぁ悪いことではないのだろうが。

 

 

「‥‥ッ!」

 

 

 流れ弾が頬を擦り、一瞬にして緊張が呼び戻される。‥‥押し込めていた、恐怖も。

 本来どうしようもないぐらいに小市民な彼は、命をかけた戦闘なんて興奮でもしていなければやってられない。英雄の中の英雄を演じていた先ほどまでならともかく、どうしても敵わない千冬という存在に本来の自分自身を曝け出されてしまえば仮面が剥がれるのも自然な流れだった。

 ええい畜生、と自らを鼓舞する。深く物事を考えず、わりと目の前のことに集中出来るのも彼の美点だ。英雄王たる自分が、この程度のことで尻込みするかと叱咤する。

 

 

「ギル!」

 

 

 震える手を掲げ、彼の持つ宝具『王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)』を開いた時、高速戦闘の最中の、掠れた声が耳に飛び込んだ。

 思わずびくり、と震える。動揺と恐怖を見透かされたかのようなタイミングに、怯えたような表情で友を見る。自分とは違い、本当は只ISが使えるというだけの普通の男子である、織斑一夏を。

 

 

「信じてるぜ、キメろよ!」

 

「‥‥ッ! 愚問だ一夏! この(オレ)に任せるがいい!」

 

 

 激しい機動の合間を縫って、親指を立ててニヤリと笑ってみせる一夏。そして目線だけで意思を伝えてくる級友達。

 今までひたすらに自我や主張を振りまいてきた自分が、初めて向けられる他人の思い。体に打ち付けられる視線と意思が、いままで曖昧にしか向けられたことのなかった意思を注がれ、先ほどまでとは違う震えが体に走る。

 それはきっと、嬉しいという感情だったのだろう。けれど、どこまでも鈍感で思い違いの激しい彼は、ただ単純に心の震えを戦闘への意欲だと勘違いしたまま口の端を歪めて嗤った。

 

 

「―――起きろ、エア」

 

 

 今なら、それを抜ける気がした。

 彼が操る王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)は、ぶっちゃけると出てくる武器を自由には操れない。漠然と「こんなものが出て欲しいナー」とか「こんな武器使いたいナー」とか思うと適当な武器がにょきりと湧き出てくるという不思議な宝具だった。

 だから、本当なら彼はソレを選べないはずだったのだ。事実、今までは何をしたって出てきてくれなかった。例えば不死殺しの鎌剣も、竜殺しの魔剣も、神を縛る鎖も。

 王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)の武具は、王が望む時に望むものが出てくる。例え選ぶことをしなくても、出来なくても、必要な時に必要なものが出てこなくて何が宝物庫か。故に、それらは待っていたのだ。本当に、自らが必要とされる時を。

 

 

銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)よ! 翼をいくら動かしても、貴様では天には至れぬ! 目を逸らせぬ輝きを知るがいい!」

 

 

 とても、武器とは思えない円筒。神話を記したマニ車のような“剣”。

 それは神話の具現そのものである。ゆっくりと回転を始め、魔力の奔流を生む。思わず側にいる者の背筋が粟立つような怖気をも。

 あまりの威力を本人が恐れてか、戦いの場からやや下方へと移動する。三つの円柱の回転はもはや目にもとまらぬ程だ。生み出された魔力は渦を巻き、銀の翼を取り巻く仲間達にも及ぶ。

 チャージは十分。いつもの虚勢ではなく、本物の自身に溢れたギルの姿を見て、全員が頷き合った。

 

 

「一夏!」

 

「おう!」

 

 

 鈴音の衝撃砲を耐えた銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)の行動を読んだように、ラウラ、セシリア、シャルロットの弾丸が動けない翼を狙う。撃ち抜くまでは至らないが、動きは止まるし反撃も出来ない。

 そして、それを決して見逃さない二人がいた。輝く刀を構え、高速戦闘の最中にも自らの役目をしっかり果たし、今まで力を温存していた二人が。

 

 

「「いっけぇぇぇえ!!!」」

 

 

 全力で疾らせた、三つの疾風。瞬間的に身動きのとれない銀色に輝く両翼を、見事に抉って振り切った。まさに乾坤一擲の一撃である。

 銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)の翼は攻防一体の強力な武装であるが、同時に飛行の補助も行う。他のISの多くが翼や目立つ噴射機などを備えていないのに対し、機能美を追求した結果、原初に立ち返ることになった特徴的な装備だ。

 故に、大きな損傷を受けた翼は一時的に本来の役割をこなせなくなるのが道理。ぐらりと失速、宙を舞う力を失い、ゆっくりと落下する。

 まるで天に近づき過ぎたイカロスのように。だがイカロスとは違い、彼女の翼はすぐに損傷を補い、再び天を目指す力を取り戻すことだろう。

 ―――其れを許さぬ、王の誅伐が無ければの話であるが。

 

 

「よくぞやった、一夏! 箒! 舞台は整った、今こそ仰げ、天地乖離す開闢の星(エヌマエリシュ)を―――ッ!!

 

 

 地上から上空へ、突き上げるような光が奔った。

 それは疑いようもなく魔力の奔流だったが、世界を引き裂く程の力を持った一撃は神話の具現そのものであった。

 太古の昔、未だ天地が一つであった時に其れを別けたと言われる力が、現代に顕現したのだ。見るものに根源的な恐怖と畏れを覚えさせる光景。おそらく、二度と見ることは叶わないだろう。この輝きを前にして、何か他のことをしたり考えたり、そんなことは出来やしない。ただ呆然と立ち尽くし、あるいは祈り、拝む。

 一人の人間が、否、このような威力の兵器がこの世に存在していいはずがない。

 勿論それも道理だった。何故ならその光は、正しく神代の時代から現代まで数多の人々によって語り継がれてきた神話が持つ幻想の重みそのものなのだから。

 

 

『‥‥ギルバート・ウルク』

 

「なんだ、千冬」

 

『と、搭乗者は無事なのか?』

 

「あ」

 

 

 辛うじて畏怖に震える喉から絞り出した声に間抜けな答を返す、英雄王の姿を借りた凡人。

 そして同じくらい辛うじて、というよりは奇跡の産物として生き残っていた搭乗者が以降、暗所恐怖症の真逆の、閃光恐怖症になったかについては、この場の言及を避けておくことにする次第である。

 

 

 

 


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